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日本口腔インプラント学会 第25巻 1号

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(1)

40 ─ 40 Many previous clinical studies have reported the suc- cessful application of dental implants for functional recon- struction of edentate and partially edentate jaws. How-ever,  few  of  those  studies  focused  on  the  Japanese  population. In fact, most of the studies that focused on  the Japanese population were cross-sectional in design or  excluded patients who were lost to follow-up;therefore,  the findings from such studies have low reliability. More- over, the studies focused on implant survival after the in-sertion of superstructures, and very few studies have  separately investigated the acquisition and maintenance  of osseointegration. The purpose of the present study was to build a useful  database to help patients choose the most appropriate  treatment. It was a follow-up study based on existing  clinical  records,  and  covered  all  participants  and  im-plants. In this study, we analyzed the survival rate and  clearly investigated separately the acquisition and main-tenance of osseointegration. The rate of acquisition of osseointegration was calcu-lated by dividing the number of implants acquired by the  total number of implants placed. The rate of maintenance  of osseointegration was evaluated using life-table analy-ses, which included an intention-to-treat parameter.

The  study  consisted  of  a  consecutive  series  of  161  women and 56 men(mean age:60.3±9.5 years)who  received osseointegrated dental implants at the Depart-ment of Dentistry and Oral Surgery, Yata Cooperative  Clinic, from January 1999 to December 2010. A total of  637 implants were placed. 

About  625  implants  acquired  osseointegration,  and  functioned with superstructures;5 of these implants failed  to maintain osseointegration. Around 40 implants were  lost to follow-up(rate of tracing:93.6%). The rate of 

過去 12 年間の口腔インプラント治療に関する後ろ向き調査

松原 有里

1,2)

  高山 賢一

1,2,3)

  荒川  光

3,4)

川島  渉

1,2)

  藤井 亮介

1,2)

  嶌岡 英起

1,2)

窪木 拓男

3)

  桐田 忠昭

2)

Follow-Up Study for 12 Years on the Survival of Dental Implants

MATSUBARA Yuri

1,2)

, TAKAYAMA Kenichi

1,2,3)

, ARAKAWA Hikaru

3,4)

, 

KAWASHIMA Wataru

1,2)

, FUJII Ryosuke

1,2)

, SHIMAOKA Hideki

1,2)

, 

KUBOKI Takuo

3)

 and KIRITA Tadaaki

2) 1)近畿・北陸支部(矢田生活協同組合医療センター歯科口腔外科)(主任:高山賢一部長) 2)奈良県立医科大学口腔外科学講座(主任:桐田忠昭教授) 3)岡山大学大学院医歯薬学総合研究科インプラント再生補綴学分野(主任:窪木拓男教授) 4)中国・四国支部(オリーブファミリーデンタルクリニック)(主任:小林充冶院長) 1)Kinki-Hokuriku Branch, Department of Dentistry and Oral Surgery, Yata Cooperative Clinic(Chief:Dr. TAKAYAMA Kenichi) 2)Department of Oral and Maxillofacial Surgery, Nara Medical University(Chief:Prof. KIRITA Tadaaki) 3) Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Science Department of Oral Rehabilitation  and Regenerative Medicine(Chief:Prof. KUBOKI Takuo) 4)Chugoku-Shikoku Branch, Olive Family Dental Clinic(Chief:Dr. KOBAYASHI Mitsuharu) 平成 23 年 10 月 31 日受付

(2)

緒  言

現在,口腔インプラント治療は長期的に安定し予知

性の高い治療法として認識されてきている.それに伴

い,口腔インプラント治療を希望する患者は増加傾向

にあり,単独歯欠損から無歯顎まで幅広い症例に応用

され,その高い成功率が報告されている

1~15)

.しかし,

われわれが渉猟した限りでは,これらの臨床報告の多

くは欧米諸外国のもので,日本人を対象としたものは

少ない.さらに,日本人を対象としたインプラント体

の予後に関する報告の多くは,時間軸を加味していな

い横断調査や追跡不能患者を対象から除外した生存分

析を採用しており,結果の信頼性に疑問が残る.また,

これらのほとんどが,オッセオインテグレーションが

どの程度の確率で獲得できるか,また獲得されてから

どの程度維持できるかを分けて評価していない.生物

学的観点からも,オッセオインテグレーションの獲得

とその維持は分けて評価すべきと考える

3,5,16,17)

近年,経験に基づいた医療から臨床的根拠に基づい

た医療へと大きく推移する中,われわれ歯科医師には

患者にわかりやすく正しい情報を提示することが強く

求められるようになった.そして,その情報は患者が

治療法を選択する際に,患者の臨床決断を促すことが

できる説得力のある臨床データでなければならない.

