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ニワトリ骨格筋ミオシンの加熱ゲ、ル形成能における2価金属の影響

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Academic year: 2021

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北畜会報 42 : 77-81, 2000

研究ノート

ニワトリ骨格筋ミオシンの加熱ゲル形成能における

2

価金属の影響

辰 保 ・ 前 田 尚 之 ・ 石 下 真 人 ・ 鮫 島 邦 彦

酪農学園大学酪農学部,江別市 069-8501

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Jin-bo KIM, Naoyuki MAEDA, Makoto ISHIOROSHI, Kunihil王oSAMEJIMA

Faculty of Dairy Science, Rakuno Gakuen University, Ebetsu・shi069-8501

キーワード:ミオシン,加熱ゲル化, 2価金属,架橋 Key words : myosin, heat-induced gelation, divalent metals, cross-linking

議句 ニワトリ胸筋と脚筋ミオシンの加熱ゲ、ル形成能に及 ぽす2価金属の影響を調べ,さらにこれら 2価金属で 起こる分子間相互作用の違いを 1-Ethyl-3-(3-dimeth開 ylaminopropyl)-carbodiimide (EDC)による架橋で検 討した. ミオシンのゲル強度はいずれの

2

価金属を添 加しても上昇したが,その程度ならびに最大の強度を 与える 2価金属濃度はそれぞれ異なっていた.またゲ ル強度の上昇は脚筋よりも胸筋ミオシンで大きかっ た. ミオシンはモノマーの状態 (0.5M NaCl)では EDCの濃度に比例して架橋され,フィラメントを形成 する塩濃度 (0.2M)では, EDCの添加とともに架橋 は急激に進行した.胸筋と脚筋でミオシンの架橋に差 は認められなかった.塩化カルシウムは架橋に影響せ ず,塩化鉄と塩化亜鉛では,添加濃度の上昇とともに 架橋形成が進行した. 2価金属によりミオシン分子に 構造変化が生じ, ミオシン分子聞の相互作用が強めら れ,その結果ゲル強度が上昇したと考えられる. しか し,金属の種類による影響の程度は異なっていること が示唆された.

緒 量

食肉の加工特性の一つに結着性がある.結着性は, 特にソーセージのようなエマルジョンタイプの食肉製 品において品質を左右する重要な因子である. ミオシ ンの加熱ゲソレ形成能はこの結着性の発現に主要な役割 を果たしており, ミオシンの加熱ゲルに関しては多く の研究が行われている. ミオシンの加熱ゲル強度は 受 理 2000年 1月 11日 pHや塩濃度によって変化するが,筋肉の部位(種類) によって著しく異なることが報告されている (MOR-ITA, 1987 ; SAMEJIMA, 1989).これはミオシン異性体 のゲソレイじ能の違いによるものと考えられるが,詳細は 明らかではない. 一般にタンパク質のゲル化は,分子聞の凝集反応に よる三次元網目構造の形成によって起こる.ゲル化に おいて2価金属の存在は,豆腐におけるカルシウムの ように直接ゲル化を引き起こしたり,ホエータンパク 質(KUHN,1991)において報告されているような,ゲ ル強度を高める作用を有している.食肉タンパク質に おいても,筋原線維の加熱ゲル強度(XIONG,1991)や ソーセージの物性 (ISHIOROSHI,1994)が2価金属の 添加により高められることが報告されている. 2価 金 属がミオシンの加熱ゲル強度をどのようにして高める かが判明すれば,食肉製品の物性改善に大いに役立つ と考えられるが,その機構は明らかではない. 本研究は食肉製品の物性の改善を目的として,ニワ トリの胸筋と脚筋ミオシンの加熱ゲル形成能が2価 金 属の添加によってどのような影響を受けるのか,さら にゼロ長架橋剤 (EDC)を使用して加熱に伴う分子間 凝集反応を検知し,これに対する 2価金属の影響につ いて調査した.

