別紙様式1 (修士申請者用)
修 士 学 位 論 文
成人脳性麻庫アテトーゼ型患者における 疹痛の質と TENS の効果の関係
(西暦) 2015 年 1 月 7 日 提 出
首都大学東京大学 院
人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻 理学療法科学域 学修番号 : 1 3 895606
氏 名: 高 木 健 志
( 指導教員名 : 新 田 牧
要旨:[目的]アテトーゼ型脳性麻庫患者の腰痛に対しTENSを行うと対象により効 果に差が出現し,疹痛の質が影響していることが考えられる.本研究は疹痛の質的評 価法(SF‑MPQ‑2)の信頼性・妥当性の確認と,疹痛の質と TENSの効果との関係を 明らかにすることを目的とした. [方法]成人アテトーゼ型脳性麻庫患者8名を対象 とし,級内相関係数ICC(1.1) , Cronbachα係数, NRSとのピアソン積率相関係数 を算出した.TENSの効果と疹痛の質の関係は,アテトーゼ、型患者の腰痛に TENSと Sham刺激を行い,即時効果を SF‑MPQ‑2にて評価した.統計学的処理は, SF‑MPQ‑2 の各スコアを従属変数とし,介入方法と介入前後を対応のある因子とした二元配置分 散分析を行った. [結果] SF‑MPQ‑2は高い信頼性と中等度の妥当性が確認された.
SF‑MPQ‑2によって評価検討すると,疹痛の質により TENSの効果に差が出現した.
[考察]疹痛の質により TENSの効果に差が出現する為,TENSを行う前にSF‑MPQ‑2 による疹痛の質的評価を行う事が重要であることが示唆された.
キーワード :アテトーゼ型脳性麻庫患者,腰痛, TENS, SF‑MPQ‑2
【はじめに】
アテトーゼ型脳性麻庫患者(以下:アテトーゼ型患者)の二次障害として頚椎症性頚髄症 が有名であるが,腰背部への疹痛の訴えも臨床上よく経験する.中村ら1)が行ったアテトーゼ 型患者61名に対するアンケート調査では, 61名中41名(67. 2%)に腰痛の訴えがあり, 44歳 前後で腰痛が出現すると報告している.
アテトーゼ型患者の腰痛における疹痛の質の特徴について 独自に事前調査を行った結 果,同年代の不定形腰痛症を訴える中枢神経疾患の無い成人と比較すると,疹痛の質が異 なり,神経障害性の疹痛の出現頻度が高いことが示唆された.このことを踏まえ,アテト ーゼ、型患者に焦点を絞った,疹痛治療に関する研究が必要と考えられた.
ところで,疹痛を抑制する方法の一つに経皮的末梢神経電気刺激法( I'ranscutaneous Electrical Nerve Stimulation : TENS)があり,副作用が少ないことから疹痛緩和に有効であ
るといわれているが.Cheingら3)は,運動療法単独では治療初期に痛みを増強させてしまう ことがあるが, TENS後に運動療法を行うことで,痛みを抑制しながら運動療法が可能で、あっ たと報告しており,同様にアテトーゼ型患者の腰痛に対してもTENSを用いて一時的な疹痛軽 減を図り運動療法に併用することがある.しかし,対象によりTENSの効果に差が出現するこ
とを臨床上多く経験する.
アテトーゼ型患者は,様々な骨関節障害が二次障害として出現し,運動能力の低下や疹痛の 原因となっている.しかし,近年では骨関節障害だけでなく,内科的疾患に起因する障害や精 神心理障害の問題も指摘されており 4),アテトーゼ型患者の腰痛には様々な疹痛の質が混在し ていることが予想される. 一方, TENSは各種慢性痛や5)術後の疹痛6)神経因性疹痛に鎮痛 効果を発揮し有効である 7)と報告されているが,心因性疹痛には効果がない 5)とも報告されて いる.このことから,疹痛の質的な違いにより TENSの効果に差が生じることが予想され,ア テトーゼ型患者の腰痛を対象とし, TENSの効果測定を疹痛の質的評価を用いて行うことで,
より効果的な介入ができるのではなし、かと考えた.
