保険業規制と国際的調和
平成26年大会共通論題
パネルディスカッション
【司会:井口富夫】これからパネルディスカッションを始めます。
本日は,4人の先生方に,保険監督制度の考え方,損保への影響,さらに 企業会計等からの影響,最後に国際協調のあり方ということで,起承転結風 のご報告をいただきました。それぞれ時間が短かったですから,言い足りな いことがありましたらおっしゃってください。それが終わりましたら4人の 先生方のそれぞれのご報告についてご意見やご感想を述べていただいて,そ の後,フロアからのご質問を承るということで,16時には終了するというこ とでまいりたいと思います。
どなたか言い足りなかった人がありましたらどうぞ。もうよろしいですか。
ありがとうございます。
それでは,それぞれのご報告に関してご意見やご質問がありましたら,お 願いいたします。
上野さん,どうでしょうか。
【上野雄史】個人的な興味ですが,浅見先生のご報告で分からなかったのは,
G‑ SIIsの検討状況の最後のほうで固有データの最適化の話をされていたよ
うに思います。 透明性と公表データの最適化 は,どのような意味での 最適化 なのか,ご説明願います。
【浅見俊雄】今,上野先生からご質問をいただいたところは, 4.
G‑ SIIs
に適用される資本規制の概要およびIAIS
での検討状況について⑴BCR
の 透明性と公表データの活用の最適化 だと思います。 透明性 という のは特に問題ないと思いますが, 公表データの活用の最適化 といいます のは,私見が入って恐縮ですが,おそらく データ活用の際は透明性が最大 限に高められなければいけない という意味合いだと思います。オプティマ イズという英語を使っていると思いますが,そのように解釈しております。
【司会】ありがとうございました。他にはございますか。
【浅見】私も個人的に興味のあるところで,上野先生にご報告いただきまし たソルベンシーⅡと
IFRS(国際財務報告基準)のバランスシートの構成
(図表1)があります。ここについて,もう少し詳細にご説明いただけます か。
【上野】ありがとうございました。一番の違いは,IFRSではのれんという 項目が載っていますが,ソルベンシーⅡには載っていないことです。ほかの 違いもありますけれども,技術的にはこれが一番大きな違いだと思っていま す。なぜかといいますと,のれんというのは
M & A
により発生したところ の部分ですが,規制監督側のほうでは,これは恣意的な評価だとしているの かどうか分からないですが,資産としては入れておりません。バーゼルⅢで も,のれんの算定のところを除いてしまっています。ポイントとしては,第 一生命等もそうだと思いますが,のれんというのはM & A
に伴い発生する のれんですので,そこをカウントしないかたちで計算するということです。どれぐらい影響が大きいのかということに関しましては,保険会社の算定に よっても変わってくると思っています。
ここでのポイントは,最適な推定負債が規制監督と企業会計の共通の要素 として入っていることです。規制監督側のほうがやや保守的に見積もる可能 性はありますが,おそらくこの部分は共通部分となると思います。
他の部分は未定のところがありまして,詳しくこのように違うということ
を断言できる状況ではありませんが,あとはどのぐらいのマージンを乗せて いくのかで議論されていくと思います。つまり,ベースの,最適な推定負債 の部分は共通でありまして,そこからどのぐらいの資本を積み上げるのかと いうことです。会計の場合,資本の積み上げという概念がありませんので,
そこの部分は規制で対応するかたちになるだろうと考えています。
【浅見】ありがとうございました。
【司会】他に何かございますか。
【諏澤吉彦】上野先生に教えていただきたいのですが,市場規律の重要性に ついて大変分かりやすくご説明くださり,ありがとうございました。ご報告 の中でもご指摘されていましたが,市場規律を機能させるためにも共通化な どをとおして客観性を維持することが必要になるということです。そのため に公正価値のヒエラルキーにおいて,レベルが上がれば上がるほど客観性が 難しくなってくるということでございました。その問題は内在しているので すけれども,それに伴って,それを無理に客観的に示そうとしますと,どう してもコストがかかってきてしまい,かえってそのことを追求することによ り市場全体の効率性が低下してしまうのではないかとも考えられます。
どこかでコストとベネフィットが均衡する点を見極めることが必要になっ てくると思います。どのようにそれを判断するか,あるいは,時代と共に均 衡点というのは流動的に変化していくのかが,まだよく理解できておりませ ん。その辺りをお話しいただけますとありがたいです。
【上野】今日はデータを持ってこなかったのですが,銀行の例を挙げると分 かりやすいかと思います。通常,銀行が持っている資産の構成を考えてみま すと,レベル2の資産はかなり多いです。6〜7割でしょうか。ですから,
