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     ( メ ダ カ 卵 受 精 時 の 卵 膜 硬 化 に 関 す る 研 究 ) 学位論文 内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 柴 田 安 司

     学位論文題名

Studies on the Chorion Hardening upon Fertilization     in Medaka(Oryzias latipes)Eggs

     ( メ ダ カ 卵 受 精 時 の 卵 膜 硬 化 に 関 す る 研 究 ) 学位論文 内容の要旨

  多くの動物の卵は卵膜と呼ばれる構造によって覆われている。精子の侵入により卵付活 が起こると、卵膜の物理的・化学的性質は大きく変化し、精子と卵との相互作用に大きな 影響を与える。卵膜変化は多数の精子侵入を阻止し、正常な受精を保証するのに不可欠な 役割を担っている。これまで、卵膜の変化が受精時に卵表層胞の外分泌により卵から放出 される物質によって引き起こされることは多くの動物卵で報告されている。海産無脊椎動 物や両生類の卵では受精時の卵膜の変化は「受精膜形成」として、また哺乳類の卵では「卵 膜反応」として研究されており、魚卵でも早くから、受精による卵膜の変化は「卵膜硬化」

として研究されてきた。近年、卵膜硬化はトランスグルタミナーゼによって触媒される卵 膜タンパク質の架橋重合が原因となっていることが明らかとなった。この不活性状態のト ランスグルタミナーゼは、既に受精前の卵膜内に強く結合して存在していることが報告さ れている。しかし、受精によって初めてトランスグルタミナーゼが活性化して、卵膜タン パク質の重合を開始するための仕組み1ま未だ解明されないままであった。一方、他の多く の動物と同様に、魚類においても受精時に卵の表層から新たに分泌される未知の成分が卵 膜の変化を引き起こしているらしいことが多くの研究者によって報告されてきたが、その ことも証明されないままであった。そこで、卵膜硬化の開始機構を確かめること、及び、

卵膜の硬化をもたらす成分を単離同定することを目的にメダカ卵を用いて研究を開始した。

  はじめに、卵膜硬化に伴う卵膜構成夕ンパク質の変化をSDS電気泳動によって調べるこ とから着手した(第1章)。その結果、メダカ未受精卵の卵膜は、主にZI―1,2(73―77 kDa) とZI―3(49 kDa)の2種類のタンパク質からなるが、媒精後5分には、61―62 kDaの新たな タンパク質が現れ、その後、132 kDa、114 kDaといった高分子量のタンパク質の出現を経 て不溶性化することが観察された。抗卵膜夕ンパク質抗体を用いた免疫学的分析の結果、

61−62 kDaは、ZIー1,2夕ンパク質の限定的分解によって、132 kDa,114 kDaのタンパク質は、

ZIー1,2夕ンパク質成分にZI−3タンパク質が加わって重合することによって形成されている 可能性が示された。すなわち、受精時の卵膜硬化とぃう現象には、卵膜タンパク質の限定 的分解と重合の過程があることを示した。また、卵膜除去したメダカの卵を付活させるこ とによって採取した卵表層の分泌物を未受精卵卵膜に働かせると、受精時と同様な卵膜タ

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ン パ ク質 の 変 化 がin vitroで誘 起 さ れ るこ と が 判 明し た。 しかも 、受精 時に分 泌され る表 層 胞 の成 分 に よ って も 同 様 な変 化 が 引 き起 こ さ れ たこ とか ら、受 精時に 卵膜硬 化を誘 起す るl卵 表 層か ら の 分 泌物 が 表 層 胞成分 である ことを確 かめる ことが できた 。さら に、こ の現 象 をin vitroで 卵膜 硬 化 の 誘起 活 性 を 検定 す る 方 法と して 用いて 卵表層 分泌物 の中か らそ の 活 性成 分 の 精 製を 試 み た 。ま た 、 予 め熱 処 理 し た単 離卵 膜を用 いるこ とで、 卵分泌 物に よ る 卵膜タ ンパク 質の限 定的分 解過程 のみを 見ること に成功 し、生 じた61―62 kDa夕ン パク 質 の 量に よ っ て プロ テ ア ー ゼ活 性を 定量的に 測定す ること が可能 になっ た(第2章)。 この 測 定 方法 に お い て、 分 泌 物 のプ ロ テ ア ーゼ 活 性 はEDTA、EGTA、フ ェナン トロリ ンとぃ った 金 属 キレ ー ト 剤 によ っ て 抑 えら れ た が 、セ リ ン 、 シス テイ ン、ア スパラ ギンプ ロテア ーゼ の阻害剤では抑えられなかった。EDTA処理によって失われた活性は、C02十、Mnz十、2n2十、Mg2十、

Ca2゛ など の2価 金 属 イオ ン の 添 加に よ っ て 回復 し た こ とから 、この 活性は メタロプ ロテア ー ゼ の二 種 で あ ると 推 定 し た。SDS電気 泳動上23.5 kDaの相 対質量 を示す単 一成分 のみを 含 む 最 終精 製 標 品 が卵 膜 硬 化 誘起 活 性 と プロ テ ア ー ゼ活 性の 両方の 活性を 示した ことか ら、