し か し アテトーゼ型患者の疹痛の質的評価法は未だ確立していない.広痛の質的評価法と
して, Revisedversion of the Short Form・ McGill Pain Questionnaire (以下 :SF‑MPQ‑2)が あり,痛みをより正確に感度よく把握し,神経障害性患者と侵害受容性患者における比較や鑑 別,適切な治療の選択,効果測定や研究に使用できる有用な疹痛評価尺度であるとされている sl. SF‑MPQ‑2は,慢性的な痛み,間欠的な痛み,感情的表現,神経障害性の痛みの程度を計 22項目で, 1項目ごとに0〜10の11段階で評価するものであり,二次障害として骨関節障害 や頚椎症性頚髄症による神経因性の疹痛を呈すことの多いアテトーゼ型患者に有用であると考
えられる.
本研究は,アテトーゼ型患者の腰痛における疹痛の質の違いによってTENSの効果に差が出 現するとしづ仮説に基づき, SF‑MPQ‑2の信頼性・妥当性の確認と, SF‑MPQ‑2評価に基づい た,アテトーゼ型患者の腰痛におけるTENSの効果と疹痛の質との関係を明らかにすることを
目的とした.
【対象と方法】
I. SF‑MPQ‑2の信頼性・妥当性の検討 i
. 対象
2014年3月から同年11月までの期間中 一般財団法人ひふみ会南多摩整形外科病院に通院 していた, 3カ月以上続く腰痛を有する成人脳性麻庫アテトーゼ型患者8名を対象とした対 象者は自らの判断で実験の参加の有無を伝えることが可能な者とし,除外基準は, I年以内に 疹痛部位に対し整形外科的手術・ボツリヌス治療を行った者, GrossMotor Function Classification System (以下: GMFCS)レベルがVの者としたまた,精神発達年齢12歳から 痛みに関する言語表現は具体的で成人と同様になり,心因性疹痛が見られるようになると報告
されておりが 10),田中ビネーVの精神発達年齢12歳級に正答できなかった者も除外した.
ii. 方法
基本情報として,年齢,麻、庫のタイプ,薬剤の使用状況, GMFCSレベルをカルテから得た また, SF‑MPQ‑2の信頼性を検討するため,腰痛をSF‑MPQ‑2を用いて二週間の期間を空け2 回評価した.また,妥当性の検討するため, SF‑MPQ‑2と同時にNumericRating Scale (以 下: NRS)の面接調査を行った統計学的処理は, SPSSStatistics 22を使用した信頼性を 検証するために「持続的な痛み」(Continuous pain),間欠的な痛み(Intermittentpain ) , 神経障害性の痛み(Neuropathicpain),感情的表現(A宜ectivedescriptors),すべての痛み 表現(Total)の各々について級内相関係ICC(1.1)と Cronbachα係数を算出した.妥当性の 検証は, SF‑MPQ‑2の各項目と NRSとの相関性について,ピアソン積率相関係数を用いて検 討した.
II. 疹痛の質と TENSの効果の関係 i. 対象
2014年3月から同年11月までの期間中 一般財団法人ひふみ会南多摩整形外科病院に通院 していた, 3カ月以上続く腰痛を有する成人アテトーゼ型脳性麻庫患者8名(信頼性・妥当性 の検討に引き続き行った)を対象とした除外基準は信頼性・妥当性の検討と同様とした
図 1.TENS刺激, Sham刺激の電極添付位置
11. 方法
図 2.疹痛の質と TENSの効果の流れ
(クロスオーバーデ、ザイン)
本研究はアテトーゼ型患者の腰痛における疹痛の質と TENSの効果を明らかにすることを 目的とし, TENSとSham刺激の即時効果を SF‑MPQ‑2を使用し評価・比較を行った.全て の対象者がTENSとSham刺激を受けることができるクロスオーバーデ、ザインにて検討する ため,対象者についてTENSを先行させる群4名と, Sham刺激を先行させる群4名の2群 に割り付けた.それぞれ1週間〜1ヶ月の期間を空け,群を入れ替え再び実施した.
