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博士(工学)兜森俊樹 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(工学)兜森俊樹 学位論文題名

実用的水素吸蔵合金の開発とその水素化特性に関する基礎研究 学 位 論 文 内容 の 要 旨

  

水素吸蔵合金は、言うまでもなく多量の水素を吸蔵し得る点に特徴があるが、それ ばかりではなく、種々のエネルギー変換など多くの機能を有しており、これによって 多様な利用形態が考えられている。それには、熱の有効利用のための熱エネルギー変 換材料、電気エネルギー貯蔵のためのバッテリー用材料、水素の有効利用を図るため の水素の貯蔵・回収・精製用材料、有機合成用の触媒材料、将来的なエネルギーとな る核融合炉用のトリチウム燃料サイクル取り扱い材料等があり、非常に広い産業分野 で利用が期待されている。しかし、実用化にあたっては経済的観点からの考慮も必要 で、これを含め、より優れた水素吸蔵合金の開発が望まれている。このような背景か ら、本論文では、種々の合金における水素吸蔵量、平衡解離圧特性、耐久性等の水素 化特性を調べることによって、これらの現象を支配している物理的な因子について検 討を行い、これらの知見から、より高性能かつ実用的な水素吸蔵合金の開発を行うこ とを目的とした。

  

本 論 文 は 、

8

章か ら 構 成 さ れ て い る 。 以 下、 各 章 に つ い て 概 要 を 述 べ る。

  

第1 章では、水素吸蔵合金の水素との反応が、合金の結晶学的な性質に強く依存する ことに注目して、水素吸蔵合金をその構成元素の組成比率に従ってクイプ化し、それ ぞれの合金夕イプ別に、研究動向を調べるとともにその問題点を整理し、本研究の背 景と目的を述べた。

  

第2 章では、ABs 型合金としてCaNis を取り上げ、平衡解離圧特性とそれを支配する結 晶学的な因子に関して検討するとともに、繰り返し水素吸収・放出にともなう内的劣 化についても検討を行った。CaNis の平衡解離圧におよぼす各種置換元素の影響および 平衡解離圧の制御因子を調ベ、その結果、平衡解離圧はこれまでLaNis で言われていた 格子体積に依存するのではなく、格子間空隙のサイズによって説明できることを明ら かにした。また、CaNis 合金の内的劣化は、従来言われていた不均化反応ではなく、繰 り返しとともに結晶格子が大きく歪むことによって進行することを明らかにした。さ ら に 、

Al

に よ る 部 分 置 換 が 劣 化 阻 止 に 有 効 で あ る こ と も 明 ら か に し た 。

  

第3 章では、AB2 型合金としてTiCr2 を取り上げ、その平衡解離圧におよぼす各種置換 元素の影響を調べた。その結果、平衡解離圧の制御範囲は、ABs に比べ広く取れること がわかった。また、その平衡解離圧は、ABs と同様に結晶中の格子間空間の大きさによ

‑ 102―

(2)

って決定されことが分かった。繰り返し水素吸収・放出特性を調ぺた結果、この合金 系はほとんど内的劣化を示さず、ABs のような結晶粒径の微細化が起こりにくく、繰り 返しに対して安定な合金であることがわかった。

  

4

章で は、水素吸 蔵量の観点 からAB およびA2B 型合金を取り上げた。

AB

型合金 としてはZrNi を、

A2B

型合金としては

Ti7Co

を選択し、水素吸蔵量、平衡解離等の水 素化特性について検討を行った。Ti2Co 合金およびZrNi 合金ともに大きな水素吸蔵量 を示し、これらのタイプの合金が良い性質を持つことがわかった。また、Ti2Co 合金は、

多数の水素化物相を形成し、これが多段の水素吸蔵特性をもたらすが、置換元素の適 切な選択によって水素化物の数を減らし、有効水素吸蔵量を増大させ得ることがわか った。

  

第5 章では、水素吸蔵量の大きさから注目されている固溶体型のBCC 合金を取り上 げ、その水素化の特徴を明確にするとともに、BCC 合金の劣化の問題についても検討 を加えた。

