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福岡県特産高菜漬の乳酸発酵特性解明のための調査(第

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Academic year: 2021

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福岡県特産高菜漬の乳酸発酵特性解明のための調査(第2報)

-漬樽の素材が発酵経過に及ぼす影響-

樋口 智子

*1

平野 吉男

*1

塚谷 忠之

*1

Research of Lactic Acid Fermentation of Traditional Pickles in Fukuoka Prefecture,

“Takana-zuke” (2nd report)

- The Influence of the Tank Material to the Fermentation Profile - Tomoko Higuchi, Yoshio Hirano and Tadayuki Tsukatani

瀬高地区の 3 つの高菜漬製造業社の工場漬樽(木製樽 1 基およびコンクリートタンク 2 基)よりサンプリングを 行い,乳酸菌の生育速度経過を調査した。最終到達菌濃度は 3 基ともほぼ同程度であったが,木製樽で仕込んだ高 菜漬の方がコンクリート製タンクに比べて約 2 ヶ月早く最終菌濃度に達することが明らかとなった。

1 はじめに

高菜はアブラナ科アブラナ属カラシナの変種であり 広く西日本で栽培されるが,高菜漬としては主に三池 高菜と阿蘇高菜が用いられる。阿蘇高菜は熊本県の阿 蘇地方で栽培される品種で,平成19年4月に地域団体 商標制度に「阿蘇たかな漬」が熊本県の阿蘇たかな漬 共同組合より登録されている。一方,福岡県の特産で ある高菜漬は三池高菜を用いて製造される。三池高菜 は根元が広く肉厚であることが特徴で,特に福岡県南 の瀬高地区で栽培が盛んである。3月ごろに収穫され た三池高菜を塩とウコン,鷹の爪等と交互に仕込み重 石をかけ,半年から1年の熟成ののち出荷される。工 業規模で生産される高菜漬の漬け樽は,半地下に埋め 込まれることで樽内部温度を一定に保ち,古くは木樽 を用いることで木樽表面に優良乳酸菌が棲みつき,安 定した乳酸発酵が行われてきたと考えられる。しかし ながら最近では,木樽は貴重となり,一般的には表面 加工を施したコンクリート製のタンクが用いられるよ うになってきた。こうしたタンクは四角い形状なので 無駄なく高菜を漬けることができるという利点がある が,常住乳酸菌による安定した乳酸発酵は期待できな い。

現在も昔ながらの木樽を所有し,使用している例は 尐なくなってきており,新規導入の際はコンクリート タンクへ移行せざるを得ない。これまでと同様な品質 を維持,さらには向上させるためには,実際の高菜漬 生産における乳酸発酵特性を明らかにする必要がある。

今回,瀬高地区の3つの高菜漬製造業社の工場漬樽

(木製樽1基およびコンクリートタンク2基)よりサン プリングを行い,乳酸菌数を計測し,製造タンクの素 材の違いによる生育経過の比較を行ったので報告する。

2 研究,実験方法 2-1 サンプルの採取

瀬高地区の3つの高菜漬製造業社の工場漬樽をピッ クアップした。1社はすべて木製樽を使用しており,

この木製樽よりサンプリングを行った。2社は木製樽 と表面加工コンクリートタンクの併用で生産していた めコンクリートタンクよりサンプリングを行った。各 タンクより計時的にサンプリングを行った。タンク上 部より滅菌ピペットを挿入し上部液面より約30cmのと ころよりサンプルを採取した。

2-2 乳酸菌数の計測

乳酸菌数の計測は乳酸菌実験マニュアル1)を参考に,

サンプルを滅菌生理食塩水で10倍ずつの希釈列を作成 し白亜寒天MRS培地:Difco Lactobacilli MRS Broth

(Difco製)55g/L,アジ化ナトリウム (和光純薬)

50ppm,シクロヘキシミド (和光純薬) 10ppm,炭 酸カ ル シウ ム (和 光純 薬)5.0g/L, 細菌 培 地用 寒 天

(和光純薬)15g/Lを用い,混釈法で30℃,2日間培養 しコロニーカウントを行った。

3 結果と考察

木製樽1基(A社;●)および表面加工コンクリート タンク2基(B社;△およびC社;□)より採取した漬 け汁の乳酸菌数計時変化を図1に示した。3基のタンク

*1 生物食品研究所

(2)

の乳酸菌数は最終的には106CFU/mLレベルに達したが、

木製樽ではコンクリートタンクと比べて約2ヶ月早く 最高菌数に達した。

図1 乳酸菌数の計時変化 木製樽1基(A社;●)

コンクリートタンク2基(B社;△,C社;□)

微生物の増殖速度(単位時間当たりの菌体数変化;

dX

/

dt

)は,その時に存在する菌体数(

X

)に比例し,次 のように与えられる2)

dX

/

dt

= μ・

X

μ;比増殖速度(時間-1)

今回調査を行った発酵タンクにおける対数増殖期を A社で3週目~8週目,B社で5週目~10週目,C社で10週 目~15週目とし,比増殖速度を算出した(表1)。

表1 対数増殖期の比増殖速度の比較

比増殖速度

μ

(week

-1

)

A社;木製樽(●) 0.612

B 社;コンクリートタンク(△) 0.391 C 社;コンクリートタンク(□) 0.342

表1に示す通り,比増殖速度も木製樽のほうが高い 値を示した。

長年使用されてきた木製樽は表面に優良乳酸菌が棲 みついていると考えられ、その乳酸菌がスターターと なり漬け込み初期の乳酸菌増殖が速やかに進むと考え られる。表1に示すとおり,速度論的にも乳酸菌の立

ち上がりにおける木製樽の有効性は明らかであり,結 果として安定した漬物発酵につながっていたと考えら れる。

4 まとめ

以前は木樽表面に棲みついた乳酸菌がスターターと なり速やかな乳酸菌の増殖および乳酸の生産によるpH の低下により雑菌汚染を抑え,安定した熟成環境によ り一定の品質の高菜漬が安定生産できていたと考えら れる。しかしながら近年,木樽は貴重となり,表面加 工を施したコンクリートタンクが一般的となってきて おり、製造管理を強化しなければ乳酸菌の増殖pHの速 やかな低下が起こる前に雑菌汚染により熟成環境が乱 れる危険性が増していると思われる。また,新たに木 樽を導入する場合でも表面に棲みつく菌相が優良乳酸 菌であるという保証はない。こうした場合は人為的に 優良乳酸菌をスターターとして添加する製造法を確立 することが望ましい。

謝辞

本調査は福岡県漬物工業協同組合ならびに同組合加 入漬物製造所の方々のご協力により行うことができま した。ここに謝意を表します。

5 参考文献

1) 小崎道雄監修:乳酸菌実験マニュアル -分離か ら同定まで-,pp.6-20,朝倉書店(1992)

2) 生 物 工 学 実 験 書 改 訂 版 日 本 生 物 工 学 会 編 , p.309,培風館(2002)

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