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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

近年、エネルギーの大量消費に伴い、温室効果ガス排出量の増加による気候変動が大き な問題になっている。環境とエネルギーの両面から課題を解決するために、太陽光エネル ギーを有効利用する技術が盛んに検討されている。特に、変換したエネルギーを貯蔵する という観点から、光電気化学セルや光触媒を用いた水の直接分解による水素製造が注目さ れている。なかでも、TiO2のような金属酸化物による水の光分解は安定に水素を取り出せる 点で優れた方法であるが、大きなバンドギャップのため紫外光にしか応答しない。一方、

太陽放射スペクトルは 250 ~ 2,500 nm の広範囲に及ぶ。可視光から近赤外外領域に分布 するフォトンの割合が地球表面に降り注ぐソーラーフラックスの約 95%であることを勘案 すると、光捕集機能の向上が水素発生の高効率化に不可欠な要素となる。本研究では、有 機色素のもつ光感受性に注目し、特に近赤外線領域に強い吸収特性を示す増感色素を機能 協働させた水素発生系の提案をおこなった。

第一章では、緒論が記述されている。再生可能エネルギー利用の緊急性を論じた後、持 続可能社会における水素エネルギー利用の優位性が示されている。そして、水素製造技術 として水の光分解の原理を概説し、有機色素を増感剤使用した関連研究を紹介しながら、

本研究の目的を明確にした。

第二章では、光電気化学セルの高度化を目的として、TiO2に化学吸着可能な近赤外線吸収 色素(D1)を新規に設計・合成した。色素骨格には、高い光捕集能力と光安定性が期待で きるジベンゾピロメテンホウ素錯体(ジベンゾ-BODIPY)を採用し、TiO2表面上での化学吸 着基として機能するローダニン部位を、チオフェン系 π スペーサーを介して分子内連結さ せた。具体的な合成は、フェニルヒドラゾンを出発原料に 7 段階経路を用いて達成した。

また、色素内で光励起された電子が TiO2の伝導帯に注入できることを電気化学測定から裏 付けた。一方、水を電子源にするため、水酸化触媒(C1)を合成した。そして、D1とC1を 共吸着させた光アノード電極からなる光電気化学セルを作製して、水の光分解を実施した ところ、水素と酸素の発生に成功した。水素の発生効率の指標となるファラデー定数は 65.8%となり、分光感度特性実験から、近赤外光にも応答していることがわかった。

第三章では、水素製造に特化した色素増感型光触媒が記述されている。本系では、可視 領域のほとんどの光を吸収し、さらに近赤外線にも感受性を有するパンクロマチック色素 を適用した。当該色素は可視領域に吸収特性をもつフェノチアジン骨格とそれより長波長 側に吸収帯を有するジベンゾ-BODIPY骨格を π 共役連携させている。当該色素を白金が担 持した階層的多孔質 TiO2に化学吸着させたところ、水素発生を見出した。色素の担持量を 変化させて水素製造の最適化を検討した結果、10時間の光照射でTONが9,010、TOFが901 と見積もられた。水素発生に関する見かけの量子収率の測定では、長波長領域において比 較的高い値が得られたことから、増感色素のもつ光捕集能が反映した結果と思われる。ま た、再利用試験において高い光安定性を観測した。さらに、三極セルを用いた光照射試験 をおこなって、色素と TiO2の境界面での相互作用に関する知見を得ており、電気化学的イ

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ンピーダンス測定結果とあわせて、光照射下、TiO2へのスムーズな電子移動と遅い再結合が 示唆された。これは高効率な水素発生現象を裏付けるものであり、今後の増感剤設計に寄 与する知見を提供している。

第4章では、本研究をまとめ、将来展望を記述している。

本論文は、エネルギー材料としての近赤外線吸収色素の有効利用を、光電気化学セルお よび光触媒での水素製造研究のなかで明確にした点が評価される。耐久性など、無機材料 に比べてなお克服すべき点があるが、有機材料のもつ合成的多様性や加工性を生かした取 り組みが期待される中で、本研究の成果は意義深い。このように、本研究結果は、光エネ ルギー利用技術に関して有効な化学的手法を提案した点で価値がある。

本論文は博士(工学)に十分値すると判断される。

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