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特発性大腿骨頭壊死症における 血管形態の組織学的評価

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Academic year: 2021

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特発性大腿骨頭壊死症における  血管形態の組織学的評価

昭和大学医学部病理学講座病理学部門

原田 健司  斎藤 光次  平林 幸大  村上 悠人  山岡 桂太  諸星 利男

昭和大学横浜市北部病院病理診断科

  国村 利明

昭和大学医学部衛生学公衆衛生学講座(衛生学部門)

  山野 優子

昭和大学藤が丘病院整形外科

  渥 美 敬

要約:大腿骨頭壊死の原因は諸説あるが,大腿骨頭壊死への栄養動脈の循環障害の可能性を大 とする説が多い.これまでに選択的動脈造影により大腿骨頭周辺から骨頭内の血管病変につい て検索がなされてきたが,末梢の微小血管までの報告は少ない1).今回われわれは,大腿骨頭 壊死後の修復血管進入部周囲や MRI T1 強調画像における帯状低信号領域(以下 band 部)に おける血管形態の組織学的評価を行った.MRI は骨頭壊死の早期発見2)や壊死組織範囲の決定 に有効であり,MRI における band 像は組織学的には細胞性修復反応や血管に富む肉芽組織や 修復反応を示している.Band 部で囲まれた領域には骨梁の壊死と骨髄の無反応性の壊死が認 められ,band 部の末梢側は正常組織とされている3).対象は大腿骨頭壊死症に対して人工股 関節置換術を施行した際に摘出した 28 骨頭で男性 21 例・女性 7 例,平均年齢 46.9 歳(27 〜 66 歳),Stage 3A:6 例・Stage 3B:16 例・Stage 4:6 例であった.摘出された大腿骨頭は ホルマリン固定後に,K-CX で脱灰ののちに冠状断でパラフィン切片を作製しヘマトキシリン エオジン染色後に光学顕微鏡で観察した.光学顕微鏡画像を OLYMPUS AX 80 で取り込こん だ後,WinROOF V5.01 を用いて血管径と血管数を測定した.観察部位は① band 部・② band 部の外側遠位部・③ band 部の外側近位部・④正常部の 4 箇所とした.結果は血管径について は band 部と band 部の外側遠位で,Stage 4 は Stage 3 と比較して有意に血管径が小さかった.

血管数については band 部と band 部の外側遠位は,正常部と band 部の外側近位と比較して 有意に血管数が多い結果となった.これらの結果について以下のように考察した.骨頭壊死後 の修復血管の進入は骨頭外側から起こり,修復血管の増生を反映して band 部の外側遠位部と band 部で血管数が多くなると考えた.また Stage 4 は荷重ストレスに曝される期間が長く,

今回観察した病理所見では Stage 4 は Stage 3 と比較して線維化が強く組織球等の炎症細胞浸 潤が強い傾向があった.荷重ストレスにより進入が頓挫した修復血管の周囲で,時間経過によ り間質の線維組織の増生が起こり血管は相対的に小さくなると考えた.つまり修復血管の消退 する過程を反映して,Stage 4 の band 部と band 部の外側遠位において血管径が小さくなると 考えた.

キーワード:特発性大腿骨頭壊死症,形態学的観察,血管数,血管径

 特発性大腿骨頭壊死症は骨頭内の阻血壊死の結果 であるが,その病態はいまだ解明されていない.大 腿骨内の阻血の原因として,大腿骨頭の栄養動脈の

循環障害の可能性を大とする説が多い.これまでに 選択的動脈造影などによる大腿骨頭周辺から骨頭内 の血管病変について検索がなされてきたが,末梢の 原  著

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均年齢は 41.9 歳(27 〜 66 歳),Stage 3A:6 関節・

Stage 3B:16 関節・Stage 4:6 関節であった.病 期分類は Stage 3A を骨頭の圧壊はあるが関節裂隙 は保たれている時期,Stage 3B を骨頭圧壊が 3 mm 以上の時期,Stage 4 を明らかな関節症性変化が出 現する時期とした.骨頭の圧壊により疼痛が出現す るため4),手術は Stage 3A 以降のものに施行した.