しかしながら現在,われわれが提示している臨床デー

タは欧米諸外国や他施設における過去のデータである

ため,慎重かつ厳密な結果の吟味が必要となるが,そ

の過程は日常臨床現場では困難をきわめる.したがっ

て,患者にとって有用な情報とは,治療を受けようと

する施設における実際の臨床成績であり,それが最も

患者にとって明確かつ意味のあるデータとなるであろ

う.少なくとも欧米諸外国のものよりも日本人のデー

タのほうが分かりやすい.

そこで,今回われわれは,患者の臨床決断に有用な

データを構築することを目的に,矢田生活協同組合医

療センター歯科口腔外科において,過去 12 年間にイ

ンプラント体埋入手術を行った全患者,埋入した全イ

ンプラント体を対象にオッセオインテグレーションの

獲得と維持を明確に分類し,診療録に基づいて生存分

析を行った .

対象および方法

1. 対 象 

対象は,1999 年 1 月から 2010 年 12 月までの 12 年

間に,矢田生活協同組合医療センター歯科口腔外科に

おいてインプラント体埋入手術を行った全患者 217

名,埋入された全インプラント体 637 本である.対象

患者ならびに対象インプラント体の基礎データを表 1

に示す.

2. 調査方法

本研究は,本院の診療録と手術記録をもとに全イン

表 1 対象患者・対象インプラント体の基礎データ 患者数(名) 性別(女性/男性:名) 年齢(平均年齢±標準偏差:歳) インプラント体総埋入本数(本) 男女別(女性/男性:本) 部位別(上顎/下顎:本)    (前歯/臼歯:本) 長径別(<10 mm/10~13 mm/≧ 13 mm:本) 幅径別(NP/RP/WP:本) インプラント体の種類別  機械加工面 ;(Bmk:本)  陽極酸化処理;(Bmk/Rpl:本) 術式別(一回法/二回法/即時荷重:本) 217 161/56 60.3±9.5 637 471/166 305/332 267/370 57/221/359 19/472/146 17 480/140 29/444/164 NP:直径 3.3~3.5 mm,Bmk : ブローネマルクインプラント (Nobel Biocare, Göteborg, Sweden),RP:直径 3.75~4.3 mm, Rpl:リプレイスセレクトテーパードインプラント(Nobel  Biocare, Göteborg, Sweden),WP:直径 5 mm acquisition of osseointegration was 98.1%, while that of  maintenance of osseointegration for 12 years was 99.1%. Thus, we conclude that follow-up surveys on the long-term prognosis of dental implants should be conducted  more frequently to expand the available clinical data on  this subject.

Key words:dental implant, osseointegration, life-table

(3)

プラント体を対象とした後ろ向き悉皆調査である.イ

ンプラント体予後の評価は,オッセオインテグレー

ションが獲得されたかどうかと,獲得されたオッセオ

インテグレーションが補綴装置装着後どれくらい維持

されていたかに分けて行った.診療録調査は 2 名の検

者が個々に行い,評価結果が異なる場合は協議の上最

終結果を得た.

1) オッセオインテグレーション獲得の評価

オッセオインテグレーション獲得は,インプラント

体埋入と同時にヒーリングアバットメントを装着した

一回法では補綴装置作製における印象採得時に,二回

法では二次手術時に,即時荷重では上顎で手術後約 6

カ月,下顎で約 4 カ月の治癒期間後に評価した.オッ

セオインテグレーション獲得の評価は,表 2 の獲得失

敗の評価基準のうち 1 つ以上該当する項目があった場

合,「オッセオインテグレーション獲得失敗」と判定

した.なお,オッセオインテグレーションの獲得率

は,埋入されたインプラント体総本数に対するオッセ

オインテグレーション獲得本数の割合として算出し

た.

2) オッセオインテグレーション維持の評価

オッセオインテグレーション維持の評価は,表 2 の

維持喪失の評価基準のうち 1 つ以上該当する項目が

あった場合,「オッセオインテグレーション維持喪失」

と判定した.

観察期間は,オッセオインテグレーション獲得を確

認した日から 2011 年 6 月 30 日とした.そして,表 2

の評価基準に該当する記載が診療録にあった,あるい

はインプラント体が撤去された日をもって「維持喪

失」とし,観察を打ち切った.なお,死亡や転居など

により追跡不能となった患者や,2010 年 7 月 1 日以

降来院のない患者は追跡不能患者と定義し,最終来院

日をもって「残存」として観察を終了した .

