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Key words:Hokkaido(北海道);measles(麻疹);PA antibody(PA抗体)

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(1)

道衛研所報Rep. HokkaidQ Inst. Pub, Health,57,83−85(2007)

2006年度の北海道における麻疹PA抗体保有調査

Surveillance of PA Antibody to Measles Virus in Hokkaido in Fiscal Year 2006

地主 勝   伊木 繁雄   長野 秀樹 奥井 登代   岡野 素彦

Masaru JINusHI, Shigeo IKI, Hideki NAGANo,

  Toyo OKul and Motohiko OKANo

Key words:Hokkaido(北海道);measles(麻疹);PA antibody(PA抗体)

 麻疹はパラミクソウイルス科に属する麻疹ウイルスに よって引き起こされる急性熱性の発疹を伴う感染症であ る1).感染経路は空気感染,飛沫感染,接触感染と様々で あり,その感染力は極めて強い.麻疹ウイルスに対する免 疫を持たない,いわゆる麻疹感受性者が感染した場合,ほ ぼ100%が発症する.さらに中耳炎,肺炎,脳炎などの合 併症を起こしやすく,小児では約1,000人に1人が脳炎を 起こすことが知られている.また,成人が感染した場合は,

一般に重篤な症状を起こすとされている.

 近年,日本における麻疹患者数は著しく減少しており,

感染症発生動向調査によれば,全国の小児科定点(約 3,000カ所)及び基幹定点(約450カ所)からの累積報告 数が2001年では33,812例であったのに対し,2006年で

は519例であった2).また,麻疹の罹患年齢については,

2歳以下が最も多く低年齢層が流行の中心であった.なお,

麻疹の定期予防接種に関しては,2006年4月から,生後

12から24カ月に至るまでの問に1回と5歳から7歳未満

の小学校就学前の1年間に1回の計2回接種となった3).

 北海道では,2000年12月から翌年夏にかけて麻疹の流 行を経験したことから,2001年5月北海道小児科医会総 会において,5年以内の麻疹制圧を目標とした「北海道麻 疹ゼロ作戦」が提案された.定期検診時のワクチン接種勧 奨と接種歴問診,未接種者への積極的な接種の勧奨など具 体的な行動により成果を上げた4).しかし,2007年には全 国的に10歳代から20歳代を中心とした流行が起こり,北 海道においても同様の流行をみている5).

 本調査では,麻疹の今後の流行予測と予防接種計画の効 果的な運用を目的として,北海道における各年齢層のワク チン接種歴及び麻疹抗体保有状況を調べたので報告する.

材料及び方法

1.調査対象

 検:査検体は市立札幌病院から分与された血清を用いた.

調査対象は0〜1歳,2〜3歳,4〜9歳,10〜14歳,

15〜19歳の5群で各25名ずつ,20〜24歳で24名,25〜

29歳,30〜39歳,40歳以上の3群で各25名ずつの9群

計224名について調査した.

2.測定方法

 麻疹ウイルス抗体価測定キット(富士レビオ㈱)を用い て,血清中の麻疹ゼラチン粒子凝集(particle agglutina−

tion:PA)抗体価を測定した.方法はキット添付の使用

書に従った.

1.ワクチン接種状況

 各年齢層におけるワクチン接種状況を表1と図1に示し た.接種歴不明180名を除いた44名の麻疹ワクチン接種

表1 年齢別ワクチン接種歴

年齢(歳)合計 麻疹ワクチン 自然麻疹 非接種者 不明

0〜1 2〜3 4〜9

10〜14

15〜19

20〜24 25〜29 30〜39

40〜

25 25 25 25 25 24 25 25 25

9

10

8

14

3

11

13

15

17

25

24 25 25 25

一83一

(2)

(%)

