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九州大学学術情報リポジトリ

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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

口腔扁平上皮癌 の発生、 増殖および分化の分子機 構に関する研究 : ΔNp63の関わりについて

松原, 良太

Faculty of Dental Science, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/19959

出版情報:Kyushu University, 2010, 博士(歯学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

口腔扁平上皮癌の発生、増殖および分化の分子機構に関する研究

ΔNp63 の関わりについて-

A study on molecular mechanisms of the tumorigenesis, proliferation, and differentiation of oral squamous cell carcinoma

- Possible involvement of ΔNp63 -

2011 年

九州大学大学院歯学府口腔顎顔面病態学講座 顎顔面腫瘍制御学分野

松原 良太

指導教員

九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座 顎顔面腫瘍制御学分野

中村 誠司 教授

(3)

- 1 -

本研究の一部は下記の学術雑誌に投稿中である。

Increased ΔNp63 expression is predictive of malignant transformation in oral epithelial dysplasia and poor prognosis in oral squamous cell carcinoma

Ryota Matsubara, Shintaro Kawano, Takahiro Kiyosue, Yuichi Goto, Mitsuhiro Hirano Takeshi Toyoshima, Ryoji Kitamura, Kazunari Oobu, and Seiji Nakamura

Submitted to

Histopathology

(4)

- 2 -

略語一覧

ANOVA: analysis of variance

BMI1: B-cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1 BrdU: 5-bromo-2-deoxyuridine

CDK: cyclin dependent kinase(サイクリン依存性キナーゼ)

cDNA: complementary DNA CK: cytokeratin

CSC: cancer stem cell(癌幹細胞)

DEPC: dietyl pyrocarbonate

DMEM: Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium DTT: dithiothreitol

EMT: epithelial-mesenchymal transition(上皮-間葉転換)

GAPDH: glycelaldehyde-3-phosphate dehydrogenase HEK293: human embryonic kidney 293

HRP: horse radish peroxidase

HYP: epithelial hyperplasia(上皮性過形成)

MLD: mild dysplasia(軽度異形成)

MOD: moderate dysplasia(中等度異形成)

NOE: normal oral epithelium(正常口腔粘膜上皮)

OL: oral leukoplakia(口腔白板症)

OSCC: oral squamous cell carcinoma(口腔扁平上皮癌)

PBS: phosphate-buffered saline PI: propidium iodide

PMSF: phenylmethylsulfonyl fluoride PVDF: poly vinilidene difluoride p75NTR: p75 neurotrophin receptor

RT-PCR: reverse transcriptase-polymerase chain reaction

SDS-PAGE: sodium dodecyl sulfate-polyacrylamide gel electrophoresis SED: severe dysplasia(重度異形成)

siRNA: small interfering RNA SP: side population

TA cell: transit-amplifying cell(TA細胞)

TAD: transactivation domain(転写活性領域)

(5)

- 3 -

目 次

要 旨

緒 言

材料および方法

結 果

研究 1

口腔白板症および口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の免疫組織化学的 検討

1-1. 正常組織および口腔白板症の生検材料におけるΔNp63の発現

1-2. 口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の発現

1-3. 口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の発現と臨床所見との関連

研究 2

口腔扁平上皮癌細胞株におけるΔNp63の発現および機能解析に関する検討

2-1. 口腔扁平上皮癌細胞株におけるΔNp63の発現の検討

2-2. ΔNp63 siRNA導入が口腔扁平上皮癌細胞株の分化に与える影響

2-3. ΔNp63 siRNA導入が口腔扁平上皮癌細胞株の増殖に与える影響

2-4. ΔNp63 siRNA導入が口腔扁平上皮癌細胞株の細胞形態および

細胞遊走能に与える影響

5

8

12

23

23 27 30

38 33

42 35

(6)

- 4 -

考 察

謝 辞

参考文献

45

51

52

(7)

- 5 -

要 旨

悪性腫瘍は多様な細胞によって構成されているが、その中に正常組織幹細胞と 同様に自己複製能と多分化能とを有するごく尐数の細胞集団の存在が明らかに されている。その細胞集団は癌幹細胞(cancer stem cell: CSC)と呼ばれ、この細 胞が異なった増殖能や分化段階にある細胞を生み出すことによって、不均一な腫 瘍組織を形成している。またCSCは、正常組織幹細胞が形質転換することによ って発生すると考えられており、近年、組織幹細胞特異的マーカーを用いて様々 な癌組織において分離、同定されつつある。しかしながら、口腔扁平上皮癌(oral

squamous cell carcinoma: OSCC)においてはその存在が示唆されているものの、同

定までには至っていない。そこで、本研究では正常口腔粘膜の上皮幹細胞マーカ

ーであるΔNp63に着目し、OSCCの発生や分化および増殖にどのように関与して

いるかについて検討を行った。

以下に本研究で得られた結果をまとめた。

1. 口腔白板症および口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の免疫組織化学 的検討

正常口腔粘膜上皮(normal oral epithelium: NOE)、口腔白板症(oral leukoplakia:

OL)、およびOSCCの生検材料においてΔNp63とともに、細胞増殖活性のマー カーであるKi-67、上皮基底細胞のマーカーであるcytokeratin(CK)5およびCK14 の発現を免疫組織化学的に検索した。NOEでは、ΔNp63は上皮基底層および傍 基底層に、Ki-67は主に傍基底層に、そしてCK5およびCK14は上皮基底層に発 現が認められた。OLにおいては、軽度異形成(mild dysplasia: MLD)では上皮基 底層から基底上層にかけて、中等度異形成(moderate dysplasia: MOD)、および重 度異形成(severe dysplasia: SED)では上皮のほぼ全層に発現を認め、これらの陽

(8)

- 6 -

性率は上皮性異形成の程度が重度になるにつれて増加していた。さらに、OLの 癌化症例と非癌化症例のΔNp63の陽性率を比較すると、癌化したOLの方が非癌 化症例よりも有意に高かった。高分化型OSCCにおいて、ΔNp63は癌胞巣の最外 層から2、3層までに限局して発現していたが、中および低分化型OSCCではほ ぼすべての癌細胞に発現を認めた。Ki-67、CK5、およびCK14はΔNp63と同様 の発現様式を呈していた。また、ΔNp63、Ki-67、およびCK14の各陽性率と臨床 病理組織学的所見との関連を検討したところ、分化度においては低分化なOSCC ほどこれらの陽性率が有意に高くなっていた。また、頸部リンパ節および遠隔転 移の発生頻度は、ΔNp63高発現群(>73.8%)の方が低発現群(≦73.8%)よりも 有意に高かった。さらに、疾患特異的累積生存率ではΔNp63低発現群と比較し て高発現群で有意に低く、予後が不良であった。