実験材料および方法

実験材料 ニワトリは酪農学園大学の実験鶏舎で飼育された白 色レグホン種を使用し,胸筋および脚筋からそれぞれ ミオシンを調製した.EDCはNACALAI社より, PIPESとDTTはSIGMA社より購入した.その他の 試薬は特級品または電気泳動用を使用した.

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¥ A "-..企 一一_.一一一 5 4 ミオシンとミオシンサブフラグメントの調製 ミオシンとミオシンサブフラグメントは鶏胸筋およ び脚筋からPERRY

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al. (1955)および、WEEDSand POPE (1977)の方法によりそれぞれ調製した. 3 2 ( 伺 角 同 一 括 ) 同 { 剖 凶

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封 切 -0 0 ゲル強度の測定 ミオシンの加熱ゲノレ強度は, YASUI

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al. (1979)の 帯型粘度計を用いて測定した.測定条件はタンパク質 濃度5.0mg/ml, 0.2 Mまたは0.5M NaCl, 20 m M PIPES (pH 6.0)および所定の濃度の2価金属(CaC12, FeC12およびZnC12) とし, 65 0 Cで20分間加熱後,ゲ ル強度を測定した. 20 FeC12 Concentration (mM) ニワトリ骨格筋ミオシンの加熱ゲル強度に及ぼ すFeCI2の影響 所定の濃度のFeC12を含むミオシン溶液(5.0mg/ml, 0.5または 0.2M KCl, pH 6.0)を650 C20分 間 加 熱 後,ゲル強度を測定した. (0) ;胸筋(0.5M KCl), (ム) ;脚筋(0.5M KCl), 15 (・);胸筋(0.2M KCl)

(企);脚筋(0.2M KCl) 10

s

図2 ミオシンの架橋 ミオシンの架橋の条件は,タンパク質の濃度を 0.5 mg/mlとした以外は,吉田ら (1999)の方法に従って 千子い, SDS-PAGEゲルから BIO-RAD GS-700デン シトメーターによりタンパク質バンドを測定し,架橋 されたミオシンの相対量を算出した.

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結果および考察

ニワトリ胸筋および脚筋ミオシンの加熱ゲ、ル強度に 及ぼす2価金属の影響を図1から 3に示した. ミオシ ンのゲル強度はいずれの

2

価金属を添加しでも上昇し たが,効果の程度ならびに最大強度における 2価金属 濃 度 は そ れ ぞ れ 異 な っ て い た . ゲ ル 強 度 の 上 昇 は FeC12添加で最も大きく ,ZnC12は非常に低い濃度で 効果を示した.また,一般にゲ、ル強度の上昇は脚筋よ り も 胸 筋 ミ オ シ ン で 大 き か っ た .MORITA

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al. 5 0.1 ZnC12 Concentration (mM) ニワトリ骨格筋ミオシンの加熱ゲル強度に及ぼ すZnCI2の影響 所定の濃度のZnC12を含むミオシン溶液(5.0mg/ml, 0.5または0.2M KCl, pH 6.0)を650 C20分 間 加 熱 後, ゲノレ強度を測定した. (0) ;胸筋(0.5M KCl), (ム);脚筋(0.5M KCl)

0.08 (・);胸筋(0.2M KCl)