100 80

 60 接 種

率40

20

0

  1

uF・

□不明

[]非接種者

薩麻疹ワクチン

≧8192  4096

1.ぞ 守 1P 1ξ㍗0㌘ 鈎0『0

1   3   9   14   19   24   29   39

       年齢群

   図1 年齢別ワクチン接種率

  1:劣

等512

坦  256

  128

  64   32   16

  <16

△非接種者 Oワクチン接種者●不明

●   ∞   ○   ●   ●●   ●●  ●●●● ●●●  ●●●

● 盈覇● ●●● ● ●●●銘●●器&齢 ● ●●

… 髄臨翫。.… 器』・・・・・・・…

△● 2&ゆ88●●Oo●●●●●●3●●●●●●●38銘●9鱒

△●

。 ∞●8鱒●3器●

●   8●●●●●●

 ●●●●  ●    ●

      ●●

    ●●

●   O   o

●    ●

●   ●●

  ●●

●●

●●●●  ●●●

●●●器●・

●●●  ●●

  ●●

率は61%(27/44)であった.年齢別にみると0〜1歳 0% 

(0/14), 2〜3 歳75% 

(9/12), 4〜9 歳100%

(10/10),10〜14歳100%(8/8)であった.しかし,15 歳以上の年齢群をはじめ,各年齢群においてワクチン接種 歴不明者が多く,本調査からはワクチン接種状況を的確に 把握できなかった.

2.年齢別麻疹PA抗体保有状況

1)0〜1歳

 本年齢群の抗体価の分布状況を図2に,また月齢別に細 分した抗体保有状況を表2に示した.1!カ月齢以下の抗 体陽性(1:16以上)者は14名中9名(64%)であり,

1〜7カ月齢では12山中9名(75%)が陽性を示し,移

行抗体が既に消失していると考えられる8〜1!カ月齢の

2名は抗体陰性(1:16未満)であった.ワクチン接種対 象となる1歳児においては,11名中7名(63%)が抗体 陽性であった.また,0〜1歳児群における抗体陽性率は 64%(16/25)であった.

2)2歳以上

 2歳以上の抗体保有状況を図2に示した.各年齢群にお いて1:16以上の抗体陽性者は95%を超えていた.平成 17年度(2005年度)感染症流行予測調査報告書6>による

と,抗体価が1:256以上で麻疹ウイルスの中和抗体がほ ぼ100%血中に存在するとされており,ウイルスに感染し

表2 乳児月齢別PA抗体価(〜23カ月齢)

024101520253040

〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜   〜 1   3   9   {4   19   24   29   39

        年齢群

図2 年齢別PA抗体保有状況

てもほとんど発症しないとされている.そこで,1:256

以上の陽性率についてみると,10歳以上の群では 84〜91%であったが,2〜3歳群では96%と高く,4〜

9歳群では逆に80%と低い傾向が見られた.また,本調

査では,ワクチン接種者の2名(4〜9歳群及び10〜14

歳群)が抗体陰性の麻疹感受性者であった.

月 齢

PA抗体価

1   2   3   4   5   6   7   8   9  10  11  12〜23

<16

 16  32  64

 128  256  512 1024 2048 4096

≧8192

2 1

1 1

 1

1 1

1

1

1

2 4

1

1 3 1 1

1

 麻疹は小児にとって重篤な感染症であるばかりではなく,

近年は成人での発症も問題となっており,その対策は国民 の社会生活に与える影響からも重要である.感染症流行予 測調査は,予防接種事業の効果的な運用と長期的視野に 立った疾病の流行予測を目的とした事業であり,麻疹の感 受性調査は1978年から実施されている6).この調査では,

健常人における麻疹抗体価を測定しており,抗体測定法は 1996年に,赤血球凝集抑制(hemagglutination inhibi−

tion:HI)法から,より高感度で中和法との一致率も高 いとされるPA法に変更された7). PA抗体価1:16未満 のいわゆる麻疹感受性者の確認とワクチン接種状況を明ら かにすることは,集団の免疫状況を把握する上で重要であ る.それぞれの年齢群の検体数は少ないが,今回の調査か らいくつかの知見が得られた.

1)ワクチン接種者の2名に麻疹感受性者が認められた.

ワクチン接種歴があるにもかかわらず麻疹に感染する例が 全国でみられることや,患者数の減少によって野生株によ るブースター効果を得る機会が失われてきているという状 況からみても,今後も抗体価の経時的観察が必要である.

2)11カ月齢までのPA抗体陽性率は64%であった.移 行抗体を保持していると考えられる1〜7カ月齢児では 12名品9名(75%)が抗体陽性であったが,既に消失し ていると考えられる8〜11カ月齢の2名は1:16未満の 麻疹感受性者であった.予防接種対象となる1歳児では,

抗体陽性率は63%(7/11)であり,4名は1:16未満の

一84一

(3)

麻疹感受性者であった.このことから,接種年齢に達した 時点での早期ワクチン接種が望まれる.2歳以上において は,1:16以上の抗体陽性者が97%であり,1:256以上 では86%であった.