2. 口腔扁平上皮癌細胞株におけるΔNp63の発現および機能解析に関する検討 OSCC細胞株(HSC-2、HSC-3、SQUU-A、SQUU-B、SAS)を用いてΔNp63、

CK5、およびCK14の発現を検討したところ、ΔNp63の発現量が多い細胞株で

CK5とCK14は強く発現しており、反対にΔNp63の発現量が尐ない細胞株では それらの発現は弱かった。またΔNp63を発現していないSQUU-B細胞において は、間葉系細胞のマーカーであるvimentinの発現が認められた。SAS細胞につい

てはΔNp63とvimentinはともに発現していた。次に、OSCC細胞株の分化およ

び増殖おけるΔNp63の機能を解明するため、OSCC細胞株にΔNp63 siRNAを導 入し、その効果について検討した。その結果、ΔNp63のノックダウンによりCK5、

CK14、未分化マーカーであるp75NTRBMI1、頭頸部扁平上皮癌のCSCの細胞 表面マーカーとされているCD44の発現量は有意に減尐した。また、ΔNp63 siRNA 導入細胞では細胞増殖活性が抑制され、細胞周期を抑制するサイクリン依存性キ ナーゼ(cyclin dependent kinase: CDK)インヒビターであるp27kip1の発現量が増

(9)

- 7 -

加していた。さらに、ΔNp63 siRNA導入細胞においてその形態が線維芽細胞様に

変化し、wound healing assayにおいて細胞の遊走能が亢進していた。また、ΔNp63

siRNA導入細胞ではvimentinの発現量の増加を認めた。

本研究で得られた結果より、上皮性異形成の程度が重度になるにつれ、ΔNp63 の発現が高くなっていたこと、またその発現が高い上皮性異形成はOSCCへと癌 化しやすいことから、ΔNp63の発現がOSCCの発生に関与していることが示唆さ れた。同時に、ΔNp63はOSCCへの癌化やOSCCにおける予後の有用な予測因 子となり得ることも示された。また、OSCC細胞株におけるΔNp63のノックダウ ンにより上皮の未分化マーカーの発現量の減尐および細胞増殖活性の低下が認 められたことから、ΔNp63はOSCC細胞における分化および増殖に関与している と考えられた。

さらに、ΔNp63 siRNAを導入したOSCC細胞において、上皮系細胞マーカーの

発現量の減尐、間葉系マーカーの発現量の増加、細胞増殖活性の低下、細胞遊走 能の亢進、紡錘形への細胞形態の変化が認められたことから、ΔNp63の発現低下 により上皮-間葉転換(epithelial-mesenchymal transition: EMT)が誘導される可能 性が示された。近年、EMTを獲得した細胞とCSCとでは遺伝子の発現パターン が極めて類似しているとの報告もあることから、ΔNp63はCSCの同定に有用な マーカーである可能性が推察された。

(10)

- 8 -

緒 言

悪性腫瘍は、異なった増殖能や分化段階にある不均一な細胞集団によって構成 されていることが知られている。この腫瘍組織の不均一性(heterogeneity)を生 じさせる要因について、これまでは「単一細胞集団において確率的に遺伝子異常 やエピジェネティックな変異を蓄積し、その結果、高度な細胞増殖能や細胞死抵 抗能、浸潤・転移能を有する悪性度の高い癌細胞と低い癌細胞が混在する」とい うクローン進化(clonal evolution)モデルによって説明されてきた(1, 2)。この モデルでは、変異の蓄積により高度に悪性化した一部の癌細胞が組織に浸潤し、

所属リンパ節や遠隔臓器に転移する能力を持っているということを示唆してい る。しかしながら、最近の研究において、同一患者からの原発巣と転移巣におけ る遺伝子の変異を比較しても著しい相違がみられないという報告や、carcinoma in situの時点で転移がすでに始まっているという報告もあり、このモデルで癌細胞 の特性のすべてを論理的に説明することは困難である(3)。

近年、正常組織と同様に癌組織中にもごく尐数からなる幹細胞様の性質を持っ た細胞集団が存在していることが示唆されている(4)。これらの細胞は自己複製 により自分自身と同じ性質を持つ細胞を維持しながら(自己複製能)、異なる多 系列の成熟細胞へと分化する能力(多分化能)を有しており、その結果癌組織内 に不均一性をもたらすと考えられている。この概念を癌幹細胞(cancer stem cell:

CSC)仮説といい、急性骨髄性白血病におけるCSCが最初に同定されて以来、

乳癌、消化器系癌、脳腫瘍などの固形癌においてもこれらの存在が明らかになっ てきた(5-17)。また、CSCは抗癌剤や放射線治療に抵抗性を示すことが知られ ている。よって、これらの治療で腫瘍が縮小しても残存している腫瘍内にはCSC が数多く占めることになり、その結果腫瘍の再発を来たすものと考えられている

(11)

- 9 -

(15-17)。これらのことから、CSCは癌治療の重要な標的細胞の一つとして捉え

られており、その同定法や性状解析ならびにCSCを標的とした分子標的治療法 の開発が精力的に行われている。しかしながら、CSCがどのようにして発生する か、その起源についてはまだ統一した見解が得られていない(18-20)。現在のと ころ、CSCは正常組織内の組織幹細胞や前駆細胞から形質転換することにより発 生するという説が有力視されており、組織幹細胞に特異的な分子マーカーを用い たCSCの同定が様々な癌組織でなされている(21, 22)。これまでの研究で、脳 腫瘍や大腸癌、肝臓癌におけるCSCがCD133+細胞群の中に、そして乳癌では

CD44+/CD24細胞群の中に存在していることが明らかになってきた(7-10, 12, 13,

15-17)。また、細胞膜浸透性の DNA蛍光色素であるHoechst 33342に対し高い排

出能を持つside population(SP)細胞が、抗癌剤や放射線治療に抵抗性を示すと いうCSCの性質を有していることが報告されている(11, 14)。口腔扁平上皮癌

