香 川 大 学 経 済 論 叢
第 8 0 巻 第 3 号 2 0 0 7 年 1 2 月 27‑98
サービス組織の顧客基盤形成・
強化ツールとしての電子マネーの 効果に関する実証的考察
交通系電子マネー " I r u C a " をケースとして
藤 村 和 宏
I . は じ め に
(1)
現 在 , 電 子 マ ネ ー の 発 行 が 相 次 ぎ , 乱 戦 模 様 と な っ て い る 。 2007 年 3 月 1 8 日には私鉄系の「 PASMO (パスモ)」が登場し, JR 東日本の「 S u i c a (スイカ)」
との相互利用が可能であるために,どちらか 1 枚 を 保 有 し て い れ ば 首 都 圏 の 私 鉄 , バ ス , お よ び JR 東 日 本 の 路 線 の ほ と ん ど で 乗 降 可 能 に な っ て い る 。 さ ら
に , 4 月 23 日 は セ ブ ン & ア イ ・ ホ ー ル デ イ ン グ ス が 「 nanaco (ナナコ)」のサ ービスを, 4 月 27 日 に は イ オ ン が 「 WAON (ワオン)」のサービスを開始す る と い う か た ち で 小 売 業 界 の 2 大勢力が参入したことから, 2007 年 は 「 電 子 マネー元年」とも言われている。
これまでに様々な電子マネーが発行されているが,それらは図 I‑ 1 のよう に,交通系一買い物系という軸とプリペイドーポストペイという軸で 4 グルー プ に 分 類 す る こ と が で き る 。 主 要 な も の と し て は , 関 東 圏 で は JR 系 の S u i c a と 私 鉄 系 の PASMO が , 関 酉 圏 で は JR 系 の 「 ICOCA (イコカ)」と私鉄系の
「 PiTaPa (ピタパ)]がある。 2007 年 7 月 現 在 の 発 行 枚 数 は , S u i c a が 2,159 万枚, PASMO が 435 万枚, ICOCA が 303 万枚, PiTaPa が 約 8 1 万 枚 と な っ て
(l) 本稿での電子マネーは広く買い物に利用できるものに限定しているが,コカ・コーラ
の自動販売檬用「 cmode (シーモード)」, 2 0 0 8 年に導入予定のタバコ自動販売機の成年
識別が可能な「 p i d e l (ピデル)」のような,特定用途に使用する電子マネーもある。
‑28‑ 香川大学経済論叢 3 2 4 いる。地方都市でも交通系の電子マネーが発行されており,香川県では高松琴 平電気鉄道が「I r u C a (イルカ)」を発行しており, 2 0 0 7 年 9 月末時点での発行 枚数は 1 0 万 3 , 7 2 0 枚にまでなっている。
このような発行枚数の増加に伴い,買い物での利用も進んでいる。日経ビジ ネスが 2007 年 3 月 20 日 ~27 日に実施した「ビジネス世論」調査によると,
6 0 . 8% (有効回答数: 1 , 0 4 9 ) が「既に使っている」と回答し,その中の 15.6%
(2)
は「ほぼ毎日使っている」と回答している。 S u i c aと PASMOについて見ると,
両カードは相互利用可能であるため, PASMO が 発 売 さ れ た 2 0 0 7 年 3 月に は,両カード合わせての買い物での利用件数は 1 日当たり 5 0 万件を突破し,
前年比 30% 増となっている。野村総合研究所の電子マネーの市場予測による と,非接触型 ICプリペイド決済と非接触型 IC ポストペイ決済という両電子マ ネーを合わせての 2 0 0 6 年度の市場規模は 1 , 8 2 1 億円だったが, 2 0 0 7 年度には 3 . 8 倍の 6 , 8 9 4 億円, 2 0 1 1 年度には 1 5 倍の 2 兆 8 , 3 0 6 億円にまで拡大すると
されている。
プリペイド
I S u i c a I
PASMO
ICOCA
'WAON I r u C a
父
,
:
只""通 し
系 悶
P i T a P a l i D
QUICPay VISA TOUCH Smart p l u s
ポストペイ
注 ) □ □ □ ]で囲った電子マネーはおサイフケータイ対応である。
図 1‑1 : 電子マネーの分類
参考:高野雅清 ( 2 0 0 7 ) , 『新しいお金 電子マネー・ポイント・
仮想通貨の大混戦が始まる』,アスキー, 8 1 頁 。
3 2 5 サービス組織の顧客基盤形成・ 強化ツールとしての電子マネーの
効果に関する実証的考察 ‑29‑
また,三井住友カードの推計によると,日本における 2 0 0 4 年の民間最終消 費 支 出 は 2 8 6 .7 兆 円 で あ る が , そ の う ち ク レ ジ ッ ト カ ー ド 決 済 は 10.2% の 2 9 . 2 兆円にとどまっており,残りの約 90% の 2 5 7 . 5 兆円は現金決済となって
(3)
いる。他国に比べて,日本では現金決済の割合が高く,クレジットカード決済 の割合が低いために,電子マネーが現金決済に変わって使われる余地が多く残
されているという。
このように普及の進んでいる企業通貨としての電子マネーを運営会杜の視点 から捉えるならば, Edy などの一部電子マネーを除いて,既存サービス組織が 顧客基盤を形成・強化するためのツールと考えることもでぎる。サービス組織 もその存続・成長のための顧客基盤の形成・強化を目的として,顧客満足の向 上やブランドの形成・強化を図る戦略を積極的に展開しているが,企業通貨と しての電子マネーも顧客満足の向上を通じて基盤形成に貢献すると考えられ る。そこで,本稿では交通系電子マネー「I r u C a 」をケースとして,電子マネ ーの顧客基盤の形成・強化に対する効果と課題を実証的に考察したい。
I I
. 企業通貨としての電子マネーの概略
日本の現行法では,企業通貨は「割引券」「景品」および「電子マネー」の 3 つに分類されている。発行した企業のみで使えるポイントや航空マイレージ は「割引券」であり,発行した企業以外でも使用できる汎用ポイントは「景品」