レベル2の資産のところでどのように計るかが核になってくる問題と考えて
います。
レベル3はどのぐらいかといいますと,1割なかったでしょうか。サブプ ライムローンのときを見ましても,それほど大量にレベル3の資産があった というわけではありません。ただし,懸念するのは,レベル3に近いレベル 2があったり,レベル1に近いレベル2があったり,その境目が非常に難し いということがあります。問題は,会計基準もしくは測定技術の発展ととも に,測定が高度化しているということです。その背景には,経済事象が複雑 化していますので,それに伴って測定技術が複雑化せざるを得ないことがあ ります。
測定は,その時点でのベストを尽くした測定をしなさい,という形で行わ れます。取得原価のまま,つまりもうあきらめて,取得した価額のままでい くということではなくて,何らかのかたちで時価評価したりすることが求め られるということです。もちろん企業会計においても,すべてが時価で計ら れるわけではありませんが,有価証券報告書の中には注記として,時価の値 も載せないといけませんので,計算して載せるわけです。その時に必然的に,
何らかの時価を計ります。つまり,何らかのかたちで時価の値は出さなけれ ばいけないことになります。その辺がなかなか難しいところで,取得原価で 全部測定するわけにはいかない,ということが実情としてあります。
おそらく何らかの形で見積もって対応していくことが求められます。そこ が非常に悩ましいところだと思います。
【諏澤】ということは,そのためにかかるコストを理由に ここまでしかで きません ということは言えないということでしょうか。
【上野】実務の部分でどうなるかにつきましては,インタビューで聞いてみ たいところですけれども,その辺は 時価を出せ と言われれば,ある程度,
決め打ちでもいいから出さなければいけないというのが実態ではないかと推 測しています。
【諏澤】ありがとうございます。
【司会】よろしいでしょうか。
さて,もともと今日の共通論題は,大会実行委員長の安井先生が,このよ うなテーマでやったらどうかと提案されたものです。ご報告者の方はそれぞ れの分野の専門家ですが,司会はあまり詳しくない人間が当たったというこ とです。
保険業に限らずどこの分野でもそうですが,研究が細分化されてきますと,
特定のテーマの報告は自分には関係ないと,段々そのようなことが多くなっ ていくと思います。
このスライドを見ていただけますか。
マクロ経済の動きとその影響 ということで,ここにはおおざっぱなも のを書いてみました。1929年と73年にこのような歴史的な重大事件がありま した。その中で保険業に対する規制は,幸か不幸か影響を受けてこなかった というのが歴史的な経緯なのではないかと考えます。
それに対して,ここでは2007年と書いてありますが,リーマン・ショック やサブプライムローンの破綻等,何を契機に世界金融危機と呼ぶかという違 いがありますが,このような動きの中で,保険業規制は大きく変わりつつあ
マクロ経済の動きとその影響
歴史的出来事 マクロの動き 保険業・保険規制への影響
株価暴落の影響
株価暴落の影響
規制の国際的調和 大きな政府へ
科学技術政策の強化 (サプライサイド) 金融政策の国際協調体制
の強化 1929年大恐慌
1973年石油危機
2007年世界金融危機
るというのが今の状況です。その意味で,自分自身の研究に直接関係ないと いうことでは見逃すことができないようなテーマがあるのだと。おそらくそ れが,安井先生がこのテーマを選ばれた理由ではないかと思っております。
そこで少し技術的なことを置いておきまして,次のスライドをご覧くださ い。
大きな質問ですが,
今の保険業規制の国際的調和の動きが,保険契約者や,保険会社経営,
あるいは各国の保険業規制の分野にどのような影響を与えているのか,ある いは今後どうあるべきか というものです。
先生方が答えにくい問題かもしれませんが,このようなことを議論するこ とを通じて,多くの方が,この分野は保険に関係のある非常に大事なことで,
自分自身の研究にも役立てなければいけないと考えるきっかけにならないか なと思い,このような質問を書かせていただいたわけです。可能な範囲で,
全体でも,あるいは一部でも結構ですので,いかがでしょうか。順番に溝渕 先生から聞きましょうか。
【溝渕 彰】3つの質問はそれぞれ関連していると思います。まず上の2つ ですが,プルーデンス規制は保険会社の経営の健全性を確保するもので,そ れによって保険会社の経営が健全になされて,契約者保護を図ることができ るという側面があると考えています。
最後の3つ目は,これにも関連するのですが,各国の保険業規制に対して,
1. 保険業規制の国際的調和が与える影響とは?
2. 今後、どうあるべきか?
