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筋原線維の太いフィラメントにおけるミオシンの置換機構

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Academic year: 2021

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北海道大学 大学院農学院 修士論文発表会,2016年2月10日

筋原線維の太いフィラメントにおけるミオシンの置換機構

共生基盤学専攻 食品安全・機能性開発学講座 食肉科学 市村恵美

1.はじめに

食肉の主要タンパク質であるミオシンは,筋原線維内で300個以上の分子が集合した双極 性の太いフィラメントを形成している。生体内のタンパク質は常に代謝回転していることか ら,太いフィラメントを構成する個々のミオシン分子も新生されたミオシン分子と置換して いると考えられる。しかし,筋原線維の構造と機能を維持したまま,太いフィラメントにお いてミオシン分子がどのようなメカニズムで置換しているのかは未解明である。そこで本研 究では,筋原線維の置換機構を解明するために①短時間の置換を可能にするためのミオシン 分子の供給源,および②ミオシンの置換に関わる分子を明らかにすることを目的とした。

2.方法

11日齢鶏胚胸筋から調製した筋細胞に eGFP 融合ミオシン重鎖(eGFP+Myh3)を発現する

コンストラクトを遺伝子導入した後,分化誘導して筋管を形成させた。eGFP+Myh3を発現す る筋管において光退色後蛍光回復法(FRAP)を用いてミオシンの置換様相を検討した。蛍 光強度の最大回復値であるMobile fraction(Mf)およびMfの50%に達するまでの時間である Half-life(t1/2)を算出し,それぞれをミオシン分子の置換程度および置換速度の指標とした。

3.結果と考察

eGFP+Myh3を発現している筋管の中央部では筋原線維の A 帯に eGFP 蛍光が認められ,

eGFP+Myh3がサルコメアの太いフィラメントに組み込まれているのが確認できた。タンパク 質合成阻害剤であるシクロヘキシミド(CX)を添加してミオシン分子の生合成を阻害した 結果,CX 処理した筋管では対照区に比べて Mf が有意に小さかった(p<0.05)。また,筋原 線維に組み込まれていない細胞質のミオシン分子の除去が太いフィラメントにおけるミオシ ン分子の置換に及ぼす影響を検討するために,ストレプトリジン O(SLO)処理で細胞膜に 穴を開けた筋管を FRAP した結果,SLO 処理区の Mf は対照区に比べて小さい傾向がみられ た。以上の結果から,太いフィラメントにおけるミオシン分子の置換には新生されたミオシ ンだけでなく細胞質に既に存在するミオシン分子が利用されることが示唆された。次に,ミ オシン分子シャペロンである Hsp90と Unc45が太いフィラメントのミオシン分子の置換に及 ぼす影響を検討した。Unc45を過剰発現させた筋管における eGFP+Myh3の蛍光強度変化を測 定した結果、Unc45区のMfは対照区と同程度であった。Hsp90を過剰発現させた筋管ではMf が対照区と比較して有意に大きかった(p<0.05)。以上の結果から,分子シャペロンである Hsp90が太いフィラメントにおけるミオシン分子の置換に関与している可能性が示された。

4.まとめ

筋原線維内におけるミオシン分子の置換には,新規に合成されたミオシン分子だけでなく,

細胞質に既に存在するミオシン分子が用いられていることを明らかにした。また,ミオシン の分子シャペロンの1つであるHsp90がミオシンの置換に関与していることが示された。

参照

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