となる。一方,事前に現金やクレジットカードで価値をチャージするものは狭 義の「電子マネー」とされている。
ここでは,企業通貨の一つである電子マネーの四容,歴史,運営企業の発行 日的,および消費者に対する便益について考察することで,電子マネーによる 顧客基盤の形成・強化の可能性を示したい。
(2) 『日経ビジネス』, 2 0 0 7 年 4 月 1 6 日号, 1 3 7 頁 。
(3) 「特集 6 0 兆円市場が花開く 電子マネー入門」,『週刊ダイヤモンド』, 2 0 0 7 年 5月
1 2 B 号 , 8 9 ‑ 9 0 頁 。
‑30‑ 香 川 大 学 経 済 論 叢 3 2 6
(1) 電子マネーの定義とタイプ
電子マネーとは,電子的なデータに貨幣の価値を持たせたもので,紙幣や硬 貨が担ってきた役割を電子的なデータに麗き換えたものである。
電子マネーの基本は小額決済にあり, 1 回当たりの平均決済金額がクレジッ トカードは 1 万 6 千円であるの対して, 7 0 0 円となっている。この小額決済市 場は 6 0 兆円とも言われているが,クレジットカードが一番苦手としていた金 額骨であった。なぜならば,手数料ビジネスにとっては 3 %の手数料をとっ
(4)
ても,小額決済ではコストばかりかかってしまうためであった。しかし,この 小額決済は買い物や電車などで最も利用される決済金額楷であるために,前述 のような巨大な市場規模となっている。
現在,様々な電子マネーが発行されているが,上な電子マネーと実証的考察 の対象とした I r u C aカードの特徴は表 I I‑ 1 の通りである。表のように,電子 マネーは大きく,プリペイド型とポストペイ型に分類することができる。
プリペイド型は,利用薗にお金をチャージしておく[前払い式」で,乗車や 買い物での精算のたびにチャージしている金額から差し引かれる。事前審査や 与 1 言がないために誰でも保有できる,チャージ金額以上に使えないために使い
(5)
すぎることがない,紛失してもチャージ金額だけの損失で済む,などの利点が ある。しかし一方で,チャージ場所が限られている, ICカードでは残高をすぐ に確認でぎず,利用時に残高不足がわかる,などの不便な点もある。なお,プ リペイド型には,「オートチャージ」機能を持つものもある。これはクレジット
(4) 『週刊ダイヤモンド別冊 電 子 マ ネ ー & ク レ ジ ッ ト カ ー ド 完 全 活 用 ガ イ ド 最 も 得 す るカードを探せ!』, 2 0 0 7 年 1 0 月 3 日号, 1 4 頁。
(5) プ リ ペ イ ド 型 の 無 記 名 式 の も の は 現 金 と 同 じ で , 紛 失 し て も 補 償 が さ れ な い 。 た だ し , 名 前 な ど を 登 録 す る 記 名 式 の も の は , 手 数 料 は か か る が , 連 絡 し た 時 点 の 残 高 を 補 償 し て く れ る も の も あ る 。 ポ ス ト ペ イ 型 の 場 合 に は , ク レ ジ ッ ト カ ー ド 会 社 に 連 絡 し て ク レ ジ ッ ト カ ー ド 機 能 を ス ト ッ プ さ せ れ ば よ い が , 搭 載 さ れ て い る プ リ ペ イ ド 型 電 子 マ ネ ー の 使 川 を 止 め る こ と は で き な い 。 お サ イ フ ケ ー タ イ の 場 合 に は , 電 話 や パ ソ コ ン で
「 遠 隔 ロ ッ ク 」 が で ぎ , さ ら に 電 子 マ ネ ー 機 能 の み を ロ ッ ク す る 「 IC カードロック」も
あ る 。 そ の 後 , 屯 子 マ ネ ー 会 社 や ク レ ジ ッ ト カ ー ド 会 社 に 連 絡 し て 利 用 を ス ト ッ プ す
る 。 お サ イ フ ケ ー タ イ の 場 合 も , プ リ ペ イ ド 隈 電 子 マ ネ ー の 種 類 に よ っ て は 残 高 が 補 償
されないものがある。
表 I I
ー1 :主要な電子マネーのプロファイル ( 1 )
三 カ ー ド は 性 類
交 通 系
プ リ ペ イ ド ポ ス ト ペ イ
Smca PASMO !COCA IruCa PiTaPa
(スイカ) (パスモ) (イコカ) (イルカ) (ピタパ)
運営会社 束日本旅客鉄磁 株式会社バスモ 西日本旅客鉄道株式会社 商松琴甲電気鉄道株式会社 株式会社ス]レッとKANSAI
導入時期
2001年1
1月(買い物は
2004年3 月 )
2007年3 月
2003年
11月 (買い物は2005 年
10月 )
2005年2 月2 日(買い物は2006 年
11月 )
2004年8 月(買い物は2004 年
10月 )
発行枚数
2,159万枚
435万枚
303方枚
10万3
,720枚 約8
)万枚
利用可能店舗数
2万1
,330店
1,793店
272店(飲料自販機含む)
27店(リーダー台数5
0台,飲料自勁販先機8
7台 )
1万6
,000店舗以上 年会黄 なし(初回2
,000円,デポジット
500円含む) なし(デポジット5
00円必
'I!')なし(初回2
,000円,デポシット
500円含む) なし(初回2
,000円 デ ポ ジ ッ ト
500可含む) なし
交通は1 ヶ月当たり
15万円,ショッピングは
チャージ限度額
2万円
2万円
2万円
2万円
1日当たり
3方
Pl,1ヶ月当たり
5万円。
IC定
期券購入は1 ヶ月当たり
20万円。
My Smca
(出名式),
Smcaカード(無記名式), 記名P
ASMO,無記名
PASMO, PAS¥10定期券
!COCA, スマート!COCA,こども!COCAフリー
IruCa, IruCa定期券', シニア
IruCa本会員カード,一般家族カード,ジュニアカードの種類
Suica定期券。
MySuicaとS
uica定期は子供用あ
(65歳 以 上 ) , ス ク ー ル
IruCa(学生), カード(中高生用),キッズカード(小学
