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画像の縦横比が画像記憶に及ぼす影響 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)画像の縦横比が画像記憶に及ぼす影響 キーワード:画像の縦横比,画像記憶,境界拡張,広がり感 行動システム専攻 西谷 はじめに. 直樹. ない(1)−広がりのある(7))で評定した.判断する際の. 写真の画面を縦長にするか,横長にするかによって同. 時間は制限されなかった.判断はテンキーの 1 または 3. じシーンを撮影した場合においても印象は異なる. 大. を押して画面上のバーを動かすことによって行われた.. 中・竹澤・松田 (2003)では,写真の長短比を変化させて 印象評定実験が行われた. その結果, 写真が横長の場合, 写真に写し出されたシーンを広く感じることが報告され ている. また,写真に写っているのは,制限された枠に収めら れたシーンの一部のみである.このような画像を記憶す る際の歪みを示す現象の一つとして,境界拡張と呼ばれ. 図 1 .予備実験 1 の刺激例.左から Horizontal, Square,. る現象がある.境界拡張とは,写真を学習刺激として記. Vertical.画像の面積はすべて等しく,縦横比が異なる.. 銘した場合,想起された画像は枠が広がったかのように 元の画像より広い範囲が写ったものとして再認(再生) される現象である(Intraub & Richardson, 1989).なぜ このような現象が起きるかについて,画像内に写ってい. 結果と考察. るシーンが記銘する際に,枠外に続くシーンを想定する. 縦横比条件ごとに,広がり感の平均評定値を算出し. ために提示されたシーンよりもさらに外側が想起される. (図 2) ,1 要因の分散分析を行ったところ,画像の縦横. と説明されている(知覚スキーマ仮説) .. 比の主効果が認められた(F(2.285)=12.04, p<.01).. 本研究では,画像の縦横比を操作して,シーンの広が. 多重比較を行ったところ,Horizontal 条件と Vertical. り感の印象と境界拡張との関連性を調べ,画像の縦横比. 条件の間と,Square 条件と Vertical 条件の間に有意差. が画像記憶に及ぼす影響を検討した.. が見られた(いずれも,p<.05). 横長の画像になるにつれて画像内のシーンの広がり. 予備実験 1. 感が増加する傾向が見られた.. 目的 写されたシーンは同じで,縦横比の異なる画像を用い て,画像の縦横比がシーンの広がり感の印象に及ぼす影 響を検討した. 方法 観察者 刺激. 大学生 32 名(男性 6 名,女性 26 名) . 4 枚の自然画像をそれぞれ,1:1.5(Horizontal),. 1:1(Square)・1.5:1(Vertical)の縦横比をように加工し た 12 枚の画像を使用した(図 1) .画像の大きさは長方 形が 10.75cm×7.16cm,正方形が 8.79cm×8.79cmであっ た.観察距離は固定されない自然観察条件で実験が行わ. 6 広 が り 感 の 平 均 評 定 値. 5. *:p<.05 * *. 4 3 2 1. れた.. Horizontal Square Vertical 図 2 .各縦横比条件の広がり感の平均評定値.誤差棒. 装置. は標準誤差を表す.. 刺激提示にはノート型 PC(SOTEC WinBook U270 A4). を用いた.画面の大きさは 28.5cm×21.5cm であった. 手続き. 提示された画像の広がり感を 7 段階(広がりの.

