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博 士 ( 理 学 ) 姚

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 ) 姚    建

     学 位 論 文題 名

QCMand STM Studies on Clay ー IvIodified Electrodes      ( QCM と STM 法 に よ る 粘 土 修 飾 電 極 の 研 究 )

学 位 論 文 内 容 の 要旨

  1.モンモリロナイト修飾電極の研究

    粘土鉱物はイオン交換性を有する層状無機化 合物である。伝導性基板上に粘土鉱物 の水分散液をキャストすることにより、これらの 固体表面を配向した粘土薄膜で覆うこ とができ、粘土修飾電極となる。粘土修飾電極で は、粘土の層状構造の立体的な規制の もとに電気化学反応が起こる結果、無修飾電極で は見られないような高い反応の選択性 や収率を達成することができる。この意味で粘土 修飾電極は、機能性材料としての粘土 の利用法のひとっとして注目される。しかし今ま での研究では、どのような機構によっ て粘 土薄 膜中 で電 荷の 移動 が起 こる か等の基本的な点については全く知られてい なか っ た 。そ こで 本研 究で は、 水晶 振動 子マ イク ロ バラ ンス (QCM)法 を用 いて 粘土 修飾 電極 の電 荷移動の機構を明らかにすることを試みた。 今までよく用いられてきた2種の ルテニウムの金属錯体とモンモリ口ナイトとの付 加物で修飾した金電極を用い、これら 金属錯体の粘土薄膜への吸着過程、さらに薄膜中 で起こる電荷移動に伴う質量変化を追 跡した。[Ru(bpy)3]2゛(bpy二ニニ2,2 .ビピリジル)の場合、光学活性体の一方のみを加 えた とき には、このイオンは2価の陽イオンとして粘土膜中に含まれることが判っ た。

一方、ラセミ混合物として加えたときには、陰イ オンとイオン対をつくって含まれるこ とが判った。同様なことはコロイド状態における 粘土ではすでに知られていたが、薄膜 状態においても確かめられた。[Ru(bpy)3]2+が酸化されるときには、この分子が3分子 酸化されるごとに、膜中に存在する[Ru(bpy)3]3゛が1分子膜外に放出されることが判っ た。これは酸化によって生じた過剰の正電荷を相 殺して膜を中性に保っために起こる。

また これ に付 随し て、 粘土 層間 に溶 媒の水分子が入り込むこともわかった。これ は、

[Ru(bpy)3]3゛ の 放 出 に と も な っ て 粘 土 層 間 に 空 い た 空 間 が で き る か ら で あ る 。 [Ru(NH3)6]2゛が酸化 されるときには、膜外部の陰イオン(C1―やSO。2ー)が膜中に入 ることが判った。これも膜の電荷を中性に保っために起こる。上の[Ru(bpy)3]2゛の場合 には陽イオンが放出されのに比較して、この場合 には陰イオンが流入する。このように 酸化還元反応を起こす錯体の種類によって、電気 化学反応の途中で膜を電気的に中和す る機構が全く異なる。これはその状態において最 も移動しやすいイオンによって膜の電 荷の中和が計られるからであると考えられる。以 上の結果は、粘土膜に出入りするイオ ンあるいは溶媒の動きを、電気化学反応と関連さ せて明らかにしたものである。今まで 明確でなかった粘土修飾電極における電荷移動の 機構の詳細を確立することができた。

得られた結果は、イオンの種類による電極反応挙 動の違いを考察する上で重要である。

  2.ハイド口夕ルサイト修飾電極の研究     ‑ 98―−

(2)