卵 膜 タン パ ク 質 を限 定 的 に 分解 す る プ 口テ ア ー ゼ が卵 膜硬 化の引 き金と なって いると 推論 し た 。こ う し て 精製 さ れ た 活性 成 分 を 卵の 表 層 胞(cortical alveolus)か ら分 泌 される こ とからalveolinと命名した。

  alveolinの 分子 的 実 体 を明 ら か に する た め に 、精 製 したalveolinの部 分アミノ 酸配列 情 報 を 基にalveolin cDNAをク 口ーニ ングした (第4章 )。cDNAの塩基 配列解 析から、alveolin は 亜 鉛 結 合 性 金 属 プ ロ テ ア ー ゼ のastaclnフ んミ リ ー に 属す る こ と がわ か っ た 。さ ら に Northern blot解析 に よ っ て、alveolin mRNAは メダ カ の成 体で卵 巣での み発現 している こ とを明らかにした。

  1章 及 び 第2章 に お い て、 メ ダ カ 卵の 卵 膜 硬 化に 伴 っ て 卵膜 タ ン バ ク質 が 変 化 する こ と 、 さら に そ の 変化 は 卵 表 層か ら 分 泌 され る 成 分 によ っ て 誘 起さ れ る こ とを 示 した 。第3 章 及 び 第4章 に お い て 、 メ ダ カ 卵 表 層 胞 か ら 初 め て 単 離 同 定 し た 金 属 プ ロ テ ア ー ゼ alveolinが 受 精 時 に お け る 卵 膜 の 硬 化 現 象 を 誘 起 す る こ と を 、 そ し て 、 第5章 で は 、 alveolinに よ る 卵膜 タ ン パ ク質 の 切 断 とト ラ ン ス グル タミ ナーゼ による 重合反 応との 関係 を ま とめ、 記述し た。メ ダカの 卵膜はZI―1,2(73−77kDa) とZI−3(49kDa)と 呼ばれる2 種 類 のタン パク質 から構 成され ている が、卵 膜硬化時 には、alveolinによ ってZI−1,2が限 定 的 切断 を 受 け6162kDaと な っ た後 、ZI−3と 結合 し て132kDaの 中間産 物を一 過性に 生成 することが確かめられた。

  以 上 、 本 研究 は メ ダ カ卵 を 用 い て受 精 時 の 卵膜 硬 化 を誘 起する卵 表層胞 由来の プロテ ア ー ゼalveolinが 存在 す る こ と、 及 び 、 それ が 受 精 時に 囲卵 腔に分 泌され 、卵膜 の硬化 を誘 起 す る過 程 に 作 用す る こ と を分 子 レ ベ ルで 世 界 に 先駆 けて 解明し たもの である 。さら に、

卵 膜 タン バ ク 質 問の 架 橋 構 造形 成 に よ る高 分 子 化 の初 期過 程を明 らかに した。 これら の知 見 は 、従 来 不 明 であ っ た 魚 類に お け る 受精 時 の 卵 膜変 化の 分子機 構の理 解に大 きな貢 献を するものである。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

Studies on the Chorion Hardening upon Fertilization     in Ix/Iedaka( 〇 ryzias latipes)Eggs

(メダ カ卵受精時の卵膜硬化に関する研究)

  

近年 、ヒト を含めた哺 乳動物の 生殖・発 生に関す る研究は 活発であ るが、個体 発 生 の 出発点 である受精 の分子機 構につい ては未だ 不明な点 が多い。 多くの動物 の卵 は卵 膜と呼ば れる構造 によって覆われている。精子の侵入により卵付活が起こると、

卵 膜 の物理 的・化学的 性質は大 きく変化 し、精子 と卵との 相互作用 に大きな影 響を 与 え る。卵 膜変化は多 数の精子 侵入を阻 止し、正 常な受精 を保証す るのに不可 欠な 役 割 を担っ ている。こ れまで、 卵膜の変 化が受精 時に卵表 層胞の外 分泌により 卵か ら 放 出され る物質によ って引き 起こされ ることは 多くの動 物卵で報 告されてい る。

海 産 無脊椎 動物や両生 類の卵で は受精時 の卵膜の 変化は「 受精膜形 成」として 、ま た 哺 乳類の 卵では「卵 膜反応」 として研 究されて おり、魚 卵でも早 くから、受 精に よ る 卵膜の 変化は「卵 膜硬化」 として研 究されて きた。近 年、卵膜 硬化はトラ ンス グ ル タミナ ーゼによっ て触媒さ れる卵膜 タンパク 質の架橋 重合が原 因となって いる こ と が明ら かとなった 。この不 活性状態 のトラン スグルタ ミナーゼ は、既に受 精前 の 卵 膜内に 強く結合し て存在し ているこ とが報告 されてい る。しか し、受精に よっ て 初 めてト ランスグル タミナー ゼが活性 化して、 卵膜タン パク質の 重合を開始 する た め の仕組 みは未だ解 明されな いままで あった。 一方、他 の多くの 動物と同様 に、

