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Title
「顎骨疾患プロジェクトからの情報発信」 8.細胞膜タン
パク質を標的とする石灰化機構の解明と応用
Author(s)
木村, 麻記; 東川, 明日香; 村松, 敬; 石原, 和幸; 齋
藤, 淳; 国分, 栄仁; 柴山, 和子; 菊池, 有一郎; 櫻井,
敦朗; 喜田, 大智; 大野, 建州; 澁川, 義幸
Journal
歯科学報, 119(4): 301-306
URL
http://doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.301
Right
Description
はじめに
近年,硬組織形成細胞に,外的環境を監視する細 胞膜センサータンパク質の発現が多く報告されてい る。こ れ ら は,transient receptor potential(TRP) チ ャ ネ ル や piezo チ ャ ネ ル,acidsensing cation チャネル(ASICs),ADP/核酸受容体などで,細胞 に加えられた機械刺激,化学刺激,浸透圧刺激を受 容する事で開口するイオンチャネル型受容体で陽イ オン透過性を有する。多くはカルシウムイオン透過 性を示し,これらイオンチャネルの活性化によって 細胞内カルシウムイオン濃度は増加する。増加した 細胞内カルシウムイオンは,細胞膜にあるカルシウ ムイオン排出系(カルシウム−ATPase やナトリウ ム−カルシウム交換体)で石灰化前線に排出され, 石灰化の一部を担うと考えられている(図1)。 東京歯科大学研究ブランディング事業・感染制御 ラボでは,細胞膜センサータンパク質に着目し,そ の生体物理学的特性,薬理学的特性の解明,石灰化 を促進する細胞外刺激候補因子のスクリーニングを 行っている。今回は,象牙芽細胞の細胞内カルシウ ムシグナル・イオンシグナルと象牙質形成の機能的 関連に関して紹介する。 1.象牙芽細胞による多刺激誘発性 カルシウムシグナル 象牙芽細胞における細胞内遊離カルシウムイオン 濃度の増加は,1)細胞膜機械刺激,2)G タンパク 質共役型受容体活性化,3)細胞膜化学刺激で誘発 される。そして細胞内カルシウムシグナルとして, 細胞代謝・増殖・分化を含めた様々な基本的細胞機 能を調節するだけではなく,1)象牙質形成,2)象
歯学の進歩・現状
「顎骨疾患プロジェクトからの情報発信」
8.細胞膜タンパク質を標的とする石灰化機構の解明と応用
木村麻記
1)2)3)東川明日香
1)2)3)村松 敬
1)2)4)石原和幸
1)2)5)齋藤 淳
1)2)6)国分栄仁
1)2)5)柴山和子
1)2)5)菊池有一郎
1)2)5)櫻井敦朗
1)2)7)喜田大智
1)2)6)大野建州
1)2)澁川義幸
1)2)3) キーワード:私立大学研究ブランディング事業,象牙芽細 胞,細胞膜タンパク質,硬組織形成,石灰化 1)口腔科学研究センター 2)東東京歯科大学研究ブランディング事業 3)東京歯科大学生理学講座 4)東京歯科大学保存修復学講座 5)東京歯科大学微生物学講座 6)東京歯科大学歯周病学講座 7)東京歯科大学小児歯科学講座 (2019年7月31日受付,2019年8月5日受理) http : //doi.org/10.15041/tdcgakuho.119.301 連絡先:〒101‐0061 東京都千代田区神田三崎町2−9−18 東京歯科大学生理学講座 澁川義幸Maki KIMURA1)2)3),Asuka HIGASHIKAWA1)2)3),
Takashi MURAMATSU1)2)4),Kazuyuki ISHIHARA1)2)5),
Atsushi SAITO1)2)6),Eitoyo KOKUBU1)2)5),
Kazuko SHIBAYAMA1)2)5),Yuichiro KIKUCHI1)2)5),
Atsurou SAKURAI1)2)7),Daichi KITA1)2)6),
Tatsukuni OHNO1)2),Yoshiyuki SHIBUKAWA1)2)3): Report