手術により摘出された大腿骨頭は前額面中央で半割 し,脱灰・包埋後に厚さ 5μm に薄切しヘマトキシ リン・エオシン染色を行った.光学顕微鏡画像を OLYMPUS AX80 で取り込み Win ROOF V5.01 を 用いて血管径と血管数を測定した.血管径は血管の 長軸径に対して最長になるように垂線を引き,短径 として測定した.観察部位は band 部・band 部の 外側遠位・band 部の外側近位・正常部の 4 か所で 行った(Fig. 1).band 部は添加骨形成が盛んであ る部位のやや近位で,細胞浸潤が多く見られる部位 とした.また骨頭壊死後の修復血管の進入が骨頭外 側から起こることを想定し band 部の外側の観察を 行い,band 部の外側近位は軟骨下骨折と band 部 に挟まれる部位とした.壊死領域は軟骨下骨折直下 部で正常部は骨頭内の band 部の遠位とした.

 摘出骨頭を観察すると骨折部では軟骨がその直下 の壊死骨とともに一部剥離していた.壊死部周囲に は骨梁が添加骨形成により肥厚しており,H.E. 染 色では骨組織が赤く染まるため壊死境界部が明瞭に 観察できた.圧壊部分には necrotic debris といわ れる組織破壊片が骨髄に充満し,血管構造や骨髄細 胞は融解消失していた.各観察部位における特徴 は,band 部では細胞浸潤と血管の新生が著明であ り修復反応を反映して線維性修復組織を多く認め一 部で添加骨形成も認めた.Band 部の外側遠位では うっ滞した血管の増殖と繊維修復組織を多く認め

た.Band 部の外側近位では少数の血管を認めたが 軟骨下骨折部に近づくにつれて髄腔内に存在する骨 細胞の核が消失し骨梁の壊死を表す empty lacuna と,好酸性無構造の変性壊死物質が存在し無反応性 の壊死を認めた.非病変部では living bone である 骨梁と脂肪組織と血管を認めた(Fig. 2).

 血管径について検索したところ,band 部の血管 径は Stage 3 で平均 3.699μ,Stage 4 で平均 2.989μ であった.Mann-Whitney の U 検定にて P = 0.004 と Stage 4 で有意に血管径は小さかった.また band 部の外側遠位の血管径は Stage 3 で平均 4.411μ Stage 4 で平均 3.041μであり,Mann-Whitney の U 検定にて P = 0.011 で Stage 4 で有意に血管径は小 さかった.band 部の外側近位の血管径は Stage 3 で 平均 3.371μで,Stage 4 で平均 2.973μであり Stage 間での有意差は認めなかった.また正常部の血管径 の平均は Stage 3 で 3.379μ,Stage 4 で 3.988μで あり Stage 間での有意差は認めなかった(Fig. 3).

Stage 3A と Stage 3B 間における検索において,各 部位における血管径に有意差は認めなかった.

 次に血管数について検索を行い,全症例の各部位 での血管数の合計は band 部は 382 本,band 部の外 側遠位は 391 本,band 部の外側近位は 125 本,正 常部は 93 本であった.t 検定にて band 部は band

Fig. 1 Histologically examine area.

① Band like sclerosis area.

② Lateral and distal end of band like sclerosis area.

③ Lateral and proximal end of band like sclerosis area.

④ Normal area.

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部の外側近位と正常部と比較して有意に血管数が多 かった(P < 0.001 ).また band 部の外側遠位も band 部の外側近位と正常部と比較して有意に血管 数が多かった(P < 0.001).band 部と band 部の外 側近位については有意差を認めなかった(Fig. 4).

 大腿骨頭壊死症の診断において MRI 画像は初期 より大腿骨頭に T1 及び T2 強調画像での帯状の band 像が認められ,壊死の早期発見や壊死範囲の 決定に有効である5).Band 部は修復反応の最前線 であり,健常部と壊死部との境界であることから力 学的脆弱性のため骨頭の圧潰が生じる6).大腿骨頭

壊死後の修復血管の進入は骨頭圧潰による力学的ス トレスのため頓挫することが知られており7),本研 究で見られた band 部での血管数の増加はこの頓挫 した血管を反映していると考えられる.

