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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

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Academic year: 2021

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氏     名

うしじま りゅういち

牛島 龍一

学 位 の 種 類 博士(医学)

学 位 記 番 号 富医薬博甲第 122 号 学位授与年月日 平成 26 年 3 月 21 日

学位授与の要件 富山大学学位規則第 3 条第 3 項該当

教 育 部 名 富山大学大学院医学薬学教育部 医学領域 博士課程 生命・臨床医学専攻

学 位 論 文 題 目 Differing effects of adaptive servoventilation and continuous positive airway pressure on muscle sympathetic nerve activity in patients with heart failure

(ASV と CPAP が慢性心不全患者の筋交感神経活動に及ぼす効果の違 い)

論 文 審 査 委 員

(主査) 教 授 芳村 直樹

(副査) 教 授 田村 了以

(副査) 教 授 関根 道和

(副査) 教 授 杉山 敏郎

(指導教員) 教 授 井上 博

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論 文 内 容 の 要 旨

【背景と目的】

慢性心不全患者では呼吸様式の異常が約半数に合併することが知られている。周期性呼 吸やチェーンストークス呼吸は、低酸素血症、肺の伸展不良、頻回の夜間覚醒を惹起し、

交感神経活動を亢進させ、心機能の悪化や致死的不整脈の原因になる。実際チェーンスト ークス呼吸を有する心不全患者の予後は不良であり、この治療は予後を改善する可能性が 示唆されている。 Adaptive servo-ventilation (ASV)は、このような呼吸異常に対して開発 された新しい陽圧換気治療法である。呼気終末圧を陽圧に維持すると共に、患者の自発呼 吸をモニタし、患者の自発呼吸が小さくなればサポート圧を強くし、自発呼吸が大きくな ればサポート圧を弱め、分時換気量をほぼ一定に維持できるサーボ換気機能を有する。中 枢性無呼吸を合併した心不全患者において ASV を長期使用すると、左室駆出分画(left ventricular ejection fraction: LVEF)を増加させ 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide: BNP)値を低下させることが報告された。また、私たちは慢性心不全 患者において ASV を30分間装着した時の筋交感神経活動(muscle sympathetic nerve

activity: MSNA)に対する効果を検討し、周期性呼吸を有する患者ではASV装着中に

MSNAが低下し、MSNA低下の程度は一回換気量の安定化及び呼吸数減少の程度と密接に 関係することを報告した。しかしASVによる呼吸の改善効果と交感神経活動抑制効果が、

陽圧によるものかそれともサーボ換気によるものかは明確ではない。本研究では、慢性心 不全患者においてASVと同程度の陽圧の持続的気道内陽圧療法(continuous positive airway pressure: CPAP)について、MSNAと呼吸に対する効果を比較した。

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【対象と方法】

心不全ステージ C、LVEF 45%未満、閉塞性無呼吸指数が 5/hr 未満の慢性心不全患者 57 例を対象とした。中等度以上の弁膜症、脳梗塞、呼吸不全、肺疾患及び重度の貧血を合 併する症例や透析症例は除外した。

本試験の前日に ASV(AutoSet CS,ResMed 社)の練習を30分間行い、ASV 中の気 道内圧を測定した。 覚醒下安静仰臥位で MSNA 測定用の微小電極、心電図、血圧計、呼 吸モニタ、パルスオキシメータを装着し、全てのデジタルデータをオンライン記録した。

