3D 映像の局所的表現が記憶時の脳活動に与える影響
Influence stereoscopic image on brain activity during memory
1W110477-8 松浦 訓人 指導教員 河合 隆史 教授
MATSUURA Kunihito Prof.KAWAI Takashi
概要:本研究は、局所的に交差性視差を付与した3D映像についてのヒトの認知的特性を調べたものである。局所3D映 像の認知的特性として、動的な両眼視差が短期記憶に影響を及ぼすことや、ヒトの注意を引きつける効果があることがわ かっていたが、それが脳活動に与える影響については検証がなされていなかった。本研究では、脳活動を見るために近赤 外光脳機能イメージング装置を用いて、前頭前野部の正常時からの変化量である賦活量から検証することにした。方法と しては、2D条件、局所3D条件、妨害3D条件の3条件について記憶を要する探索課題を被験者に課した。結果、3Dに 慣れている被験者と慣れていない被験者とで違う傾向が見られ、3Dに慣れている被験者は局所的3D映像を見たときに、
多くのワーキングメモリ容量のリソースを注意制御に割かなければならなくなり、賦活が2Dに比べて多くなった。
キーワード:局所3D映像、両眼視差、記憶、脳活動、ワーキングメモリ
Keyword:Partial stereoscopic image,Binocular disparity,Memory,Brain activity,Working memory
1. はじめに
近年、手動で立体感を付与する2D/3D変換を活用 した3D表現手法が注目され、活用されている。一 例として、局所3D映像が提案され、ヒトの認知的 特性について検証がなされている。局所3D映像と は映像の一部分に交差性視差を付与した表現手法で、
これまでに注意を引きつける効果や感覚記憶に対す る影響などが検討されてきた。今回はこれらの局所 3Dの認知的特性を脳活動の観点から測定するため に近赤外光イメージング装置、別名NIRS(Near Infra-Red Spectroscopy)を用いて検証することにし た。また、脳活動についてはワーキングメモリを使 用する刺激を考えた。
2. 実験方法
ヒトの局所3Dによる認知的効果を見るために、
記憶・再認課題を被験者に課した。刺激は、ランダ ムに回転しているT字とH字がランダムに25個並 んでいる刺激を4[s]間呈示し、2[s]間の十字が動いて いる動画を呈示、そして4[s]間また最初の画像とよ く似た刺激を呈示した。ただ、最初に呈示した画像
とブランク後の画像とでは一か所だけ異なる部分が あり、被験者にはそれを探してもらう。ただ、1回 だけではわからない場合もあり、そのときはもう一 度ブランクを挟んだ後に、また最初の画像から呈示 する。刺激の流れを図1に示す。
図1 刺激の流れ
この流れの刺激について視差を付与しない2D条件、
変化位置に交差性視差を付与する局所3D条件、変 化位置から離れた位置に交差性視差を付与した妨害 3D条件についてそれぞれ5枚ずつと練習用の刺激1 枚を含めた合計16枚の刺激を作成し、これらを4枚 で1セットとし、4セット実験を行った。
3. 結果
10人の被験者に対し、実験を行ったが、うち3D
に慣れている被験者が6人、3Dに慣れていない被験 者が4人となった。これらの被験者群間で局所3D を記憶する際に活用していたかについてアンケート で答えてもらったところ差があったのでわけて考え ることにした。探索時間については慣れている被験 者群は局所3Dにより有意に探索時間が短くなった が、慣れていない被験者群は短くはなったものの、
有意差や有意傾向は出なかった。この結果を図2に 示す。
図2 被験者群ごとの探索時間
次に前頭前野部賦活について検討したところ、3Dに 慣れている被験者群に関して、2D条件は局所3D条 件よりも有意に賦活が小さく、妨害3D条件には有 意傾向が見られた。図3に示す。
図3 被験者群ごとの前頭前野部の賦活量
最後に課題の遂行による被験者の熟達が内在的負荷の減 少に繋がり、被験者の賦活量が減少するのではないかと考 えた。この結果を図4に示す。
図4 課題遂行による賦活量の変化
4. 考察
探索時間の結果から、変化位置が低いということ は妨害3Dによる妨害効果以上に探索において効果 のあることだとわかった。また、3Dに慣れている被 験者群の方が局所3Dの探索時間を短くする効果が 高かったことから、今後局所3Dを活用していく上 で3Dに対して慣れるということが、局所3Dの認知 的特性を高めることに繋がるとわかった。
賦活量の結果から3Dに慣れている被験者群は局 所3Dを素早く見抜くことができ、その3Dが存在す ることにより注意制御へのリソースが増え、2Dに比 べて賦活量が大きくなった。慣れていない被験者群 は3Dにそこまで気をとられなかったことから注意 制御へのリソースが少なかったため、条件間に有意 差は得られなかったと思われる。最後に、課題遂行 ごとの賦活量の変移を調べたところ、減少傾向が見 られた。よって今回の刺激は熟達によって難易度の 変化が見られる課題であり、ワーキングメモリを活 用した課題であったと結論づけた。これは探索時間 の減少傾向からも読み取れる。
今回、単純刺激を用い、局所3Dの認知的効果を 脳血流の観点から計測した。今後はこれらの結果か らその他の課題でも局所3Dによる前頭前野部の賦 活は見られるかの確認や、より実用的なコンテンツ で局所3Dを活用する場合、どのようなものが考え られるか検討していきたいと思う。
y = -0.0654x + 0.2283 R² = 0.7091
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
1 2 3 4 5
Z‐Score差の平均値
3回ずつに区切ったときの実験回数