TENSには電気刺激治療器(伊藤超短波株式会社製, イトーES‑420)を使用した TENS の設定は,急性痛には速い伝導速度を持つA8線維(12〜30m/sec)の刺激伝導をブ、ロックするた め高頻度刺激(80〜lOOHz),慢性痛には遅い伝導速度を持つ C線維(O. 5〜2m/sec)の刺激伝 導をブロックするため低頻度刺激(1〜20Hz)が推奨されている 11).さらに, 1〜5Hzの低頻 度刺激は慢性的な疹痛管理に有用である5)としづ報告があり,本研究の対象者は3カ月以上続 く腰痛であるため,慢性的な要素が含まれていると考え,低頻度刺激(4Hz)で、行った.刺激 強度は低刺激強度(通電を感じるが痛みは無く,わずかに筋収縮が生じる程度)を目安として 設定し, 30分間行った電極はゴ ム電極に電極パッド(湿らせたスポンジ)を被せたものを2 枚使用し,疹痛部位と一致するデ、ルマトーム上へ疹痛部位を挟むように貼付した(図1).Sham 刺激にもTENSと同様,伊藤超短波株式会社製イトーES‑420を使用し,疹痛部位と同デルマ
トーム上に湿らせた電極を添付した上で,機器から生じる音を再現し30分間の介入を行った それぞれの介入・評価は南多摩整形外科病院1階リハビリテーション室内にて実施した.
基本情報として年齢,麻庫のタイプ,薬剤の使用状況,GMFCSレベノレをカルテから得たの ち,TENS,Sham刺激の介入前後でSF‑MPQ‑2の面接調査を行った.統計学的処理は, SPSS Statistics 22を使用し, SF‑MPQ‑2の各スコアを従属変数とし,介入方法と介入前後を対応の ある因子とした二元配置分散分析を行った.
全ての対象者に研究目的と内容の説明を口頭および文書にて十分に行い,署名を得ることに より研究参加の同意を得た 本研究の実施については,平成 25年度首都大学東京荒川キャン パス研究安全倫理審査委員会,平成 25年度一般財団法人ひふみ会南多摩整形外科病院研究安 全倫理審査委員会の承認を得て行った
[結果】
I. SF‑MPQ‑2の信頼性・妥当性の検討
対象者の特徴を表1に示す.対象者は計8名(男性: 4名,女性:4名)であり,全症例に 頚椎症性頚髄症の既往があり,頚部周囲に対する筋解離術を受けていた.また,8名中7 名に変形性腰椎症の既往が認められた.
ICC(l. 1)の結果を表2に示す.SF‑MPQ‑2のすべての項目において0.89〜0.99の高い 表 1.対象者の属性
対象者(人) 8名(男性: 4,女性: 4) 平均(Ave土SD)
GMFCS
53.9土6.7
II : 4人,
m:
2人,N:2人 全症例に頚髄症特筆事項 7名に変形性腰維症の既往有り
表 2. SF‑MPQ‑2の信頼性
持 続 的 な 痛 み 間 欠 的 な 痛 み 神 経 障 害 性 の 痛 み
感 情 表 現 全 て の 痛 み
表 3. SF‑MPQ‑2とNRSの相関係 相関係数 持続的な痛み 0.56* 間欠的な痛み 0.53犬 神経障害性の痛み 0.70州
感情表現 0.51* 全ての痛み 0.62付
す:p<0.05 交安:ρ<0.01
ICC(l.1) Cronbachα 0.95 0.97 0.96
0.89 0.99 0.98
0.98 0.96 0.99 0.99
表 4.介入前ベースラインにおけるτ'ENS刺激 とSham刺激のSF‑MPQ‑2の各項目の比較 SF‑MPQ2の項目 TI:NS刺 激 Sham刺 激 す べ て の 痛 み 23.0士14.0 23.0士16.0 持 続 的 な 痛 み リ.5土5.7 9.9土4.5 間 欠 的 な 痛 み 6.0士5.3 4.0士6.1 神経障害:性の痛み
ι . 4
土3.5 5.5土4.3感骨表現
2.8士3.0 3.8士3.5表 5.TENS刺激と Sham刺激の介入前後での二元配置分散分析表 TENS Sham刺激 P値 Pre Pos Pre Pos
主効果 主効果
Ave土SD Ave士SDAve士SDAve士SD 前後 介入方法
交互作用
すべての痛み 23土14 12士9.6 23士16 17士14 * n.s. n.s. 持続的な痛み 9.5士5.7 6.0土5.8 9.9土4.5 7.6土5.8 n.s. n.s. n.s. 間欠的な痛み 6.0士5.3 2.1土2.4 4.0±6.1 2.3土3.9 * n.s. * 神経障害性の痛み 4.4土3.5 2.1士2.0 5.5土4.3 3.9土4.6 犬 n.s. n.s. 感情表現 2.8土3.0 1.5士2.0 3.8土3.5 3.5土2.4 n.s. n.s. n.s.※n.s:.not significant, *:pくO05
再現性がみられた.cronbachα係数においても,すべての項目において0.96〜0.99の高い 内的整合性が得られた.SF・MPQ‑2とNRSとのピアソン積率相関係数の結果を表3に示す.