from the Jaw Bone Disease Project 8 : Mineralization mechanism mediated by plasma membrane multimodal senor proteins(1)Oral Health Science Center, Tokyo
Den-tal College,2)Tokyo Dental College Research Branding
Project,3)Department of Physiology, Tokyo Dental
Col-lege,4)Department of Operative Dentistry, Cariology and
Pulp Biology, Tokyo Dental College,5)Department of
Mi-crobiology, Tokyo Dental College,6)Department of
Peri-odontology, Tokyo Dental College,7)Department of
Pedi-atric Dentistry, Tokyo Dental College)
301
牙質痛の発生に強く関与する1) 。 1)歯の痛みを感知する細胞膜機械刺激で誘発され るカルシウムシグナル 象牙芽細胞には TRP チャネル1−7) ,Piezo チャネ ル8) の,少なくとも2種類の機械感受性 陽 イ オ ン チャネルが存在している。象牙芽細胞に発現する TRP チャネルサブタイプは,TRPV1・TRPV2・ TRPV4・TRPA1・TRPM8などであり,これら の う ち TRPM8チ ャ ネ ル を 除 く 全 て に 機 械 感 受 性5,6,9) がある。TRP チャネル・Piezo チャネルの活 性化は細胞内にカルシウムイオンを流入させ細胞内 カルシウムイオン濃度を上昇させる。 象牙質に機械刺激を加えると,象牙細管内液が移 動する(象牙質痛発生の「動水力学」)。象牙細管内 液の移動は,象牙細管に細胞突起を有する象牙芽細 胞の細胞膜を伸展させ,機械感受性陽イオンチャネ ル(TRP チャネル・Piezo チャネル)の開口を通し て,細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させる。こ の濃度上昇は,細胞内カルシウムシグナルとして, 細胞膜に存在する ATP 放出チャネルであるパネキ シン−1チャネル(PANX−1)を開口させる8−10) 。 PANX−1から細胞外に放出された ATP は,歯髄 内では以下の作用を有する; ⑴歯髄に分布するニ ュ ー ロ ン で あ る A デ ル タ ニューロンのイオンチャネル型 ATP 受容体サブタ イプ3(P2X3受容体)と結合・活性化し,ニューロ ンに活動電位を発生させ,歯痛としての象牙質痛を 発生させる8,9,11) 。 ⑵放出された ATP は,シュワン細胞あるいは象 牙芽細胞に存在する細胞外 ATP 分解酵素(ecto ATPase,NTPDase2)に よ っ て ADP あ る い は AMP に分解される9)。 ⑶ATP から分解された ADP は,その受容体で ある G タンパク質共役型核酸受容体(P2Y 受容体) を活性化する9,10,12) 。 ⑷P2Y 受容体は歯髄分布ニューロンに存在し, P2X3受容体活性化に伴う活動電位の発生を調節す ると考えられる9) 。 ⑸一方,P2Y 受容体は象牙芽細胞にも存 在 す る9) 。P2Y 受容体活性化は,ホスホリパーゼ C を 活性化させ,細胞内にイノシトール3リン酸(IP3) を生成する。生成された IP3は,細胞内カルシウム 貯蔵体(細胞内カルシウムストア)に存在する IP3受 容体チャネルを活性化することで,カルシウムスト アから細胞質へのカルシウム放出(IP3−誘発性カル シウム放出)を起こし,細胞内カルシウムイオン濃 度が上昇する12−14) 。 