10 分間ベースラインの記録をした後、30 分間デバイス(ASV または CPAP)使用中の 記録を行った。デバイスの種類 は無作為に割り付けた(ASV 29 例、CPAP 28 例)。ASV 群 は前日の ASV 練習時と同じ設定でASVを使用し、CPAP 群は AutoSet CS をCPAPモ ードに変更し、ASV 練習時の平均気道内圧を CPAP 圧として使用した。 MSNA は、左 膝裏の腓骨神経内の交感神経節後線維にタングステン微小電極を直接刺入し、電気活動を 計測した。MSNAの評価は一般に用いられている burst rate(1 分間あたりの交感神経 バースト数)、burst incidence(100 心拍あたりのバースト数)で評価した。呼吸の観察 には胸郭インピーダンス法を用いた。呼吸の不安定性は、一回換気量の変動係数(coefficient of variation of tidal volume: CV-TV)で評価した(呼吸が不安定であるほど CV-TV は大 きくなる)。

【結果】

ASV群と CPAP群で、年齢、性別、BMI、BNP 値、EF、睡眠指標など患者背景に差は なかった。ASV、CPAP の平均気道内圧は、それぞれ 6.6 ± 1.0、6.5 ± 1.0 cmH2O で、

同程度であった。 両群ともデバイス使用中、心拍数・血圧は変化しなかったが、酸素飽和 度は上昇した。ASVは呼吸の不安定性(CV-TV)を減少させた(p<0.001)のに対し CPAP は

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CV-TV を減少させなかった。またASVは MSNA (burst rate、burst incidence)を低下さ せた(それぞれ p=0.003, p<0.001) のに対し、CPAPでは変わらなかった。酸素飽和度の変 化量や呼気終末圧、平均気道内圧はMSNAの変化量と相関しなかった。多変量解析の結果、

CV-TV の変化量のみが burst incidence 低下の独立した予測因子であることが明らかに なった(p<0.001)。ASV群29例中12例に、CPAP 群28例中11例に周期性呼吸を認めた。

周期性呼吸のある患者では、ASV は CPAP よりも有意に呼吸を安定化し、MSNA を低下 させた(p<0.001)。これに対し、周期性呼吸のない患者では、ASV と CPAP の呼吸安定性、

MSNAに対する効果に差を認めなかった。

【考察】

CPAPは閉塞性無呼吸のみならず中枢性無呼吸においても標準的治療とされているが、

CPAP 不応例が約半数存在することが指摘されている。すなわちCPAP は中枢性無呼吸に

対する治療として完全とは言えない。ASV は自動制御で吸気時サポート圧が調節され、中 枢性無呼吸や低呼吸に対して呼吸サポートを入れ、呼吸異常を予防する。本研究でもASV は呼吸様式の異常を正常化したが、CPAPでは変化しなかった。

本研究では ASV 群と CPAP 群の気道内圧は同等であった。さらに、気道内圧とMSNA 低下の程度には相関がなかった。以上よりASV とCPAPの交感神経抑制効果の違いを気 道内圧で説明することは困難である。

チェーンストークス呼吸に中枢性無呼吸を合併した患者では、無呼吸の終末にMSNA が 最大になることが知られている。通常吸気で肺が広がると、肺伸展受容器を刺激し、迷走 神経求心路 を介して反射性に交感神経活動が抑制される。つまり、呼吸による肺の伸展の 程度が交感神経活性を決定する重要な因子となる。本研究では、MSNAの低下度はCV-TV の改善度と密接に関連した。ASVはサーボ換気によって周期性呼吸を改善し呼吸様式を安

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定させることで、無呼吸・低呼吸による肺の伸展不良を解消し、交感神経活動を抑制した と考える。

本研究で確認された ASVの呼吸不安定性改善作用、交感神経抑制作用は、ASVの優れ た臨床効果に寄与しているものと考えられる。

【結論】

周期性呼吸を合併した慢性心不全患者において、ASVは呼吸の不安定性を改善し、MSNA を低下させた。一方、CPAPは呼吸の不安定性、MSNAを変化させなかった。このような 作用の違いはASVとCPAPの臨床効果の違いの一因と思われる。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨

〔目的〕

周期性呼吸やチェーンストークス呼吸は、低酸素血症、肺の伸展不良、頻回の夜間覚醒 を惹起し、交感神経活動を亢進させ、心機能の悪化や致死的不整脈の原因になる。Adaptive servo-ventilation (ASV)は、このような呼吸異常に対して開発された新しい陽圧換気治療法 である。呼気終末圧を陽圧に維持すると共に、患者の自発呼吸をモニタし、患者の自発呼 吸が小さくなればサポート圧を強くし、自発呼吸が大きくなればサポート圧を弱め、分時 換気量をほぼ一定に維持できるサーボ換気機能を有する。しかしASVによる呼吸の改善効 果と交感神経活動抑制効果が、陽圧によるものかそれともサーボ換気によるものかは明確 ではない。そこで牛島龍一君は、慢性心不全患者に、ASVあるいはASVと同程度の陽圧の 持続的気道内陽圧療法(continuous positive airway pressure: CPAP)を装着して、筋交感 神経活動(muscle sympathetic nerve activity: MSNA)と呼吸に対するそれぞれの効果を 比較検討した。

〔方法〕

心不全ステージC、LVEF 45%未満、閉塞性無呼吸指数が5/hr未満の慢性心不全患者57 例を対象とし、デバイスの種類は無作為に割り付け(ASV 29例、CPAP 28例、ASVまたは

CPAP を30 分間使用して種々の計測を行った。MSNAは、左膝裏の腓骨神経内の交感神

経節後線維にタングステン微小電極を直接刺入して、電気活動を計測し、burst rate(1分 間あたりの交感神経バースト数)、burst incidence(100心拍あたりのバースト数)で評価 した。

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呼吸の不安定性は、一回換気量の変動係数(coefficient of variation of tidal volume:

CV-TV)で評価した(呼吸が不安定であるほどCV-TVは大きくなる)。

〔結果〕

ASV、CPAPの平均気道内圧は、それぞれ6.6 ± 1.0、6.5 ± 1.0 cmH2Oで、同程度で あった。

ASVは呼吸の不安定性(CV-TV)を減少させた(p<0.001)のに対し CPAPはCV-TVを 減少させなかった。またASVはMSNA (burst rate、burst incidence)を低下させた(それぞ れp=0.003, p<0.001)のに対し、CPAPでは変わらなかった。

多変量解析の結果、CV-TVの変化量のみがburst incidence低下の独立した予測因子であ ることが明らかになった(p<0.001)。ASV群29例中 12例に、CPAP群28例中11例に周 期性呼吸を認めた。周期性呼吸のある患者では、ASVはCPAPよりも有意に呼吸を安定化 し、MSNAを低下させた(p<0.001)。これに対し、周期性呼吸のない患者では、ASVとCPAP の呼吸安定性、MSNAに対する効果に差を認めなかった。

〔総括〕

今回、牛島龍一君は、慢性心不全患者に対するASVまたはCPAP の効果を比較検討し、

ASV群とCPAP群の気道内圧は同等であったにも関わらず、ASVは呼吸の不安定性を減少 させるとともにMSNAを低下させること、その効果が周期性呼吸のある患者でより顕著で あること、という2つの新知見を見出した。今回得られたこれらの検討結果より、ASVは サーボ換気によって周期性呼吸を改善し呼吸様式を安定させることで、無呼吸・低呼吸に よる肺の伸展不良を解消し、交感神経活動を抑制するという可能性が示唆された。

本研究では、周期性呼吸を合併した慢性心不全患者において、ASV は呼吸の不安定性を

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改善し、MSNA を低下させるが、従来から閉塞性無呼吸のみならず中枢性無呼吸において も標準的治療とされてきたCPAPは呼吸の不安定性、MSNAを変化させないという事実が 明らかになった。本研究成果は,呼吸様式の異常をともなう慢性心不全患者に対して、ASV が有効な治療手段になりうるという重要な知見を得た点から高く評価できる。よって本審 査委員会は本研究を博士(医学)の学位に十分値するものと結論した。

参照

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