(oral squamous cell carcinoma: OSCC)においては、その存在が示唆されているも のの分離、同定までには至っていない(23)。Pellegrini(2001)らは、正常口腔 粘膜の上皮幹細胞マーカーとしてp63の有用性を示しており、前述のようにCSC が正常組織内の組織幹細胞から発生するという仮説を考慮すると、p63がOSCC におけるCSCを同定する分子マーカーとして有用である可能性が推察される(24, 25)。

p63は癌抑制遺伝子p53のホモログであり、転写開始部位(プロモーター)の 違いにより、N末端にある転写活性領域(transactivation domain; TAD)を有する TAp63とTADが欠損したΔNp63の2つのアイソフォームに大別される(24, 26-28)。 さらに、これらはC末端での3種類の選択的スプライシングにより6つのスプラ イシングバリアント(TAp63α, β, γ, ΔNp63α, β, γ)が生成されることが知られてい る(26, 29)。TAp63はp53に構造的に類似しているだけでなく機能的にも類似性

(12)

- 10 -

があり、Crook(2000)らはTAp63がp53の標的遺伝子の転写を活性化すること

により、DNAが損傷した細胞の増殖活性を抑制し、アポトーシスを誘導するこ とを見出している(30)。一方、ΔNp63はTAp63やp53にドミナントネガティブ に作用していることから、oncoproteinとして機能している可能性が示されている

(26, 31-40)。

Koster(2004)らは、重層扁平上皮の発生過程においてΔNp63が上皮基底層に

発現し、基底細胞の増殖および重層化を促進し、また、重層化により生じた有棘 層や顆粒層の分化した細胞ではΔNp63の発現が消失することを見出している(41, 42)。これらのことから、ΔNp63は重層扁平上皮の形態形成に重要な役割を担っ ていることが推察される。さらに、ΔNp63は上皮の形態形成だけではなく、腫瘍 形成にも関与している可能性があり、食道、喉頭、および肺の扁平上皮癌におい て過剰発現していることが示されている(34, 43-47)。OSCCにおいてもΔNp63 が過剰発現していることが示されているものの、その細胞生物学的意義について は不明である。

OSCCの前癌病変として口腔白板症(oral leukoplakia: OL)があり、「口腔粘膜 に生じた摩擦によって除去できない白色の板状あるいは斑状の角化性病変で、臨 床的あるいは病理組織学的に他のいかなる疾患にも分類されないような白斑」と 定義されている。OLはその大部分が上皮性異形成を伴わないが、上皮性異形成 を伴うものは癌化しやすいと考えられている(48)。また、上皮性異形成はその 程度に応じて軽度異形成(mild dysplasia: MLD)、中等度異形成(moderate dysplasia:

MOD)、重度異形成(severe dysplasia: SED)に分類されており、Burkhardt(1985) らの報告ではMLDの5%、SEDの43%に癌化が認められ、異形成の程度が重度 であるものほどOSCCに進展する可能性が高いことが示されている(49)。それ ゆえ、OLがOSCCへ癌化する過程を観察することは、OSCCの形成メカニズム

(13)

- 11 - の解明に大きく貢献できるものと思われる。

そこで、本研究ではまずOLおよびOSCCの生検材料におけるΔNp63の発現 を免疫組織化学的に解析し、その発現と臨床病理学的所見との関連性を明らかに するとともに、ΔNp63がOLにおけるOSCCへの癌化やOSCCの組織学的悪性度 および予後の指標に有用であるかを検討した。さらに、OSCCの分化および増殖

におけるΔNp63の機能を解明するためにOSCC細胞株にΔNp63 siRNAを導入し、

その効果について検討を行った。

(14)

- 12 -

材料および方法

1. 対象患者

対象は、2004年1月から2008年12月に九州大学病院顎口腔外科を受診し、臨 床的にOLと診断された112例(男性:72例、女性:40例、平均年齢:61.9±13.6 歳〈12~91歳〉)および病理組織学的にOSCCと診断された81例(男性:58例、

女性:23例、平均年齢:62.6±15.1歳〈19~88歳〉)である。これらの生検材料 を採取し、直ちに4%パラホルムアルデヒドに24~48時間浸漬固定後、パラフィ ン包埋を行った。ミクロトーム(Leica Microsystems, Japan)にて5 μmの切片を 作製し、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色および免疫組織化学的染色に用 いた。また、対照群として正常口腔粘膜上皮(normal oral epithelium: NOE)10例 を用いた。OL 112例およびOSCC 81例の内訳を表1および表2にそれぞれ示す。

1 OL患者112例の内訳

症例数(%)

性別

男性 女性 発症部位

歯肉 舌 口蓋

頬粘膜

口唇 上皮性異形成の程度

過形成 MLD

MOD SED

72

40

48 41 12 10 1

76 22 8 6

(64.3)

(35.7)

(42.9)

(36.6)

(10.7)

(8.9)

(0.9)

(67.9)

(19.6)

(7.1)

(5.4)

(15)

- 13 -

58 23

42 27 9 3

8 15 58

15 28 12 26

62 14 5

2 17 43 15 4 表2 OSCC患者81例の内訳

性別

男性 女性 原発部位

歯肉 口底

頬粘膜 臨床発育様式

表在型 外向型 内向型 臨床病期

Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 組織学的悪性度分類

Grade分類(WHO分類)

grade 1 grade 2

grade 3 浸潤様式による分類

(山本‐小浜の分類)

grade 1 grade 2 grade 3 grade 4C

grade 4D 症例数(%)

(71.6)

(28.4)

(51.9)

(33.3)

(11.1) (3.7)

(9.9)

(18.5)

(71.6)

(18.5)

(34.6)

(14.8)

(32.1)

(76.5)

(17.3) (6.2)

(2.5)

(21.0)

(53.1)

(18.5) (4.9)

(16)

- 14 - 2. 生検材料の病理組織学的診断

OLはWHO診断基準に従って、上皮性異形成を伴わないもの(上皮性過形成;

hyperplasia: HYP)と伴うものに分類した。さらに、上皮性異形成を伴うものはそ

の程度に応じて、MLD、MOD、SEDに分類した(50)。OSCCにおいては組織学 的悪性度分類として、grade分類(WHO)と山本・小浜の分類(YK分類)を用 いた(51, 52)。grade分類は腫瘍細胞の分化度に応じてgrade 1(高分化型)、grade 2(中分化型)、grade 3(低分化型)に分け、YK分類は腫瘍宿主境界部における 浸潤様式に応じてgrade 1、2、3、4C、4Dに分類した。

YK分類の基準を示す: grade 1:腫瘍と宿主の境界線が明瞭である。grade 2: 境界線にやや乱れがある。grade 3:境界線は不明瞭で大小の癌胞巣が散在してい

る。grade 4C:境界線は不明瞭で小さな癌胞巣が索状に浸潤している。grade 4D:

境界線は不明瞭で癌は胞巣を作らず、び漫性に浸潤している。

3. 免疫組織化学的染色法

作製したパラフィン切片をキシレンに20分間、さらに、100%、95%、85%、

75%エタノールに各5分間浸漬させ、脱パラフィン処理および水和処理を行い、

Target Retrieval Solution (DTRS; code S1700; Dako, Denmark) を用いて、抗原の賦活 化処理(121C、5分)を行った。切片をphosphate-buffered saline (PBS)にて洗浄 後、内因性ペルオキシダーゼ除去のため、1.0%過酸化水素水を室温で30分反応 させ、その後、抗体の非特異的吸着を防ぐために10%ヤギ正常血清(ヒストファ インブロッキング試薬Ⅱ; Nichirei Bioscience, Japan)を室温で1時間反応させた。

一次抗体は室温で3時間反応させた。使用した一次抗体を(表3)に示す。本研 究では、細胞増殖活性マーカーとして抗Ki-67抗体を、上皮基底細胞のマーカー

として抗cytokeratin(CK)5抗体および抗CK14抗体を使用した。二次抗体には

(17)

- 15 -

ペルオキシダーゼ標識IgGポリクローナル抗体(Nichirei Bioscience)を用い、室 温で1時間反応させた。PBSにて20分間洗浄後、

3, 3’-diaminobenzidine・4HCl (DAB substrate kit; Nichirei Bioscience)にて可視化し、

さらに、ヘマトキシリン(Mayer’s Hematoxylin Solution; Wako, Japan)を用いて対 比染色を行った。その後、75%、85%、95%、100%エタノールに各5分間浸漬 させ、脱水処理を行い、Mount-Quick(Daido Sangyo, Japan)を用いて封入した。

陰性対照として一次抗体の代わりにPBSを用いた。

また、切片より0.5 mm2の範囲を無作為に3か所選択して、陽性細胞数を計測 し、それらを全上皮系細胞数で除したものを陽性率として算出した。ΔNp63の陽 性率と臨床および病理組織学的所見との関連を統計学的に解析し、さらに、OSCC においてはΔNp63の陽性率が全症例の平均値以上の患者群を高発現群、平均値 以下の患者群を低発現群とし、臨床所見および予後との関連を統計学的に検討し た。

表3 免疫組織化学的染色およびwestern blottingに使用した一次抗体

抗体(clone名, 製造会社) 用途 希釈倍率

1: 500 monoclonal mouse anti-human Vimentin antibody (clone V9, Sigma-Aldrich) WB

1: 1000 monoclonal mouse anti-human β-actin antibody (clone AC-15, Sigma-Aldrich) WB

1: 1000 WB

1: 300 IHC

monoclonal mouse anti-human CK14 antibody (clone LL002, Chemicon)

1: 1000 WB

1: 100 monoclonal rabbit anti-human CK5 antibody (clone EP1601Y, Epitomics) IHC

1: 1000 WB

1: 100 IHC

monoclonal mouse anti-human Ki-67 antibody (clone MIB-1, Dako Cytomation)

1: 1000 WB

1: 200 IHC

monoclonal mouse anti-human p63 antibody (clone 4A4, Dako Cytomation)

1: 1000 WB

monoclonal rabbit anti-human p27(kip1) antibody (clone Y236, Millipore)

IHC: 免疫組織化学的染色 WB: western blotting

(18)

- 16 -

4. 細胞培養

本研究では、口腔扁平上皮癌細胞株であるHSC-2(口底癌由来)、HSC-3(舌 癌由来)、SQUU-A(舌癌由来; 非転移株)、SQUU-B(舌癌由来; 高転移株)、SAS

(低分化型舌癌由来)細胞およびヒト胎児腎細胞をアデノウィルスのE1遺伝子 により形質転換して樹立された細胞株であるhuman embryonic kidney(HEK)293 細胞(間葉系細胞)を用いた。培地には、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium (DMEM)/F-12(Sigma-Aldrich, USA)に10% fetal bovine serum(FBS)

(Sigma-Aldrich)、100 units/mlペニシリン、および100 units/mlストレプトマイシ ン(P/S)を添加したものを用い、37C、5%CO2存在下で細胞培養を行った。

5. RNAの抽出およびcomplementary DNA (cDNA) の合成

RNA抽出はacid guanidium-phenol-cloroform 法を用いた。まず、培養皿中の細 胞にTRIzol® (Invitrogen, USA)を1.0 ml加え、セルスクレーパーにて破砕した。

その後、これらに0.2 mlのクロロホルム(Nacalai tesque, Japan)を加えて撹拌し、

4C、14,000 rpmで15分間遠心分離を行った後、RNAを含む水層を採取した。

これに1 mlのイソプロパノール(Nacalai tesque)を加えて撹拌後、4C、14,000 rpm で10分間遠心分離し、上清の除去後に得られたRNAペレットを75%エタノー ル(Nacalai tesque)にて洗浄した。さらに、4C、10,000 rpmで5分間遠心分離 し、再沈殿させたペレットを乾燥させ、50 lの0.1%ジエチルピロカーボネート

(dietyl pyrocarbonate: DEPC)処理水(Nacalai tesque)に溶解した。その後、吸光 度計(NANO DROP 1000; Thermo Scientific, USA)にてtotal RNAの濃度を測定し た。

cDNAの合成には、DEPC処理水に約2.0 gのtotal RNA、25 units/lの

recombinant RNase inhibitor(Nacalai tesque)を1.0 l、100 mM Tris-HCl(pH 8.8)、

(19)

- 17 -

500 mM塩化カリウムおよび0.8%Nonidet P40を含む10×Taq DNA Polymerase Bufferを2.0 l、25 mM塩化マグネシウム溶液(以上、Bio Basic, Canada)を4.0 l、

2.0 mM dNTPmix(Toyobo, Japan)を2.0 l、50 m Random Hexamersを1.0 l、50 units/l MuLV Reverse Transcriptase(以上、Roche Diagnostics, Swiss)を1.0 l加え