・保険契約者利益に対して
・保険会社経営に対して
・各国の保険業規制に対して
例えば,諏澤先生は歴史的背景等々を考慮しないと具合が悪いことがあると のご説明でしたが,プルーデンス規制に関していいますと,これはあまりな いと考えています。ですから,グローバルに統一的なルールをつくらなけれ ばいけない状況になると思っています。
といいますのは,先の金融危機では,AIGのケースがその典型例ですが,
特に規制体制の問題があったと考えます。規制に緩いところをつくってしま いますと,金融機関がそのような規制を利用して,危ないことをすることに なると思います。AIGも,例えば,貯蓄金融機関持株会社,thriftという組 織形態を使っていました。それは非常に規制が緩かった。アメリカの規制当 局であった
OTS(Office of Thrift Supervision
)がきちんと監督しなか ったということがありました。やはり規制裁定の問題がありますから,穴を つくるというのはよくないです。ですから,単一のルールが各国の保険会社 に適用されるのは,教訓を踏まえますとやむを得えないと思います。ただし,規制をかけるにしましても,各国の保険会社,それぞれの保険会 社でビジネスモデルが違います。これは言い古されたことだと思いますが,
日本の保険会社は伝統的な保険業務を中心にやっているわけですから,他国 の,例えば,AIGのような保険会社とは違うと考えます。そのようなビジ ネスモデルを踏まえた,段階に分けた規制にするべきだと個人的には感じて います。
ですから,単一のルールではありますが,ルールをつくる際に,日本の保 険会社に固有の歴史的背景といいますか,ビジネスモデルを踏まえた規制に なるように。それは日本の保険会社だけではなくて,他国の保険会社につき ましても同じように言えることですが,そのような規制にしていく必要があ ると,この質問事項を見て感じた次第です。
【司会】ありがとうございます。それでは,浅見先生。
【浅見】私も溝渕先生と基本的には同じような考え方です。やはり金融の国
際化が進展する中で,金融危機,そして保険会社の国際進出の流れは止めら れませんので,ある程度保険業規制の国際的調和を取らざるを得ないと思っ ております。例えば,アメリカでは,ご承知のとおり州毎に規制が異なり,
50州が別々の規制を導入しています。日本の保険会社もアメリカに進出して おりますが,それらの保険会社が仮に全ての州で事業免許を取得して事業を 行おうとする場合,コンプライアンス費用は非常に高くなるものと思われま す。そのようなことを考えましても,国際的調和は取っておくほうが良いの ではないかと思います。
ただし,これも溝渕先生がおっしゃったように,例えば,日本ですと地震 リスクが世界的に見て非常に高いのですが,異常危険準備金のルール一つを 取りましても,国際規制策定において日本のリスク特性の説明をしっかり行 わないと,当該リスク特性が考慮されずに規制が策定されてしまう危険があ ります。したがって,ある程度各国の事情は踏まえた上で,ルールベースと プリンシプルベースのバランスを取りながら,国際的な調和を促進していく べきではないかと思います。
【上野】今までのお二方と違う意見を言わなければいけないと考えていまし た。契約者利益になるかどうかというのは,保険会社の健全性が高まれば,
ひいては既存の契約者の利益になるということも考えられます。これからの 契約者につきましては,会計基準も含めた規制により保険会社の商品設計が 変わったり,これまで提供されていたような商品が変わったりするならば,
今の人は保証されているからいいのですが,今契約していない将来の保険契 約者については,不利益となる可能性が懸念されます。
あと保険会社の経営について懸念するところは,私の個人的な思いですけ れども,G‑
SIIsの対象となる大きな保険会社ほどリスキーとみなされて厳
しい規制が課せられると仮定するならば,小さいところは相対的に緩い規制 が課せられます。すると,ある意味で不平等なかたちになるということです。これは何をもたらすかといいますと,確かめたわけではありませんが,たと
えば地銀と都銀で,地銀のほうがリスクを取りやすいということを聞きます。
これは,都銀のほうがかなり厳しい規制を課せられていて,地銀のほうは課 せられていませんので,地銀のほうがリスクを取っていけるということであ り,保険会社の経営においても同じことが起こり得えます。これが1つ懸念 されるところです。しかし,too big to failの問題もあり,痛し痒しとい うところですので,これをどう克服していくのかは難しい問題だと思います。
また,保険業の規制ということで考えますと,日本というのはすばらしい 対応力を持っている国だと思います。国際会計基準につきましても,国際保 険規制につきましても,いろいろ言いながらも,やられれば,ピシッとその まますごい対応力で処理していって,やはり日本はすごい,というかたちに なると思います。なぜかといいますと,経験則ですけれども,会計ビックバ ン等,様々な金融規制がたくさん入りましたが,いろいろないびつなかたち で問題は起きてきていると思いますが,うまくシステム対応しているといい ますか,問題はたくさんあるのですけれども,大きな混乱を引き起こさず,
なんとか対応してきていると感じています。ですから,日本の対応力はすば らしいですし,日本につきましてはあまり心配する必要はないと思っていま す。
最近東南アジアの大国の友人が来ましたので,じっくり話をしたのですが,
この国は人口が多く,経済発展が著しい国なのですが,現状ではとても対応 力があるとは思われません。G20の国を並べて見てみましても,対応力が ないのではないかという国も含まれています。ですから,この保険業規制を 当てはめたときに各国が本当に対応できるのかどうかが懸念されるところで す。