(2) 予備実験 2 目的. Square, Vertical のすべての縦横比条件において,有意 な 境 界 拡 張 が 見 ら れ た ( 順 に ,t(34)=4.64, p<.05;. 境界拡張に関する先行研究における問題点の一つに,. t(34)=2.27, p<.05; t(34)=2.24, p<.05).この結果から,. 学習課題で一度に多くの画像( 15 枚程度)を記憶させる. 本実験のように比較的容易な学習課題を用いても境界拡. ことが挙げられる.課題自体が難しいために画像を正確. 張が生起することが確認された.. に記憶することができでいなかった可能性が考えられる. また,先行研究において描画法( Intraub & Richardson,. 各縦横比条件の平均拡張量について,1 要因の分散分 析を行ったところ,縦横比要因の主効果は有意ではなか. 1989 ) や 距 離 評 定 法 ( Intraub & Richardson, 1989;. った(F(2,102)=1.42, n.s.) .この結果から,画像の縦. Intraub et al. 1992. )が拡張量の測定に用いられてき. 横比は境界拡張に影響を及ぼさないと考えられる.ただ. た.描画法は,観察者に学習刺激を記憶した後,その画像. し, 最も拡張量の大きかった Horizontal 条件においてで. を思い出しながら再生スケッチを描かせる方法である.. さえ 7%程度の拡張であり,5%ずつ拡大あるいは縮小させ. この方法は,被験者の描画の能力や癖が影響すると考え. る再生方法では条件間の拡張量の差まで測定することが. られる.距離評定法は学習した画像と同じ画像を見せ,. できなかった可能性も考えられる.. どの程度遠く(近く)なったかを評定させるため誤再認を. 2.5. させ易くする可能性がある.. 2. 以上のような先行研究の問題点を改善するため,本研 Mean score. 究の課題では,5 枚の画像を記憶させた後,5%∼20%拡大 あるいは縮小した画像を用いた調整法による再生を行い, 画像の縦横比の影響を検討した. 方法. 1 0.5. 観察者 刺激. 1.5. 大学生 35 名(男性 6 名,女性 29 名) . 0. 予備実験 1 と同じ 12 種類の画像を学習画像とし. Horizontal. Square. Vertical. て用いた.ダミー画像として 3 枚の自然画像を用いた.. 図 3 .縦横比条件ごとの拡張量.縮小画像が選択された. 再生画像として学習画像の枠内のシーンを 5, 10, 15,. とき拡張したことになるので,Mean score は,選択され. 20%拡大もしくは縮小させた画像を使用した.. た画像の拡大(縮小)率をそれぞれ,-20%を 4 点,-15%を 3. 装置. 点,-10%を 2 点,-5%を 1 点,0%を 0 点,5%を-1 点,10%を-2. 予備実験 1 と同じ.. 手続き. 課題は学習課題と再生課題の 2 つが設けられた.. 点,15%を-3 点,20%を-4 点として算出した.誤差棒は 95%. 学習課題:観察者は 5 枚の画像を記憶した.1 枚目と 5. 信頼性区間を表す.. 枚目はダミー画像であり再生課題には含まれなかった. これは,記憶の初頭効果と新近性効果の影響を防ぐため である.1 枚の画像の提示時間は 15 秒であり,刺激はラ. 実験 1 目的. ンダムに提示された.学習画像について,一人の観察者. 予備実験 1 では,画像の縦横比はシーンの主観的広が. に対し 3 つの縦横比(Horizontal, Square, Vertical). り感の評定に影響し, その際, 縦長の Vertical 条件では,. を 1 回ずつ提示した.画像内のシーンは被験者間で相殺. 他の 2 条件より有意に広がり感が小さくなるという結果. した.. が得られた.予備実験 2 では,画像の縦横比は境界拡張. 再生課題:学習課題終了直後に行われた.学習課題で 2. の生起に影響せず,どの条件においても有意な拡張が認. ∼4 枚目に呈示された画像について,記憶したものと同. められた.以上の結果から,画像の縦横比は印象評定に. じになるように提示されたシーンの大きさを調節するこ. は影響を及ぼすが,画像記憶には影響しないことが示唆. とが求められた.大きさはテンキーの 1 または 3 を押す. された.. ことで拡大あるいは縮小( -20%∼20%)した.その際,枠. ただし,予備実験にはいくつかの問題点が挙げられる.. の大きさは固定され, 枠内のシーンの大きさが変化した.. 一つ目は観察距離が固定されていない自然観察条件で行. 判断する際の時間は制限されなかった.. われたことである.再生課題を行う際に,被写体の大き. 結果と考察. さは重要な記憶手がかりとなると考えられる.本実験で. 各縦横比条件の平均拡張量を算出し(図 3) ,仮説平均 値を 0 とした 1 標本の t 検定を行ったところ, Horizontal,. は,課題を行う際に,網膜上での被写体の大きさを統制 するために観察距離を固定した..