て合計20 lとし、42Cで15分間インキュベートした。その後、99 ˚C で5分間

加温して酵素を失活させ、5Cで5分間冷却し、これをmRNAの発現解析に用い た。

6. Reverse transcriptaseRT- polymerase chain reactionPCR)法およびreal-time PCR 法によるmRNAの発現解析

RT-PCRは滅菌水にtemplate DNAを100 ng、10×Taq DNA Polymerase Bufferを 1.25 l、25 mM塩化マグネシウム溶液を1.0 l、5 units/l Taq DNA polymeraseを 0.1 l(以上、Bio Basic)2.0 mM dNTPmix(Toyobo)を0.5 l、20 pMセンスおよ びアンチセンスプライマーをそれぞれ0.5 l加えて全反応量を13.5 lとした。反 応条件は、熱変性は94Cで1サイクル目が3分、2サイクル目以降は30秒間で 行い、伸長反応は72C、30秒間とした。

real-time PCRはBrilliant® ⅡSYBR® Green QPCR Master Mix(Stratagene, USA) を用いて行った。滅菌水にMaster Mix を10 l、template DNAを10 ng、20 pMセ ンスおよびアンチセンスプライマーをそれぞれ0.5 l加え、全反応量を20.0 l とした。反応条件は、熱変性は95Cで1サイクル目が5分、2サイクル目以降 は10~30秒間で行い、伸長反応は72C、10~30秒間とし、全45サイクルの増 幅を行った。

mRNAの発現を解析する分子はΔNp63、上皮基底細胞のマーカーであるCK5 およびCK14、間葉系細胞のマーカーであるvimentin、stemness geneであるp75

(20)

- 18 -

neurotrophin receptorp75NTR)、B-cell-specific Moloney murine leukemia virus integration site 1(BMI1)、OCT3/4、頭頸部扁平上皮癌のCSC表面マーカーと考え られている CD44、サイクリン依存性キナーゼ(cyclin dependent kinase: CDK)イ ンヒビターであるp27kip1である。また、これらmRNAの発現量を定量化するた め、ハウスキーピング遺伝子であるglycelaldehyde-3-phosphate dehydrogenase

(GAPDH)を用いて補正し、ΔΔCt法により相対的発現量を算出した。なお、得 られたPCR産物を2.0%アガロースゲル(Invitrogen)上で電気泳動を行い、エチ ジウムブロマイド染色後に、紫外線により可視化した。各プライマー配列、PCR 産物のフラグメントサイズ、アニーリング温度を(表4)に示す。

7. タンパク質の抽出

培養皿中の細胞をPBSにて洗浄後、lysis buffer(20 mM HEPES/KOH buffer(pH 7.3)、150 mM塩化ナトリウム、0.5%Nonidet P40、50 mMフッ化ナトリウム、10 mM二リン酸ナトリウム十水和物、1 mMジチオスレイトール(dithiothreitol: DTT)、 1 mMフッ化フェニルメチルスルホニル(phenylmethylsulfonyl fluoride: PMSF)、 Protease Inhibitor cocktail(Nacalai Tesque)を90 l 加え、セルスクレーパーにて 破砕した。その後、4C、10,000 rpmで5分間遠心分離し、タンパク質を含む上 清を70 l採取し、これにsample buffer(1 M Tris〈pH 6.8〉、ドデシル硫酸ナトリ

ウム〈sodium dodecyl sulfate: SDS〉、グリセロール、ブロモフェノールブルー)と

1 mM DTTを混和したものを20 l加えた。さらに、98Cで2分間、熱変性処理

を行い、これをタンパク質の発現解析に用いた。

(21)

- 19 -

8. SDS-polyacrylamide gel electrophoresisPAGE)およびwestern blotting 法 抽出したタンパク質を10%ポリアクリルアミドゲルを用いて電気泳動(60 mA、

90分間)し、さらに、ポリフッ化ビニリデン(poly vinilidene difluoride: PVDF) 膜(Millipore, USA)に転写(200 mA、180分間)した。その後、抗体の非特異 的吸着を防ぐため、10%スキムミルク(Nacalai Tesque)で30分間反応させ、washing

bufferにて洗浄し、一次抗体を4Cにて24時間反応させた。使用した一次抗体を

(表3)に示す。二次抗体として5000倍希釈したhorse radish peroxidase(HRP) 標識抗マウスまたは抗ウサギ抗体を用い、室温で30分間反応させた。最後に washing bufferにて洗浄後、SuperSignal® West Pico Chemiluminescent Substrate

(Thermo Scientific)にて標識し、特異的なバンドを検出した。なお、検出された バンドはpicture-imaging software(NIH Image; National Institutes of Health, Bethesda, USA)を用いて定量化した。その際、陽性対照としてハウスキーピング遺伝子で あるβ-actinを用いた。

9. ΔNp63 small interfering RNAsiRNA)の導入

OSCC細胞株の増殖および分化におけるΔNp63の影響を調べるため、ΔNp63

siRNAをOSCC細胞株に導入し、ΔNp63のノックダウンを行った。なお、ΔNp63

siRNA導入にはリポフェクション法(使用試薬; OligofectamineTM , Invitrogen)を 用いた。まず、24 穴プレートに2.5×104 /wellのHSC-2細胞を播種し、37C、5% CO2存在下で24時間培養後、無血清のDMEM/F-12 に培地交換し、120 nM の ΔNp63 siRNA(Sigma-Aldrich)を導入した。さらに、37C、5%CO2存在下で6 時間培養後、培地をFBSおよびP/S含有のDMEM/F-12に交換した。siRNA導入 48時間後にRNAを、72時間後にタンパク質を抽出し、それぞれの発現の解析を 行った。なお、使用したΔNp63 siRNAの塩基配列は、

(22)

- 20 -

5’-GGACAGCAGCATTGATCAATT -3’である。また陰性対照としてscrambled

siRNA(5’-CAGTCGCGTTTGCGACTGG -3’)の導入を行った。

10. 細胞増殖解析

細胞増殖におけるΔNp63 siRNAの影響を検討するため、以下の方法により細 胞増殖解析を行った。

10-1. WST-1 assay

96穴プレートに3.0×102 /wellのHSC-2細胞を播種し、37C、5%CO2存在下で 24時間培養後、ΔNp63 siRNAおよびscrambled siRNAの導入を行った。siRNA導 入時および導入12、24、48、72、96、120時間後の生細胞数をWST-1 Cell Counting Kit(Dojin, Japan)を用いて計測した。各wellにテトラゾリウム塩(WST-1:

4-[3-(4-Iodophenyl)-2-(4-nitrophenyl)-2H-5- tetrazolio]-1,3-benzene disulfonate)を10

lずつ添加し、37C、5%CO2存在下で2時間、呈色反応を行った。その後、テ トラゾリウム塩が細胞内脱水素酵素により還元されて生じた水溶性ホルマザン 色素をマイクロプレートリーダー(MULTI SKAN FC; Thermo Scientific)にて測 定した(測定波長: 450 nm、参照波長: 620 nm)。なお、使用したWST-1 Cell Counting Kitにおいて、細胞数と生成する水溶性ホルマザンの量が直線的な比例関係にあ ることを確認した。