規制ができたときに,日本よりも日本以外の対応力の乏しい国において,
おそらく問題が顕在化してくるのではないかと,私個人は懸念といいますか,
予想しております。
【諏澤】上の2点,保険契約者利益と保険会社経営で,特に契約者利益を考
えますと,保険のリスク移転機能が重要になってきます。これを十分に機能 させるためには,保険の価格やカバーの内容に関する情報の問題や,先ほど 申しましたとおり,保険会社の支払能力に関する情報不均衡を緩和すること が重要になってまいります。
それに主に対処してきたのが,市場行動規制になります。これも溝渕先生 もおっしゃっていましたし,先ほどの繰り返しにもなりますが,このような 分野の規制,商品・保険料率規制や販売規制は,個々の市場でその状況に適 合した規制が設計されれば,現在のところは問題ないのではないかと思いま す。各市場の固有の特性を考慮しない共通化は,かえってこのような情報の 問題を拡大しかねないと考えます。
一方で,保険会社の経営実態の情報の問題にも関わってくるのですが,支 払能力の確保に関しては,健全性規制が軸となりますが,これに関しまして は個別の市場ごとに設定しておけばよかったという時代が長かったと思いま す。しかし投資活動が国際化していくことを考えますと,今後は一定の共通 化は必要となってくるのではないでしょうか。特に,健全性規制を構成する 財務規制や,ソルベンシー規制というものは,上野先生の話にもありました とおり,市場規律を機能させるためには,会計基準,それから破綻処理規制 も含めて一定の共通化が不可欠ではないかと考えます。
また,他の先生方もおっしゃっていたように,規制裁定ということであれ ば,支払保証基金等のセーフティーネットも保護水準等を共通化して,逃げ 道を作らないようにすることも必要ではないかと考えます。
ただし,単純な統一化に議論が進んで,いずれかの市場に合わせるとか,
いずれかの市場の水準で規制の枠組みをつくっていくことになりますと,あ る市場にとっては規制強化にもなりますし,ある市場にとっては規制緩和に もなってきます。先ほど浅見先生もおっしゃっていましたが,個々の市場に よって,例えば,自然災害リスクへの対処方法も異なってくるわけですから,
全く単純に共通化すべきだとは言い切れないところもあるのは確かです。そ して,実際に共通化すれば効率性が高まるのか,市場規律が機能するのかと
いうことについて,上野先生も取り上げられた先行研究にも様々な結果が出 ていると思いますが,やはりまだコンセンサスに達しているような結論は出 ていないのではないかと考えられます。量的にそのようなものがはっきり示 されることは難しいとは思いますが,ある程度の方向性が見えない限り,判 断がなかなか難しいところだと考えております。
【司会】ありがとうございます。今後どうあるべきかが分かれば,このよう な規制ももっと解決していて,学会で取り上げる必要もないでしょう。とい うことで,無理な質問で申し訳ございません。
それでは,フロアからの質問を受けたいと思います。慣例によりまして,
お名前とご所属,そして質問でお願いいたします。
【村田毅(MS &AD ホールディングス)】MS& ADインシュアランスグルー プホールディングスの村田と申します。
1つ目が,会計に関するご報告に関しての質問です。負債の時価評価をす るため,インフローとアウトフローの将来のキャッシュフローを時価評価す るため,さまざまなパラメーターを当てはめて現在価値にしていく作業だと いうお話でした。
パラメーターを設定するための条件が経済変動によって変われば,当然出 てくる結果が変わります。大きな変動をもたらす,例えばオプションが負債 の中に含まれていると,時価は激しく変動します。平時はそれほど大きく変 動しませんし,平時でも大きな変動を見るためにストレステストを行います けれども,現実にストレス状態が発現してしまったときは,非常に大きくソ ルベンシーが減ってしまうということが起きます。ただし,そのような評価 をしなければ,その会社はつぶれてはいない。おそらく1年もたってストレ ス状況が無くなれば大きく回復します。ですから,放っておけば倒れないの ですが,ある瞬間で見ますと,インソルベントになってしまうことが起きま す。
先ほどの3つの論点すべてに絡んで,そのような必ずしも起こさなくてい いようなものをアブゾーブするための仕組みを何か考えておく必要があるの ではないでしょうか。時価評価の大きな変動に対してどうアブゾーブするか という仕組みについて議論していただけますと,先ほどの3つの質問に対し て,会計のスペシフィックなことだけではなくもう少し議論ができるのでは ないかと思います。
もう1つ,異常危険について伺います。異常危険という制度が必要な国は,
自然災害に見舞われる風土の国々です。異常危険準備金を資本の部に入れま すと,会計上,異常危険による平準化効果が小さくなりますので,台風被害 の多い年は赤字になります。異常危険に替えて再保険で平準化すればいいと いうことになれば,経営行動が変わります。会計によって経営行動を変える ことが,はたして全体としていいのか。契約者のためになっているのか,株 主のためになっているのかという観点はいかがでしょうか。
上野先生に,ややジェネラルのほうに振りつつお答えいただけば,導入に 役立つのではないかと思います。
【上野】会計としましては,会計基準の枠組みの中では,それにどうアプロ ーチするかと考える枠組みがありませんので,おそらく規制の話になると思 います。規制のほうは,専門外と言いながらも勉強しているところもありま すので,少しだけお話しさせて頂きます。