2)歯髄内の細胞外因子で活性化する G タンパク 質共役型受容体とストア依存性カルシウムチャネ ルによるカルシウムシグナル P2Y 受容体は,G タンパク質共役型受容体の一 つで,ホスホリパーゼ C とカップリングしている (ホスホリパーゼ C−関連受容体)。象牙芽細胞に は,P2Y 受容体の他に,ムスカリン(G タンパク 質共役型アセチルコリン)受容体,G タンパク質共 役型グルタミン酸受容体,ブラジキニン受容体が発 現しており,これらの受容体が活性化すると,細胞 内カルシウムストアからのカルシウム放出(IP3−誘 発性カルシウム放出)が生じる12,13) 。 一方で,細胞内カルシウムストアからカルシウム 放出が生じると,ストア内のカルシウムは枯渇し, 細胞機能を駆動できなくなる。象牙芽細胞において ホスホリパーゼ C−関連受容体活性化に続く,カル シウムストアの枯渇は,calcium releaseactivated calcium(CRAC)チャネルを開口させ,ストア依存 性カルシウム流入(SOCE)を誘発する。したがっ 図1 象牙芽細胞内カルシウム輸送 302 木村,他:象牙質石灰化標的タンパク質 ― 44 ―
て,ホスホリパーゼ C−関連受容体の活性化は, IP3−誘発性カルシウム放出とストア依存性カルシ ウム流入(SOCE)の両者を誘発することで,細胞内 カルシウムイオン濃度が上昇する12,13) 。 3)水酸化カルシウム製剤や MTA の薬物標的とな る化学刺激誘発性カルシウムシグナル 機 械 感 受 性 陽 イ オ ン チ ャ ネ ル の 一 つ で あ る TRPA1チャネル15) ,ホスホリパーゼ C−関連受容 体活性化に続くカルシウムストア枯渇によって活性 化する calcium releaseactivated calcium(CRAC) チャネル12)
は,いずれも細胞外 pH 環境を監視して いる。象牙芽細胞を,細胞外高 pH 環境に置くと, 細胞内カルシウムイオン濃度が上昇する。このこと は,高 pH を示す歯内療法薬である水酸化カルシウ ム製剤や MTA(mineral trioxide aggregate)による 細胞外高 pH が,直接,象牙芽細胞の TRPA1チャ ネル・CRAC チャネルに作用することで第3象牙 質 や dentin bridge を 形 成 す る こ と を 示 し て い る15) 。 2.増加した細胞内遊離カルシウムイオンの 細胞外への排出機構 象牙芽細胞で増加した細胞内遊離カルシウムイオ ンは,象牙質石灰化前線である細胞「外」に排出さ れることで,象牙質の石灰化を促進する。象牙芽細 胞には,2種類のカルシウムイオン排出系が存在し て い る。1つ は,ナ ト リ ウ ム−カ ル シ ウ ム 交 換 体4,5,16) で,もう一つは細胞膜カルシウム−ATPase (PMCA)17) である。 象牙芽細胞の石灰化能に対する,ナトリウム−カ ルシウム交換体の影響を検討した。ナトリウム−カ ルシウム交換体を阻害すると,象牙芽細胞による石 灰化が抑制された。加えて,象牙芽細胞には細胞膜 カ ル シ ウ ム−ATPase(PMCA)サ ブ タ イ プ PMCA 1,PMCA3,PMCA4が発現 し て お り,培 養 象 牙芽細胞で PMCA を阻害すると,硬組織形成能・ 石灰化能が抑制された。これらの結果は,ナトリウ ム−カルシウム交換体・PMCA が象牙質石灰化前 線への細胞内カルシウム輸送の役割を演じているこ とを示唆していた。 3.象牙芽細胞の電位依存性 カリウムイオンチャネルと象牙質形成 象牙芽細胞には,カルシウムシグナルに関わるイ オンチャネル・受容体のみならず,細胞膜脱分極で 活性化する電位依存性カリウムチャネル・電位依存 性ナトリウムチャネル・カルシウム活性化カリウム チャネルも発現している。象牙芽細胞の静止電位レ ベルは約−38mV である14) 。 1)電位依存性カリウムチャネルは,電位依存性不 活性化を示し,細胞外 tetraethylammonium,4− aminopyridine,αdendrotoxin に 感 受 性 を 示 し た。