10-2. 5-bromo-2-deoxyuridineBrdUincorporation assay

24穴プレートに2.5×104 /wellのHSC-2細胞を播種し、上記と同様にsiRNAの 導入を行った。siRNA導入48時間後に、BrdU(使用試薬:BrdU labeling & detection kit〈Roche Diagnostics, Swiss〉)を添加し、37C、5%CO2存在下に45分間静置し た。その後、一次抗体として抗BrdUモノクローナル抗体(動物種; マウス)を 室温で25分間、さらに、抗マウスIg-fluoresceinを室温で30分間反応させ、蛍光

(23)

- 21 -

顕微鏡にて観察した。また、核染色としてヨウ化プロピジウム(propidium iodide:

PI)(Vector Laboratories, USA)を用いた。また、BrdU陽性細胞数を計測し、全 細胞数で除したものをBrdU陽性率として算出した。

11. wound healing assay

細胞遊走能におけるΔNp63 siRNAの影響を検討するため、wound healing assay を行った。まず、2.5×104 /wellのHSC-2細胞を播種し、37C、5%CO2存在下にコ ンフルエントになるまで培養し、前述の方法と同様にsiRNAを導入した。導入24

時間後に0.1-10 l 用滅菌ピペットチップの先端を用いて間隙を設け、6時間毎に

細胞の遊走状態を観察した。評価には倒立顕微鏡(CKX41 NB-31PHP; Olympus, Japan 対物レンズ ×40)を用いた。

12. 統計学的解析

統計処理には χ2 test、Kruskal-Wallis test、Mann-Whitney U-test、analysis of

variance(ANOVA)を用いた。また、生存分析はKaplan-Meier法により解析を行

い、統計処理にはlog-rank testを用いた。なお、統計解析ソフトとしてJMP software version 8 (SAS Institute, USA)を使用し、p<0.05の場合を統計学的有意差ありとし た。

(24)

- 22 -

mRNA PCR産物の

サイズ(bp)

アニーリング 温度(C ) プライマーの塩基配列(5’→3’)

表4 PCRのプライマーと反応条件

ATGGCATGGACTGTGGTCAT アンチセンス

60 ATCAGCAATGCCTCCTGCAC

センス 104

GAPDH

CGAGCTGTTTACGTTTGACG アンチセンス

60 ATAAGGAAGCGACCTGCAAC

155 センス p27kip1

GAGCTGAAGCATTGAAGCAA アンチセンス

60 CCTGCAGGTATGGGTTCATAG

センス 144

CD44

ACACTCGGACCACATCCTTC アンチセンス

62 CAGGAGATATGCAAAGCAGAAAC センス

178 OCT3/4

GACCTTATATTCAGTAGTGGTCTGG アンチセンス

61 GTCTACATTCCTTCTGTAAAACGTG 112 センス

BMI1

GTTGGCTCCTTGCTTGTT アンチセンス

61 AACCTCATCCCTGTCTATTG

センス 111

p75NTR

CTCAATGTCAAGGGCCATCT アンチセンス

60 TGCCCTTAAAGGAACCAATG

センス 196

vimentin

GGAGGAGGTCACATCTCTGG アンチセンス

60 ATCCTGCTGGACGTGAAGAC

135 センス CK14

TACCAGGACTCGGCTTCTGT アンチセンス

62 GGTTGATGCACTGATGGATG

207 センス CK5

TGCGCGTGGTCTGTGTTATA アンチセンス

56 TGCCCAGACTCAATTTAGTGAG センス

117 ΔNp63

(25)

- 23 -

結 果

研究 1

口腔白板症および口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の免疫組織化学的検討

1-1. 正常組織および口腔白板症の生検材料におけるΔNp63の発現

本研究では、まずNOEおよびOLの生検材料におけるΔNp63の発現を検索す るために免疫組織化学的染色を行った。その結果を図1に示す。

NOEおよびOLにおいて、ΔNp63、Ki-67、CK5、およびCK14はすべての標本 で発現が認められた。NOEでは、ΔNp63は上皮基底層および傍基底層の細胞核 に限局して発現していた(図1; b)。Ki-67は傍基底層の細胞核に、CK5および CK14は上皮基底層の細胞質に発現が認められた(図1; c-e)。HYPではこれらの 発現はNOEとほぼ同様であった。一方、上皮性異形成では、ΔNp63はNOEおよ びHYPと比較して上皮基底層から外層に向かって広範囲に発現しており、MLD

ではΔNp63は上皮基底層から基底上層にかけて、さらに、MODおよびSEDで

は上皮のほぼ全層に発現が認められた(図1; g, l, q)。Ki-67、CK5、およびCK14

もΔNp63と同様に上皮性異形成の程度が重度になるにつれ、上皮の外層に向か

って広範囲に発現していた(図1; Ki-67 h-j; CK5, m-o; CK14, r-t)。

また、ΔNp63、Ki-67、およびCK14の発現を定量化するため、それぞれの陽性 率を算出し、臨床病理学的所見との関連について検討した。その結果、上皮性異 形成を伴うOLにおいてΔNp63の陽性率はNOEおよびHYPと比較して有意に高 く(図2; Mann-Whitney U-test, p<0.0001)、さらに、その上皮性異形成の程度が重 度になるにしたがってその陽性率も増加していた(図2; Kruskal-Wallis test,

(26)

- 24 -

*p<0.0001)。臨床所見との関連については、性別、年齢、病変部位ともにΔNp63

の陽性率と有意な関連は認められなかった。また、Ki-67およびCK14は、ΔNp63 と同様に、上皮性異形成が重度になるにつれて陽性率が高くなっていた(図2;

Kruskal-Wallis test, *p<0.0001)

さらに、ΔNp63の陽性率とOLの癌化との関連について検討を行った。結果を 表5に示す。本研究の対象症例におけるOLからOSCCへの癌化率は5.4%(112 例中6例)であった。さらに、上皮性異形成の程度別では、HYPおよびMLDで は癌化は認められなかったが、MODでは8例中5例、SEDでは6例中1例に癌 化が認められた。また、癌化したOLのΔNp63陽性率は非癌化症例よりも有意に 高かった(Mann-Whitney U-test, p=0.0035)。なお、本研究におけるOLの臨床的 平均観察期間は1年6ヶ月である。

112 76 22 8 6

p=0.0035 49.3%

5 3 22 76

34.0%

1 5 0

0

癌化の有無

ΔNp63陽性率

症例数(%) HYP MLD MOD SED

5 OLの癌化症例と非癌化症例におけるΔNp63陽性率の比較

106 (94.6) 6 (5.4)

