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論 文 審 査 の 要 旨

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Academic year: 2021

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別紙1

論 文 審 査 の 要 旨

報告番号 甲第2697号 氏 名

小谷 祐子

論文審査担当者

主査 歯科補綴学 馬場 一美 副査 口腔解剖学 中村 雅典 副査 口腔衛生学 弘中 祥司

(論文審査の要旨)

学位申請論文「Relationship between palatal mucosa properties and pressure-pain threshold in young dentate and elderly edentulous」について、上記の主査1名、副査2名が個別に審査を行った。

上質な有床義歯治療を行う上で、粘膜性状を知ることはきわめて重要である。そこで、当講座では粘膜の 厚さと荷重量を同時測定するシステムを用いて粘膜性状(厚さ・弾性率)、と疼痛閾値(沈下量・圧力・圧 縮率)の関係について解析を行ってきた。本研究では、高齢無歯顎者と若年有歯顎者での粘膜性状と疼痛閾 値の関係の相違について解析を行った。その結果、高齢無歯顎者では粘膜は厚く、弾性率が小さな値である ことから粘膜が軟らかい傾向であった。また、小さな圧力で同程度の沈下量を示した。以上より、高齢無歯 顎者の粘膜は若年有歯顎者に比べ、負担能力が低い可能性が示唆された。

本論文の審査において、副査の中村委員および弘中委員から多くの質問があり、その一部とそれらに対す る回答を以下に示す。

弘中委員の質問とそれらに対する回答:

1.義歯使用年数、男女間での相違はあるか述べよ。

過去の文献では、義歯装着者は未装着者より、上皮は角化傾向であり、疼痛閾値は低くなると報告してい る。しかし、今回の研究結果から義歯使用年数と粘膜性状・疼痛閾値の関連性を解析したが、有意差は認め られなかった。今後は義歯装着年数を区分して検討する必要があると考えられる。

男女差についても、粘膜性状・疼痛閾値共に有意差は認められなかった。男女差を比較するには、被験者 数を増やして検討する必要があると考えられる。

2.英文誌の引用文献に 18/32 の和文引用の是非について述べよ。

和文文献は年代の古い文献である。当時義歯の粘膜性状・疼痛閾値に関する研究において、世界的にも高 い技術力と知識を必要としたと考えられる。その中で、当時の日本の研究の水準が高かったことから、粘膜 性状・疼痛閾値の文献が多く存在し、今回使用した 18 の和文文献は必要であった。また、当講座で行って きた研究の文献も含まれるので、和文文献の引用が多くなった。

3.粘膜性状とくに脂肪層は BMI 等に左右されると考えるが、対象者の体格等の考察はどのように考えるか。

今回の被験者の BMI については検討していない。中間部では粘膜下組織が豊富であるため、BMI が影響す る可能性はあると考えられる。しかし、正中部・側方部は粘膜下組織がほとんどなく、BMI による影響は少 ないと考えられる。

中村委員の質問とそれらに対する回答:

(2)

1.中間部での沈下量の相違は形態学的に構造をどのように反映するか。

高齢無歯顎者の中間部の沈下量は、若年有歯顎者より有意に小さな値となった。中間部の粘膜は厚く、粘 膜下組織が存在する。粘膜下組織には、血管・神経組織も豊富に存在するため、疼痛に敏感であると考えら れる。今回測定した沈下量は、疼痛が生じるまでの沈下量となり、その他の部位より小さな値になったと考 えられる。

2.高齢有歯顎者を被験者として採用しなかった根拠はなにか。

高齢者の粘膜性状のみを解析するには、高齢有歯顎者を被験者とするべきと考えられる。しかし、今回は 義歯装着者にとって代表的な不快症状である疼痛と粘膜性状との関連性を解析することが目的だったため、

高齢無歯顎者を被験者とした。

3.計測部位設定の根拠は。

測定部位の設定は、抜歯による骨吸収の影響が少ない口蓋部とした。口蓋粘膜は比較的薄い部位、厚い部 位、その中間となる厚さを想定した部位の 3 カ所とし、第一大臼歯中心小窩相当部の設定は、石原らの報告 から平均的な第一大臼歯と第二大臼歯の近遠心幅径より算出した。被験者が高齢無歯顎者であることを考慮 し、時間的・身体的負担を軽減するために、右利きの術者にとって計測が容易な左側のみを測定した。これ は、硬さでは中島・大島により、厚さでは寺倉の報告にあるように、部位の左右間に有意な差は認められな かったとの報告を根拠にした。

4.超音波厚さ計の設定基準の根拠は。

超音波厚さ計は超音波パルスが軟組織を通過する時間に組織内速度を乗ずることにより、厚さを算出する ため、生体における組織内速度の決定が必要になる。Daly らは屍体において測定し、その値を 1518m/S で あったと報告している。近年の報告でも組織内速度が 1518m/S として用いられているため、本研究も 1518 m/S を用いた。

両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。

主査 馬場委員の質問とそれらに対する回答:

1.本研究の疼痛閾値と臨床上における義歯性潰瘍などに起因する疼痛との関連性について説明せよ。

本研究での結果から、高齢無歯顎者の粘膜は厚く軟らかく、小さな圧力で疼痛を示したことから負担能力 が低い可能性が示唆された。臨床上における義歯の疼痛は、圧迫などによる機械的刺激により義歯性潰瘍が 生じることが原因であると考えられる。しかし、臨床上での義歯性潰瘍は粘膜性状だけでなく、付与する咬 合様式、咬合力、顎堤の高さなどの総合的な要因も関与して生じる。したがって、本研究結果と義歯性潰瘍 が生じる疼痛を直接関連付けることは困難であるが、高齢無歯顎者の粘膜は負担能力が低いことから機械的 刺激に弱く義歯性潰瘍が生じやすい可能性があると考えられる。

主査の馬場委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張をさらに確認 するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。

以上の審査結果から、本論文を博士(歯学)の学位授与に値するものと判断した。

(3)

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