り
。 キッズIruCa ( 満
6歳 以 上
・12歳 未 滴 ) , グ 生用)
リーンlruCa (身体障害者及び介護者)
モバイルSuica なし なし なし なし
携帯対応
(NTTドコモ, au, Soft Bank)My Su1ca
とS
U1ca定期券は,駅の窓口に申告し 駅 か バ ス 営 業 所 で カ ー ト 使 用 を 申 諮 し , 翌 スマート!COCA は扮失ダイヤル
(24時間年 記名式の
IruCaとIruCa 定期券は,
[ruCa窓口
P!TaPaコールセンター紛失・盗難プスク(
24時利用倅止手続きをした時点で残額補償 日以降,再発行(手数料500 円とデポシット 中無休)に連絡 に 申 告 し , 使 用 停 止 完 了 と な っ た 時 点 で の
問年中無休)に連絡。再発行には2~3 遥間か紛失補償
500円が必要) カ ー ド 情 報 に よ り , 新 カ ー ド を 再 発 行 ( 手 かり,手数料1
,050円が必要
数 料1
00円とデポジット
500f9が必要)
なし
10年間利用やチャージがない場合は失効 最後の利用から
10年間利用がない場合ば失 なし(スクールl
ruCaとキッズlruCs は毎年35 年間
有効期限 効 月3
1日に,シニアIruCai:l:誕生日
1こ,グリー
ンIruCa は発売日・更新日から
6ヶ月以内に 更新が必要)
スーパー 〇イオン,大丸ピーコックなど 〇京急ストア,東急ストアなど
X△ マルヨシセンタ̲片[輝町店 〇イケチュー,成城石井など
コンビニエンスストア
0ファミリーマート, ミニストップなど
0 ampm,デイリーヤマザキなど 〇ハート・イン,ディリーイン △ サンクス・サンポート
1ふ 古 灼 掲 町1
1;.塩△ 駅ナカ.ローソン,サンクス,デイリーヤ
上町店 マザキなど
ドラッグストア
X△ マツモトキヨシなど △ マツモトキヨシ(一部店舗) △ オカウチドラッダ △ ドラッグストアセガミ, くすりのラブ
訳売店 〇ニューデイズ, レッツキヨスクなど 〇各運営 屯鉄の駅9
匂因 X△ 自動販売根のみ 〇阪神売店,京阪売店
得 ガソリンスタンド
X X X X△ 郎店舗で利用
意
分 サービスエリア
X X X X〇西名阪道・香芝S
A,阪和追岸和田S
A野
ファーストフード
X 0ドトールコーヒー,エクセルシオーなど ゜ デリカフェ,エスタンオンカフェ,スター
X Xバックスコーヒーなど
ファミリーレストラン △ ジゴナサン,サンマルクカフ
..Lなど
X X X〇神)サa l , サンマルク
家電量販店 〇 ビソクカメラ,ヨトパシカメラ △ ビックカメラ(一部店舗)
X△ ヨドバシカメラマルチメディア梅田,
ジョーシン阪急三番街店
ネットショップ
0 Yahoolショッピング(モバイルS
uicaのみ)
X X X Xタクシー
0 II本交姐,国際自勅車
X X X注1)
発行枚数や利用可能店舗数などのデークは2
007年7 月現在のものである。但し,
huCaカートは
2007年9 月末現在のデータである。
注2) Smartplus
は三菱U
FJが開発した井接触I
Cカード決済サーピスであり,
VisaTouchはSmanplus の技i
ii仕様と
I")規格でビザ・インターナショナルが捉供するもので使用の際に違いはない。
出所と『週刊ダイヤモンド月
ljfllt屯子マネー&クレジットカード完全活用ガイド 最も得するカードを探せ'』,
2007年1
0月3 日号,一部加策
J327
キー穴 X
翌 鑑 3 需 説 桝 詰 表 忌
・ 璽
K ︑ ) ー ︶ ↑ 応
L バ 3
星 ﹁
4 f I r
ー 3
達翠言酒斗が決早弓禁湖
│ 3 ]
│
表 I I‑ 1 : 主要な電子マネーのプロファイル( 2 )
三
カ ー ド 属 性 Edy プ リ ペ イ ドnanaco W A O N買 い 物 系
,D ポ ス ト ペ イQUICPay VISA TOUCH/Smart plus(エディ) (ナナコ) (ワオン) (アイディ) (クイックベイ) (ピザタッチ)/(スマートプラス)
イ オ ン (WAONカート `プラス,イオン ヒ`ザ・インターナショナル/三菱UFJ
運 営 会 社 ビットワレット アイワイ・カード・サービス カード<WAON一体型)はイオンクレジッNTTI'コモ JCB
トサービス) ニコス
導入時期 2001年11月 2007年4月 2007年4月 2005年12月 2005年4月 2006年9月/2004年12月
発 行 枚 数
約3
,250万 枚 425万枚 40万枚約3
28万 枚約2
40万 枚約2
2万 枚利 用 可 能 店 舗 数
約6
万7,000店約1
万2,000店(セプン・イレプン全店)約4
,700店 17万台(リーダー台数)約5
万7,000台(リーダー台数)約
1万5,000台(リーダー台数)年会費 なし なし(発行手数料300円,モバイルは無料) なし(発行手数料300円) 提携カードによる なし 提携カードによる
5万円 29,999円 2万円 (利用限度額)提携カードによる (利用限度額)捉挑カートによる (利用限度額)提携カードによる
チ ャ ー ジ 限 度 額
カート型,おサイフケータイ nanacoカート(すべて,記名式) WAONカート,WAONカードブラス,イオ お サ イ フ ケ ー タ イ , カ ー ド 型,D カ ー ト 単 体 型 , ク レ シ ,Iグ)ードー1本 カ ー ド 型 , お サ イ フ ケ ー タ イ , キ ー ホ
カードの種類 ンカード<WAON一体型> 型,モバイル型 ル ダ ー 型
NITドコモ,au,Soft Bank nanacoモパイル(NlTドコモ,au) なし NTT Iゞコ干 NITドコモ,au,Soft Bank NTIドコモ,au,Soft Bank 携帯対応
