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サイズ分画した植物プランクトンの増殖に対するリン制限に関する研究 

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Academic year: 2021

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論 文 題 目 :サイズ分画した植物プランクトンの増殖に対する

リン制限に関する研究

-琵琶湖とバイカル湖を比較して-

著 者 :紀平 征希 研 究 科 、 専 攻 名 :環境科学研究科環境動態学専攻 学 位 記 番 号 :環課第12 号 博士号授与年月日:平成21 年 3 月 19 日 本研究では,植物プランクトン群集の時空間変動の仕組みを,プランクトンの細胞サイ ズと栄養塩利用との関係から解析した。まず琵琶湖において,植物プランクトン群集の時 空間変動をサイズ別(0.7-2.7 μm と>2.7 μm)に明らかにした。次に,サイズ分画した琵琶 湖の植物プランクトン群集を用いて,5 種類の方法によりリン制限の状態を季節的に調べた。 最後に,バイカル湖(ロシア)において植物プランクトン群集のサイズ構造とそのリンの 栄養状態について調べ,琵琶湖の結果と比較した。 琵琶湖のサイズ別植物プランクトン群集の時空間変動は,北湖最深部付近の地点で鉛直 分布を,最深部付近から芹川河口にかけての7 地点で水平分布を季節的に調べた。加えて, 琵琶湖全域57 地点において具体的な広域の水平分布を調べた。サイズ分画はガラス繊維ろ 紙を用いて,0.7-2.7 μm と>2.7 μm に分画した。その結果,栄養塩濃度が減少する夏季や, 南湖に比べて貧栄養な北湖では,大型植物プランクトンが減少するために,群集全体に占 める小型植物プランクトン寄与が高まり,植物プランクトンのサイズ構造は湖の栄養状態 によって影響を受けることが示唆された。 次に,サイズ分画した植物プランクトン群集のリン制限の状態を評価した。まず群集全 体のリン制限を評価するために,DIN:DIP 比(溶存態窒素と溶存態無機リンの比),PC:PP 比(懸濁態炭素と懸濁態リンの比),APA:PP 比(アルカリホスファターゼ活性と懸濁態リ ンの比)を調べた。続いてサイズ分画した植物プランクトン群集のリン制限を評価するた めに,<2.7 μm,5-63 μm,63-200 μm に分画し,それらの PC:PP 比,APA:PP 比を測定し, さらに栄養塩添加培養実験を行った。また,過剰リン(植物プランクトンがリンを過剰に 摂取し,体内に貯蔵しているリン)についても測定した。植物プランクトンの生理状態は, 群集全体とサイズ別の両方でリン制限と判断される期間が長かった。群集全体のリン制限 では,DIN:DIP 比,PC:PP 比,APA:PP 比による評価はほぼ一致していた。一方,サイズ 別のリン制限評価は,PC:PP 比,APA:PP 比はほぼ一致したが,栄養塩添加培養実験では, サイズにより異なる応答が見られた。具体的には,小型植物プランクトンではリン制限だ ったが,大型の植物プランクトンではリン制限ではない期間が存在した。また,過剰リン とPC の比は,0.7-2.7 μm 画分よりも>2.7 μm 画分で高かった。つまり,夏季の大型植物プ ランクトンは,細胞内の過剰リンを使って増殖をまかなっていることが考えられた。この ことは,栄養塩添加培養実験での評価は他の方法では現れない評価を明示していると考え られる。 バイカル湖では,サイズ分画した植物プランクトン群集のChl.a,PC,PP(0.7-2.7 μm

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と>2.7 μm)の測定を表面水で 21 地点,鉛直分布で 1 地点,リン添加実験を 1 地点で行っ た。その結果,0.7-2.7 μm 画分の植物プランクトンが基礎生産者として重要な役割を果た していることが認められ,さらに琵琶湖と比較して0.7-2.7 μm 画分の植物プランクトンの 寄与は高かった。また,PC:PP 比から植物プランクトン群集の栄養状態は,0.7-2.7 μm 画 分ではリン制限を受けておらず,>2.7 μm 画分では中程度のリン制限を受けていることが示 唆された。これらのPC:PP 比は琵琶湖の PC:PP 比に比べて低かった。リン添加培養実験 の結果からはいずれの画分においてもリン制限と判断することはできなかった。したがっ て,植物プランクトン群集のリン制限の程度を琵琶湖と比較した場合,バイカル湖ではリ ン制限が琵琶湖に比べて緩やかであると判断された。 本研究の結果から,琵琶湖での季節変化,琵琶湖とバイカル湖の比較において湖の栄養 状態が植物プランクトン群集のサイズ構造に影響を与える要因の一つであることが明らか になった。また,植物プランクトン群集のリン制限の程度を比較した場合,琵琶湖ではリ ン制限がバイカル湖に比べて厳しいと判断された。そして各方法によるリン制限評価の比 較において,栄養塩添加培養実験で他の方法と異なる結果が得られたことは,従来,よく 用いられているDIN:DIP 比や PC:PP 比では現れない評価を明示している可能性がある。 それゆえ今後,リン制限を単に生元素の現存量やその比によってのみ判断するのではなく, 複数の方法による評価を総合して判断しなければ,解釈を誤ることが考えられる。以上の ことから,本研究の成果は今後,富栄養化に伴う生態系構造や機能の変化についての解明 や琵琶湖環境の修復・保全を考える上でも有用な知見になるだろう。

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