規制監督側では資産に対する規制や,もしくは余分にソルベンシーを積ん でおくという対応が求められるだろうと思います。教科書的なことしか申し 上げられませんが,まずそれが1つ挙げられます。教科書的なつまらない回 答ですみません。
異常危険の話は,私も少し勉強したのですけれども,結構悩ましい問題が あると思います。異常危険には今回一切触れていないのですけれども,見て みますと,日本は確かに伝統的に異常危険準備金を積んできています。それ
が
IFRS‑4,今現在の暫定基準の中でも認められないことになっています。
ドイツもそうですけれども,異常危険の位置づけは日本の企業にとっては,
悩ましい話ではないかと思います。株主利益になるかどうかに関しましては,
別途検証が必要です。先行研究を見て見ますと,異常危険を積むことにより,
どの地点の株主利益を見るかで変わってきます。総じて見ますと,平準化さ れることで,最終的には株主の利益になっているのではないかという研究も 見受けられます。しかし,この辺はもう少し詳しく議論しなければいけない ところだと思います。
ただし,企業会計の側から異常危険準備金を見てみますと,これは負債の 定義というところから考えていかなければなりません。企業会計では,現時 点の負債として発生していないものを負債として計上することは,基本的な 原則としては,出来ないことになっています。ですから,異常危険準備金は 負債の企業会計上での要件を満たさないので,利益留保性の準備金だという ことです。この部分につきましては,負債にするのか,資本にするのかとい う問題になります。負債に計上できないのであれば資本として積めばいいと いうことになります。ここは
IRS‑4でも資本に積めばいいということを明
示していますので,資本に積むということになってくると思います。あとは 税効果上の問題と絡ませてどう考えていくかということになります。【浅見】私も浅い考えしかありませんが,やはり資本の積み方としましては,
国際規制を遵守しつつも,キーになってくるのが
ORSA
ではないかと思い ます。要は,保険監督官とよく話をして,自社がどのようなリスクをどれだ け取るのかということを,基準を満たしつつも,しっかり監督官と話を行い ながら決めていくことが大切であると思います。保険会社というのがリスクを取る主体である限り,安全面に極度に偏らず,
弊社は,国際規制を遵守しながらも,こういう高いリスクを積極的に取っ ていく方針です。 という判断は当然あると思います。ですから,しっかり と
ORSA
を利用していくのが規制面から考え得る方策ではないかと思いま す。【植村信保(キャピタスコンサルティング)】キャピタスコンサルティングの 植村と申します。よろしくお願いいたします。
3つご質問をさせてください。
1つ目は,諏澤先生の発表でも,溝渕先生の発表でも, ミクロプルーデ ンスについては各市場間での共通化をする必要があるが,各市場の個別性を 生かす共通化,ないしはビジネスモデルを踏まえた共通化が必要 というこ とをおっしゃっていたと思います。それは具体的にどのようなものをイメー ジされているのでしょうか。共通化を進める中でそれぞれのところが個別性 を主張して,ハイブリッドな規制にしていくということをおっしゃっている のでしょうか。それとも,規制として共通のプラットフォームを作るけれど も,各国がそれぞれのビジネスモデルなり個別性なりを踏まえて,プラット フォームにつけ加えて規制をしていくということでしょうか。個別性を生か した共通化とはどのようなイメージを考えられているのか,お二人に伺えれ ばと存じます。もちろん他の方にもお答えいただければ有り難いです。
2つ目は,上野先生に対してです。ご報告の 経済価値ベースの測定がも たらす影響 で, ボラティリティが大きくなることは企業経営者にとって 非常にリスキーな状況であり,そのボラティリティを最小限に抑えるような 行動を取る可能性がある と書いてあります。しかし,考えてみますと,測 定方法が変わったからボラティリティが大きくなるのではなくて,リスクを 取っているからもともとボラティリティが大きくて,それが経済価値ベース の測定ではちゃんと見えるということではないかと思います。例えば現行会 計でも,株式は市場整合的に評価されていますので,株式のリスクを取って いれば,最終利益が大きく振れることが起きています。ですから,なぜここ で ボラティリティが大きくなることがリスキー という話になるのかよく 分かりませんでしたので,ご説明をいただきたいというのが質問です。
最後に同じく上野先生への質問ですが,例えば, 先行研究からの示唆 ということで, 市場で観察できないデータを使った場合,財務諸表利用者 の理解が困難な情報となってしまう と,市場規律がなかなか働かないとい
う話をされています。また,ご報告の結論部分でも, フィードバック可能 な情報を提供しなければ,結果として,期待された市場規律が機能しない というお話がありました。確かにそうかと思うところもありますが,日本の 情報開示の現況を踏まえた際,どう考えていらっしゃるのでしょうか。すな わち,経済価値ベースの測定を導入すると,現況よりも悪くなるということ をおっしゃっているのでしょうか。
現況としましては,財務会計では資産の一部が時価で,負債はすべて取得 価額で計算されています。ただし,上場生保会社だけではなく,いくつかの 大手相互会社でも,会計情報の補足として
EV(Embedded Value
)を公表 しています。このような現状をどう考えていらっしゃるから,市場規律がよ り機能しなくなるという結論をお考えになったのかをお話しいただければと 思います。長くなりましたが,よろしくお願いいたします。