オッセオインテグレーション維持率は,追跡不能患

者も含めた intention-to-treat(ITT)解析による生命

保険数理法を用いて算出した.追跡不能患者のインプ

ラント体は,その半分を残存とみなし,残りの半分は

対象から除外するCutler-Edererの方法

18)

を採用した.

結  果

対象患者の年齢分布は 14 歳から 84 歳であり,特に

50 歳,60 歳代の女性が多かった(図 1).年別推移で

は,2002 年からインプラント体埋入患者は増えはじ

め,2008 年がピークで 35 名,111 本のインプラント

体が埋入されており,一人あたりの平均埋入本数は 2.9

本であった(図 2).

埋入された全インプラント体 637 本すべてにおいて

オッセオインテグレーション獲得の有無を確認でき

た.そのうち,オッセオインテグレーションが獲得で

きなかったインプラント体は 12 本で,11 本は即時荷

表 2 オッセオインテグレーション獲得・維持の評価基準 オッセオインテグレーション獲得失敗 1.エックス線写真にてインプラント体と周囲骨との間に明らかなエックス線透過像を認める. 2. トルクレンチにてインプラント体あるいはアバットメントに 20 Ncm のトルクを加えた際, 動揺・回転または疼痛がある. オッセオインテグレーション維持喪失 1.患者に,疼痛や異物感もしくは違和感などの主観的な症状の訴えがある. 2.インプラント周囲に排膿を伴う感染を認める. 3.単独でインプラント体に動揺を認める. 4.エックス線写真にてインプラント体と周囲骨との間に明らかなエックス線透過像を認める.  図 1 年齢別患者数・インプラント体埋入本数 0 10 20 30 40 50 60 70 80 ∼19 20∼29 30∼39 40∼49 50∼59 60∼69 70∼79 80∼ 0 50 100 150 200 250 300 女性 男性 本数 本数(本) 患者数(名) 年齢(歳)

(4)

重のインプラント体であった.そして,オッセオイン

テグレーション獲得率は 98.1%であった.

オッセオインテグレーション獲得を確認できたイン

プラント体 625 本にはすべて補綴装置が装着され機能

していたが,そのうち 5 本のインプラント体にオッセ

オインテグレーション維持喪失を認め,そのうち 4 本

は機能させてから 1 年以内に喪失していた.その結果,

12 年間のオッセオインテグレーションの累積維持率

は 99.1%であった(表 3).追跡期間は 2 カ月から 11

年 3 カ月で平均機能期間は 3 年 6 カ月であった.また,

追跡不能なインプラント体は 40 本であり,その内訳

は死亡した患者が 2 名(11 本),2010 年 7 月 1 日以降

来院のなかった患者が 14 名(29 本)で,追跡率は

93.6%であった.

考  察

1. 研究デザイン

本研究の目的は,日常の臨床においてインプラント

体の予後に関する有用な情報を蓄積することであり,

今後各施設間でのデータを統合する際において,本研

究結果が信頼性の高いデータのひとつとなることでも

ある.今回採用した後ろ向き調査では,追跡率,追跡

不能患者の扱いによって得られる結果の信憑性が大き

く揺らぐことが指摘されているため

19)

,本研究では当

院でインプラント体埋入手術を受けたすべての患者を

対象とした ITT 解析を採用した.また,オックス

フォードセンターのエビデンスレベルによると,治療

の予後判定には追跡率 80%のコホート研究が推奨さ

れている

20)

.今回,オッセオインテグレーション維持

率算出における対象インプラント体の追跡率は 93.6%

と高く,本研究の結果は信頼性の高いものであると考

えている.

また,オッセオインテグレーション維持率のような

機能期間を評価する場合には,時間軸を考慮した統計

手法を用いる必要がある

4,21)

.このようにまちまちな

観察期間のデータで累積生存率を算出する方法とし

て,Kaplan-Meier 法と生命保険数理法がある.一般

的 に は, 対 象 数 が 少 な い 場 合(n<50) は

Kaplan-Meier 法,多い場合は生命保険数理法が良いとされて

いる

22)

.生命保険数理法は,等間隔で観察期間を区切

り,各区間での生存率を求め累積生存率を算出できる

機能期間 (年)  インプラント体本数 (本)  撤去インプラント体本数 (本) 追跡不能 インプラント体本数(本) 区間維持率 (%) 累積維持率 (%) 0~1 1~2 2~3 3~4 4~5 5~6 6~7 7~8 8~9 9~10 10~11 11~12 625 517 419 316 232 164 109   78   42   17   12   12 4 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0   5 16   8   4   2   3   2   0   0   0   0   0 0.994 1.000 1.000 0.997 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 1.000 0.994 0.994 0.994 0.991 0.991 0.991 0.991 0.991 0.991 0.991 0.991 0.991 表 3 オッセオインテグレーション累積維持率 図 2 年別患者数・インプラント体埋入本数 0 40 80 120 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 0 40 80 120 本数 患者数 患者数(名) 本数(本) 年