(3) また,予備実験において用いた 2 枚の風景画像は縦横. 実験 2. 比を変化させると,画像内に写る要素を統制できず,画. 予備実験 2 では,学習画像を 5%∼20%拡大(縮小)した. 像の縦横比以外の要因が印象評定や拡張量に影響したこ. 画像を用いた再生課題を行った.しかし,この再生方法. とが考えられる.そこで,本実験では縦横比を変化させ. では条件間の拡張量の差を測れなかった可能性がある.. ても枠内に写された要素を統制できるように, 中央置か. 本実験では,より細かい拡張量の測定を可能にするた. れた被写体と背景が写された画像のみを刺激として用い. めに, 3%∼12%拡大(縮小)した画像を用いた再生課題を. ることにした.. 行い, 画像の縦横比が画像記憶に及ぼす影響を検討した.. 以上のような予備実験での問題点を改善した条件で,. 方法. 縦横比が広がり感の印象評定に及ぼす影響を検討した.. 観察者. 方法. 刺激. 観察者 刺激. 大学生および大学院生 10 名. 中央に置かれた被写体と背景の写された 30 枚の. 大学生 12 名. 実験1と同じ 90 枚を学習画像として用いた.ま. た,再生画像として学習画像を 3,6,9,12%拡大あるいは 縮小した画像を使用した.さらに,ダミー画像として 18. 画像を実験 1 と同じ Horizontal, Square, Vertical の縦. 枚のさまざまな自然画像を使用した.. 横比を持つように加工した 90 枚を学習画像として用い. 手続き. た.画像の大きさは,4°×6 °(Horizontal), 5°×5°. た.ただし,再生課題においては,テンキーの 1 または. (Square), 6°×4°(Vertical)であった.. 3 を押すことで画像は 5%ずつ最大で 20%拡大(縮小)し. 装置. CRT ディスプレイの中央に画像を提示した.観察. たが,本実験では,3%ずつ最大 12%拡大(縮小)した点. 者は顎のせ台により頭部を固定された.観察距離は 70cm. が異なる.観察者は 1 回の学習課題で 5 枚の画像を記憶. であった.. し,その直後,2 枚目から 4 枚目に呈示された画像につい. 手続き. 提示された 90 枚の画像それぞれについて,画. て 3 回の再生課題が行われた. このような課題が 10 試行. 像内のシーンがどの程度広がって見えるか,広がり感を. 繰り返され,1 人の観察者から 30 枚の画像についての反. 7 段階(広がりがない(1)∼広がりがある(7) )で評定. 応を得た.画像内のシーンは被験者間で相殺した.. した.判断する際の時間は制限されなかった.判断はテ. 結果と考察. ンキーの 1 または 3 を押して画面上のバーを動かすこと. 予備実験 2 と同じ学習課題と再生課題が行われ. 各縦横比条件の拡張量の平均値を算出し(図 5),仮説. によって行われた.. 平均値を 0 とした 1 標本の t 検定を行った.その結果,. 結果と考察. Square 条件および Vertical 条件において,有意な境界. 縦横比条件ごとの広がり感の平均値を算出し,1 要因. 拡張が見られた (順に, t(118)=4.59, p<.05; t(118)=4.66,. の分散分析をおこなったところ,縦横比の主効果が認め. p<.05) .Horizontal 条件においては,有意傾向が見られ. られた(F(2.897)=210.927, p<.01) .また多重比較を行. た(t(118)=1.87, p<.10).. ったところ,画像が横長になるにつれて広がり感が有意. 縦横比について 1 要因の分散分析を行ったところ,縦. に増加した(図 4).この結果から,横長の画像ではシー. 横比の主効果はなかった(F(2.339)=0.803, n.s.).この. ンの広がりが感じられ易いことが確認された.. 結果から,画像の縦横比は境界拡張に影響しないことが. **:p<.01 ** 5.5 広 5 が 4.5 り 感 4 の 3.5 平 3 均 2.5 評 2 定 1.5 値 1. 示唆された. 予備実験の結果に基づいて,再生課題で用いる画像の 拡大(縮小)率を 3%とし,より細かな拡張量の測定を試. ** **. みた.しかし,画像の拡大率が小さくなるとともに,拡 張量も予備実験の結果よりも減少した. この結果は,境界 拡張は再生課題で用いる画像に依存する可能性を示唆し ている. 実験 3 目的 特定の縦横比において縮小画像が特に好まれるとい. Horiaontal Square Vertical 図 4 .各縦横比条件の広がり感の平均評定値.誤差. うようなことがあれば,境界拡張の生起の仕方にも影響. 棒は標準誤差を表す.. を及ぼすことが考えられる.本実験では,画像の縦横比.