 特発性大腿骨頭壊死症はステロイド大量投与,ア ルコール多飲などを誘因として発症し最終的には股 関節の荒廃に至る.原因論には脂肪細胞の増大によ る末梢血管の圧迫,骨髄内圧の上昇による com par- t ment 症候群の状態,末梢血管での脂肪塞栓と続発 する DIC 様変化,angiogenesis に病因を求めるも のなどが述べられているが8),大腿骨頭への栄養動 脈の循環障害の可能性を大とする説が多い.大腿骨 頭への栄養血管の多くは大腿深動脈から大腿内側回 Fig. 2  Pathlogical findings.

a:Band like sclerosis area: There were many cell permeation, reva sculari za tion and  osteoplasty reflecting the restoration reaction.

b:Lateral and distal end of band like sclerosis area : There were many engorged  vessels and fibrous restoration organization.

c:Lateral and proximal end of band like sclerosis area : Approaching sub chon doral  fracture, empty lacuna and an acidophilic amorphous necrotic material existed. And  we could find nothing-responsive necrosis.

d:Normal area: There were living bone, fat cell, vessels.

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旋動脈が分岐し,転子間稜に沿って posterior reti- na cular artery が走行し関節内に分布後,superior  reti nacular artery が分岐し骨頭中枢の広範囲な部 分を栄養する8).この superior retinacular artery が何らかの障害を受けると骨頭に血行障害が生じる と考えられている9,10).渥美らは選択的動脈造影を

行い骨頭壊死後の血行動態について報告している.

それによると正常では骨頭外側より superior reti- nacular artery が弧状を描いて骨頭中央まで造影さ れるが,壊死発症後早期では superior retinacular  artery は造影されない.しかし病期が進行すると,

superior retinacular artery は修復血管として壊死 域周辺まで不正な形態で進入するとしている11).つ まり病期の進行により修復血管の進入が見られるこ とになり,この修復血管の進入を反映して band 部 外側遠位で血管数は増加すると考えた.

 病理所見は観察する部位により異なる像を呈する が, 血 管 数 が 多 く 修 復 活 動 が 盛 ん な band 部 と band 部の外側遠位の Stage 4 は,Stage 3 と比較し て線維組織の増生と組織球の浸潤が多く見られる傾 向にあった(Fig. 5).一般に肉芽組織では早期には 血管と炎症細胞の浸潤が見られ,時間経過と共に血 管が消退し線維組織の増生がみられる.これと同様 に大腿骨頭壊死でも時間経過により線維組織の増生 と組織球主体の炎症細胞浸潤後に間質が線維組織に 置き換わり血管径が小さくなるため,時間経過によ Fig. 3  Comparing the number of vessels between Stage 3 and Stage 4.

a:Band like sclerosis area.

b:Lateral and distal end of band like sclerosis area.

c:Lateral and proximal end of band like sclerosis area.

d:Normal area.

Fig. 4  Number of the vessels in each area.

① Band like sclerosis area.

② Lateral and dital end of band like sclerosis area.

③ Lateral and proximal end of band like sclerosis area.

④ Normal area.

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り変性が進行した Stage 4 では血管径が小さくなる と考察した.

 band 部と band 部の外側遠位での血管数の増加 は,修復血管の進入を裏付ける結果となった.また 変性の進行を反映してか Stage 4 の band 部と band 部の外側遠位で血管径は小さかった.今回われわれ は血管について重点的に検索を行い,大腿骨壊死症 に対して初めて血管径と血管数を同時に測定した.

本症例の血行障害の原因については不明な点が多い が,ステロイドよる血管内皮機能障害を原因とする 報告もある.またステロイドによる脂質代謝異常や 血液凝固異常が関与している可能性も報告されてお 13),骨壊死動物モデルにおける発症予防として高 脂血症治療剤・抗凝固剤や抗酸化剤で効果が確認さ

れている14‑16).また新しい治療法として自己骨髄単

核球移植17)・濃縮自家骨髄移植法18)についても進 められており今後の予防・治療の確立と,病態の根 本である循環障害の原因究明が望まれる.

文  献

1) 大内郁夫,船山完一,安倍吉則:無腐性大腿骨 頭壊死における microcirculation の形態学的観 察.臨整外 17:1173‑1177,1982.

2) Stevens K, Tao C, Lee SU,  : Subchondral  fra ctures in osteonecrosis of the femoral head: 

comparison of radiography, CT and MR imag- ing. AJR Am J Roentgenol  180:363‑368, 2003.

3) Kubo T, Yamamoto T, Inoue S,  : Histologi- cal findings of bone marrow edema pattern on  MRI in osteonecrosis of the femoral head. 