(5)

ことが特徴である.さらに,イベントの発生(本研究

ではオッセオインテグレーションの維持喪失)数や追

跡不能患者が区間ごとに実数で示されるため,集団の

特性を把握しやすく,またメタアナリシスを実施する

際には欠かせない.そこで本研究では,オッセオイン

テグレーション維持に関する生存分析を,生命保険数

理法を用いて行った.

2. オッセオインテグレーション獲得率について

オッセオインテグレーションとは光学顕微鏡レベル

で骨組織とインプラント体表面との間に軟組織の介在

のない接合と定義されているが,実際の臨床現場にお

いてそれを確認することは不可能である.従って,一

般的には,インプラント体が臨床的に無症状な状態で

骨に強固に固定されその状態を維持していることを,

臨床的なオッセオインテグレーションとしている.

しかし,オッセオインテグレーション獲得の評価基

準は,現在のところ国際標準となるものが存在しない

ため,本研究では独自の基準を定めて評価した(表

2).過去の報告にはオッセオインテグレーション獲得

の基準をそれぞれ独自に定めたものもあり,藤野

1)

1)アバットメント周囲の粘膜に発赤,腫脹,排膿,

圧痛,自発痛がない.2)インプラント体と補綴物に

動揺がない.3)インプラント体周囲に幅広いエック

ス線透過隙がないこと,さらに宮本ら

3)

や荒川ら

5)

は,1)インプラント体と周囲骨との間に明らかな

エックス線透過像が認められない,2)インプラント

体あるいはアバットメントに 20 Ncm の負荷をかけた

際,回転,動揺,疼痛が認められなかった場合「獲得

した」と定義している.これらに照らし合わせても,

今回定めた基準は臨床的に妥当なものと考える.

荒川によると,2002 年 3 月までに出版された日本

人のインプラント体予後に関する文献を対象としたシ

ステマティックレビューでは,オッセオインテグレー

ション獲得率は 93.0%であったが

19)

,その後の 1996 年

から 2005 年までの文献を対象としたシステマティッ

クレビューでは 98.3%であったと報告している

21)

.こ

れは,以前幅広く使用されていた機械加工面のインプ

ラント体から,表面性状が酸エッチングや陽極酸化処

理などオッセオインテグレーション獲得に有利なイン

プラント体に進化を遂げたことが背景にあるものと推

測できる

23~25)

.本研究のオッセオインテグレーション

獲得率は,前述のシステマティックレビュー

21)

や欧米

諸外国の報告

19)

と同等の結果であった.今回,機械加

工面のインプラント体が全対象インプラント体 637 本

のうちわずか 17 本で,大部分が陽極酸化処理のイン

プラント体であったことが,このような結果に繋がっ

たものと考える.

また今回,オッセオインテグレーション獲得ができ

なかった 12 本のうち,1 本は二次手術時にトルクを

かけた際回転したため撤去した.残りの 11 本は即時

荷重のインプラント体であり,その内 6 本は埋入後 

1~5 カ月の治癒期間中に動揺を認めたため撤去し, 

5 本は治癒期間終了後にトルクをかけた際回転したた

め撤去した.このことは,即時荷重がオッセオインテ

グレーション獲得のリスク因子のひとつである可能性

を示唆していると考える.インプラント体の予後に関

するリスク因子を検討した過去の報告

2,3,5,6,9,10,13,15,21)

には,即時荷重が予測因子に含まれておらず,今後即

時荷重も予測因子に加えたさらなる検討が必要である

と思われる.

3. オッセオインテグレーション維持率について

現在,口腔インプラント治療の成功に関する国際基

準として Albrektsson らの成功基準

26)

が広く知られて

いるが,本研究は後ろ向き診療録調査のため,インプ

ラント体周囲の骨吸収に関して評価できなかった.そ

のため,今回,Buser らの基準

27)

に準じてオッセオイ

ンテグレーション維持に関する評価を行った(表 2).