このことは象牙芽細胞に,電位依存性カリウム チャネルアルファサブユニット(Kv)の Kv1.1,Kv 1.2,Kv1.6が発現していることを示している18) 。 2)象牙芽細胞の電位依存性ナトリウムチャネル は,テトロドトキシン感受性で,急速な電位依存性 活性化・不活性化過程をもつ。細胞膜電位依存性ナ トリウムチャネルの50%が不活性化する細胞膜電位 (halfmaximal inactivation potential:V0.5)は,膜 電位−70mV であった。この結果は,象牙芽細胞の 静止電位レベルでは電位依存性ナトリウムチャネル は開口できないことを示している14) 。 3)象 牙 芽 細 胞 に は,intermediateconductance カルシウム活性化カリウムチャネルが発現してい る。 象牙芽細胞で,ホスホリパーゼ C−関連受容体が 活性化すると,IP3−誘発性カルシウム放出とスト ア依存性カルシウム流入(SOCE)が生じ,細胞内カ ルシウムイオン濃度が上昇する12,13) 。細胞内カルシ ウムイオン濃度の上昇は,象牙芽細胞の静止電位を 脱分極方向にシフトさせることで,電位依存性カリ ウムチャネルを活性化し,また増加した細胞内カル シウムイオン濃度は,カルシウム活性化カリウム チャネルを活性化する。これらカリウムチャネルの 活性化は,細胞内からのカリウムイオン流出を誘発 する結果,細胞膜電位は,静止電位を超えて過分極 方向へとシフトする。結果として,電位依存性ナト リウムチャネルの不活性化は解除されることで,象 牙芽細胞にナトリウムイオンの流入が可能になる。 したがって象牙芽細胞(ヒト)は活動電位を発生する 可能性も残されている。 歯科学報 Vol.119,No.4(2019) 303 ― 45 ―
4.象牙芽細胞イオンシグナルと象牙質形成の カップリング機構 細胞膜機械刺激誘発性カルシウムシグナル・G タ ンパク質共役型受容体と,ストア依存性カルシウム チャネルによるカルシウムシグナル・化学刺激誘発 性カルシウムシグナルによって増加した細胞内遊離 カルシウムイオンは,ナトリウム−カルシウム交換 体・細胞膜カルシウム−ATPase(PMCA)で象牙質 石灰化前線に排出され象牙質を形成すると示唆され る(図2)。一方で,電位依存性カリウムチャネル は,象牙質形成に重要な役割を演じている。 象牙芽細胞は,生涯にわたる生理的な象牙質と, 生体内外からの刺激に伴う第3象牙質を形成する。 第3象牙質形成は,歯の硬組織疾患による1)象牙 質表面への外的刺激による反応象牙質形成と,2) 象牙芽細胞死(細胞障害)によって歯髄幹細胞から象 牙芽細胞が分化誘導されて生じる修復象牙質形成に 分けることができる。 1)機械刺激誘発性カルシウムシグナルは,象牙質 知覚過敏症に代表される象牙質の痛み(象牙質痛: 象牙質表面に加えられた様々な刺激によって発生す る鋭利な一過性の疼痛)をもたらす8) 。したがって象 牙質痛の発生には,エナメル質が欠損し,象牙質表 面が露出していることが必要である。露出象牙質表 面の直下歯髄には,露出部あるいは欠損部の象牙細 管走行に一致した第3象牙質形成が見られる。培養 した象牙芽細胞に,機械刺激として細胞膜伸展刺激 を与えると硬組織形成能・石灰化能が増加する。こ のことは,象牙芽細胞が,象牙質の露出(すなわち 歯の欠損)と,そこに加えられた刺激を感知する象 牙質痛の感覚受容細胞として働くだけではなく,反 応象牙質を形成し,象牙質の厚みを増やすことで刺 激を遮断する生体防御機構としても働くことを示し ている。 2)G タンパク質共役型受容体とストア依存性カル シウムチャネル活性化によるカルシウムシグナル は,象牙質表面に加えられた様々な刺激によって活 性化した,機械刺激誘発性カルシウムシグナルの結 果として細胞外に放出される ATP の分解産物であ る ADP/AMP,歯髄に分布する副交感神経ニュー ロンから放出されるアセチルコリン,歯髄炎症で生 成されるブラジキニンによって形成される9,10,12,13) 。 また機械刺激誘発性カルシウムシグナルは,細胞外 にグルタミン酸も放出する19) 。