魚 類 におい ても受精時 に卵の表 層から新 たに分泌 される未 知の成分 が卵膜の変 化を 引 き 起こし ていること が多くの 研究者に よって示 唆されて きたが、 証明されな いま ま で 放置さ れていた。 本学位論 文は、卵 膜硬化の 開始に関 わる成分 の同定をメ ダカ 卵を用いて行い、新規のプロテアーゼを発見したものである。

  

学位 論文は

5

章から構成 されてお り、第1 章 では、卵 膜硬化に 伴う卵膜 構成夕ンパ ク質の変化をSDS 電気泳動によって調ぺ、メダカ未受精卵の卵膜は、主に2I‑1,2 (73‑77

kDa)

2I‑3 (49kDa)

の2 種類 の タン パ ク 質か ら なり 、 媒 精5 分後 に 、61‑62 kDa の 新た なタンパ ク質が現 れ、その後、132 kDa 、114 kDa といった高分子量のタンパク質 の出 現を経て 不溶性化 することを明らかにしている。また、抗卵膜夕ンパク質抗体を 用いた免疫学的分析の結果、61‑62 kDa は、ZI‑1 、2 夕ンパク質の限定的分解によって、

132 kDa

,114 kDa のタンパク質は、ZI‑1 、2 夕ンパク質成分に2I‑3 夕ンパク質が加わって 重合 すること によって 形成されている可能性を示唆した。このことは、受精時の卵膜 硬化 は、卵膜 夕ンパク 質の限定的 分解と重 合の過程 があるこ とを示している。第2 章

男 行

範 孝

木 橋

鈴 高

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

では、卵膜除去したメダカの卵を付活させることによって採取した卵表層の分泌物を 未受精卵卵膜に働かせると、受精時と同様な卵膜夕ンパク質の変化がin vitro で誘起さ れることも明らかにし、受精時に分泌される表層胞の成分によっても同様な変化が引 き起こされたことから、受精時に卵膜硬化を誘起する卵表層からの分泌物が表層胞成 分であることを明らかにした。この現象をin vitro で卵膜硬化の誘起活性を検定する方 法として用いて卵表層分泌物の中からその活性成分の精製を試み、予め熱処理した単 離卵膜を用いることで、卵分泌物による卵膜タンパク質の限定的分解過程のみを見る ことに成功し、生じた61‑62 kDa タンパク質の量によってプロテア―ゼ活性を定量的に 測 定す るこ とが 可能にした。第3 章では、分泌物のプロテア―ゼ活性はEDTA 、EGTA 、 フェナント口リンといった金属キレート剤によって抑制されるが、セリン、システイ ン、アスパラギンプ口テアーゼの阻害剤では抑制されないことを明らかにした。さら に、EDTA 処理によって失われた活性は、C02 十、Mfi2 十、2f12 十、Mg2 十、Ca2 ゛などの2 価 金属イオンの添加によって回復したことから、この活性はメ夕口プ口テアーゼの一種 で ある と推 定し 、SDS 電気泳動上23.5 kDa の単一成分にまで精製した。この最終精製 標品が卵膜硬化誘起活性とプロテアーゼ活性の両方の活性を示したことから、卵膜タ ンパク質を限定的に分解するプ口テアーゼが卵膜硬化の引き金となっていると考え、

精製された活性成分を卵の表層胞

(cortical alveolus)

から分泌されることからalveolin と 命名 した 。第

4

章で は、

alveolin

の分 子的 実体を 明ら かに する ため に、 精製した

alveolin

の部分ア.ミノ酸配列情報を基にalveolin cDNA をクロ―ニングし、cDNA の塩基 配列解析から、,alveolin は亜鉛結合性金属プロテアーゼのastacin ファミリーに属するこ とを明らかにした。さらに、Northem blot 解析によって、alveolin mRNA はメダカの成 体で卵巣でのみ発現していることを明らかにした。第

5

章では、alveolin による卵膜夕 ンパク質の切断とトランスグルタミナーゼによる重合反応との関係をまとめ、記述し た 。メ ダカ の卵 膜は2I‑1,2 (73‑77 kDa) と2I‑3 (49kDa) と 呼ば れる

2

種類 のタンパ ク質から構成されているが、卵膜硬化時には、

alveolin

によって2I‑1,2 が限定的切断を 受け61‑62 kDa となった後、2I‑3 と結合して132 kDa の中間産物を一過性に生成するも のと結論した。

  

以上、本研究はメダカ卵を用いて受精時の卵膜硬化を誘起する卵表層胞由来のプロ テアーゼalveolin が存在すること、及び、それが受精時に囲卵腔に分泌され、卵膜の硬 化 を誘 起す る過 程に作 用す るこ とを 分子 レペ ルで世界に先駆けて解明したものであ る。さらに、卵膜タンパク質問の架橋構造形成による高分子化の初期過程を明らかに した。これらの知見は、従来不明であった魚類における受精時の卵膜変化の分子機構 の理解に大きな貢献をするものである。

  

よっ て著 者は 、北海 道大 学博 士( 理学 )の 学位を授与される資格あるものと認め

る。

参照

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