モ ハ イ ルEdyに1対 し て , サ ー ビ ス 立 録 利 用 停 止 登 録 完 了 時 点 の 残 額 ・ 尿 積 ポWAON残吟およびポイントは補償され 利用しているiD対 応 の ク レ ジ ッ ト カ ー 登録してあるJCBカ ー ド と 固 等 の 補 侶 それぞれの発行クレジットカー1、発行 を 行 っ て い れ ば , 携 岱 池 話 が 故 悶 し た イ ン ト を 補 償(24時 間 コ ー ル セ ン タ ー な い 再 発 行 も で き な いn ド発行会社に洲絡"補倍は各クレジッ が適用, J('Bサーヤロデスクで紛失・ 会 社 に 連 絡 , 補 償 ぱ ク レ ジ ッ ト カ ー ド
紛 失 補 償 楊合の夕父,店を補償。 あり) トカート会社に準じる。 盗難に関して対応又 会社に準じる。
なし 最後に利用した日あるいはチャーシし イオンカード<WAON一体型)はクレ 提携カードによる 7年『月 提携カードによる
有 効 期 限 た日から5年 ジットカード/‑同じ
゜
人丸ピーコック.関西スーパーなど△
2001年秋以降,全[+jのイトーヨー 関東と新1,↓県・山梨県の 部のイオス ー パ ー で令1,11001「,f前 力咄 〇ングループであるが, 2007年10月15 〇 イ オ ン グ ル ー プ
△
ダイイチ0
ペニマート,ホクノースーパーなど Hから関西や中部に拡大ローソン.ファミリーマート ampm,
△
2007年中にミニストップヘの導入了・。
ローソン,ampm,ファミリーマート゜
ロコーーマソーン,トセ, サプーンークイルレKプサン,ン七クイス△
2007年秋以降,サークルK・サンクスコンビニエンスストア 〇サンクスなど,ほぽすべてのコンビ 〇全国のセプンーイレプン
二( 部JI対応IIIあり) 定 など (SA・PA内)
ドラッグストア
゜
マツモトキヨシ.ツルハドラッグ,ドラノグセガミ,コメヤ北局など△
2007年秋以降,JCB加盟/古△
和」用可能なイオングループ店舗内のドラッグストア△
サガミトラッグなど△
ドラッグニタカ, どらっぐばばす゜
くすりの価人、師,リなど ドラノグストアモ駅 売 店
△
アンスリー ベルマート,上記コン X X△
Suica, PASMO;{;I即 時 X Xヒニの駅 •f•J,I;など
得 ガ ソ リ ン ス タ ン ド
゜
宇佐必, E'i:FOS,コスモィ濯I,りゅう X X X゜
エ7SッSソ2,00モ8年ー1/ヒ1ルよ,りゼE~ネEOSラでル利の)
IHセ定ル゜
シェル, E'.i"EOS,ニクスプレスのセ/L,意
せさエネルギーなど フss分 サ ー ビ ス エ リ ア
△
中114',i,lili道蹄,西1,本商注道路の> <
X X X△
束II本商速道路,中 H本闘速逍路野
SA PAファーストフード
t : : .
マクドブルド,モスバーガー,吉野 X△
利用可能なイオング)レープ店舗内の△
2007年IO月から全国のマクドナルド△
カフェ・ド・クリエ(棗廂エリア限 X家の一部/山舗 ファーストフード 定)
ファミリーレストラン
゜
ロ イ ヤ ル ホ ス 凡 サ ン デ ー サ ン , シ△
2007年秋以降,令l社のデニーズ△
利用可能なイオングループ店舗内の 〇ジョナサン, 'I仇 な ど゜
ロ イ ヤ ル ホ ス ト , サ ン デ ー サ ン グ゜
ど、yグボーイ,すかいらーくガーデズラーなど ファミリーレストラン ループ,サガミ ンズなど
家 電 量 販 店
゜
ジマ, ペスヨドバシカメラ,ケーズデンキ,ノ1、',・じ臨など△
Z007年秋以降, [CB加盟Jふ X 〇 ピックカメラ,ノジマテレマックス 〇 コドパシカメラ, コジマ Xネ ッ ト シ ョ ッ プ
゜
Amazon, ニッセン,千趣会,mu‑mo, X X△
X Xmomなど
タクシー
゜
ANZENタクシー,飛!屈込辿中央無線, X X△
束恥無線,チェッカーキャプ△
神 奈qiハイヤー X束広島ククシー,沖束交通など
注I)発行枚数や利用可能店綽数などのデークは2007年7月現在のものである。但し, lrnCaカードは2007イ1'9月末現在のデータである。
注2) Srnartp]usは三没lFJが開発した井接触ICカード決れサービスであり,¥'isaToaol,IまSmartclusの技術ii採と同規格でビザ,インターナショナルが提供するもので使)ilの際に達いはない。
出所・ f週刊ダイヤモンド別冊 屯子マネー&クレシットカード完全活用ガイド 最も得するカートを探せ1j , 2007年10月3日号,一部加喰c
32
窃 ︶
一 ご
仇 塁
翌 翌
萄 澪
328
3 2 9
サービス組織の顧客基盤形成・ 強 化 ツ ー ル と し て の 電 子 マ ネ ー の
効果に関する実証的考察 ‑33‑
カードと連動させることが前提となっており,決済後の残高が一定金額を下厠 ると自動的に数千円がチャージされ,後日クレジットカードから引き落とされ る仕組みになっている。 PASMO, S u i c a , WAON などで利用可能になっている。
一方,ポストペイ型は利用金額を後でまとめてクレジットカードで精算する
「後払い式」であり,クレジットカードに近い形態である。利用限度額はクレ ジットカードに準じるために,利用時に残閥を心配する必要はないが,使いす ぎる恐れがある。また,紛失のリスクも大きくなっている。
また,携帯電話に ICカードを搭載することで,対応電子マネーのデータが 利用できるおサイフケータイもある。携帯電話会社 3 社の調べによると, 2 0 0 7 年 5 月末時点で,おサイフケータイの契約者数は 3 , 3 0 0 万件を超し,携帯電話
(6)
ユーザーの 3 人に 1 人が保有するまでになっている。
(2) 電子マネーの開発と市場導入の歴史
クレジットカードが日本に誕生して 40 年ほど経つが,日本ではあまり普及 していない。三井住友カードの推計によると, 2 0 0 4 年 の ク レ ジ ッ ト カ ー ド 決 済比率は,シンガポールが 19%, 香 港 が 22%, 米 国 が 27%, オーストラリア
(7)