BCC

合金の水素吸蔵量は、格子中の四面体サイトの大きさに強く依存する ことがわかった。また、水素吸収・放出の繰り返しでは、繰り返し初期において水素 吸蔵量が著しく低下したが、これとともに不均一格子歪みの著しい増大が認められ、

これが原因で水素吸蔵量が減少したものと推察した。

  

第6 章では、水素吸蔵量、平衡解離圧特性および繰り返しによる内的劣化の3 点に ついて、これらを支配している物理的な因子について考察を行うとともに、これら の現象を推測するモデルについて検討を加えた。水素吸蔵量に関して、 Westlake の モデルを改良し、水素吸蔵前の合金の結晶構造パラメータから水素吸蔵量を予測す るモデルを立てた。このモデルにより、簡便に水素吸蔵量を予測できることがわか った。水素化物の平衡解離圧や反応熱についても、同様に格子間空隙の大きさとの 関連性で定性的に説明できることがわかった。水素の吸収・放出にともなう内的劣化 については、水素吸収・放出時の格子の膨張・収縮の繰り返しと、これによって誘起 される原子レベルでの構造の変化、それから発展する安定な析出相等について検討し、

内的劣化の機構について統一した解釈を行った。

  

7

章で は、2 章から

5

章までに開発した合金を、水素精製・回収装置、冷凍用MH ヒートポンプおよびアクチュエ一夕等の実際の応用システムヘ適用した例を述べた。

各システム要求値に合わせ、本論文で得られた水素化特性の制御技術を用いて水素化 特性の最適な合金設計を行った。その結果、これらの設計合金を用いた装置は、いず れも初期設計値通りの性能を出カすることを確かめた。

  

8

章 で は 、 本 論 文 で 得 ら れ た 結 果 を 総 括 し く 結 諭 を 述 べ た 。

103 ‑

(3)

学 位 論 文 審 査の 要 旨

学 論 文 題 名

実用的水素吸蔵合金の開発とその水素化特性に関する基礎研究

  水 素 吸 蔵 合 金 は 言 う ま で も な く 多 量 @ 水 素 を 吸 蔵 し 得 る 点 に 特 徴 が あ る が 、そ れぱ か り で な く 、 そ の 他 多 く の 機 能 も有 し てお り、 各種 の 機能 材料 とし ての 利 用が 考え られ てい る 。 そ れ に は 、 熱 エ ネ ル ギ 一 変 換 材 料 、 電 気 エ ネ ル ギ ー 貯 蔵 の た め の バ ッ テ リ 一 用材 料、 水 素 精 製 用 材 料 、 有 機 合 成 の 触 媒 材 料 、 ト リ チ ウ ム 燃 料 サ イ ク ル 用 材 料 、 ガ ス 圧 を利 用し た ア ク チ ュ エ ー 夕 等 が あ り 、 広 い 産 業 分 野 に 亙 っ て い る 。 し か し 、 そ の 実 用 化 に あた って は 経 済 的 観 点 か ら の 考 慮 も 必 要 で 、 こ れ を 含 め 、 よ り 優 れ た 水 素 吸 蔵 合 金 の 開 発 が望 まれ て い る 。 こ の よ う な 背 景 か ら 、 本 論 文 で は 、 種 々 の 合 金 に っ い て 水 素 吸 蔵 量 、 平 衝解 離圧 、 耐 久 性 等 の 特 性 を 広 範 囲 に 調 べ て お り 、 こ れ に よ り こ れ ら の 特 性 の 支 配 因 子 を 検討 し、 さ ら に 、 そ の 知 見 に 基 づ い て 、 高 性 能 か っ 実 用 的 ナ ょ 水 素 吸 蔵 合 金 の 開 発 を 行 っ て い る 。   以 下 に 本 論 文 の 要 旨 を 示 す 。

  1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 明 ら か に し て い る 。 ま た 、 水 素 吸 蔵 合 金 を 結 晶 構 造 に 基 づ い て 分 類 す る と と も に 、 そ れ ぞ れ の タ イ プ の 特 徴 を ま と め て おり 、合 金 開 発 の 方 向 づ け を 行 っ て い る 。

