広告表現を目的とした立体視映像の視覚特性
Visual characteristics of partially converted stereoscopic images for advertising
1W110541-8 山本 夏帆 指導教員 河合 隆史 教授
YAMAMOTO Natsuho Prof. KAWAI Takashi
概要: 本研究は、広告としての使用を目的とした3D映像における視覚特性について、2D/3D変換を用いた新たな表現 として局所3D映像を用い、視線への影響を検討したものである。局所3D映像とは、2D映像の一部分のみに交差性の両 眼視差を付加し、その他の部分には両眼視差を与えないか、一定の非交差性の両眼視差を与えた映像である。本研究では さらに、奥行き方向に離散的に表現される両眼視差の付加を段階的な局所3D と定義し、これによる視線測定実験を行う ことで広告表現としての有効性を検討する。条件と時間区分の注視傾向を比較した結果、段階的な局所 3D化によって視 線移動が誘導される可能性があるという結果が得られた。このことから、段階的な局所3D 化を含む映像では作成者の意 図によって情報を整理し、伝達することができるという点で、広告表現としての有効性があることが示唆された。
キーワード:3D映像、両眼視差、眼球運動、広告
Keywords: stereoscopic image, binocular disparity, eye movement, advertisement
1. はじめに
立体視映像(以下、3D映像)の多様化に伴い、2D/3D 変換を用いた新しい表現方法として局所 3D が提案 された[1]。局所3D映像はこれまで注意や記憶などに 関する様々な研究が行われてきた[2]。また、これら から得られた認知特性から局所 3D 化による広告表 現の効果を視線計測実験により検討したところ本来 注視を見込めない箇所への視線誘導効果があること が分かった。そこで、本研究では局所 3D を用いた 新たな広告表現として奥行き方向に離散的に表現さ れる両眼視差を付加する表現手法を段階的な局所 3D化と定義し、視線への影響から広告表現としての 有効性を検討した。
2. 実験方法
段階的な局所 3D 映像が視線に与える影響を検討 するために、視線計測実験を行った。27インチの3D ディスプレイに4条件分の刺激を10秒ずつ呈示した。
段階的な局所3D化を行うにあたり、3段階の両眼 視差と3箇所(上部・中部・下部)の付加箇所を用意し た。上から順に大きな視差を付加した条件を3D+P1
条 件 、 下 か ら順 に 大 きな 視 差 を付 加 し た条 件 を
3D+P2条件、中部・下部・上部の順に大きな視差を
付加した条件を3D+P3条件とし、3パターンの段階 的な局所3D条件を用意し、この3条件に2D条件を 含めた4条件を設定した。
視線測定には、非接触型眼球運動測定器である Power-Ref3を使用した。実験後には刺激に関するア ンケート調査を行った。参加者は視機能が正常と判 断された男女29名であった。
図1 実験環境
2
3. 結果
本実験では刺激画像を 6 つのエリアにわけ、視線 の解析を行った。刺激呈示時の10秒間の視線の座標 データを2秒ずつ区切り、エリアごとに2秒間での 注視割合を算出し、エリアや時間区分で比較・検討 した。分散分析結果、3D+P1条件と3D+P3 条件で は最も大きな視差を付加したエリアが初めに観察さ れ、次に中程度の視差を付加したエリアが観察され ていることが分かった。以下に3D+P1条件の注視割 合を図2に示す。3D+P1条件での最も大きい視差が 付加されたエリアはエリア 2、中程度の視差が付加 されたエリアはエリア 3 である。エリア 2 は 0~2 秒のときその他すべてのエリアに比べ、有意に注視 割合が高く、エリア3は4~6秒のとき両眼視差が付 加されていないエリア 1・エリア 5 に比べ、有意に 注視割合が高い結果となった。3D+P2 条件では 3D+P1 条件、3D+P2 条件で得られたような結果が 得られなかったが、最も大きい視差と中程度の視差 が付加されたエリアの注視割合は高くなっているこ とが分かった。
4. 考察
実験の結果、段階的な局所 3D は視差の大きい順 に視線を誘導する可能性があることが示唆された。
これにより、広告表現を目的とした段階的な局所3D 化は製作者の意図により見ている人の視線を操作で き、伝えたい情報を優先的に見せることのできる広 告表現が可能であることが期待できる。
しかし、3D+P2条件では3D+P1条件、3D+P2条 件で得られたような結果が得られなかったことから、
段階的な局所 3D のパターンが視線誘導の効果に影 響がある可能性がある。本来ヒトは上から順に観察 する傾向があることから、この順に反する観察順を 想定した段階的な局所 3D パターンでは視線誘導の 効果が弱くなったことが予想される。
また、最も小さい視差量による視線への影響が得 られなかったことやアンケートで 3 段階まで認識し た参加者が少なかったことから段階的な局所 3D と して適切な視差角の検討が必要であると予想される。
参考文献:
[1] 小井土 慶久, 田中 礼美, 平原 正広, 櫻井 日香留, 河合 隆史, 篠原 雅彦, "局所立体映像の提案と基礎 的 評 価", 人 間 工 学, vol.46, 特 別 号, 2010, pp.478-479.
[2] 小井土 慶久, 河合 隆史, "局所立体映像表現の認知 特 性 の 評 価", 人 間 工 学, vol.47, 特 別 号, 2011, pp.252-253.
図2 3D+P1条件での注視割合の結果