が 30%, 韓回が 33% に対して,日本は約 10% にとどまっている。この背景と して,日本人にとってクレジットカードは「借金」であるという意識が強いと いうことがある。また,買い物頻度が高く,小額決済が多いために,クレジッ トカードでは支払い難いということもある。さらに,日本の紙幣や貨幣の印 刷・鋳遥技術が高く,偽造も難しいことから,それらに対する信頼性が高いと
いうこともある。このことから,クレジットカード会社はポイント・サービス を開始し,現金決済では享受でぎない便益を訴求してきた。
そのような状況の中, 2 0 0 1 年 1 1 月に, JR 東日本が運営する S u i c a と,ソニ ーや NTT ド コ モ な ど が 母 体 と な っ た ビ ッ ト ワ レ ッ ト が 運 営 す る 「Edy ( エ
(6) 『週刊ダイヤモンド別冊 電 子 マ ネ ー & ク レ ジ ッ ト カ ー ド 完 全 活 用 ガ イ ド 最 も 得 す るカードを探せ!』, 2 0 0 7 年 1 0 月 3 日号, 1 1 1 頁 。
(7) 『週刊ダイヤモンド』, 2 0 0 7 年 5 月 1 2 日号, 89 頁 。
‑34‑ 香川大学経済論叢 3 3 0 デイ)」が登場した。買い物系の Edy はなかなか普及しなかったが,交通系の S u i c a はその利便性が評価され,急速に肱大した。その一番のポイントは,カ ードを「差し込む」のではなく,「かざす」ことでゲートが開くという,使い やすさにあった。
電子マネーの構想自体は 1 9 8 0 年代からあり, 90 年代になって「モンデック ス」や「 e キャッシュ」などの電子マネー実験が各国で行われたが,接触タイ プであったために取り扱いが面倒であり,利用の必要性も低かったために,普
(8)
及しなかった。しかし, 2000 年 に ソ ニ ー が 非 接 触 型 IC カ ー ド 技 術 「 F e l i C a
( 9 )
(フェリカ)」を開発したことで流れが変わった。元々は,物流のトレーサビ リティ(追跡可能性)などの活用が想定されており,いわゆる IC タグのはし りであった。ところが,セキュリティの向上に加えて,迅速なデータのやり取 りと書き換えが可能であったことから,そのスピードに着目した JR東 日 本 が F e l i C a を採用し, 2 0 0 1 年 1 1 月に磁気式だった「イオカード」を代替すべく,
乗車券機能のみのサービスとして S u i c a を開始した。これをきっかけとして,
非接触型 IC カードが一気に広がっていった。
S u i c a は 2004 年 3 月から,キヨスクや NEWDAY など,いわゆる「駅ナカ」
の買い物でも利用できるようになっている。その後,コンビニエンスストアの ファミリーマートや家電量販店のビックカメラとも提携し,「街ナカ」に進出 している。さらに,ヤフーとの提携により, 2007 年 冬 か ら は ネ ッ ト 決 済 に も 進出することが予定されている。また, 2006 年 1 月 に は , カ ー ド の 代 わ り に 携帯電話を改札機にかざす「モバイル S u i c a 」も投入している。
(8) 『週刊ダイヤモンド』, 2 0 0 7 年 5 月 1 2 日号, 9 2 頁 。
(9) 他の規格としては,タイプ A と呼ばれるオランダのフィリップス社などが開発した
「マイフェア」や,米国のモトローラ杜が開発したタイプ B (住民基本台帳カードで使 用)がある。
F e l i C a は ア ジ ア 圏 で 普 及 し て お り , 普 及 に お い て は 香 港 が 先 行 し て い る 。 香 港 で
は , 1 9 9 7 年に地下鉄乗車用「八達通 /Octopus (オクトパス)」として F e l i C a が採用さ
れている。 O c t o p u s の発行枚数は 1 , 4 0 0 万枚(人口の 2 倍)に達し,香港市民の 95% が
保有しているとされる。現在は,買い物や駐車場でも使用可能であるため,市場規模も
4 , 4 0 0 億円に達している。
3 3 1
サービス組織の顧客基盤形成・弛化ツールとしての電子マネーの
効果に関する実証的考察 ‑35‑
一方,電子マネーとしては最も早いが普及の遅れていた Edy は , 2003 年 6
(10)
月に ANA との提携を開始し,マイレージを電子マネーに変えて利用できるよ うにした。これにより Edy は急速に拡大し, 2007 年 7 月 現 在 で は 断 ト ツ の 発 行枚数と加盟店数を誇るまでになっている。 ANA が当時まだ無名であった Edy
と提携した背景には, JAL と JAS の統合に対する危機感があったとされる。
ANA 営業推進本部・中村晃部長によると,「羽田発便の ANA 比率は 4 割で首 位だったが, JAL と JAS が提携すると 6 割で逆転されてしまう」し,「加盟店 を広げても,貯めるだけ貯めさせておいて使えないとなれば,マイレージ制度
(11)
の魅力が減る」ということがあった。
この提携は両者に恩恵をもたらす結果となった。 Edy の場合には,提携後の ANA によるテレビ C M の大量投入や観光地営業などによって, Edy 加盟店と 発行枚数は飛躍的に増加した。 2007 年 7 月時点では, ANA との提携前に比べ て , Edy の加盟店は 6 万 7,000 店で 28 倍,累積発行枚数は 3,250 万枚で約 1 6
(12)
倍となっている。 2007 年 5 月からは,割引サービスの提供も開始している。
一方, ANA の場合には,マイレージの使い道が現金と同様に広がったこと から,顧客満足が飛躍的に向上し,マイレージ会員数が増加している。 Edy で 支払うと 200 円につき ANA の 1 マイルを貯めることがでぎ, ANA の 1 万マ イルは Edy に 1 万 円 と し て チ ャ ー ジ す る こ と が で き る と い う 交 換 サ ー ビ ス は,当時としては珍しかった。この結果, 2005 年末には,マイレージ会員数