(企);脚筋(0.2M KCl) 0.06 0.04 0.02 図3 4 3 2 ( ω 弘一括)岡山日凶ロ ω 主 的 -ω

(1989)の報告によれば,ニワトリ胸筋と脚筋ミオシン の加熱ゲル形成の性質はかなり異なっており,胸筋の 加熱ゲル強度は脚筋よりも高いが,アクチンのゲル強 度を高める効果は脚筋のみで認められる.このような 違いはミオシン異性体に由来するものと考えられ, ミ オシン異性体の生化学的な特性の違いがゲル形成能に も反映されているのであろう. タンパク質の加熱ゲル強度が塩化カルシウムの添加 20 CaC12 Concentration (mM) ニワトリ骨格筋ミオシンの加熱ゲル強度に及ぼ すCaCI2の影響 所 定 の 濃 度 のCaC12を 含 む ミ オ シ ン 溶 液 (5.0mg/ ml, 0.5または0.2M KCl, pH 6.0)を650 C20分間加 熱後,ゲ、ル強度を測定した. (0) ;胸筋(0. 5 M KCl) , (・);胸筋(0.2M KCl), (ム) ;脚筋(0.5M KCl), (企);脚筋(0.2M KCl) 15 10 5 図1

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骨格筋ミオシンの加熱ゲ、ル形成能 によって高められることはホエータンパク質で報告さ れている (KUHNand FOEGEDING, 1991). これに関 して]EYARAJAHand ALLEN (1994) は,ホエータン パク質の成分である β -ラクトグロプリンがカルシウ ムと結合し,その結果として疎水性領域に構造変化が 生じて,蛍光スペクトルが変化することを報告してい る.ISHIOROSHI and SAMEJIMA (1994) もカノレシウム による同様の変化をウサギの骨格筋ミオシンで観察し たと述べている.筋肉タンパク質の加熱ゲル化に関し

て, XIONG and BREKKE (1991) はニワトリ筋原線維

の加熱ゲル強度が塩化カルシウムおよび、塩化マグネシ ウムの添加で上昇すると報告している.彼らはこの原 因としてタンパク質ータンパク質相互作用とタンパク 質の抽出性の変化を挙げている.本実験では精製した ミオシンを使用しているので,タンパク質抽出性の変 化が加熱ゲル強度の上昇と関係しているとは考えられ ない.カルシウムがミオシンに結合するという証拠は 今のところないが, 2価金属でミオシン分子の疎水性 領域に構造変化が生じ, ミオシン分子聞の相互作用が 生じて,その結果ゲル強度が上昇したと考えるのが妥 当であろう. 胸筋と脚筋ミオシンの加熱ゲル形成能の違いとそれ に及ぽす2価金属の影響について, EDCを使った分子 聞の架橋形成量を調べた.図4は加熱前のミオシンを 種々の濃度のEDCで処理し, SDS-PAGEで分析した

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結果である.EDCはタンパク質分子聞の接触した部位 にあるアミノ基とカルボキシル基との聞にアミド結合 を形成して,タンパク質を架橋する.アミノ基とカル ボキシル基は静電的に相互作用していると考えられ, これらを直接共有結合で結ぴ,それ自身は架橋の中に 残らないため, EDCの分子量は SDS-PAGEパターン に影響を与えない(MORNET,1981;山田, 1991). 図 4から明らかなように EDCの濃度が上昇するととも に, ミオシン重鎖のバンドが薄くなっている.これは ミオシンが架橋によって凝集し,ゲルの上段に認めら れたり,ゲルに入らなくなったことを示す.この電気 泳動図から,デンシトメーターによりミオシン重鎖の 量を測定し,架橋されたミオシンの相対値を算出して, それぞれのEDC濃度に対してプロットした(図 5). 架橋のパターンは NaCl濃度の違いで大きく異なって いた.すなわち, ミオシン分子がモノマーの状態(0.5 M NaCl) では EDCの濃度に比例してミオシンは架 橋され,フィラメントを形成する塩濃度(0.2M)では, EDCの添加とともに架橋は急激に進行した.ミオシン 分子の状態(モノマーとフィラメント)に静電的相互 作用が大きく関与していることがわかる. ミオシンの サブフラグメント (S-lとRod)で同様の実験を 0.5M NaClで、行ったところ, S-lは全く架橋されず, Rodの みが架橋された.また, S-lと Rodを混合すると Rod のバンドだけが減少し, S-lは変化しなかった(図 6).

