教職員の麻疹抗体検査成績
�学生の麻疹抗体検査成績と�せて�
平成19年春、関東地区の大学を中心に、全国 の大学生に麻疹が流行しました。これは大学生世 代で、麻疹ワクチン未接種であったり、麻疹流行 が減少したために、麻疹免疫へのブースト効果が 以前ほどなくなっていることなどのために、麻疹 に対して免疫を持たないものが増加しているた めとされています。
本学でも2名の麻疹患者が出ましたが、罹患さ れた学生と御家族、近隣医療機関や学内関係者の 素早い的確な対応と御尽力により、大学内や教育 実習先で感染が拡大しなかったのは不幸中の幸 いでした。
保健管理センターでは以前から、麻疹や風疹な どの流行の危険性について情報提供を行い、平成 19 年春には麻疹と風疹の抗体検査の実施を予定 していましたところ、実際に、大学生などにおい て、麻疹の大流行がおこりました。そこで、特に 教育実習などに参加する学生を介する感染拡大 を阻止することを目的として、全学的に麻疹抗体 検査が行われることになりました。受検者も当初 の予定を大きく上回り、貴重なデータと思われま したのでその成績を纏めて報告しました1)。 平成 19年度末(一部は平成 20年度初頭)に は、感染症法において、麻疹の取り扱いが変更さ れたことを受けて、教職員の希望者を対象に麻疹 抗体検査が実施されました。学生における成績と 合わせて、その成績を纏めておきたいと思います。
対象と方法
対象は、抗体検査を希望された教職員371名で す。麻疹抗体検査は、ゼラチン粒子凝集(PA) 抗体価を外注して測定しました。なお、学生・大 学院生の受検者は1,584名で、麻疹罹患歴および ワクチン接種歴を問診で確認し、抗体はデンカ生 研製キットを用いる EIA-IgG 抗体価を外注して 測定しました。平成19年春、学生の検査を行っ た時期に利用可能であったのは本法だけでした。
� 果
① 受検した教職員 371 名の中で、365 名
(98.4%)が抗体陽性(PA抗体価16倍以上)
でした。また、中和抗体がほぼ血中して麻疹ウ
イルスに大きな変異が起こらない限り麻疹ウイルスの 曝露を受けてもほとんど発症することはないとされる PA 抗体価 128 倍以上の方は、329 名(88.7%)でした
(図1)。
② 年齢別の成績を表1に示しました。人数が 少ないので、明確なことは言えませんが、抗体 陰性者の比率は年齢別で大きな違いはありま せんでした。50歳以上では、抗体価128倍未 満の割合が高い傾向が見受けられました。最も 重要な所見は、全ての年齢層において、麻疹に 感受性があると考えられる者が一定程度存在 することです。今回受検した教職員全体では、
その割合は11.3%でした(表1)。
③ 学生全体(1,584名)のうち、EIA-IgG陰性
(抗体価2未満)は1.8%、擬陽性(同2以上4 未満)は3.7%で、陽性は94.5%でした。陽性者 のうち、弱陽性(同4以上8未満)は全体の10.6%、
強陽性(同8以上)は全体の83.9%でした(図2)。
小児では、EIA抗体価8未満は、麻疹への抵抗性 が十分ではないとされています。大学生において、
麻疹ウイルスに暴露されても殆ど発症しないと 考えられる EIA 抗体価がどの程度かは明らかで はありませんが、リスクを最小とするために、
EIA 抗体価 8 未満の学生に対して麻疹ワクチン 接種を奨めました。
④ 学生への問診によると、麻疹既往歴、麻疹ワ クチン接種歴のいずれもない学生は71名でした。
それら学生の抗体価の分布は、陰性9.9、擬陽性 5.6、弱陽性7、強陽性77.5%でした(表2)。す
なわち約84.5%が抗体陽性で、麻疹に不顕性感染
した可能性が推測されましたが、一方、抗体非陽 性者の割合は15.5%で、それ以外の者の5.1%に 比し高い割合でした。
まとめ
1.約 89%の教職員が PA 法による麻疹抗体が 128倍以上で、麻疹ウイルスに暴露されても、ほ とんど発症しないと考えられました。一方、全て の年齢層で、麻疹ウイルスに暴露した場合に発症 の可能性がある64倍未満の方が認められました。
2.学生では約84%が麻疹ウイルスに暴露され ても、ほとんど発症しないと考えられました。
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5.5%の学生が抗体陰性あるいは擬陽性を示した 他に、小児では暴露により発症の可能性がありう るとされるEIA-IgG抗体価4以上8未満の学生 が10.6%ありました。
3.平成20年度以降、中学1年と高校3年とで、
第3期、第4期の麻疹ワクチン接種が開始されて いますが、国立感染症研究所の情報2)によれば、
その接種率は十分ではありません。今回の学生に ついての検討においても、麻疹罹患歴、ワクチン 接種歴がいずれもないグループでは麻疹に感受 性を有すると考えられる者の比率が高いことが 示されました。これらを考え併せると、今後も暫 くの間、麻疹の蔓延についての注意と啓発活動の
持続が必要と考えられます。
文献
1.滋賀大学生における麻疹罹患歴,予防接種歴 と抗体検査成績の関係に関する検討.山本孝吉,
辻君代,杉本千佳子,甲斐智子,大橋美佐子,久 保田泰考.CAMPUS HEALTH 2008,45(2): 215-220.
2.
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/09/s0903-8.
html
分析 山本 孝吉
表1.年齢別に見た教職員の麻疹抗体価(PA法)
* 抗体価は希釈倍数である
**人数(その年齢における百分率)を示す
表2.麻疹羅患暦およびワクチン接種暦のない学生の抗体価(EIA法)
* 抗体価は指数である
**人数(病歴ごとの百分率)を示す
16未満 16 32 64 128(倍)以上
図1.職員における麻疹抗体価(PA法)の分布
1.6 2.7 1.9 5.1
88.7%
1.8 3.7
10.6 83.9(%)
2未満 2以上4未満 4以上8未満 8以上
図2.学生における麻疹抗体価(EIA法)の分布
年齢
判定(抗体価)*
16 未満 16 32 64 128 以上 計
30 未満 1(3.6)** 0(0) 0(0) 2(7.1) 25(89.3) 28(100) 30-39 1(1.4) 1(1.4) 1(1.4) 3(4.1) 67(91.7) 73(100) 40-49 2(1.4) 2(1.4) 0(0) 8(5.8) 127(91.4) 139(100) 50 以上 2(1.5) 7(5.3) 6(4.6) 6(4.6) 110(84.0) 131(100) 計 6(1.6) 10(2.7) 7(1.9) 19(5.1) 329(88.7) 371(100)
病歴
判定(指数)*
計 2 未満
2 以上 4 未満
4 以上
8 未満 8 以上
羅患暦・接種暦(-) 7(9.9)** 4(5.6) 5(7.0) 55(77.5) 71(100) 上記以外 22(1.4) 54(3.6) 163(10.8) 1274(84.2) 1513(100)
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