    ハイドロタルサイトは、アニオン吸 着粘土で、人工的な合成が容易であり、しかも 層の格子内に各種の遷移金属イオンを含 ませることによって、それ自身で電気化学活性 を 持 っ よ う に す る こ と が 可 能 で あ る 。 実 験 で は 、Mg(II) とAl(III) を 格 子 内に含むハイドロタルサイトの単結晶を 合成し、これを電極基板上に沈着させて薄膜を っくった。さらに、膜中に酸化還元を行 うイオンとして【Fe(CN)6]3.を含ませた。QCM 法によって以下のことが明らかにされた。[Fe(CN)6]3.が膜中に含まれるときには、単純 なイオン交換が起こるのではなく、この 陰イオンが陽イオンとイオン対を形成して含ま れる 。例 えば 、0.1 MNa2S04水溶 液に 接したと きには、Na[Fe(CN)6] ―と して膜中に 含まれる。[Fe(CN)6]3.の還元反応に伴 って、膜外にNa[Fe(CN)6] ―が放出される。こ れはさきのモンモリロナイト修飾電極に おいてすでに見いだされたように、還元反応に よって生じた過剰な負電荷を、膜内にお ける陰イオンの放出によって中性化するためで ある。この場合、モンモリロナイト修飾 膜の時と異なり、イオンの放出にともなう溶媒 分 子 の 流 入は 見ら れな かっ た。 ハ イド ロタ ルサ イト 膜のFT一IR吸 収を 測る こと によ っ て 、 膜 内 の 一 部 の[Fe(CN)6]3・ で は配 位し たCN基が 粘土 結 晶内 のAl(III) と結 合していることが見いだされた。この割 合は時間経過とともに増大して、それにともな ってこのイオンの電気化学的挙動も異なった。

    上記の修飾電極において、分子レベ ルにおける電極反応の機構を明らかにする目的 で、走査型プローブ顕微鏡によるハイド ロタルサイト単結晶表面に吸着した[Fe(CN)6]3.

の 観 察 を 試み た。 原子 間力 顕微 鏡 (AFM)に よる 観察 では 、裸 のハ イド 口夕 ルサ イト 単結 晶面 のOH基の みが 見 られ 、吸 着分 子を観察することは出来なかった。 これは、こ のイ オン の吸 着が 弱く 、AFMのチ ップ の動 きに よっ て イオ ンが 排除される ためである と考 えら れた 。そ こで 走 査型 トン ネル 顕微 鏡(S TM)によ る観 察を試みた 。一般にハ イド ロタ ルサ イト のよ う な絶 縁物 表面 をSTMで 観察 す るこ とは 不可能とさ れている。

し か し 本 研 究 の 結 果 、STMを 用 い て 粘 土 単 結 晶 格 子 中 のAl(III) あ る い は 表 面 に吸着したアニオンを観察することがで きた。これは、この粘土結晶単の層の厚さが0.

8nm以 下 と 薄 く 、STM観 察 に お い て 適 当 な バ イ ア ス 電 圧 を 選 べ ば 、十 分に トン ネル 電流 が通 過す る厚 さで あ るこ とに よる と思 われ る。 実際 、厚 さが 約Inmで あるモンモ リロ ナイ トに おい てはSTMに よる 観察 は不 可能 であ っ た。 得ら れた結果は 以下のよう で あ る 。Mg(II) とAl(III) の 比 の 異 な る ハ イ ド ロ タ ル サ イ ト の 単 結 晶 を 合 成 し て 観 察 し た 結 果 、Al(III) の 成 分 比 に 応 じ た 大 き さ の2次 元 格 子 がSTMイ メ ー ジ と し て 得 ら れ た 。 こ れ は 、 こ のSTMイ メ ー ジ が 粘 土 結 晶 格 子中 のAl(III) によるものであることを支持する。さら に、バイアス電圧の調整によって、単結晶表面 に吸 着し たア ニオ ン( 例 えば 、cr)を 観察 する こと が でき た。 また、ハイ ドロタルサ イト単結晶に金属錯体[Fe(CN)6]3・と[Fe(CN)6]4.をイオン交換して、表面に吸着した [Fe (CN)6]3.と[Fe(CN)6]4.イオンを観察することができた。吸着した[Fe (CN)6]3.と [Fe(CN)6]4.イオンは、電荷が違うこと により結晶表面の規則構造と整合した2次元周期 的な 単分 子層 を形 成し て いる こと がわ かった。さらにこの系において、電 気化学的に [Fe(CN)6]3. を還 元さ せ なが らSTM観 察を行っ たところ、還元にともなって吸着層の2 次 元 格 子 が 一 様 に 大 き く な っ て い く 過 程 が 観 察 さ れ た 。 最 後 に すべ ての イオ ンが [Fe(CN)6]4.になった段階では、格子の 面積は30%近くも広がった。この結果から、表 面に吸着した[Fe (CN)6]3・や[Fe(CN)6]4.は、協同的に下地の面と相互作用して全体とし て均一の格子を形成することが判った。 以上のような結果は、初めて粘土表面における 吸着イオンを反応途中でとらえたもので ある。今後は、粘土面上でより広範囲の化学反 応 に つ い て そ の 過 程 を 分 子 レ ベ ル で 明 ら か に す る こ と を 目 指 し て い る 。     ―99一