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myosin

C 0.1 0.3 0.5 0.7 1.0 1.2 1.5 2.0mM EDC

O.5M NaCI

図4 EDCにより架橋したニワトリ骨格筋ミオシンの SDS・PAGE図 ゲルの上の数字はEDCの濃度を示す.

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0.5 1.5 2 EDC Concentration (mM) 図5 ニワトリ骨格筋ミオシンの架橋に及ぼすEDC 濃度の影響 図4のSDS-PAGE図よりミオシン重鎖バンドの量を 測定し,架橋されたミオシンの量を算出した. (0) ;胸筋(0.5M KCl), (・);胸筋(0.2M KCl), (ム) ;脚筋(0.5M KCl), (企);脚筋(0.2M KCl) 主~

J

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企~ EDC 図6 EDCにより架橋した胸筋ミオシンサブフラグ メントのSDS-PAGE図 S-l (上図)およびS-lとRodを1: 1 (重量比)で混 合し(上図),架橋は0.5M NaClで、行った.ゲルの上 の数字はEDCの濃度を示す. 0.2 M NaClでも S-lは架橋されなかった.これらの 結果は,ミオシンの架橋は尾部間でのみ起こっており, 頭部聞はもちろん頭部と尾部聞の間にも架橋は起こら ないことを示す.しかも,胸筋と脚筋ではこれらのミ オシンの架橋形成能に差は認められなかった.した がって,胸筋と脚筋ミオシンの加熱ゲル形成能の違い は静電的相互作用が関係していないと考えられる. 次いで、 0.3mMEDC存在下, 2価金属を添加して ミオシン (0.5M NaCl)の架橋形成に及ぼす金属の違 いによる影響を調べた.図には示さなかったが,塩化 カルシウムは架橋に影響せず,カルシウム濃度が上昇 してもミオシン重鎖のバンドは全く減少しなかった. 塩化鉄と亜鉛では,添加濃度の上昇とともに架橋は進 行した(図7).したがって,これらの2価金属はミオ シンの静電的相互作用に影響していることが予想き れ,ゲル強度を高める効果がカルシウムとは異なる機 構で生じていると考えられる.また鉄と亜鉛でもそれ ぞれの濃度と架橋の程度にはかなりの違いがある.こ の原因を明らかにする手懸りは今のところないが、一 つの可能性としてこれら金属のイオン半径の違いが考 えられる.本実験で使用した金属の中でFeのイオン 半径は最も短く (0.5~0.6Å) ,次いで Zn (0.7~ 0.8 A), Ca (1. 3 A)の順である。 2価金属は先に述べ たタンパク質の構造変化とともに,イオン半径の違い がミオシンの加熱ゲル強度に対する効果やEDCによ る架橋に影響しているかもしれない.このようにカル シウムと他の2価金属あるいは 3者間で, ミオシン分 子の構造に対する影響は異なり,それが架橋やゲル強 度の上昇効果に関係していることが示唆された. ミオシンのゲル化には疎水性相互作用の関与が示唆 されていたが,EDCの利用により静電的相互作用を検 出できることが判明した.今後は,加熱によりこの相 互作用がどのように変化するか,胸筋および脚筋ミオ シンで違いがあるのか,さらにこれに

2

価金属がどの ように影響するのかについて調べ,筋肉部位によるミ オシンの加熱ゲル形成能の違いや2価金属の効果の原 因を追求したい. F圃h、 .... Q 100

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o 5 10 15 FeC12 Concentration (mM) o 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 ZnC12 Concentration (mM) 図7 ミオシンの架橋に及ぼす2価金属の影響 ミオシン(0.5M KCl)は0.3mMEDCで架橋した. (0) ;胸筋(ZnClz),(・);胸筋(FeClz), (ム) ;脚筋(ZnClz),(企);脚筋(FeClz)

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骨格筋ミオシンの加熱ゲル形成能

文 献

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J

198 -

J

204.

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参照

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