3)2〜3歳の年齢群では1:256以上の茸体価保有率が 高いという特徴を示した.これは,予防接種を受けてから あまり時を経ていないということが大きな要因になってい ると考えられる.

4)2〜3歳,4〜9歳,10〜14歳,25〜29歳群の4群

において抗体陰性(1:16未満)者がそれぞれ1名ずつ確 認された.また,定期予防接種の年齢に達していない11 カ月齢までは移行抗体の経時的な漸減や母体の抗体価に起 因すると考えられる低抗体価ないしは抗体陰性者が多く,

ウイルスに対して無防備な状態であることが示された.こ の傾向は過去3年間の調査(2003〜2005年度)8−10)におい ても同様であった.

 国や地方における様々な麻疹対策によって年間の患者数 が激減したため,定点報告のみでは感染実態の把握が困難 となっている.自治体独自で全数把握の取り組みを実施し ている沖縄県や宮崎県では,迅速な探知により感染拡大の 防止に効果を上げており11),わが国から麻疹を排除するた めにも定点報告から全数報告にする必要がある.一方,

2006年から関東地方を中心とした流行が発生しており,

2007年には同地域において成人麻疹を主とした集団発生 を認め,その流行が全国へ拡大している5).流行の中心は 麻疹ワクチンの定期接種が開始された1978年以降の世代,

特に,10歳代から20歳代である.この年代は予防接種を 受けてから長期間経過しており,その間に野生株による ブースター効果が得られず,抗体価の低下をきたして発症 したものと考えられる.また,ワクチン未接種者の罹患も 流行の主な原因のひとつと考えられるため,ワクチン未接 種者,かつ未罹患者に対する予防接種の勧奨及び接種を行 うとともに,この世代における麻疹感受性者の増加を抑制 するためにも,ワクチンの追加接種を中心とした対策が必

要である.

 2006年4月1日から麻疹・風疹(Measles−Rubella:

MR)混合ワクチンによる2回接種法が導入されたが,北 海道では小学校就学前!年間の接種率が約20%と極めて 低く12),今後は2回接種の意義も含め十分に周知していく

ことが大切である.

 以上のことから,麻疹抗体保有状況調査の継続は,今後 も麻疹排除のために有益な疫学情報をもたらすものと思わ

れる.

 稿を終えるにあたり,血清材料の採取及び本事業の推進 にあたりご協力頂きました市立札幌病院感染症科の滝沢慶 彦先生に深謝いたします.

文 献

1)Katz SL, Gershon AA, Hotez PJ:Measles(Rubeola)一

  Krugman s Infectious Diseases of Children,10th ed.,

  Mosby−Year Book, Inc., New York,1998, p.247

2)国立感染症研究所感染症情報センター:感染症発生動向調

  査(週報),9,5−8(2007年第14週)

3)平成17年7月29日付物発話0729001号厚生労働省健康局   長通知

4)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  幸艮, 25, 66−67 (2004)

5)国立感染症研究所感染症情報センター:感染症発生動向調

  査(週報),9,9−14(2007年忌24週)

6)厚生労働省健康局結核感染症課,国立感染症研究所感染症   センター:感染症流行予測調査報告書 平成17年度,平   成19年2月

7)Sato TA, Miyamura K, Sakae K, Kobune F, Inouye S,

  Fujino R, Yamazaki S:Arch. ViQ1.,142(10),1971−1977

  (1997)

8)石田勢津子,伊木繁雄,佐藤千秋,長野秀樹:道衛研所報,

  54, 77−79 (2004)

9)長野秀樹,伊木繁雄,佐藤千秋:二黒研所報,55,55−57

  (2005)

10)長野秀樹,伊木繁雄,佐藤千秋,奥井登代,岡野素彦:道

  衛研所報,56,71−73(2006)

11)国立感染症研究所感染症情報センター:病原微生物検出情

  報(月報),27,85−90(2006)

!2)国立感染症研究所感染症センター:病原微生物検出情報   (月報),28,85−86(2007)

一85一

参照

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