(3)

学位論文審査の要旨

主査    教授   山岸晧彦 副査    教授   魚崎浩平

副査    助教授   嶋津克明(大学院地球環境科学研究科)

副査    助教授   中田允夫

学位論文題名

och/i and STM Studies on Clay‑Modified Electrodes

( QCM と STM 法 に よる 粘 土 修 飾 電 極 の 研 究 )

  本 研究は 、粘土鉱物で修飾した電極(粘土修飾電極)の動作機構を分子レベルで解明 す ること を目指し ている。 粘土修 飾電極で は、電 気化学反 応が層状構造に基づく立体 的 な規制 のもとに 起こり、 その結 果無修飾 電極で は見られ ないような高い反応選択性 や 収率を 達成する ことがで きる。 しかし今 までの 研究では 、どのような機構によって 粘 土薄膜 中で電荷 の移動が 起こる か等の基 本的な 点につい ては全く知られていなかっ た。

  本 研究で は、上 の目的の ために2つの 方法、す なわち 水晶振動 子マイ クロバラ ンス

(QCM)と 走 査 型 プ ロ ー ブ 顕 微 鏡(STM)を 用 い た。 こ れ らに よ っ て粘 土 修 飾電 極 に お ける電 荷移動の 機構と粘 土結晶 表面に吸 着して いるイオ ンが電極反応に伴う吸着構 造の変化を明らかにした。

  本 研究で 調べた電極の第一は、2種のルテニウムの金属錯体([Ru(bpy)3]2゛(bpy二ニ 2,2 .ビピリジル)と[Ru(1¥JH3)6]2゛)とモンモリロナイ卜との付加物で修飾した金電極で あ る。こ れら金属 錯休の粘 土薄膜 への吸着 過程、 さらに薄 膜中で起こる電荷移動に伴 う 質量変 化を追跡した。[RU(IJpy)3]2゛の場合、粘土膜中に含まれる錯体の形はこの錯 体 の光学 異性によ って変わ ること がわかっ た。す なわち、 光学活性体の一方のみを加 え た とき には、 このイオ ンは2価の陽 イオンと して粘 土膜中に 含まれ る。一方 、ラセ ミ 混 合 物と し て 加え た と き には 、 陰 イオ ン と イオ ン 対 をっ くっ て含ま れる。QCM測 定によって、[Rll(ljpy)3]2゛が酸化されるときには、この分子が3分子酸化されるごとに、

膜中に存在する[Ru(bpy)3]°゛が1分子膜外に放出されることが判った。これは酸化によ っ て生じ た過剰の 正電荷を 相殺し て膜を中 性に保 っために 起こる。またこれに付随し て、粘土層間に溶媒の水分子が入り込むこともわかった。[Ru(NH3)6]2゛の場合、この錯 体 が 酸化 される ときには 、膜外 の陰イオ ン(Clー やSOイ2一)が膜 中に入 ることが 判 った。これも膜の電荷を中性に保っために起こる。さらに、[Ru(bpy)3]2゛の場合には陽 イ オンが 放出され のに比較 して、 この場合 には陰 イオンが 流入する。このように酸化 還 元反応 を起こす 錯体の種 類によ って、電 気化学 反応の途 中で膜を電気的に中和する 機 構が全 く異なる。以上の結果は、粘土膜に出入りするイオンあるいは溶媒の動きを、

(4)

電気 化学 反 応と 関連 させ て明 らか にし て、従来明確でなかった粘土修飾電極における 電荷移動の機構の詳細を確立することができた。

    上の 結 果は 、陽 イオ ン交 換性 の粘 土鉱物に関するものである。本研究はさらに、

陰イ オン 交 換性 の粘 土鉱 物に よる 修飾 電極に展開された。すなわち、陰イオン交換性 粘土 とし て ハイ ドロ タル サイ トを とり あげた。この粘土鉱物は、人工的な合成が容易 であ り、 し かも 層の 格子 内に 各種 の遷 移金属イオンを含ませることによって、それ自 身 で 電 気 化 学 活 性 を 持 っ よ う に す る こ と が 可 能 で あ る 。 実 験 で は 、Mg(II) とA 1(III) を 格 子 内 に 含 む ハ イ ド ロ タ ル サ イ ト の 単 結 晶 を 合 成 し、 これ を 電極 基板 上 に 沈 着 さ せ て 薄 膜 を っ く っ た 。 さ ら に 、 膜 中 に 酸 化 還 元 を 行 う イ オ ン と し て