  5:520‑523, 2000.

4) Sissons HA, Nuovo MA and Steiner GC: Pathlo-

gy of osteonecrosis of the femoral head. A re- view of experience at the hospital for joint dis- eases, New York.    21:229‑238,  1992.

5) 加来信広,福永 拙,高下光弘,ほか:特発性 大腿骨頭壊死症の MR 画像と病理組織像の比較 検討.整外と災外 48:673‑677,1999.

6) 松田秀策,山本卓明,馬渡正明,ほか:特発性 大腿骨頭壊死症における帯状硬化像の検討.整 外と災外 46:531‑535,1997.

7) 渥美 敬,黒木良克,斎藤 進,ほか:特発性 大腿骨頭壊死および変形性股関節症に対する mi- croangiography.  11:89‑95,1985.

8) 渥美 敬,村木 稔,吉原 哲,ほか:特発性 大 腿 骨 頭 壊 死 症 に お け る superior retinacular  artery の血行障害と修復 選択的動脈造影,微 細動脈造影からの考察.骨・関節・靭帯 11:

1451‑1456,1998.

9) 平沼泰成,渥美 敬,山野賢一,ほか:特発性 大腿骨頭壊死症の血行流入経路に関する検討.

 22:312‑315,1996.

10) 渥美 敬,黒木良克,吉田雅之,ほか:血管造 影からみた特発性大腿骨頭壊死症の病態.東日 臨整外会誌 4:722‑725,1992.

11) Atsumi T, Kuroki Y, Yamano K,  : Revascu- larization in nontraumatic osteonecrosis of the  femoral head.   325:168‑

173, 1996.

12) Atsumi T and Kuroki Y: Role of impairment of  blood supply of the femoral head in the patho- gesis of idiopathic osteonecrosis.   

277:22‑30, 1992.

13) Motomura G, Yamamoto T, Miyanishi K,  Combined effects of an anticoagulant and a lip- id ‑lowering agent on the prevention of steroid- induced osteonecrosis in rabbits. 

50:3387‑3391, 2004.

14) Iwakiri K, Oda Y, Kaneshiro Y,  : Effect of  Fig. 5  Pathologic comparison between Stage 3 and Stage 4.

The tendency that the hyperplasia of the fiber tissue and histiocytic permeation are frequent in Stage 4. 

a:Stage 3 b:Stage 4

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HISTOLOGICAL ANALYSIS OF THE NUMBER AND WEIGHT OF   VESSELS OF OSTEONECROSIS OF THE FEMORAL HEAD

Kenji HARADA, Koji SAITO, Kodai HIRABAYASHI,   Yuto MURAKAMI, Keita YAMAOKA and Toshio MOROHOSHI

Department of Pathology, Showa University School of Medicine

Toshiaki KUNIMURA

Department of Clinical Diagnostic Pathology, Showa University Northern Yokohama Hospital

Yuko YAMANO

Department of Hygiene and Preventive Medicine, Showa University School of Medicine

Takashi ASTUMI

Department of Orthopaedic Surgery, Showa University Fujigaoka Hospital

 Abstract    Aseptic necrosis of the femoral head is caused by a circulatory disorder in the feeding  artery.  This report investigates the morphological abnormality in the vessel that causes the disorder.  

We studied 28 hip joints of 21 males and 7 females (avg. age 47 years; range 27 to 66) that had been re- sected during total hip arthroplasty.  Of the 28, 6 hips were Stage 3A, 16 Stage 3B, and 6 Stage 4.  We in- vestigated four areas: the band lesion, the distal-lateral part close to the band lesion, the proximal-lateral  part close to the band lesion, and the normal part of each femoral head.  The vessel number was greater  in the band lesion and the distal-lateral part than in the normal part and the proximal-lateral part.  This  fact confirms that the ingression of reparative vessels occurs at the lateral part in the head following os- teonecrosis.  The diameter of the vessels in the band lesion and in the distal-lateral part was significantly  less in Stage 4 than in Stage 3.  This result indicates that the load stress delays the reparative vessel in- gression compared to the interstitial fibrosis during the delay.

Key words:  idiopathic osteonecrosis of femoral head, morphological observation, number of blood vessel,  diameter of blood vessel

〔受付:6 月 4 日,受理:10 月 23 日,2012〕

参照

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