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日常的な歩行行動と歩行意識に関する調査分析

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Academic year: 2022

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(1)IV-027. 土木学会中部支部研究発表会 (2010.3). 日常的な歩行行動と歩行意識に関する調査分析 名古屋工業大学大学院 学生会員 ○市橋 名古屋工業大学大学院 正会員 藤田 1. はじめに 現在,地球温暖化や自動車による排気ガスの環境への 悪影響により,自動車による交通移動から公共交通や自 転車などへの自発的な行動変容を促すモビリティマネジ メントの考え方が広まっている.また,昨今の健康ブー ムからウォーキングやジョギングに代表されるような “歩くこと”は注目を浴びてきており,健康を保つ上で も1日1万歩以上歩くことが理想とされている. そこで本研究では,どのようにしたら人がより歩くよ うになるかについて考える.そのためにどのような意識 に訴えることが必要かを考えた上で,まず人々が歩くこ とに対してどのような意識を持っているのかということ を,日常的な歩行行動における基礎的調査を学生対象の アンケートによって行う.その結果から,今後より歩く ことへの意識を高めるためにはどのような潜在的な意識 要因が働き影響しているかということを詳細に分析する.. 2. 調査概要 名古屋工業大学の学生 154 名に対し, 2008 年の 12 月 5 日と 8 日にアンケート調査を行った.男女比率は男子学 生 139 名,女子学生が 15 名であり,ほぼ本大学の比率と 同程度である.調査内容は大きく分けて,歩行に関する 意識度調査,普段の歩行時の状態に関する調査項目,の 2 つに分けられる.表-1 に調査項目の詳細を示す. 表-1 調査項目 項目. 内容. 回答方法. 歩くことが好きか 健康によいと思う 歩くことの 運動になると思う メリット 交通費が不要だと思う 環境によいと思う 歩行に関 疲れると思う する意識度 の調査 歩くことの 時間がかかると思う デメリット 交通手段としては不便だと思う. 3.歩くことの意識評価 (1)歩くことのメリットとデメリットの評価 歩くことのメリットとデメリットの意識感覚について の評価を述べる.歩くことのメリットとして,①健康に よいと思う,②運動になると思う,③交通費が不要だと 思う,④環境によいと思う,の 4 項目を挙げ,デメリッ トとしては,①疲れると思う,②時間がかかると思う, ③交通手段としては不便だと思う,④行動範囲が近場に 限られると思う,の 4 項目を挙げ,それぞれ 6 段階で回 答してもらった. 歩くことのメリットに関する質問の 6 段階での評価を 図-1 に示す.どの項目に関しても約 8 割以上の人がやや 思う以上の評価をしたことから,多くの人が歩くことに メリットを感じていることがわかる.その中でも“健康 によい” については, ほとんどの人が感じると評価した. 逆に,歩くことのデメリットに関する質問の評価を図 -2 に示す.この中で,歩くことが“疲れる”と感じる人 は 7 割程度となり,他の 3 項目と比較するとやや低い割 合となったことから,歩く上で疲れると感じる人はそれ ほど多くはないことがわかる. (2)重回帰式を用いた歩行意識モデル アンケートの評価値を変数に用いて重回帰モデルを 構築した. “歩くことが好きか”の評価を目的変数とし, その他の評価を説明変数に用いた.この分析におけるパ ラメータの推定結果を表-2 に示す.重相関係数や決定係 数から特に精度のよい結果とは言えないが,このモデル は有意な結果を得ることができたので,このモデルから 環境によい. 1:全く思わない ⇔ 6:非常に思う. 交通費が不要. 運動になる. 行動範囲が近場に限られると思う 今よりも歩いたほうがいいと思う 自分はよく歩くほうだと思う 速歩きだと思う 運動・スポーツをどのくらいの頻度で行ってい るか ウォーキング・ジョギングをどのくらいの頻度 で行っているか 音楽を聴きながら歩く習慣があるか 歩行時の 状態に関 1日の交通行動 する項目. 祐希 素弘. 健康によい 0%. 1:思わない⇔5:思う. 10%. 非常に思う. 1:ほとんどしない 2:月に1,2回 3:週に1,2回 4:週に3,4回 5:週5日以上 出発地、目的地、移動 目的、移動手段、所要 時間を目的の変わる ごとに表に記入. 20%. 30%. 思う. 40%. やや思う. 50%. 60%. あまり思わない. 70%. 80%. 思わない. 90%. 100%. 全く思わない. 図-1 歩くことのメリット 近場に限られる. 交通手段としては不便 時間がかかる 疲れる. 晴れで時間に余裕のあるとき 徒歩圏内 晴れで時間に余裕のないとき の距離 雨で時間に余裕のあるとき. 0%. 距離を選択し記入. 非常に思う. 思う. 20%. 30%. やや思う. 40%. 50%. 60%. あまり思わない. 70%. 1:男性 2:女性. -365-. 80%. 思わない. 図-2 歩くことのデメリット. 雨で時間に余裕のないとき 個人属性 性別. 10%. 90%. 100%. 全く思わない.