加えて ATP は,組 織障害によっても放出される痛覚誘発物質でもあ る。 したがって,これらの物質は,象牙質への刺激 と,それに引き続く歯髄内の炎症や,自律神経活動 などによって歯髄内で産生され,象牙芽細胞の G タンパク質共役型受容体を活性化することで,細胞 内カルシウムイオンを増加する。増加した細胞内カ ルシウムイオンは,細胞膜カルシウムイオン排出系 で石灰化前線に排出されることで,第3象牙質を形 成すると考えられる4,16) 。この時,象牙芽細胞障害 がなければ反応象牙質が形成され,炎症による象牙 図2 細胞膜タンパク質を標的とする石灰化機構 304 木村,他:象牙質石灰化標的タンパク質 ― 46 ―
芽細胞死(細胞障害)がある場合には,歯髄幹細胞か ら象牙芽細胞が分化誘導され修復象牙質が形成され ると考えられる。 3)化学刺激誘発性カルシウムシグナル,特に細胞 外 環 境 の pH を 変 化 さ せ る と,ア ル カ リ 感 受 性 TRPA1チャネルの活性化で象牙芽細胞による石灰 化が促進する。この促進作用は,TRPA1チャネル の抑制薬で抑制された。加えて,TRPA1チャネル の抑制は,生理的な石灰化過程を抑制した。このこ とから,TRPA1チャネルは,第3象牙質形成のみ ならず,生理的な象牙質形成にも関与していること が示されている12,15) 。 4)ヒト象牙芽細胞の石灰化能は,電位依存性カリ ウムチャネル抑制によって抑制される。このことか ら,象牙質形成には細胞膜電位による制御,すなわ ち細胞膜内外における電位勾配変化によるイオン移 動変化も重要であろうと示唆される18) 。 5.本研究プロジェクトの将来像 1)象牙芽細胞の細胞内サイクリック AMP(cyclic AMP;cAMP)シグナルの解明 象牙芽細胞において,G タンパク質サブタイプで ある Gs/Gi タンパク質と共役するアデニル酸シク ラーゼ活性と細胞内 cyclic AMP(cAMP)シグナル についての報告は極めて少ない。そこで,ヒト象牙 芽細胞から細胞内カルシウムイオン濃度と cAMP 濃度の同時ライブイメージングを行っている。象牙 芽細胞には,Gs タンパク質と共役する beta−2ア ドレナリン受容体が存在し,用量依存性に細胞内 cAMP レベルが増加する。したがって,象牙芽細 胞には Gs タンパク質共役受容体が発現し,アデニ ル酸シクラーゼ活性化を介して,細胞内 cAMP レ ベルを増加させることが示される。現在,象牙芽細 胞の cAMP シグナリングと歯痛(象牙質痛)および 象牙質形成の関連を検討している。 2)象牙芽細胞の多刺激受容性を利用した新規象牙 質再生薬剤の開発 象牙質再生に関わる薬剤には,水酸化カルシウム 製剤や mineral trioxide aggregate(MTA)が広く用 いられている。これらは強アルカリ性を示し,高濃 度カルシウムを含有する。先に述べたように,象牙 芽細胞は,強アルカリ性/高カルシウム刺激に感受 性を示し,細胞膜センサータンパク質の一つである TRPA1チャネルを活性化し,その抑制は石灰化能 を著しく低下させる。このことは,象牙芽細胞の細 胞膜センサータンパク質を活性化する薬剤を開発・ 見出せば,反応象牙質の再生が可能であることを示 している。 現在,本研究プロジェクトでは,ヒト象牙芽細胞 に存在する細胞膜センサータンパク質の一つである “A”受容体に作用し,驚くべきことに極めて加速 的な石灰化を誘導する物質“X”を見出している。 両者の作用を詳細に検討することで,外的刺激に誘 発される象牙質再生機構と,その細胞内外シグナル 経路の詳細なメカニズムを今後明らかにしていく予 定である。象牙芽細胞の細胞内シグナルを応用した 新規象牙質再生薬剤の開発から,将来の新たな歯科 医療戦略の構築を行いたい。 助成について:本研究は「文部科学省私立大学研究ブラン ディング事業」の助成を受けた。 開示すべき利益相反はない。 文 献
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306 木村,他:象牙質石灰化標的タンパク質