【諏澤】ご質問,ありがとうございます。最初のご質問につきまして,プル ーデンス規制の共通化ということですが,私はそこまで個別のことについて 詳しく研究してきたわけではなく,まだまだこれからの取り組みが必要なの ですが,現時点でも最初に共通化が前提としてあるわけではないと考えてお ります。共通ルールをつくっていくことが目指されているのかもしれません が,基本的には各市場でこれまで行われてきたことをベースに,例えば,共 通化する目的を考えますと,規制裁定を回避するとか,市場規律性を機能さ せるということになると思います。特に規制裁定を回避する,防止するとこ ろに関していえば,それに必要な部分だけ共通化する,例えば,セーフティ ーネットの仕組み等に限って共通化していけばいいのではないかと今のとこ ろ考えています。
一方で,市場規律ということであれば,やはり共通化することで客観性が 必ずしも増すとは限らない,まして,市場規律が機能するようになるとは限 らないというところは,上野先生のご報告からも読み取れます。よって,こ
こは今後検討を続けなければいけないと考えています。漠然としたお答えに なり申し訳ございません。
【溝渕】ご質問,どうもありがとうございました。諏澤先生と同じ意見なの かどうか分かりませんが,規制裁定の問題からいきますと,私は,基本的に 共通化はしなければいけないと考えています。この考え方はそれほど深い考 察に基づいているものではないのですが,共通化の部分がかなり重要になる と私は思っています。ただ,個別的なビジネスモデルの違いは,その後で,
追加的に修正されるといいますか,ビジネスモデルを類型化して,タイプ別 に考慮しなければいけないものについては,修正というかたちになると。私 はそのほうが望ましいと思います。国際的な共通ルールがあった上で修正と いいますか,各ビジネスモデルいろいろありますので,それを配慮したもの で,特に日本企業に対して特別にというのではなくて,これも難しいかもし れませんが,所定のビジネスモデルに当てはまれば,どこの国の会社であっ ても共通の修正した規制のようなものがあるというのが,私のイメージする ものです。
熟慮したものではありませんので,そのような規制をつくること自体が難 しいのかもしれませんので,今後の検討課題にさせていただきたいと思いま す。
【上野】先ほどの質問に私も答えながら,自分への質問に答えていく流れで やらせて頂きます。
個別化,共通化というのは,自分にとってのテーマでありまして,日本で いわれることは少ないのですけれども,ハーモナイゼーションの国際規制の レベルというのがあって,その中で, ある程度一緒にしたら,個別性を認 めていいよ というレベルか,がんじがらめに 一斉にスクラムを組んで,
全部足をそろえて行けよ というものがあるということです。つまり,規制 によってそのレベルが違うということです。EU等の規制や,イスラム金融
などの事例の中には,緩やかにハーモナイゼーションをしていくという話を 聞いたことがあります。ですから,他の金融規制のレベルを見てみますと,
全部がんじがらめに統一されているのかといいますと,決してそうではなく て, そこは個別性を認めていいよ という部分が案外あるということです。
金融危機前は,流れを見ていますと,ジョイント・フォーラムなどでは,
どちらかといえば 個別性を認めながら少しずつ進んでいこうよ という流 れでした。しかし,一気に,G20が主導を取るかたちになったときにがっ ちりやるといいますか,IAISの姿勢も,今までの緩やかなものより,厳格 にやるというふうに変わってきました。ただ,いずれ 個別性を認める と いうような揺り返しもあるのではないかと個人的には感じています。
ですから,グローバリゼーションで今後議論していかなければいけないの は,どのレベルでのハーモナイゼーションを求めるかということだと思いま す。これは,思想的な部分を含みますけれども,私の個人的な意見です。
最後のご質問は,一番難しいところを質問していただいたと思います。
経済価値ベースの測定がもたらす影響 のところで ボラティリティが 大きくなる と書いたのですが,もともとリスクを持っていたものがあぶり 出されただけではないかと,いうご意見でしょうか。まさにそうです。ただ し,会計基準として今まで埋もれていたものが,会計基準が変わることよっ て浮き上がってきます。実際は会計基準上でのボラティリティが大きくなる だけなのですが,これはどのような影響を及ぼすかといいますと,他の基準 も参考に考えて見ますと,2つの要因があると思います。企業経営は利益と 資本をどう増加させていくかというファクターで行われています。ですから,
仮に利益に影響しないのであっても,資本に直接影響して,そのボラティリ ティが大きくなるのであれば,企業経営者を動揺させるといいますか,変な 行動を取らせる可能性もあるのではないかと思っています。
たとえの話ですが,私の専門領域でいいますと,企業年金は,今までのと ころ,おっしゃられるとおり,まさにあぶり出されただけで, 何が変わっ たのですか という質問をしたいところです。しかし,会計基準適用後に行
われたことは,過剰なまでの年金カットです。それと同じようなことが起こ るかどうかまでは申し上げられませんが,企業経営というのは,過剰な行動 を時々取りますので,そのようなことがトリガーとなって,会計上の数値の ボラティリティが高くなることにより起こってしまうことを憂慮しています。
これは会計基準の経済的影響といわれるものです。