  2章 で は 、ABs型 合 金 を 取 り 上 げ て お り 、 と く にCaNis合 金 に っ い て 、 水 素 吸 蔵 量 や 解 離 圧 等 の 水 素 化 特 性 を 詳 細 に 調 べ て い る 。 こ の 合 金 に お け る 性 能 劣 化 の 原 因が 従来 言 わ れ て い た 不 均 化 反 応 で は な く 結 晶 格 子 の 歪 増 大 に あ る こ と 明 ら か に し て お り 、こ れよ り 構 成 元 素 の 一 部 をAlで 置 換 す る こ と が 劣 化 防 止 に 有 効 で あ る こ と を 見 い だ し て い る 。   3章 で は 、AB2型 合 金 と し てTiCr2合 金 を 取 り 上 げ 、 平 衡 解 離 圧 へ の 各 種 元 素 の 置 換 効 果 を 調 べ て い る 。 そ の 結 果 、 こ の 合 金 で は 適 切 な 成 分 置 換 に よ り 、 平 衡 解 離圧 を広 範 囲 に 制 御 出 来 る こ と を 明 ら か に し て い る 。 ま た 、 こ の 合 金 が 耐 久 性 に 富 み 、 繰 り返 し使 用 に 耐 え る こ と を 示 し て い る 。

  4章 で は 、AB型 お よ びA2B型 合 金 と し てZrNiお よ びTi2Co合 金 を 調 べ て い る 。 そ の 結 果 、 こ れ ら の 合 金 が 大 き な 吸 蔵 量 を 示 す こ と 、 さ ら に 、 置 換 元 素 の 適 切 な 選 択に よっ て 、 さ ら に 吸 蔵 量 を 増 や し 得 る こ と を 明 ら か に し て い る 。

  5章 で は 固 溶 体 型 合 金 を 取 り 上 げ 、 主 と し てTiCr合 金 に っ い て 調 べ た 。 こ の 系 で 水

104

郎 爾

広 明

健 晋

耀 惣

川  

  貫

丸 前

堤 大

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 副

副 副

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素吸蔵重の組成比による変化を調ベ、これが結晶格 子の空隙の大きさ変化によって説明出 来ることを示した。また、この合金の劣化機構にっ いて調ベ、繰り返し使用による格子歪 の 増 大 が 水 素 吸 蔵 量 の 低 下 を も た ら す こ と を 明 ら か に し て い る 。   6章 では各種タイプの合金にっいて得られたデータ を総合し、各特性の支配因子につ いて検討している。水素吸蔵量にっいては、結晶の 構造パラメータから吸蔵量を予測する 新しい方式を考案した。また、平衡解離圧や反応熱 にっいても同様に構造パラメータに基 づいて定性的に説明できることを示している。繰り返し使用における特性劣化にっいては、

低温における劣化原因が格子の膨張と収縮の繰り返 しによる格子歪の増大にあること、ま た 、 高 温 に お け る 劣 化 原 因 は 合 金 内 部 で の 不 均 化 反 応 であ るこ とを 結諭 して いる 。   7章 では 、2章 から5章ま でで 開発 した 合金 を実 際の シス テムに適用した例にっいて 述べている。示された例は、水素精製装置、冷凍用 ヒートポンプ、および車椅子用アクチ ユエー夕等であり、これらに適した合金系の設計と その利用に際しての経験が示されてい る。また、これらの実例において吸蔵合金が期待通 りの性能を示すことが確かめられてい る。

  8章 は 総 括 で あ り 、 水 素 吸 蔵 合 金 開 発 の 要 約 と 将 来 展 望 が 述 べ ら れ て い る 。   以上のように、本論文は水素吸蔵合金にっいてそ の高性能化を目指した研究を広範囲に 行ったものであって、各種特性の支配因子を明らか にするとともに、これを指針として新 しい水素吸蔵合金を開発することに成功しており、 応用物理学、金属物性学の進歩に寄与 するところ大である。

  よ って 、著 者は 北海 道大 学博 士(工学)の学位を授 与される資格あるものと認める。

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