夜回り先生の子どもに対するかかわり方に関する一考察
学校教育専攻 幼年発達支援コース 鈴 木 美 香
1. 研究の目的と背景
学校は,本来子どもたちの健やかな成長 を願い,教育を行うはずの場所である。し かし,現在その学校を始めとして,子ども たちを取り巻く社会で問題が多発し,深刻 化している。その問題はナイフを使った殺 傷,暴力,恐喝,万引きから強盗,いじめ,
不登校,酒やタバコ,覚せい剤や売春など,
多岐にわたる上,難問ばかりである。荒れ ゆく子どもたちを前にして 我々大人はど のように対応していけばよいのであろうか。
学校という場所で,子どもにとって最も 身近におり,影響を与える大人の存在は教 師である。教師は,もっと子どもたちの心 の声を聞き,子どもたちのことを理解し,
寄り添っていくべきであろう。そうしてい くことによって,教師と子どもたちの聞に 信頼関係が生まれ,それによって救われる 子どもが増え,事態が改善されていくので はないかと考えられる。
しかし,このように教師と子どもとの聞 に断絶が広がりつつある時代で,問題行動 を起こす子どもたちと精力的にかかわり続 け,子どもたちの信頼を得ている人物がい る。それが,
r
夜回り先生Jこと水谷修氏で、ある。水谷氏はどのような考え方を持ち,
どのように子どもたちに接しているのであ ろうか。
本研究では,教師が子どもたちに対して
指導教員 田 村 隆 宏
どのようにかかわっていけばよいのかを探 るため,水谷氏の子どもに対するかかわり 方を分析・考察し 教師が子どもたちと信 頼関係を築くための,子どもたちへのかか わり方のヒントを提案していくことを目的 とする。
2 . 研究手順
水谷氏は著書を多く出しており,そこに は水谷氏の子どもたちとのかかわりやその 際に感じたこと,考えたこと,想いなどが 多く記されている。本研究では,数多くあ る水谷氏の著書の中でも, wさよならが,い えなくて一助けて,哀しみから~ (2000)に 着目した。この本には,水谷氏と薬物依存 症で苦しむ「生徒ジュンj との手紙や日記 を通してのやりとりが描かれている。
本研究では,この本に書かれている水谷 氏のジュンに対するかかわり方を分析する ことにより,教師と子どもが信頼関係を築 くために必要な視点や,教師が子どもに対 して実際どのようにかかわっていけばよい のかということについての考察を行った。
さらに,水谷氏の講演内容・発言が録画さ れた
DVD
や映像資料,実際の講演での発 言内容,その他の著書などからも,重要で あると考えられる水谷氏の考え方・接し方 を抜き出し,併せて考察を行うことによっ て,r
教師の子どもに対するかかわり方に関‑178 ‑
する重要なポイント」を明らかにした。
3 .
教師の子どもに対するかかわり方に関 する重要なポイント(認知面)水谷氏のジュンに対するかかわり方の分 析によってわかったことを整理・検討して いくことにより 「教師の子どもに対するか かわり方に関する重要なポイントJを導き 出した。さらに,それをどのような考えを 持って子どもたちに接するべきであるのか という「認知面Jのポイントと,実際にど のような行動を取るべきであるかという
「行動面」のポイントの 2つに分類した。
そのうち,
r
認知面Jのポイントとして,以下の
8
つのことが明らかになった。( 1
)子どもの想いを受けとめる (2 )子どもの可能性を信じる (3 )自分の意志を貫き通す( 4 )
自分の言動に責任を持つ( 5 )
見守る (6 )共に生きる( 7
)子どもの未来を守る行動の選択と 決定(8 )長いスパンで子どもを見る
4 .
教師の子どもに対するかかわり方に関 する重要なポイント(行動面)前項で述べた「教師の子どもに対するか かわり方に関する重要なポイント」のうち,
「行動面」のポイントとして,以下の 7つ のことカT明らかになった。
( 1 )子どもの想いを表現して返す (2 )明るい未来を提示する
( 3)
r
ありがとう」と「ごめんなさいJ を素直に伝える( 4 )
ほめる( 5
)ありのままの自分で接する( 6
)行動理由を必要に応じて説明する( 7
)子どもの本当の幸せ追求を目標に 行動5 .
まとめ水谷氏は常に以上のポイントを踏まえた 上で子どもたちに接し,信頼関係を築いて いることが明らかになった。
水谷氏の著書や講演活動の中で,必ずと 言っていいほど何度も伝えられている,
r
子 どもはみんな花の種Jという言葉がある。この言葉を通して,水谷氏は子どもの可能 性を信じて我々大人たちは子どもたちをあ たたかく包み込むような社会を作っていこ うと呼びかけている。
これまで,水谷氏は徹底的に子どもの側 に立つことで,子どもたちとの信頼関係を 築いてきた。しかし 水谷氏は我々大人た ちに対して,自分のような活動をしてほし いとは一切語っていない。水谷氏は自身の 活動を通して,
r
教師Jという立場の枠を超 え,全ての大人たちに対して,身近に存在 する,直接かかわり合うことのできる子ど もたちに目を向け,その子どもたちを愛し,側にいて見守り続けることが重要であると 伝えようとしているのであろう。
水谷氏は子どもたちにとって権力や立場 は関係なく,たった一人でもいいから,自 分のことを受け入れ,寄り添いながら共に 生きてくれる大人の存在が必要なのだと伝 えたかったに違いない。そして,我々大人 たちに対して,子どもたちが自分の本当の 幸せを目指して前向きにいきいきと生きて いくことができる社会を目指そうと訴えて いるのである。
ハ汐
ウt
‑i