癌化したOLのΔNp63陽性率は非癌化症例と比較して有意に高かった。

統計処理にはMann-Whitney U-testを用いた。

なお、本研究におけるOLの臨床的平均観察期間は16ヶ月である。

112 76 22 8 6

p=0.0035 49.3%

5 3 22 76

34.0%

1 5 0

0

癌化の有無

ΔNp63陽性率

症例数(%) HYP MLD MOD SED

5 OLの癌化症例と非癌化症例におけるΔNp63陽性率の比較

106 (94.6) 6 (5.4)

癌化したOLのΔNp63陽性率は非癌化症例と比較して有意に高かった。

統計処理にはMann-Whitney U-testを用いた。

なお、本研究におけるOLの臨床的平均観察期間は16ヶ月である。

(27)

- 25 -

1NOEおよびOLにおけるΔNp63Ki-67CK5CK14の発現

NOEにおいて、ΔNp63CK5CK14は基底層および傍基底層に発現が認められた。Ki-67は主に傍基底層に発現していた。口腔白板症において、ΔNp63MLDでは上皮基底層より数層に限局して発現が認められたが、上皮性異形成が重度になるにつれ、上皮のほぼ全層にわたり発現を認めた。Ki-67CK5およびCK14ΔNp63と同様の発現様式であった。(scale bars: 100 m) NOE

MLD

MOD

SED abcd

fg

tsrqp o j

mlk ih

n HEKi-67ΔNp63CK5CK14e

(28)

- 26 -

2 OLにおけるΔNp63、Ki-67およびCK14の 陽性率 と上皮性異形成の程度との 関連

OLにおいて、MLD、MODおよびSEDはHYPよりもΔNp63、Ki-67およびCK14の 陽性率 は有意に高く、また上皮性異形成の程度が重度になるにつれて有意に増加していた。

グラフは陽性率の平均±標準偏差を示しており、統計処理には*Kruskal-Wallis testおよび

Mann-Whitney U-test を用いた。

ΔNp63 Ki-67

ΔNp63, Ki-67, CK14: *p<0.0001

ΔNp63, Ki-67, CK14: p< 0.0001

CK14

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

NOE HYP MLD MOD SED

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.0001

OL

上皮性異形成

2 OLにおけるΔNp63、Ki-67およびCK14の 陽性率 と上皮性異形成の程度との 関連

OLにおいて、MLD、MODおよびSEDはHYPよりもΔNp63、Ki-67およびCK14の 陽性率 は有意に高く、また上皮性異形成の程度が重度になるにつれて有意に増加していた。

グラフは陽性率の平均±標準偏差を示しており、統計処理には*Kruskal-Wallis testおよび

Mann-Whitney U-test を用いた。

ΔNp63 Ki-67

ΔNp63, Ki-67, CK14: *p<0.0001

ΔNp63, Ki-67, CK14: p< 0.0001

CK14

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

NOE HYP MLD MOD SED

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.0001

OL

上皮性異形成

ΔNp63 Ki-67

ΔNp63, Ki-67, CK14: *p<0.0001

ΔNp63, Ki-67, CK14: p< 0.0001

CK14

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

NOE HYP MLD MOD SED

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.0001

OL

上皮性異形成

(29)

- 27 -

1-2.口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の発現

次に、OSCCの生検材料におけるΔNp63の発現を免疫組織化学的染色法により 検索した。

ΔNp63、Ki-67、CK5、およびCK14はOSCCの分化度の違いによって異なる発

現様式を呈していた。高分化型OSCCにおいては、ΔNp63の発現は癌胞巣の最外 層から2、3層までに限局し、その中心部には発現が認められなかった(図3; b)。

またKi-67、CK5、およびCK14はΔNp63と同様に癌胞巣の最外層から2、3層ま

でに発現を認めた(図3; c, d, e)。一方、中および低分化型OSCCにおけるこれ らの局在は高分化型OSCCとは異なり、ほぼすべての癌細胞に認められた(図 3; ΔNp63, g, l; Ki-67, h, m; CK5, i, n; CK14, j, o)。

さらに、NOEおよびOLと同様に、ΔNp63、Ki-67、およびCK14の各陽性率を 算出し、病理組織学的所見との関連について検討を行った。図4に示すように、

腫瘍細胞の分化度においては低分化なものほどΔNp63の陽性率が有意に高く、

Ki-67とCK14においてもΔNp63と同様の結果を示した(Kruskal-Wallis test,

p<0.001)。一方、浸潤様式(YK分類)とこれらの陽性率との関連性は認められ

なかった(Kruskal-Wallis test, p>0.05)。

(30)

- 28 -

grade 1

grade 2

grade 3

3OSCCけるΔNp63Ki-67CK5CK14発現

OSCCにおいて、ΔNp63は高分化型では癌胞巣の最外層から23層に限局して発現が認められ、中および低分化型ではほぼすべての癌細胞に発現が認められた。Ki-67CK5およびCK14ΔNp63と同様の発現様式であった。(scale bars: 100 m) abcde

fgj

m ih HEKi-67ΔNp63CK5CK14

olkn

(31)

- 29 -

図4 ΔNp63、Ki-67、およびCK14の陽性率と病理組織学的所見との関連(A: Grade分類〈WHO〉、

B: YK分類)

(A)OSCCにおけるΔNp63、Ki-67、およびCK14の陽性率は低分化なものほど有意に高かった。

(B)浸潤様式においてはこれらの陽性率と有意な関連は認められなかった。

グラフは陽性率の平均±標準偏差を示しており、統計処理にはKruskal-Wallis test を用いた。

grade 1 grade 2 grade 3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.001

A

grade 1 grade 2 grade 3 grade 4C grade 4D 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: N.S.

ΔNp63 Ki-67

B

CK14 ΔNp63 Ki-67 CK14

図4 ΔNp63、Ki-67、およびCK14の陽性率と病理組織学的所見との関連(A: Grade分類〈WHO〉、

B: YK分類)

(A)OSCCにおけるΔNp63、Ki-67、およびCK14の陽性率は低分化なものほど有意に高かった。

(B)浸潤様式においてはこれらの陽性率と有意な関連は認められなかった。

グラフは陽性率の平均±標準偏差を示しており、統計処理にはKruskal-Wallis test を用いた。

grade 1 grade 2 grade 3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.001

A

grade 1 grade 2 grade 3 grade 4C grade 4D 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: N.S.

ΔNp63 Ki-67

B

CK14 ΔNp63 Ki-67 CK14

grade 1 grade 2 grade 3

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: p<0.001

A

grade 1 grade 2 grade 3 grade 4C grade 4D 0

10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

陽性率(%)

ΔNp63, Ki-67, CK14: N.S.

