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傾斜型立体映像の認知特性に関する研究

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Academic year: 2021

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傾斜型立体映像の認知特性に関する研究

A study on tilted stereoscopic images and the cognitive characteristics

1W100295-1 髙橋 昌大 指導教員 河合 隆史 教授

TAKAHASHI Masahiro Prof. KAWAI Takashi

概要: 本研究は、2D/3D変換を用いた新たな表現として傾斜型立体映像を用い、短期的な記憶への影響を検討したもの である。傾斜型立体映像とは、画面全体にグラデーション型の両眼視差を与えることで、単眼情報と同時に画面の傾斜を 表現する映像である。本研究では、2D、3D、傾斜3D、妨害3D4条件において、記憶した進行方向を正しく判断でき るかを検証する実験を行い、正答率と選択時間を条件ごとに比較した。傾斜 3D条件では、傾斜方向と進行方向を同方向 として呈示し、妨害3D条件では、傾斜方向と進行方向を反対方向として呈示した。実験結果、傾斜 3D条件で正答率が 高い傾向がみられた。これより傾斜型立体映像では、進行方向の短期的な記憶を増進する可能性が示唆された。

キーワード:2D/3D変換、両眼視差、記憶、方向判断

Keywords: 2D/3D conversion, Binocular disparity, Memory, Direction decision

1. はじめに

2 眼式立体(3D)映像は、両眼視差が呈示される ことで、2D映像と比べて特徴的な知覚特性を有する ことが予想される。筆者は、2D/3D 変換を用いた表 現のバリエーションの 1 つとして、傾斜型立体映像 に着目し、先行研究を行った[1]。これは、2Dの方向 指示情報に対して、画面の左右いずれかの方向にグ ラデーション型の非交差性視差を与えた表現である。

観察者の右左折判断において、方向指示画面の傾斜

(引っ込む)方向を選択しやすいという傾向が確認 されている。これより、進行方向の理解や記憶を増 進する可能性が示唆された。本研究では、傾斜型立 体映像が進行方向の短期的な記憶に与える影響につ いて、実験的な検討を行った。

2. 実験方法

実験刺激は、3Dデジタルカメラで撮影した交差点 の画像を16枚選定した。刺激は、無彩色で左右対称 な画になるように画像処理を施した。これは、進行 方向を記憶するときにバイアスとなる視標を除くた めである。実験条件は、2D条件、3D条件、傾斜(引 っ込む)方向と進行方向が同方向である傾斜 3D

件、傾斜方向と進行方向が反対である妨害 3D 条件 の 4条件を設定した。刺激呈示は、27インチの3D モニタ(LG, D2743P-BN)で行い、視距離は60cm

(視野角 60 度)であった(図1)。参加者は、偏光 メガネとヘッドフォンを装着し、あご台を用いて画 面を観察した。進行方向は、ヘッドフォンから音声 で指示した。

実験は、学習課題・妨害課題・再認課題を用いて 評価した。学習課題では、8種類の刺激を呈示時間3 秒、ブランク 1 秒で連続して呈示した。8 種類の刺 激を1セットとし、用意した2セットを試行毎に交 互に呈示するように設定した。妨害課題には、2 桁

1 実験レイアウト

(2)

×2桁の掛け算10問からなる計算課題を用いた。再 認課題では、再度呈示される 8 種類の刺激毎に、進 行方向をゲームパッドで選択することを求めた。刺 激は全て 2D で呈示した。また、刺激呈示から方向 選択までに要した時間(選択時間)も計測した。学 習課題・妨害課題・再認課題の3種類の課題を1試 行として実施した。4 種類の実験条件に対し、参加 者には3回の反復を求め、合計12試行を実施した。

実験後には立体感と記憶に関するアンケートを行っ た。参加者は、正常な視機能を有した男女20名であ り、実験前に同意を得た。

3. 結果

内省報告の結果、再認課題における方向選択を勘 で行った参加者がいることがわかった。そこで、全

試行の50%以上を勘で選択した参加者2名を除いた

データを解析の対象とし、実験条件別にそれぞれの 正答率を算出した。ノンパラメトリック検定を行っ た結果、主効果に有意差が認められた。下位検定と して、Wilcoxon の符号順位検定を行った結果、2D 条件と3D条件間に5%水準で有意差が認められ、3D 条件と傾斜3D条件間に有意傾向が見られた(図2)

2 条件別正答率の結果

実験条件別にそれぞれの選択時間の平均を算出し た。実験条件(2D、3D、傾斜 3D、妨害 3D)を要 因とする一元配置の分散分析を行った結果、主効果 には有意差が認められなかったが、傾斜 3D 条件が 最も短いという結果が得られた(図3)。

3 条件別選択時間の結果

4. 考察

実験の結果、2D条件と傾斜3D条件において、正 答率が高い傾向が見られた。2D条件の正答率が高か った原因として、学習課題と再認課題において、と もに同じ種類の視差条件(2D)で呈示されたことが あげられる。すなわち、同じ視差条件での呈示によ り、短期記憶の再生が他の条件と比較して容易にで きた可能性が考えられる。しかし傾斜 3D 条件は、

2D条件の優位性があるなかでも、2D条件と同様に 正答率が高い傾向がみられた。内省報告からは、「学 習課題時に3Dで呈示され、再認課題時に2Dで呈示 されると別の種類の画像に感じる」という意見が多 く聞かれた。また選択時間の結果から、傾斜 3D 条 件において、記憶の再生から進行方向選択までに要 する時間が短い傾向がみられた。これらのことから、

傾斜型立体映像は、進行方向と同方向に画面を傾斜 させることで、進行方向の短期的な記憶を増進する 可能性が示唆された。今後は、実験条件による優位 性が起こらないように実験系を改善し、再度検証し ていきたい。また、進行方向の理解や記憶を増進す る認知特性を利用し、避難誘導などに応用できるか 検討していきたい。

参考文献:

[1] 髙橋昌大, 金相賢, 盛川浩志, 三家礼子, 河合隆 史, 渡邊克巳, 両眼視差による方向指示画面の 傾斜と右左折判断, 人間工学, Vol.49, 特別号, pp.38-39, 2013.

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

2D 3D 傾斜3D 妨害3D

[

%]

実験条件

p<.05 p<.10

0 0.5 1 1.5 2 2.5 3

2D 3D 傾斜3D 妨害3D

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実験条件

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