(2) IV-027. 土木学会中部支部研究発表会 (2010.3). 考察する. この中で最も説明力のある変数は“他の人よりたくさ ん歩く”であり,やはり普段歩いている人ほど歩くこと が好きであると言える. “歩くことが疲れる”と“行動範 囲が近場に限られる”については共に評価が高いほど好 きでないということがわかる.また,歩くことが運動に なると感じている人や,徒歩圏内(晴れで時間に余裕が あるという条件下)と考える距離が長い人ほど歩くこと が好きであることもわかった.. 表-2 パラメータ推定の結果 非標準化係数. 標準化係数. t値. 歩くことは運動になると感じる. 0.235. 0.204. 2.977 *. 歩くことが疲れると感じる. -0.219. -0.241. -3.398 *. 行動範囲が近場だけになると思う. -0.127. -0.122. -1.678 ***. 他の人よりたくさん歩くほうだと思う. 0.298. 0.280. 3.844 *. 晴れで時間あったらたくさん歩ける. 0.090. 0.190. (定数項). 1.014. 2.620 * 2.314. 有意確率. ― 0.000. 重相関係数. 0.613 0.354. 自由度調整済み決定係数. *. (有意水準は, 1%,**5%,***10%) e3 e1. e4. e2. 雨で時間に 余裕があるとき の徒歩圏内. 晴れで時間に 余裕があるとき の徒歩圏内. 近場に 限定される. 疲れる. .58. .90. .63 .52. 徒歩圏内と 考える距離. -.41. 歩くことの デメリットの意識 .17. -.51. e11. e10. .21 歩くことが 好きである. -.29. e12. .23 e13. 歩くことの メリットの意識. .23. 運動の機会. .60. .50. .43. .85. 1.14. 運動によい. 環境によい. スポーツ をしている. ウォーキングや ジョギングを している. 健康によい e9 e7. e5. e8. e6. 図-3 共分散構造モデル. GFI= 0.937 AGFI= 0.885 P値= 0.008. 2.5 2. 距離( km). (3)歩行意識の構造分析 アンケートによって得られた評価がそれぞれどのよ うな潜在的な要因によって影響を受け,それらがどのよ うな因果関係を持っているか明らかにするために,共分 散構造分析を行った.右の図-3 にモデル図を示す.分析 結果より,GFI=0.937,AGFI=0.885 となり比較的高い値 を示せたことからデータにうまく適合したモデルといえ, さらに有意であることから, このモデルの考察を述べる. まず,潜在変数同士の関係について見てみる.潜在変 数の“運動の機会”と“歩くことのメリットの意識”の 関係と潜在変数の“運動の機会”と“歩くことのデメリ ットの意識”の関係について見ると,日常的に運動やジ ョギングなど体を動かす習慣のある人ほど歩くことに対 してメリットを感じ,デメリットを感じないことがわか る.また,推定値を見ると“歩くことのデメリット”と の関係のほうがやや強い.また,潜在変数の“歩くこと のデメリット”と“徒歩圏内と考える距離”の関係と, 潜在変数の“歩くことのメリット”と“徒歩圏内と考え る距離”の関係については,歩くことに対してメリット を感じデメリットを感じていない人ほど徒歩圏内と考え る距離は長いことが言える.同様に“歩くことのデメリ ット”のほうが徒歩圏内と考える距離には影響を与えて いる. 次に,潜在変数と観測変数“歩くことが好きである” の関係についてである.本モデルでは,運動の機会と歩 くことが好きであることに直接的な関係性は見られなか った.それ以外の変数については, “歩くことのデメリッ トの意識” が特に強い関係をもっていることがわかった. このことから,歩くことが好きであると評価する際に, 歩くことに何らかの価値を感じていたり徒歩圏内と考え る距離の長さにも影響を受けるが,それ以上に歩くこと に対して否定的なイメージを持っていないことが特に重 要であると言える. ここで,右図の図-4 に歩くことが好きな人と好きでな い人それぞれの徒歩圏内と考える距離を示す.この結果 から,歩くことが好きな人のほうが,晴れで時間に余裕 があるときは約 500m,雨でも時間に余裕があるときは 約 300m長い.このことからも,歩くことが好きかどう かということは“徒歩圏内と考える距離”からも影響を 受けていると言える.. 1.5. 歩くことが 好きな人. 1 歩くことが 好きでない人. 0.5 0 に 余 裕 あ り. 晴 れ ・ 時 間. に 余 裕 な し. 晴 れ ・ 時 間. 余 裕 あ り. 雨 ・ 時 間 に. 余 裕 な し. 雨 ・ 時 間 に. 図-4 徒歩圏内と考える距離. 4.おわりに 本研究では,主に歩くことへの意識を高めるために効 果的な意識要因について分析してきた.得られた知見と しては,重回帰分析や共分散構造分析の結果から,あま り歩くことに対して否定的なイメージを抱いていない人 は歩くことが好きだと評価していることがわかった.こ のことが歩くことの意識を高める上で特に重要な点であ ると言える.しかし,歩くことへの意識を高めることが 実際に歩くことにつながるかどうかについてはさらなる 分析が必要である.また,今回は本大学の学生対象のア ンケートであったため,より一般的なモデルを構築する ために一般の方への調査も行う.. -366-.

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