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筋線維の違いによる骨格筋の代謝・収縮の数値シミュレーション

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Academic year: 2021

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筋線維の違いによる骨格筋の代謝・収縮の数値シミュレーション

熱エネルギー工学研究室 鷹澤翼

1. はじめに

骨格筋は収縮することによって力を発生し,外部に仕事を 行う.この時,代謝によってエネルギー物質であるATP(ア デノシン三リン酸)が消費される.しかしながら,ATPの持 つ化学エネルギーが骨格筋の発生する力学的エネルギーへの 変換効率に対する筋収縮速度や筋線維の違いは十分に理解さ れていない.そこで本研究では,骨格筋の代謝・収縮の数値 ミュレーションを行い,筋線維の違いによる筋収縮速度,ATP 消費速度,筋負荷および仕事率の変化を検討した.

2. 解析方法

本解析では骨格筋の単収縮における代謝,力の発生およ び筋収縮速度を推算する解析モデルを用いた 1).代謝過程 における反応スキームを図1に示す.この反応スキームは ATPが線維性のタンパク質であるA・M(アクトミオシン)

に結合し,ADP(アデノシン二リン酸)とPi(リン酸)に 分解されるまでの6つの反応過程を考慮している.この反 応スキーム内の各化学種の濃度変化に対する連立常微分方 程式を解くことにより,化学種濃度の時間変化を求める.

遅筋線維における各化学過程の反応速度定数を表1に示す.

図1代謝反応スキーム 表.1 遅筋線維の反応速度定数

k₁ 10⁶M-1s-1 k₋₁ 10s-1

k₂ 10⁵M-1s-1 k₋₂ 10⁻²s-1

k₃ 3s-1 k₋₃ 2.5s-1

k₄ 10⁵M-1s-1 k₋₄ 4.7×10⁵s-1

k₅ 10²s-1 k₋₅ 10³M-1s-1

k₆ 4s-1 k₋₆ 10³M-1s-1

速筋線維では,表 1の k3,k-3の値をそれぞれ k3=10s-1, k-3=8.3s-1に変更して解析を行った.

スキーム1を解くことによって得られた各物質の濃度を 用いて,骨格筋の負荷F[kN/m2]を式(1)で求める.

F= c([A・M・ADPP]+[A・M・ADP]+0.1[A・M]) (1) ここでcは比例定数を表す.

収縮速度V[m/s]は式(2)のHillの方程式で求める.

F/F₀=a(Vmax-V)/(V+b) (2) ここでF0は最大収縮力[kN/m2],Vは収縮速度[m/s],Vmax は最大収縮速度[m/s],aは熱定数、bはエネルギー遊離速度 定数[m/s]を表す.

仕事率P[W]は式(3)を解くことによって得られる.

P=F×V (3) 解析条件として,人間の骨格筋 1kg あたりに含まれる ATP初期濃度を6mMとした.また筋負荷を変えるために

A・Mを0.1から0.83mMまで変化させた2)

3. 解析結果および考察

図2に筋収縮速度とATP消費速度の関係を示す.遅筋線 維,速筋線維ともに筋収縮速度に比例してATP消費速度は 増加する.また,速筋線維の方がATP消費速度の値が大き い結果となった.

図3は筋収縮速度と仕事率の関係を示す.図2と同様,

遅筋線維と速筋線維の筋線維種類の違いで大きく異なる結 果が得られた.遅筋,速筋線維ともに約 1/2倍の筋収縮速 度にて仕事率は最大値を示している.これは既往の実験結 果3)と一致している.

図2 筋収縮速度とATP消費速度の関係

図3 筋収縮速度と仕事率の関係

文献

1) Zhen-He He,et al.,“ATP Consumption and Efficiency of Human Single Muscle Fiber with Different Myosin Isoform Composition” , Biophysical Journal Vlume 79 , pp.945-961(2000)

2) 香川靖雄、エネルギーの生産と運動、分子生物化学7、

1990

3) 金子公宥,パワーアップの科学,1988

0 0.001

0.5 1

収縮速度 [m/s]

ATP消費速度 [mM/s]

速筋線維 遅筋線維

0 0.001

0 100 200 300

速筋線維 遅筋線維

収縮速度 [m/s]

仕事 [W]

参照

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