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立体映像における機能的視差の経路記憶への影響

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Academic year: 2021

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立体映像における機能的視差の経路記憶への影響

Disparity modification of stereoscopic images and the effects on route memory

1W110039-5 板岡 暖美 指導教員 河合 隆史 教授

ITAOKA Harumi Prof. KAWAI Takashi

概要: 本研究は、立体映像におけるヒトの認知特性を防災コンテンツに応用するため、2D/3D変換を用いた表現として 機能的3D画像を用い、経路記憶への影響を検討したものである。機能的 3D画像とは、避難経路を記憶する際に経路の 目印となるような箇所に機能的視差と定義した両眼視差を与えた画像である。2D、3D、機能的3D、妨害3D条件の4 件において、記憶した経路を正しく選択できるかを検証する実験を約1週間のブランクをあけて2回にわけて行い、正答 率と記憶時の注視傾向を比較した。妨害 3D条件では、記憶する際に妨害となる箇所に両眼視差を付加した画像を呈示し た。その結果、機能的3D条件が最も正答率が高くなる傾向がみられ、また、2回目の経路選択では有意に高くなる結果が 得られた。このことから機能的 3D画像は、防災コンテンツとして有効的であること、さらに時間経過とともに記憶に影 響を与える可能性があることが示唆された。

キーワード:立体映像、両眼視差、記憶、防災教育、避難経路

Keywords: stereoscopic images, binocular disparity, memory, education of disaster prevention, evacuation route

1. はじめに

日本の防災教育は、阪神・淡路大震災を機に再び 注目され、さらに2011年に起きた東日本大震災以降、

防災コンテンツの重要性が高まってきている[1]。 本研究では、災害時の避難経路を指示するコンテ ンツを作成するために、手動で立体感を付加する

2D/3D変換を用いた局所3D映像と傾斜型 3D映像

の認知特性を応用し、機能的 3D 画像を提案した。

局所3D映像とは、2D映像の一部分のみに交差性の 両眼視差を与えた映像であり、先行研究から視線や 記憶に影響を与えるという結果が得られている[2]。一 方、傾斜 3D 映像とは、画面全体にグラデーション 型の両眼視差を与えた映像であり、先行研究から記 憶や方向判断に影響を与えるという結果が得られて いる[3]。そして、機能的3D画像とは、避難経路を記 憶する際に経路の目印となるような箇所に機能的視 差と定義した両眼視差を与えた画像である。これを 2D条件、3D条件および記憶する際に妨害となる箇 所に両眼視差を付加した画像を呈示する妨害 3D 条 件と比較することで、記憶に与える影響を明らかに

した。さらに、防災教育のさらなる向上を目標とし、

コンテンツの有効性について検討を行った。

2. 実験方法

呈示刺激は 3D カメラレコーダー(AG-3DP1)にて 撮影した早稲田大学西早稲田キャンパス・63号館内 の画像を8枚選定した。呈示条件は2D条件、3D条 件、機能的3D条件、妨害3D条件の4条件を設定し、

刺激呈示は27インチIPS3D液晶モニターにて行っ た。また、眼球運動測定器(PowerRef3)を用いて視線 を測定するため、偏光フィルムをモニターと参加者 の間に固定し、参加者はあご台を用いて視線を固定 し、偏光フィルムを通して画面を観察した。

実験は、機能的 3D 画像が記憶に与える影響を検 討するために、約1週間のブランクをあけて2回再 認課題を行った。1回目の実験は暗室で行い、学習・

妨害・再認課題を用いて評価した。学習課題では、

刺激を自由に観察した後、進みたいと思った経路を ゲームコントローラーにて選択し、その正誤情報を 得ることで正しい経路を 8 枚分記憶する。妨害課題

(2)

2 には、2桁×2桁の掛け算10問からなる計算課題を 用いた。再認課題では、再度呈示される 8 枚の画像 ごとに 5 秒以内で正しい経路を選択してもらった。

実験後には立体感と記憶、防災に関するアンケート 調査を行った。そして約 1 週間後に紙面上にて正し い経路を選択してもらう 2 回目の再認課題を行った。

参加者は正常な視機能を持つ男女32名であった。

3. 結果

まず、1 回目の再認課題における各呈示条件の正 答率を算出した(図1)。4つの呈示条件別に下位検定 を行った結果、有意差がみられなかったが、機能的 3D条件が最も正答率が高くなった。

図1 経路選択の条件別正答率(1回目)

また、2 回目の再認課題における各呈示条件の正 答率を算出した(図2)。4つの呈示条件別に下位検定 を行った結果、2D条件と機能的3D条件に5%水準 の有意差がみられ、また、3D条件と機能的3D条件 に有意傾向がみられた。

図2 経路選択の条件別正答率(2回目)

この結果から、機能的 3D 条件は時間経過ととも に記憶に影響を与えるという可能性が示唆された。

また、眼球運動の測定結果からは、機能的 3D 画 像において視差の付加箇所に視線が集中する傾向が みられた。実験後のアンケートでは全参加者が、呈 示された画像の条件を認知し、また、両眼視差が付 加された部分に視線が誘導され印象に残った、とい う回答も得られた。

4. 考察

実験の結果、機能的視差を付加した経路画像を記 憶する場合、視差の付加箇所を注視する傾向がみら れ、また、観察直後よりも時間がある程度経過して いた方が経路指示として効果的で、約 1 週間後にお いても経路を記憶しているという傾向がみられた。

これらの結果より、刺激画像に加えて、機能的視差 (両眼視差)をデプスマップと呼ばれる距離を濃淡で 表した画像として無意識に記憶することで、経路選 択を指示する情報を記憶し、再生しやすいという認 知特性への影響があったと考えられる。そして、こ れらの知見を防災コンテンツ制作時に用いることで、

避難誘導を指示する動画や災害時における助け合い の技術を学習するためのコンテンツに応用できる可 能性がある。今後は経路を記憶させた後に、実際の 建物内で参加者に正しい経路を歩行してもらう再生 実験や、他人数視聴型のコンテンツに応用した際の 影響について検討していく必要がある。

参考文献:

[1] 全国の防災教育の分類

http://www.jishin.go.jp/main/bosai/kyoiku-shie n/02hyogo/material/hyogo_1-a.pdf

[2] 上道 寛子 他,“特定領域への両眼視差の付加と 注意・記憶への影響”, 人間工学, vol.49, 特別 号, pp34-35,2013.

[3] 髙橋 昌大 他,“両眼視差による方向指示画面の 傾斜と右左折判断”, 人間工学, vol.49, 特別号,

pp.38-39,2013.

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