(13)
の伸び率が JAL の伸び率を上回るまでになった。このような流れの中で,提 携企業の格や安全性を重視することから提携の遅れていた JAL も , 2004 年 1 2
( 1 0 ) ANA は,ビットワレットの設立時ではなく,後の増資で株主となった 1 社である。
( 1 1 ) 「ポイントカード 大氾濫」,『週刊東洋経済』, 2007 年 1月 20 日号, 5 3 頁 。
( 1 2 ) たとえば中央無線タクシー協同組合は, Edy で月 4 同 以 上 の 決 済 を 行 う と , 翌 月 に 500 円分の電子マネーを戻す割引サービスを開始している。同社はこの割引を顧客の導 線,年齢,性別などのデータを収集・分析するコストと捉えている。
( 1 3 ) ただし, ANA の場合,マイレージの Edy への交換が前年の倍々ペースで増加してお
り(『週刊東洋経済』, 2007 年 1 月 20 日号, 5 4 ‑ 5 5 頁),既存顧客の囲い込みが必ずしも
成功しているは言えない状況にあるようである。このためか, JAL の場合には,マイレ
ージの S u i c a への交換は年 2 回 , 2 万円までの上限付きとなっている。
‑36‑ 香川大学経済論叢 332 月に S u i c a との提携を開始した。
2007 年 4 月には,セブン&アイとイオンという小売業の 2 大 勢 力 が そ れ ぞ れ独自の電子マネーで電子マネー市場に参入している。セブン&アイは 4 月 23 日に n a n a c o のサービスを開始し, 5 月末にはセブンーイレブン全店で利用 可能にしている。 4 日後の 27 日 に は , イ オ ン も 独 自 の 電 子 マ ネ ー で あ る WAON のサービスを開始し,関東(一部新潟県)のジャスコやミニストップ
などのグループ約 1 0 0 店舗からスタートし,利用可能店舗を全国に拡大してい る。両者が独自の電子マネーにこだわった背景には,主要顧客である主婦の囲 い込みがあった。 S u i c a などの交通系の電子マネーは通勤目的の男性客が多く,
(14)
主婦層に強い電子マネーはなかったためである。これらの流通系のカードは店 頭での即時発行が可能であるため,発行枚数を急速に拡大している。
セブン&アイの場合には,コンビニエンスストア最大のセブンーイレブンを 抱 え て お り , 店 内 に 設 置 さ れ た セ ブ ン 銀 行 の 新 型 ATM では毎日 24 時間,現 金の引き出しや電子マネーヘのチャージが可能であることから,発行枚数が急 増している。また,顧客へのポイントの提供や,セブンーイレブンのオーナー に対する発行 1 枚当たり 1 0 0 円のインセンティブの支払いも,発行を促す要因 となっている。 Nanaco の初年度の発行枚数計両は 1 , 0 0 0 万枚で, 2007 年度中 には,イトーヨーカ堂などのグループ各店舗や JCB の 加 盟 店 で も 利 用 可 能 に なり, 2008 年度中にはグループ外も含めて 5 万 店 舗 ま で 拡 大 す る こ と が 計 画 されている。
このように電子マネーが急速に拡大している背景には,電子マネー業界,ク レジットカード業界,および携帯電話業界の密接な協力体制があるが,一方 で,業界間競争および業界内競争も激化している。また,多種多様なカードが 発 行 さ れ る こ と で , 利 用 者 や 店 舗 の 混 乱 を 招 い て い る 。 す で に S u i c a , Edy,
「 iD (アイデイ)」,「QUICPay (クイックペイ)」の 4 陣営は店頭での端末共通 化を造めているが,いつでもどこでも使えるとは言い難い状況となっている。
( 1 4 ) 「セブン&アイ,イオンが参入 電 子 マ ネ ー 乱 戦 最 後 発 紺 が 大 攻 勢 J , 『週刊東洋経
済 』 , 2007 年 4 月 28 日ー 5 月 5 日号, 32 頁 。
3 3 3
サービス組織の顧客基盤形成・強化ツールとしての電子マネーの
効果に関する実証的考察 ‑37‑
そのため,現段階での競争は利用可能店舗数の多さを中心として展開されてい るが,端末が共通化すれば,競争はサービスの差別化に移行していくと考えら れている。
(3) 電子マネー導入の目的
電子マネーの運営会社や電子マネー決済システムの導入店舗の目的は,既存 顧客の囲い込みと新規顧客の獲得にある。電子マネーの導入により支払いの利 便 性 を 高 め る と と も に , ポ イ ン ト ・ サ ー ビ ス や 割 引 サ ー ビ ス を 提 供 す る こ と で,既存顧客の利用頻度と利用金額を向上させることが可能になるからである。
また,電子マネーで決済が行われることで,顧客の行動・買い物データを収 集することが可能になり,これらのデータを活用することで,顧客のロイヤル ティに応じたサービス・プログラムの計圃・実施や優良顧客層の特性の明確化 も可能になる。たとえば,セブン&アイの n a n a c o は POSシステムと連動して おり,顧客の買い物データの収集と分析が可能になっている。また, SEGA の ゲームセンターでも 2 0 0 4 年から電子マネーを導入し,現在ではすべてのゲー ム機器の利用決済を電子マネーにしている。これにより,どのような特性の顧 客 が ど の よ う な 曜 日 ・ 時 間 帯 に ど の よ う な 機 器 を 利 用 し , ど の 程 度 の 金 額 を 使っているのか,を行動データとして把提し,優良顧客層の特性の明確化と彼 らを囲い込むためのサービス改善が可能になっている。個人情報保護法の施行 以来,個々の顧客データを収集することが困難になっていることからも,電子 マネーが使用されることによって生み出される顕客の行動・買い物データは組 織にとって貴重なマーケティング資源となっている。
電子マネーの運営会社の主な発行目的は以上の通りであるが,業界によって 多少の違いがあることから,以下では業界ごとに若干の考察を行いたい。