過去の報告では,国内外を問わず 10 年間のオッセ

オインテグレーションの累積維持率はおおむね 95%

である

6,13,19,21,28)

.そして,オッセオインテグレーショ

ンの維持喪失は,機能負荷を加えた後比較的早期に発

生し,それ以降に生じる問題のほとんどはインプラン

ト体周囲粘膜の炎症や骨吸収を伴うインプラント周囲

炎であるといわれている

4,17,29)

.今回の 12 年間の累積

維持率は 99.1%と非常に高い成績であった(表 3).

本院では補綴装置装着後,徹底したプラークコント

ロールの維持と咬合管理を行っており,このことが高

い追跡率(リコール率)と臨床成績に繋がったものと

考えている.また,維持喪失のほとんどは補綴装置装

着後 1 年以内に発生しており,過去の報告と合致して

いた

1,3)

機能負荷後,撤去あるいは脱落した 5 本のインプラ

(6)

ント体のうち,1 本は補綴装置装着後 2 カ月で動揺を

認め,2 本は 3 カ月後に補綴装置が破折しインプラン

ト体に動揺を認めたため撤去した.いずれもインプラ

ント体に過度な負荷がかかったものと考えている.さ

らに 1 本は,インプラント体に動揺や回転もなくエッ

クス線的にも問題はなかったが,補綴装置装着後患者

が疼痛を訴えたため 2 カ月で撤去した.そして,もう

1 本は負荷後 3 年 8 カ月で粘膜の腫脹を認め,補綴装

置を外したところインプラント体に動揺を認めたため

撤去した.これはインプラント周囲炎によるものと考

えている.数は少ない維持喪失症例ではあるが,補綴

装置装着後 1 年の咬合管理ならびに中・長期的なイン

プラント周囲炎に対する口腔ケアの重要性が強く示唆

された.

日本人と欧米人では歯の喪失後の骨量やもともとの

骨密度に相違があるため

3,28)

,欧米諸外国の調査結果

をそのまま日本人に適用できるとは考えにくい.本研

究によって,日本人を対象としたインプラント体予後

に関するひとつの重要なデータを提供できたと考えて

いる.今後も更なる長期予後に関する臨床データの蓄

積が必要であるとともに,各施設において適切な研究

デザインに遵守した臨床結果が蓄積され,日本人にお

ける統合データが更新されることを期待する.

結  論

矢田生活協同組合医療センター歯科口腔外科にて,

1999 年 1 月から 2010 年 12 月までの 12 年間にインプ

ラント体埋入手術を行った全患者 217 名,全インプラ

ント体 637 本を対象に,オッセオインテグレーション

獲得と維持についての後ろ向き悉皆調査を行い以下の

結果を得た.

1.オッセオインテグレーション獲得率は 98.1%で

あった.

2.12 年間のオッセオインテグレーション累積維持

率は 99.1%であった.

 本研究の一部は,第 30 回日本口腔インプラント学会近畿・ 北陸支部総会学術大会(2010 年 11 月 21 日,福井)において 発表した. 文  献    1)  藤野 茂.Osseointegrated Implant Bridge System によ る自験例 65 症例の臨床的問題点とその対応:第 1 報 埋 入フィクスチャーの Osseointegration 獲得と上部構造体 を装着したフィクスチャーの Osseointegration 喪失につ いて.日口腔インプラント誌 1995;8:192─200.   2)  小川 淳,中里滋樹,古城慎太郎,工藤啓吾.骨結合型 インプラント 10 年間の臨床成績に関する検討.日口腔イ ンプラント誌 2001;14:598─603.   3)  宮本洋二,藤澤健司,武知正晃,桃田幸弘,長山 勝, 山内英嗣,坂東永一,日野出大輔.歯科インプラントの オッセオインテグレーション獲得に関与する臨床的要因 の検討.日口腔インプラント誌 2002;15:436─445.   4)  河野生司,林 康博,永田省蔵,鳥巣猶喜,栃原秀紀, 松田光正,牛島 隆.インプラントの生存率を追う:多 施設における ITI インプラント 1,268 本の臨床統計.歯 界展望 2002;99:1077─1083.   5)  荒川 光,窪木拓男,完山 学,園山 亘,小島俊司, 矢谷博文,植野高章,高木 慎,菅原利夫,真野隆充, 松村智弘.口腔インプラントの生存に関する疫学調査  ─オッセオインテグレーションの獲得と維持からみた評 価─.日口腔インプラント誌 2002;15:66─75.   6)  Ferrigno N, Laureti M, Fanali S, Grippaudo G. A long-term follow-up study of non-submerged ITI implants in  the treatment of totally edentulous jaws. Part 1:Ten-year  life  table  analysis  of  a  prospective  multicenter  study with 1286 implants. Clin Oral Implants Res 2002; 13:260─273.

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(7)

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参照

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