「持続的な痛みJ' 「間欠的な痛みJ' 「感情的表現」の項目でP<0.05, 「神経障害性の痛 み」, 「すべての痛みjの項目でP<0.01となった.相関係数は0.51〜0.70であり,中等度 の妥当性が得られた.
II. 疹痛の質と TENSの効果の関係
本研究において通院中のアテトーゼ型患者8名が参加した.途中で脱落したものはなく,
最終的な分析対象者はTENS, Sham刺激とも8名となった.なお, TENSとSham刺 激による介入が,身体に悪影響を及ぼし休憩・中止に至った者はいなかった.本研究(クロ スオーバーデ、ザイン)のフローチャートを図 2に示した.介入前でのベースラインを表 4 に示した.ベースラインの時点でSF・MPQ‑2の各項目のスコアにTENSとSham刺激と の聞に有意差は認めなかった.
TENSとSham刺激による介入前後でのSF‑MPQ‑2の各項目のスコア(平均値士標準偏 差)と二元配置分散分析の結果を表5に示した. 「すべての痛み」は,介入前後において主 効果が認められたが(p<0.05),介入方法での主効果,交互作用は認められなかった. 「持 続的な痛みJは介入前後・介入方法において主効果および交互作用とも認められなかった 「間 欠的な痛み」は介入前後での主効果と交互作用(p<0.05)が認められた. 「神経障害性の痛 み」は介入前後において主効果が認められたが(p<0.05),介入方法における主効果,およ び交互作用は認められなかった. 「感情的表現」は介入前後 ・介入方法における主効果および 交互作用とも認められなかった.
【考察】
本研究は, アテトーゼ型脳性麻庫患者の腰痛を対象としたTENSの効果と疹痛の質との関 係を,クロスオーバーデザインでTENSとSham刺激を全対象者に行い,疹痛の質的評価法 である SF‑MPQ‑2を用いて即時効果を評価することで検討した.また, TENSの効果と疹痛 の質との検証に先立ち, 疹痛の質的評価法として神経障害性患者と侵害受容性患者における比 較や鑑別ができ有用であるとされている, SF‑MPQ‑2の成人アテトーゼ型脳性麻痘患者の腰痛
に対する信頼性と妥当 性の検証を行った.
信頼性は ICC(l.1)による再現性と, Crombachα係数による内的整合性を検証した. その結 果, ICC(l.1)は0.89〜0.99,Crombachα係数は0.96〜0.99と高い値を示した.SF・MPQ‑2 の各スコアと NRSとの相関性をピアソン積率相関係数により検証した結果, 0.51〜0.70と中 等度の相関係数を示した.以上より, SF・MPQ司2の成人アテトーゼ型患者の腰痛に対する十分 な信頼性と妥当性が確認され,質的な疹痛評価法として臨床上使用可能であることが示唆され た.