現状より悪くなるか,よくなるかということは,私も一番知りたいことで すが,情報量としては増えていきますので,一つの試みとしましては,その ような情報を開示していくことは決して悪いことばかりではないと思ってい ます。ただし,ライトサイド・ダークサイドがありますように,それによっ て新たに対応しなければいけない,読み取らなければいけない情報が増えた り,混乱したりすることが考えられます。まず情報量として増えることはプ ラスの部分ですが,読み取る側のコストがどんどん増えていくということは,
マイナスの部分だと思います。
個人的は,EVの話は非常に興味のあるところです。自主的(ボランタリ ー)に開示される情報のほうが,実は有用なのではないかという話もありま す。規制でがんじがらめに出された情報よりも,自主的に企業経営者が開示 した情報のほうが,使い勝手がいいという話もあります。この辺は,EVの 話や,自主的な開示,企業会計,つまり,いわゆる規制された上での情報開 示とのコンビネーションを,今後ますます考えていかなければいけないと思 います。
【柳瀬典由(東京経済大学)】東京経済大学の柳瀬と申します。2つご質問が あります。前の2人の方と大体共通していると思いましたので,かぶってい れば,お答えは手短かで結構です。
まず,溝渕先生のご報告中, リスク・マネジメント・ツール①アグリゲ ートリスクに対処する方法 に関する,私の理解が確認した上で質問をした いと思います。私の理解では,ミクロプルーデンスでは,個別企業レベルで の資本規制に加えて,個別企業だけでは計ることができないような金融機関
の群衆行動的なもの,ハーディングのようなものを踏まえた,別枠の追加の 資本規制をすることによって,回避しようと。そして,その追加的な資本規 制は,アグリゲートなものだから,個別企業の状態ではなくて,例えば景気 の循環の変動であるとか,マクロな状態によって規定されると。このように 理解したのですけれども,それでよろしいでしょうか。
【溝渕】私も全く同じ理解です。
【柳瀬】すると,少し分からなくなりましたのが,例えば,景気循環の変動 に対応するかたちで資本規制は変化するということは,景気循環が悪くなり 始めた,あるいは悪くなってきた段階で資本規制が強くなるという理解でよ ろしいですか。
下の部分で, 資本規制は,景気循環の変動に対応するかたちで変化する。
信用供給が過熱気味になると ,つまり,どちらかといいますと景気の循環 があまりよくないところに行っているときに, 資本規制は強化され ると あります。
【溝渕】資本規制を強くして,それであまり信用供給がなされないようにす ると書いています。
【柳瀬】すると,タイミングが,例えば,これから景気が悪くなってくるこ とが分かる前の事前の段階で積み増しをすることで,対応して,その結果,
もしそのようなものが来たときのショックに備えるというのであれば分かり ます。しかし,ショックが来そうだという状況の中で,そのような追加対応 をしますと,むしろ資本規律をキープするために,例えば,銀行であれば,
貸出のリスクテイクはできないということで,リスクテイクができない結果,
実体経済が悪くなるというのはよくある議論だと思います。そのような負の 循環に行く議論は,この分野ではあるのでしょうか。
【溝渕】そのような議論があるかどうかは,今の段階では何とも言えません が,確かに事前に察知して,資本の積み増しを要求したりする趣旨だと私は 理解しています。もちろんそのようなときに停滞が起こることも事実ですが,
例えば,低金利の状態がずっと続いている状態で,あまりにも信用供給がな される状況がありますと,そのようなことを事前に察知して,規制強化とい いますか, 資本を積み増すように という要求をする趣旨だと思います。
これと関係するかどうか分からないのですが,最近,イングランド銀行で 金利が非常に下がっていることから,保険会社の側にモデルの選択を委ねる のではなくて,ある一定のスタンダードをつくって,その選択を強制し,モ デルの選択の幅を小さくするといいますか,裁量の幅を狭くするという動き があったようです。これはモデルを操作することによって,リスク管理が甘 くなるということを考えてのことだと思います。モデルの選択を規制するよ うな動きがあり,それに対して保険会社側が反発している,というフィナン シャルタイムズの記事を読みました。そのような動きは,ご提起いただいた 問題と関係しているのではないかと思いました。すみませんが,どの文脈で の話なのか,具体的にはっきりとは覚えていませんが。
【柳瀬】とてもおもしろい議論だと思います。論点としまして,民間の銀行 や,民間の保険会社が,例えば, この先景気が悪くなるぞ と察知するス ピードよりも速いスピードで,規制当局が将来の景気の変動を予測できるよ うになるのかと。定量的な,例えば金利がそれを意味しているのかどうか分 からないですが,そのようなものを持っていることが前提になっていると。
要は,規制当局が非常に賢くて,マーケットよりも賢くて,あるいはマーケ ットが進んでいく方向を先取りできるという暗黙の前提が置かれていて,そ の中でこの議論をするなら分かります。一方の対立論点としましては, い や,マーケットのほうが賢い と。規制当局よりもよく市場を知っていると。
そうであれば,彼らの自主性をもっと重視するかたちにしたほうが,資源配 分の効率性からしていいのではないかという議論もあるような気がします。
そうだとしますと,このトピックはとてもおもしろいと思います。つまり,
研究者はどのような事象を実証的に検討したらいいかという意味で。実は,
私はこの論点から,どのように社会科学的に議論が発展していくのかなとい う興味を持ちながら聞いておりました。その意味では,規制当局を含めて,
まだそこが十分議論されていないことは,まだまだ将来性がある分野だと思 いました。
もう1つ,諏澤先生に。演繹的な共通課題とか,機能要約的な共通課題的 なことを植村さんがおっしゃっていたと私は理解しました。一つは,みんな の共通項を集めていこうというようなもの,もう一つは,先ず型を決めて,