【Fe(CN)613.を含ませた。まず、QCM法による研究によって以下のことが明らかにされ た。【Fe(CN)613.が膜中に含まれるときには、単純なイオン交換が起こるのではなく、こ の陰 イオ ン が陽 イオ ンと イオ ン対 を形 成し て含 まれ る。 例え ば、0.1 MNa2S04水溶液 に接 した と きには、Na[Fe(CN)6]゜―と して膜中に含まれる。このことは膜中のイオン をICPに よ っ て 元 素 分 析 す る こ と に よ っ て 確 か め ら れ た 。 さ ら に 電 気 化 学QCM法 によって、膜中の【Fe(CN)6]3.の還元反応に伴い、膜外にNa[Fe(CN)6]゜−が放出される。

これ は還 元 反応 によ って 生じ た過 剰な 負電荷を、膜内における陰イオンの放出によっ て中 性化 す るた めで ある 。こ の場 合、 イオンの放出にともなう溶媒分子の流入は見ら れな かっ た 。/ヽイ ドロ タル ′サ イト 膜 のFT―IR吸収 を測 るこ とによって、膜内の一 部 の 【Fe(CN)6]3.で は配 位し たCN基が 粘土 結 晶内 のAl(III) と結 合し て いる こと が見 いだ さ れた 。こ の割 合は 時間 経過 とともに増大して、それにともなってこのイオ ンの電気化学的挙動も異なった。

  ハ イド 口 タル サイ トの 電気 伝導 性を 測定することによって、この鉱物が半導体性を 有す るこ と が確 かめ られ た。 そこ で、 走査型プローブ顕徴鏡によるハイドロタルサイ ト単 結晶 表 面に吸着した【Fe(CN)6]3. の観察を行った。まず原子聞力頭微鏡(AFM)に よ る 観 察で は、 裸 のハ イド ロタ ルサ イト 単結 晶面 のOH基の みが 見ら れ、 吸 着分 子を 観 察 す る こ と は 出 来 な か っ た 。 こ れは 、こ の イオ ンの 吸着 が弱 く、AFMの チッ プの 動き によ っ てイ オン が排 除さ れる ため であると考えられた。そこで走査型トンネル顕 微 鏡 (S TM)に よ る 観 察 を 試 み た 。 本 研 究 の 結 果 で 、 初 め てSTMを 用 い た 粘 土 単 結 晶 格 子 中 のA1(III) あ る い は 表 面 に 吸 着 し た ア ニ オ ン を 観 察 す る こ と が で き た。また、ハイドロタルサイト単結晶に金属錯体【Fe(CN)6]3‑と【Fe(CN)6]4‑をイオン交換 して、表面に吸着した[Fe(CN)6]3.と[Fe(CN)6]4.イオンを観察することができた。さらに、

この系において、電気化学的に【Fe(CN)613.を還元させながらSTM観察を行ったところ、

還元 にと も なっ て吸 着層 の2次元 格子 が 一様 に大 きく なっ てい く過程が観察された。

すべ ての イ オンが[Fe(CN)6]4.になった 段階では、格子の面積は30%近くも広がった。

この結果から、表面に吸着した【Fe(CN)6)3.や【Fe(CN)6]4.は、協同的に下地の面と相互作 用し て全 体 とし て均 一の 格子 を形 成す ることが判った。以上のような結果は、初めて 粘土表面における吸着イオンを反応途中でとらえたものである。

  本 研究 は 、今 まで 明確 でな かっ た粘 土修飾電極における電荷移動の機構の詳細を、

ニ つ の 測 定 法 (QCM、STM)に よ っ て 確 立 し た 。 よ っ て 本 申 請 者 は 、 北 海 道 大 学 博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。

‑ 101―

参照

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