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【学位論文審査の要旨】

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Academic year: 2021

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【学位論文審査の要旨】

化学発光分析は,化学反応により励起された化学種の発光を利用するもので,高感度,

広いダイナミックレンジ,小さなバックグラウンド信号下での分析を,安価な装置で実現 可能である。化学発光に関与する活性酸素種(ROS)には一重項酸素(1O2),スーパーオキシ ドアニオンラジカル(.O2-),ヒドロキシラジカル(.OH),ハイドロパーオキシラジカル

(HO2.),過酸化水素(H2O2)などが知られている。ROSは極微弱化学発光を示すが,その強度

が極めて小さいためこれを検出するのは困難であった。

申請者は化学発光強度を飛躍的に増大させることを目的として種々のナノ粒子を合成し,

それらの化学発光増強メカニズムについて種々の分析法を駆使して明らかにするとともに,

実試料の高感度測定に応用した。

本論文は5章からなる。

第 1 章は緒論である。化学発光と活性酸素種についての関係について論じ,活性酸素種 の生成と検出方法,過酸化水素を含む活性酸素種によるルミノール化学発光について詳細 に述べた。

第 2 章では,酢酸を原料とした蛍光性カーボンナノ粒子の新規合成方法を開発した。本 カーボンナノ粒子では励起波長に依存しない蛍光を発し,これまで報告されてきたカーボ ンナノ粒子とは異なっていた。また化学発光に関しては,過酸化水素様の作用及び増感作 用の二面性を持っており,これはルミノール,重炭酸ナトリウム,亜硫酸水素ナトリウム の化学発光において確認された。一方,合成したカーボンナノ粒子はルミノール化学発光 を大きく増強し,ヒ素(Ⅲ)によって定量的にその強度を減少させた。そこでこれを利用し てフローインジェクション法によりヒ素(Ⅲ)の定量を行った。その結果検量線はヒ素(Ⅲ) 濃度10-8~2☓10-7mol/L の範囲で直線状となり,検出下限は 1.25☓10-9 mol/L と高感度 であった。本法を河川水中のヒ素の添加回収実験に適用したところ95%以上の回収率が得ら れ有用性が確認された。

第3章では,窒素ドープカーボンナノ粒子(N-DCs)を合成し,ヒドロキシラジカルにより 誘起されたホールとN-CDsとの反応に基づく強い化学発光を観測した。N-CDsは過酸化水素 の利用効率を増大することでヒドロキラジカルの生成を大きく増大した。予め過酸化水素 と混合したN-CSDsを鉄(II)イオンの化学発光定量に応用した。検量線は鉄(II)イオン濃度 1.0×10-9-1.0×10-6 mol/L の間で直線状となり,検出下限は 1×10-9 mol/L と極めて高 い感度を示した。本法を水道水,池,運河の水中の鉄(II)イオンの添加回収実験に応用し たところ良好な回収率が得られた。

第 4 章では硫化モリブデン量子ドット(MoS2-QDs)を調製し,化学発光の増強に寄与する ROS生成について検討した。種々の検討の結果,ヒドロキシラジカルがMoS2-QDs表面の触 媒部位を活性化し,ヒドロキシラジカル,スーパーオキシドアニオンラジカル,一重項酸 素などの活性酸素種を生成することがわかった。またこの生成活性は広いpH範囲で確認さ れたことから有機性汚染物質の除去や積極的化学療法への使用が可能であると考えられる。

(2)

第5章は総括で,本論文で得られた内容の総括,将来展望を述べている。

以上のように,本論文は種々のナノ粒子を用いた新規化学発光系の開発及び化学発光メ カニズムの解明,更には実試料へ応用するための基礎的パラメータの検討と原理検証に至 る研究を行い、極めて優れた成果を上げることができた。開発した新規化学発光法は化学 分野ばかりでなく、物理、生物、機械工学、医学・薬学分野等幅広い分野への応用も期待 され、極めて大きな波及効果が期待される。

本論文は博士(工学)に十分値するものと判断される。

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