① 鉄道会社
鉄道会社の場合,人口減少による将来の輸送人口の減少を見据えて,鉄道事
業のサービス向上を図ることで顧客の囲い込みを図ることと,コスト削減が且
‑38‑ 香川大学経済論叢 3 3 4 的となっている。しかし,電子マネー機能を付加し駅以外でも利用可能にした
ことで,手数料収入や地域活性化による輸送人口の増加も期待でぎるように なっている。一方で,硬貨取り扱いの減少といった運営コストの削減効果も出 ている。
② クレジットカード会社
クレジットカード会社は,クレジットカードを使用し難い数百円規模の小額 決済にカードに付帯した電子マネーを使ってもらうことで,クレジットカード の利用を促進することを目的としている。この背景には,貸金業法の改正で上 限金利が引き下げられ,キャッシング事業の収益が減少したことから,ショッ
ピングでの利用拡大を図る必要が生じたことがある。
長期的には,電子マネーの使用に慣れることで,クレジットカード決済に対 する不安やリスクが減少し,クレジットカードの利用者や利用機会の増加も期 待できる。また,クレジットカード会社は電子マネーの裏方としての役割を果
たすことでも,利益を上げることができる。プリペイド型の電子マネーでは,
クレジットカードからチャージする仕組みを作ることで,ポストペイ型の電子 マネーでは,クレジットカードからまとめて後払いする仕組みを作ることで,
利益を上げることがで苔る。このような仕組みには,顧客側にもクレジットカ ード会社を媒介させることでポイントを貯めることができるというメリットが ある。
③ 流通業者
2007 年 4 月に,セプン&アイとイオンという小売業の 2 大 勢 力 が そ れ ぞ れ 独自の電子マネーで電子マネー市場に参入したが,独自の電子マネーにこだ わった背景には,支払いの利便性の向上による来店顧客の増加と買い物行動デ ータの収集・活用がある。
コンビニエンスストアなどでの買い物は小額決済がほとんどであるため,電
子マネー向きである。セブン&アイでは,通常の買い物では 1 0 0 円ごとに 1 ポ
イントを提供し,同時にキャンペーン商品を拡充し,キャンペーン商品の買い
3 3 5
サービス組織の顧客基盤形成・強化ツールとしての電子マネーの
効果に閏する実証的考察 ‑39‑
物では通常ポイントに加えて 10~50 ポイントを提供することで,購入の促進
と客単価の向上を図ることが可能になっている。イオンクレジットは特定日の 買 い 物 に 割 引 特 典 を 提 供 し て い る が , 会 員 の 3 分の 1 程 度 は 現 金 で 支 払 い を 行っているため,まずはこうした顧客層を電子マネーで拾い上げていくことを
(15)
目的としている。
また,電子マネー決済システムと POSシステムとの連動により,顧客の買 い物データを収集・活用することが可能になる。この買い物データを分析する
こ と で , 既 存 顧 客 の 買 い 物 頻 度 や 買 い 物 金 額 の 向 上 を 目 的 と し た ロ イ ヤ ル テ ィ ・ プ ロ グ ラ ム , 商 品 開 発 , よ り 効 率 的 な マ ー チ ャ ン ダ イ ジ ン グ な ど の 計 画・実施や,優良顧客の特性を明確化することで,新顧客獲得のためのマーケ ティングの立案も可能になる。なお, 2007 年 7 月時点で,セブンーイレブン
(16)
の決済総額の 10% が nanaco で支払われるまでになっていることから,分析に 有用なデータが蓄積されている, と考えられる。
なお,小売業界,特にコンビニエンスストア業界ば情報システム産業でもあ るために,両社は既に情報システムを構築しており,電子マネーのコストを軽 減することが可能となっている。電子マネーは小額決済を中心とするため,発 行会社は加盟店から徴収する手数料を低く設定せざるを得ず,料率はユーザー
の購入代金の 2 % 以下となっている。高額決済を主体とするクレジットカード の料率は基本線で 6 % と 言 わ れ る が , こ の 料 率 で も 利 益 は 微 々 た る も の で あ り,クレジットカード会社はキャッシングなどの金利収人で稼ぐ仕糾みとなっ ていた。したがって,電子マネー専架会社の採算は厳しく,発行枚数トップの Edy の運営会社ビットワレットでも,事叢開始から 5 期連続で赤字を出し続け ている。セブン&アイの場合には, n a n a c o の導入で 2007 年 度 は 1 6 0 億円のコ スト i 曽となるが,同社は 2 0 0 6 年から 5 0 0 億円を投じで情報システムの更新を 行っており, nanaco へ の 投 資 も そ の 一 環 と し て 吸 収 す る こ と が 可 能 と な っ て
( 1 5 ) 「 セ ブ ン & ア イ , イ オ ン が 参 入 電 子 マ ネ ー 乱 戦 最後発組が大攻勢」,『週刊東洋経 済 』 , 2 0 0 7 年 4 月 2 8 日ー 5 月 5 日号, 3 3 頁 。
( 1 6 ) WBS ニュース, 2007 年 7 月 1 4 日 。
‑40‑ 香川大学経済論叢 3 3 6
(17)
いる。イオンの場合には,イオンクレジットのものを一部活用してシステム構
( 1 8 )
築を行い,初期投資の軽減を図っている。
④ 電子マネー専業会社
買い物系の Edy は手数料収人が目的となっている。削述のように,電子マ ネー決済システムの構築と維持には巨額のコストを必要とするが,鉄道会杜は 電子マネー事業が赤字でも,付帯する鉄道収入が伸びればカバーできるし,流 通業者も売上げが伸びればカバーできる。しかし, Edy のような電子マネー専 業会社はそのようなコストを吸収する仕組みを持たないために,加盟店を増や
し,そこから受ける手数料で稼ぐしかなくなっている。
⑤ 携帯電話会社
携帝電話会社の場合には,携帯端末の利用者の拡大が目的となっている。ま た,携帯電話は ICカードよりも高機能であり,買い物履歴の閲覧やチャージ が容易であるため,将来的には軍子マネーの中心となる可能性を秘めている。