総合得点としての「すべての痛み」では, TENSとSham刺激の間に交互作用はなく,主効 果のみが出現した.しかし疹痛の質を反映する SF‑MPQ‑2の各項目に注目すると,交互作用 が出現していた項目,介入前後での主効果のみが出現し交互作用がなかった項目,主効果・交
互作用とも出現しなかった項目があった.TENSとSham刺激の聞に, SF‑MPQ‑2の各項目 においてベースラインに差を認めなかったことから アテトーゼ型患者の腰痛におけるTENS は,疹痛の質によって鎮痛効果に差が出現することが示唆された.また, SF‑MPQ‑2を用いて アテトーゼ型患者の腰痛を評価することで様々な疹痛の質が混在していることがわかり,
Visual Analog Scale (以下:VAS)やNRSなどの量的な疹痛評価法ではTENSによる鎮痛効果 を正確に評価することはできず,質的な疹痛評価を行うことが必要であると考えられた.
疹痛の質に分けて分析すると.「間欠的な痛みJにおいて, TENSとSham刺激の聞に交互 作用が出現した.「間欠的な痛み」の評価項目には,ピーンと走る痛み,刃物で突き刺されるよ うな痛み,鋭い痛み,割れるような痛み,電気が走るような痛み,貫くような痛みという表現 があり,これらの表現はリウマチ患者が訴えることが多いと言われており 12),関節の痛みを反 映しやすいことが考えられる.また,中村ら 1)は,アテトーゼ患者は生下時からのアテトーゼ 運動による物理的ストレスで椎体終板障害を高率で認めると報告しており, 本研究の対象者も 8名中 7名に変形性腰椎症の既往があった.以上より,アテトーゼ型患者の腰痛における SF‑MPQ‑2の「間欠的な痛み」のスコアは,腰部の関節由来の疹痛を反映しやすいものと考え た.Cheingら3)は, TENSは変形性膝関節症の疹痛をVASにおいて有意に減少させると報告 している.このようなTENSの鎮痛作用は,AB線維の刺激によりA8, C線維の情報伝達を抑 制し脊髄後角で鎮痛を行うゲートコントロール理論と, TENSの刺激により脳脊髄液中のオピ オイド様伝達物質(エンドルフィン メチオニンエンケファリン,ロイシンエンケファリン,
Bエンドルフィン等)が増加し下行性疹痛抑制がおこる内因性疹痛抑制機序によるものと言わ れている 2).今回の結果からも,ゲートコントロール理論と内因性疹痛抑制機序により, TENS のアテトーゼ型患者の腰痛の「間欠的な痛み」に対する鎮痛効果が得られたものと考えた.
「神経障害性の痛み」は介入前後の疹痛変化のみ主効果が有意であり,介入前後に改善が見 られたものの,Sham刺激との差は見られなかった.Richard Mら13)は,糖尿病患者における 神経因性の疹痛に対しTENSはSham刺激よりも有効であると報告しており, 異なる結果と なった.「神経障害性の痛み」には,冷たく凍てつくような痛み,軽く触れるだけで生じる痛み,
むずかゆい,ちくちくする・ピンや針,感覚の麻庫・しびれ,焼けるような痛みと言う表現が ある.アテトーゼ型患者の腰部にこのような感覚を生じさせる原因として,頚椎症性頚髄症に よる腰部への影響と胸腰部の椎体の変形による神経根圧迫による影響が考えられる.アテトー ゼ型患者の頚椎症性頚髄症は,アテトーゼ運動による動的狭窄因子が主因となっておこり 4),
さらに健常者と比しアテトーゼ運動により頚椎の変形が生じ若年より高頻度でみられる凶と され,アテトーゼ型患者の二次障害の代表的なものである.今回の対象者も全例が頚椎症性頚 髄症を呈しており,腰部の「神経障害性の痛み」に影響を与えていたことが考えられる. 先行 研究では,「ネ申経障害性の痛み」に対する TENS刺激部位は,ゲートコントロール理論を考慮 し,電極を疹痛部位と挟むように同デルマトーム上に貼付することで高い鎮痛効果を得られる
15),神経の走行と同部位に行うことで鎮痛作用が得有れる16)としづ報告がある.しかし今回の
研究設定では, TENS刺激は,神経の走行に基づかず,疹痛部位に電極を貼付しており,先 行研究同様の効果は得られにくいと考えられた.つまり,アテトーゼ型患者の腰部における 「神 経障害性の痛み」は,頚椎症性頚髄症が影響している可能性が高く,今回の介入前後の疹痛変 化は主に, TENS刺激によるものではなく,治療手順,つまり Sham刺激によるものと考えら れた.なお, Sham刺激の効果は,治療のイメージ,期待,医療者の言葉などにより闇値が変 化し出現するといわれている 17)_また近年の品!J:RIによる研究で,情動に関与する前帯状皮質 や眼嵩前頭皮質,前頭前野,島,海馬などの部位でSham刺激によるとみられる活動変化が観 察されるとされており 18),本研究のSham刺激において疹痛改善がみられたのも,闘値の変化 や脳活動の変化による下行性疹痛抑制の影響があったと考えられた.