それを当てはめて,外れたところは各自調整してというもの。そして,たと えば,溝渕先生は,おそらく,演繹的な共通化という方向性をサポートした いとお考えだと解釈しています。ただ,この議論で難しいのは,個別か共通 かというのは,結局最後は よく分かりません というのが大体の議論だと いうことだと思うのです。
そのような観点から,昨年のアメリカ保険学会で同じようなテーマが議論 されており,かつそれを実証分析するということで,ケルン大学とジョージ ア大学のグループが報告していました。その基本発想は,企業の最適資本構 成の問題です。そもそも,最適資本構成の決定は,本来,企業の自主的な判 断のもとに行うものです。しかし,強力な資本規制という名の制約条件が1 本入ってくると,そのようなことが,はたして保険会社の行動として,最適 な資源配分を実現するのかという観点から議論しておりました。そのうえで,
彼らは,世界中の保険会社をサンプルとして,国ごとに保険会社の資本構成 のばらつきについて分散分析を行い,その結果が,カントリーファクター
(国ごとの要因)とファームファクター(企業ごとの要因)のどちらの影響 を強く受けているかという検討をしていました。
つまり,この議論も,共通なのか個別なのか,という議論をエビデンスベ ースで議論するためには,例えば保険会社の過去のデータを使って,資本構 成の議論を踏まえた実証的な議論もあるのではないかと思いました。
【諏澤】理論上分析したところで,やはり実際どうなるかというところは見 えてきません。おっしゃったような実証的な研究をとおして,今後,量的に 分析していきたいと考えています。どうもありがとうございました。
【大森義夫(ポストライフ)】ポストライフの大森です。
簡単に溝渕さんにお聞きしたいと思います。今,柳瀬さんが言われたこと と関連しますが,新しいマクロプルーデンスの論理でいいますと,どんなに 大きい保険会社でも,新しいアグリゲートリスク等の2つのリスクがありま すが, あのリスクは,もう銀行で十分だ 保険会社が出る幕はない と
G20で掲げたのが G‑ SIIsでしょうか,資本構成を厚くして,そこでお茶を
濁そうという感じになるのでしょうか。
【溝渕】もともと私はこの考え方に賛成というつもりはありません。見解と してご紹介したというのが正直なところです。システミックリスクを引き起 こすかどうかといいますと,伝統的な保険業務をやっているところなら,言 い古されていることですけれども,日本の保険会社はそんなに関係ないだろ うと思います。
アグリゲートリスクの話も,ソルベンシー規制の中で多少考慮されるとい う感じで,大部分はバーゼル,銀行の話だと思います。もう1つ,ネットワ ークリスクに関連するシステミック・サーチャージ規制は,先ほど浅見先生 のご報告で,システム上重要な金融機関として日本の保険会社で適用されそ うなところが1社ぐらいあるらしいという話がありました。非伝統的な業務 をやっているような,例えば,CDSのプロテクション販売等をやっている 保険会社が対象になると思いますが,日本の保険会社は該当するのかなと思 います。
適用になる可能性があるということですから,用心しなければならないと 思いますし,基本的な考え方は押さえておく必要はあります。しかし,日本 の大半の保険会社にはあまり関係ないと個人的には感じています。お答えに
なっているかどうか分かりませんが。
【大森】分かりました。そうだと思いますが,ソルベンシー規制などという のは,1年ごとに数字が変わってきます。極端に言えば, 1年だけ耐えう るならば という指標なのですね。将来永久にわたって,例えば10年とか20 年にわたっての話ではないと思います。
【黒木達雄(名古屋商科大学)】名古屋商科大学の黒木です。諏澤先生のスラ イドを見て, 世界経済・社会の持続性に資するためには という表現をさ れていました。保険業規制の国際的協調としましては,基本的には規制強化 の方向だと思います。この効果としまして,世界経済の持続性,安定性に本 当に資することが期待できるのかどうかと。それはむしろ幻想であって,保 険会社が従来のようにリスクを取ってくれないのであれば,リスクというの は常に,また新たな引き受け先を見つけて,規制の及ばない先に結局リスク が集積され,そこが新たな震源地となって,また世界経済を不安定にするだ けなのかと。保険業自体の国際協調の究極的な効果,目的についてどのよう にお考えになっているのかを教えていただければと思います。
【諏澤】ご質問,どうもありがとうございました。この 持続的国際社会へ の保険事業の貢献 というところは,国連環境計画の金融イニシアチブが呼 びかけています。ご懸念のように,実際にそれに賛同する保険会社もいれば,
米国の大手の保険会社を中心に,そのようなものには貢献し得ないという議 論も現実には起こっております。
おっしゃったように,新たなリスクを引き受ける手段が提供されるのであ れば,さらに次のリスクが生まれてきます。ですから,保険事業によるリス ク移転機能が必ずしも社会・経済の持続性には貢献しないのではないかとい う議論も行われています。
ご指摘のとおり,その辺りも今後検討していかなければならないと考えて
おります。
【黒木】ありがとうございました。
【司会】最後まで活発なご議論をいただきましてありがとうございました。
フロアの方,もちろん4人のご報告者の方にとっても,今後も研究の一つの 手がかりにとなり,更に研究が発展すれば,今日の共通論題は大成功であっ たと思っております。
これで共通論題を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。