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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

研究背景

太陽光エネルギーの有効利用を目指し、エネルギー変換反応に関する研究は広く行われ ている。自然界におけるエネルギー変換反応として光合成反応が広く知られているが、本 論文では光合成反応の機能の模倣を目標としている。天然の光合成は大別すると光捕集系 と物質変換系とに分かれ、光捕集系では光合成反応における光エネルギーの吸収・伝搬と いった初期過程を担っている。光捕集系反応の効率化が光変換反応に不可欠と考え、本論 文ではエネルギー移動反応に着目した研究が行われている。特に本研究では、表面に規則 的なアニオン配列を持つ無機ナノシート(粘土鉱物)をホスト材料として用いた粘土-色 素複合による人工光捕集系の構築を目指している。光捕集系の主な機能は光反応部位へ光 エネルギーを伝搬・集約することであるため、効率よく光エネルギーの吸収・伝搬を行う 系の構築を目指している。

論文の内容

無機ナノシート上でのエネルギー移動反応の機構はフェルスター機構であると考えられ、

フェルスター機構におけるエネルギー移動速度定数は蛍光量子収率や J 値というパラメー ターに比例する。J値はエネルギードナーの発光スペクトルとエネルギーアクセプターの吸 収スペクトルの重なりの大きさであり、このJ値が大きい系の構築を目指している。

また、様々な波長の光を吸収可能な系を構築するため、複数種の多価カチオン性色素の 合成が行われている。カチオン性のピレン誘導体や新規化合物であるキサンテン誘導体の 合成や無機ナノシート表面上における光化学挙動を検討し、これらの色素を組み合わせる ことで可視域を幅広く吸収できる人工光捕集系を構築可能とした。また、蛍光量子収率の 向上は励起エネルギー移動の効率化に対して求められるが、本研究では多価カチオン性色 素を無機ナノシート上に吸着させることで高い色素密度と高い蛍光量子収率を両立するこ とにも成功している。例えばキサンテン誘導体では吸着密度がある程度大きい(ナノシー トのカチオン交換容量比 40%)場合にも蛍光量子収率は 0.1 以上を維持していた。本研究 はセンシング技術や有機発光材料の分野においても大きく貢献しうるものである。

さらに、無機ナノシート表面上における二種色素間でのエネルギー移動反応を検討し、

その結果、キサンテン誘導体からポルフィリン誘導体へのエネルギー移動効率は最大で約 99%と非常に高効率なエネルギー移動反応を達成している。次に、高効率なエネルギー移 動系を構築できたこれらの色素群を混在させ、さらに吸収波長域を拡大した三成分系のエ ネルギー移動反応を検討した。その結果、最も励起エネルギーの小さいポルフィリン誘導 体への励起エネルギーの集約が約 80%の効率で進行することが確認され、そのポルフィリ ン誘導体の励起頻度が2.4倍に上昇することがわかった。この励起頻度の上昇率の計算法は 本研究にて独自に提案されており、その計算法は白色光励起による光反応の定量評価法と して広く利用されうる評価法であると考えられる。

最後に、励起エネルギーの集約を目指して、Langmuir-Blodget法(LB法)によるポル

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フィリン誘導体-無機ナノシート複合体積層膜系の構築を行っている。その結果、複合体 内でのエネルギー移動反応が観測され、下層のポルフィリンから上層のポルフィリンへの 異方性のあるエネルギー移動を達成しており、粘土積層膜を用いることで 3 次元に色素が 配列制御された人工光捕集系を構築するための足掛かりをも得ている。

本論文では太陽光の有効利用を目指して、人工光捕集系に関する研究を行った。光エネ ルギーを集める反応に着目し、その反応の効率化と新規な効率評価法の提案を行っている。

具体的には、複数種の色素を用いることで吸収波長域の拡大を図り、また、励起エネルギ ーの勾配や、同種分子間エネルギー移動、無機ナノシートを介したエネルギー移動反応な どを利用することで励起エネルギーを狙った箇所に集める系を構築可能であることを示し ている。

これらの成果は光化学、物理化学、エネルギー変換科学の領域に大きく貢献する新規な 成果であると判断できる。よって、申請者に対して博士(工学)の学位を授与することが 適当であると判定した。

参照

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