(4) 顧客にとっての電子マネー決済のメリットとデメリット
顧客にとっての電子マネー決済のメリットとしては,支払い時間を短縮でき る,小銭を持ち歩かなくても済む,といった支払いの利便性だけでなく,現金 と違ってポイントや割引が提供されるということがある。さらに,ポイントを 集約して,電子マネーに変えることで,買い物にも利用でぎるようになってい
るということがある。
(19)
顧客の囲い込みを目的として,航空会社はマイレージを,クレジットカード
(20)
会社や小売業はポイントを提供しているが,その市場規模は巨大になってい る。野村総合研究所によると,日本における 2 0 0 5 年度のマイレージ・ポイン ( 1 7 ) セ ブ ン & ア イ ・ ホ ー ル デ イ ン グ ス の 2 0 0 7 年 8 月 中 間 期 の 連 結 営 業 利 益 は , 従 来 予 測 では前年同月比 4 % 増の 1 , 4 8 0 億円であったが, 2 % 増の 1 , 4 5 0 億 円 程 度 に と ど ま っ た。この背景には,電子マネーの投人で先行費用が増え収益が}王迫されたことがある(日 経新間, 2 0 0 7 年 1 0 月 4 日号)。
( 1 8 ) 『週刊東洋経済』, 2007 年 4 月 2 8 日ー 5 月 5 日号, 3 3 頁 。
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サービス糾織の顧客基盤形成・強化ツールとしての電子マネーの
効果に関する実証的考察 ‑41‑
トの年間発行頷は 4 , 5 0 0 億円を超えており, 2 0 1 1 年 度 に は 5 , 5 0 0 億 円 超 に な
( 2 1 )
る , と予測されている。現在,これらのマイレージやポイントを相互に交換で きる企業連携が形成・拡大されている。目的のポイントに変換する交換経路は 極めて複雑であるが,保有ポイントと希望交換先を入力すれば,鉄道路線探索 のように最短ルートを提示してくれるサイトも登場しており,交換は比較的容 易になってきている。この変換によってポイントやマイレージを電子マネーに 変えることもでき,買い物での利用が可能になっている。
しかし,このようなマイレージやポイントの相互交換は,ポイント・サービ スの目的である既存顕客の囲い込みには逆効果のようにも見える
cそれにもか かわらず,多くの企業が連携を進めているのは,貯めたマイレージやポイント
( 1 9 ) マイレージの歴史は, 1 9 8 1 年に米国のアメリカン航空が搭乗回数に応じて航空券と引 き換える制度を開始したことに始まる。日本では, 1 9 8 3 年に JAL が米国路線限定で導入 し , 1 9 9 3 年に JAL と ANA がともに国際線全体に拡大している。 1 9 9 5 年 か ら ホ テ ル や クレジットカード会社との提携が行われ, 1 9 9 7 年には両者とも国内線に導入している。
( 2 0 ) マイレージやポイント・サービスに要する費用はサービス・デリバリー構造によって 大 き く 異 な る こ と か ら , 導 入 が 困 難 な サ ー ビ ス も あ る と 考 え ら れ る 。 導 入 が 容 易 な の は,航空会社のように固定費比率が高く,限界費用が低い,といったサービス・デリバ リー構造を持つサービス紺織である。航空会社の場合,空席は在庫でなく,シ資源の浪費 であるために,可能な限り空席を無くすことが必要とされる。また,搭乗客が一人増え たことに伴う総費用の増加分はわずかなものであるために,蓄積したマイレージとの交 換に空席を埋める無料航空券を提供したとしても,わずかな費用負担(飲食費程度)で 済むことになる。一方,固定比率が低く,限界費用が高いようなサービス・デリバリー 構造を持つサービス組織,たとえば人件費が固定費化されていない労働集約的なサービ ス組織の場合には,ポイントとの交換によるサービス提供は高い費用をもたらすことに なり,費用対効呆の面でポイント・サービスは有効とは言えないであろう。
なお,航空会社の場合,マイレージ提供加盟店が利用客にマイル提供を行った場合,
提供マイル数 X マイルレート (2 4円)の現金が入ることになる。また,その支払い
が航空会社のクレジソトカードで行われた場合,その支払いにもマイルが付与されるた め,提供マイル数 X マイルレートの現金も入ることになる。さらに,消費者がポイント をマイルに交換した場合,そのポイント発行企業(マイレージパートナー)と航空会社 の間ではマイルが売買されたことになるために,航空会社にはポイント数 X 交換レート の現金が入ることになる。このような仕組みのために,航空会社にとってはマイレージ 制度の導入・抗大と交換のために企業連携の促進は収益性の向上につながっている。
( 2 1 ) 「ポイントカード 大氾濫」,『週刊東洋経済』, 2007 年 1 月 20 日号, 42 頁 。
マイレージやポイントはもともと顧客の囲い込みを目的に,企業の広告費や販売促進 費の一部を消費者に還元するかたちで発行されているが,年間の広告費は約 6 兆円,販 売促進費は約 1 3 兆円と言われるため,これらが今後ますます消費者に還元されるよう
になると,この市場規模は今後ますます拡大する可能性がある ( 4 5 頁 ) 。
‑42‑ 香川大学経済論叢 338 の使い道が多様で魅力的であるほど,既存顧客の囲い込みだけでなく,既存顧 客の優良化,新規顧客の獲得などにも効果をもたらすためである。なお,既存 顧客の優良化に対する効果とは,サービスの利用金額や頻度で顧客をランク分 けし,ランクに応じてポイント率を裔めることで,ポイントを貯めやすくな り , しかも使い道が多様で魅力的であるために,特定のサービスを集中的に利 用する傾向が高まるということである。逆に,貯めたマイレージやポイントが このように交換で合ないことの問題を,ネット上でポイント交換サイト「G ポ イント」を運営するジー・プランの鈴木博之経管管理部長は「ポイントが景品
⑫ 2)