ΔNp63 Ki-67

B

CK14 ΔNp63 Ki-67 CK14

(32)

- 30 -

1-3.口腔扁平上皮癌の生検材料におけるΔNp63の発現と臨床所見との関連

OSCC生検材料におけるΔNp63の陽性率と臨床所見との関連を調べるため、

ΔNp63の陽性率が全OSCC患者の平均値以上(>73.8%)の患者群(高発現群)

と平均値以下(≦73.8%)の患者群(低発現群)の2群に分けて検討を行った。

表6に示すように、性別、原発部位、臨床発育様式、T分類、臨床病期分類、

局所再発に関してはこれらの2群間に有意な差は認めなかったものの、頸部リン パ節および遠隔転移の発生頻度は、低発現群と比較して高発現群において有意に 高かった(χ2 test, p<0.05)。

さらに、Kaplan-Meier法を用いて生存分析を行ったところ、高発現群、低発現 群における累積5年全生存率はそれぞれ40.0%、76.1%であり、これら2群間に 有意な差は認められなかった(図5 A; log-rank test, p=0.063)。また、疾患特異的 累積5年生存率はそれぞれ51.9%、86.0%であり、低発現群と比較して高発現群 において有意に予後が不良であった(図5 B; log-rank test, p<0.05)。

(33)

- 31 -

22 14

36

18 27

45

頸部リンパ節転移

17 9

26

7 5

12

10 18

28

6 9

15

臨床病期分類

6 1

7

34 40

74

遠隔転移

8 4

12

32 37

69

局所再発

15 7

22 T4

4 4

8 T3

14 21

35 T2

7 9

16 T1

T 分類

26 32

58 内向型

9 6

15 外向型

5 3

8 表在型

臨床発育様式

2 1

3 頬粘膜

7 2

9 口底

18 9

27 歯肉

13 29

42

原発部位

11 12

23 女性

29 29

58 男性

性別

40 41

81 全症例数

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群 症例数

表6 OSCCにおけるΔNp63陽性率と臨床所見との関連

pvalue

N.S.

N.S.

N.S.

N.S.

N.S.

p<0.05 p<0.05 2test)

N.S.

OSCC患者において、ΔNp63高発現群は低発現群よりも頸部リンパ節および遠隔転移 を有する患者の割合が有意に高かった。その他の項目については有意差は認められな かった。

なお、統計処理にはχ2testを用いた。

22 14

36

18 27

45

頸部リンパ節転移

17 9

26

7 5

12

10 18

28

6 9

15

臨床病期分類

6 1

7

34 40

74

遠隔転移

8 4

12

32 37

69

局所再発

15 7

22 T4

4 4

8 T3

14 21

35 T2

7 9

16 T1

T 分類

26 32

58 内向型

9 6

15 外向型

5 3

8 表在型

臨床発育様式

2 1

3 頬粘膜

7 2

9 口底

18 9

27 歯肉

13 29

42

原発部位

11 12

23 女性

29 29

58 男性

性別

40 41

81 全症例数

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群 症例数

表6 OSCCにおけるΔNp63陽性率と臨床所見との関連

pvalue

N.S.

N.S.

N.S.

N.S.

N.S.

p<0.05 p<0.05 2test)

N.S.

OSCC患者において、ΔNp63高発現群は低発現群よりも頸部リンパ節および遠隔転移 を有する患者の割合が有意に高かった。その他の項目については有意差は認められな かった。

なお、統計処理にはχ2testを用いた。

(34)

- 32 -

図5 OSCCにおけるΔNp63陽性率別生存分析(Kaplan-Meier法)(A: 全生存率、

B:疾患特異的生存率)

ΔNp63高発現群、低発現群における累積5年全生存率は、それぞれ40.0%、

76.1%であった。また、疾患特異的累積5年生存率はそれぞれ51.9%、86.0%であり、

ΔNp63高発現群は低発現群と比較して有意に予後不良であった。

なお、統計処理にはlog-rank testを用いた。(*p<0.05)

B

生存期間(月)

累積生存率(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80

*

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群

累積生存率(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

生存期間(月)

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群

p=0.063

A

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

図5 OSCCにおけるΔNp63陽性率別生存分析(Kaplan-Meier法)(A: 全生存率、

B:疾患特異的生存率)

ΔNp63高発現群、低発現群における累積5年全生存率は、それぞれ40.0%、

76.1%であった。また、疾患特異的累積5年生存率はそれぞれ51.9%、86.0%であり、

ΔNp63高発現群は低発現群と比較して有意に予後不良であった。

なお、統計処理にはlog-rank testを用いた。(*p<0.05)

B

生存期間(月)

累積生存率(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

0 10 20 30 40 50 60 70 80

*

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群

累積生存率(%)

0 10 20 30 40 50 60 70 80

生存期間(月)

ΔNp63低発現群 ΔNp63高発現群

p=0.063

A

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

(35)

- 33 -

研究2

口腔扁平上皮癌細胞株におけるΔNp63の発現および機能解析に関する検討

2-1.口腔扁平上皮癌細胞株におけるΔNp63の発現の検討

研究1の結果より、OSCC生検材料におけるΔNp63の発現様式は、基底細胞の マーカーであるCK5とCK14の発現様式と類似していた。そこで、まずOSCC 細胞株(HSC-2、HSC-3、SQUU-A、SQUU-B、SAS)を用いてΔNp63、CK5、お よびCK14の発現を検索した。図6に示すように、RT-PCR法、real-time PCR法、

およびwestern blotting法において、ΔNp63の発現量はmRNAおよびタンパク質

レベルともにHSC-2細胞で最も高く、次いでSAS細胞、SQUU-A細胞、HSC-3 細胞の順であった。また、ΔNp63の発現量が多い細胞株(HSC-2、SAS)でCK5 とCK14は強く発現しており、反対にΔNp63の発現量が尐ない細胞株(HSC-3、

SQUU-A)ではCK5とCK14の発現は弱かった。また、ΔNp63の発現が認められ

なかったSUQQ-B細胞ではCK5とCK14はともに発現していなかった。

ΔNp63を発現していた細胞株(HSC-2、HSC-3、SQUU-A)においては、間葉

系細胞のマーカーであるvimentinの発現がmRNAレベルでは弱く、タンパク質 レベルでは消失していた。一方、ΔNp63を発現していない細胞株(SQUU-B)で はmRNAレベル、タンパク質レベルともにその発現が認められた。SAS細胞に

ついてはΔNp63とvimentinはともに発現していた。

参照

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