「持続的な痛みJ「感情的表現」には主効果・交互作用ともに認められなかった RichardM ら13)は,慢性J腰痛に対しTENSは効果的でないと報告し日本理学療法診療ガイドライン第1 版では,慢性腰痛に対する TENSはSham刺激群・非実施群に比して効果に差はなく,慢性 腰痛に対する効果があるとは一貫して裏付けることはできず, TENSの使用を支持するエビデ ンスは無いとしている.また心因性疹痛に対し TENSを加えても鎮痛効果はないとの報告 5)
もあり,「持続的な痛み」「感情的表現」のスコアはTENSに反応しにくいことが示唆された.
以上より,アテトーゼ型患者の腰痛に対しTENSによる介入を行う場合,事前に疹痛の質に ついて評価することの重要さが示唆された.つまり,「間欠的な痛み」が高値である場合であれ ば, TENSの介入により鎮痛効果を得られるが,「持続的な痛み」「感情的表現」が高値で他の スコアが低値であるような場合は, TENSによる鍍痛効果は得られにくいため,他の介入を行 う必要があるといえる. 一方,「神経障害性の痛みjが高値である場合は,既往歴,つまり頚椎 症性頚髄症の有無を確認しTENSの介入を行うか否かを考える必要がある.また,実際にはそ れぞれの疹痛の質は混在していることから,患者の主訴や高値を示す疹痛の質により TENSを 行うべきか否か,電極を貼付する位置を考える必要がある.
このように,事前にSF−乱!J:PQ‑2による疹痛の質的評価を行うことは,アテトーゼ型患者の腰 痛における疹痛の質を正確に把握することを可能にする.さらに,アテトーゼ型患者の腰痛は 様々な疹痛の質が混在しており, TENSの効果に影響を及ぼしていることから, TENSによ
る介入を行う上で事前の疹痛の質的評価は重要であると言える.
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Abstract
[Purpose] Patients with athetoid cerebral palsy typically have low back pain, and the low back pain manifests in di宜erentforms, such as continuous or intermittent pain. While the revised version of the Short‑form McGill Pain Questionnaire (SF‑MPQ‑2) is used to evaluate the quality of pain, its reliability and validity has not yet been tested in patients with athetoid cerebral palsy and low back pain. Hence, we aimed to examine the test‑retest reliability, internal consistency, and criter叩n‑relatedvalidity of the SF‑MPQ‑2 in patients with athetoid cerebral palsy and low back pain and elucidate the relationship between quality of pain and the effect of transcutaneous electrical nerve stimulation (TENS).
[Methods] Eight adult patients with athetoid cerebral palsy and low back pain participated in this study. We used the test‑retest method (lntraclass Correlation Coe伍cient,ICC) for reliability assessment and the internal consistency reliability coe伍cients(Cronbachs alpha
coe伍cient) for the SF・ MPQ‑2 total and subscale scores. Validity was evaluated by examining the associations between the SF・MPQ‑2 total and subscale scores and numeric rating scale. To assess the relationship between quality of pain and the effect of TENS, we used a crossover study design wherein all subjects underwent two different procedureトー「rENSand sham TENι一生ocompare the immediate effect by SF・MPQ‑2.
[Result] We confirmed high reliability and moderate validity of the SF・MPQ‑2. The effect of TENS showed di飴rentresults based on the SF・MPQ‑2 subscale.
[Conclusion] As the e島ctof TENS is influenced by the quality of pain, it is important to evaluate the quality of pain by SF・ MPQ2 before performing TENS.
Keywords
Athetoid cerebral palsy, Low back pain, TENS, SF・MPQ圃2