(4) により,構図としてのバランスがよいと感じられるシー. 今後はより長短比の大きい画像についても検討する必要. ンの大きさに違いがあるか調べるとともに,実験 2 の結. がある.. 果が標準化の影響で説明できるか検討した.. 1.4. 方法. 1.2. 大学生および大学院生 6 名.. 刺激. 実験 1 と同じ.. 装置. 実験 1 と同じ.. 手続き. 1. 観察者はキー押しをすることにより画像内の. シーンの大きさを調節し,構図として最もバランスのよ. Mean score. 観察者. 0.8 0.6 0.4 0.2. いと思うものを選択することが求められた.シーンの大. 0. きさはテンキーの 1 または 3 を押すことで 3%ずつ最大. - 0.2. 12%まで拡大あるいは縮小した. 一つの画像の選択が終了. Horizontal. Square. Vertical. すると次の画像が提示され,実験は 90 試行で終了した.. 図 5 .各縦横比条件の拡張量.Mean Score は Mean score. 結果と考察. は,選択された画像の拡大(縮小)率 12%∼-12%に-4 点. 予備実験 2 の拡張量と同じ方法で縦横比条件ごとに選 択された画像の Mean score を算出し(図 6) ,1 要因の分. ∼4 点を与えて算出した.誤差棒は 95%信頼性区間を表 す.. 散分析をおこなったところ,縦横比の主効果は見られな かった(F(2.447)=1.427, n.s.) .. 3. 本実験で用いた画像は,縦横比の違いにより構図とし いことが確認された.また,実験 2 の結果は標準化の影 響では説明できないと考えられる. 全体的考察 本研究では, 画像の縦横比を操作して, 境界拡張とい. 2 Mean score. てバランスがよい感じられるシーンの大きさに違いがな. 1 0 -1 -2 -3 Horizontal. Square. Vertical. う記憶の歪みの現象と画像の広がり感の印象を調べるこ とで,画像の縦横比が画像記憶に及ぼす影響を検討した.. 図 6 .縦横比条件ごとにバランスがよい画像として選択. 印象評定実験から,画像の縦横比はシーンの広がり感. されたものの Mean score.Mean score は,実験 2 の結果. の印象評定に影響を及ぼすことが明らかになった.その. と 同 じ よ う に, 選 択 さ れ た 画 像 の 拡 大 率 を そ れ ぞ. 際,画像が横長になるにつれて,広がり感の印象が有意に. れ,-20%を 4 点,-15%を 3 点,-10%を 2 点,-5%を 1 点,0%. 増加した(実験 1) .しかし,画像の縦横比によって,境界. を 0 点,5%を-1 点,10%を-2 点,15%を-3 点,20%を-4 点と. 拡張の拡張量に有意な差は見られなかった( 実験 2) .以. して算出した.誤差棒は標準偏差を表す.. 上の結果から,画像の縦横比は画像の印象には顕著に影 響を及ぼすが,画像記憶には影響しないと考えられる. 知覚スキーマ仮説では,シーンの広がりについての空. 引用文献. 間表象の活性化により,枠外に続くシーンが想定され境. Intraub, H. 2002 Anticipatory spatial representation of. 界拡張が生起するという説明がなされている(Intraub,. natural scenes: Memontum without movement? Visual. H. 2002).そのため,画像の広がり感の印象評定と境界拡. Cognition, 9, 93-119.. 張の生起において利用される画像情報は関連性があると. Intraub, H., & Richardson, M. 1989 Wide-angle memories. 考え,検討を行った. しかし,本研究の結果からは,関連性. of close-up scenes. Journal of Experimental Psychology:. は薄いと考えられる.印象の判断と画像を記憶する際に. Learning, Memory, and Cognition. 15, 179-187.. 利用される画像の手がかりは異なっていると考えられる.. 大中悠起子・竹澤智美・松田隆夫 2003 写真の長短比と. 本研究において設定した縦横比は,1:1.5, 1:1, 1.5:1 の 3 条件であり,正方形の画像と通常判の写真をヨコ位 置とタテ位置にした場合のみの検討にとどまっている.. 大きさが写真の印象評定に与える影響 研究, 4, 171-185.. 立命館人間科学.

(5)

図 5 .各縦横比条件の拡張量.Mean Score は Mean score は,選択された画像の拡大(縮小)率 12%∼-12%に-4 点

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