相談面接における聴き手の応答の意図に関する研究
著者 玉瀬 耕治, 西川 知子
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 41
号 1
ページ 161‑180
発行年 1992‑11‑25
その他のタイトル Comparison of Intention of Practical
Counselors with Students in Counseling and Experimental Interview
URL http://hdl.handle.net/10105/1755
相談面接における聴き手の応答の意図に関する研究
玉 瀬 耕 治・西 川 知 子*
(奈良教育大学心理学教室) (平成4年4月30日受理)
カウンセリングにおけるカウンセラーの言語的応答の分類については、従来さまざまな研究が 行われている(Elliott, 1985; Elliott, Hill, Stiles, Friedlander, Mahler, & Margison, 1987 ; Friedlander, 1982 ; Hill, 1978; Hill, Thamas, & Rardin, 1979; Lee, & Uhlemann, 1984)。玉 瀬・大塚・西川(1991)は、従来の研究を参考にして、初心者の訓練に必要と思われる言語的応 答様式を定義し、訓練に使用するための相談文と、それぞれの応答様式に従った応答例を作成し た。彼らが取り上げた応答様式は、支持、意見、解釈、指示、質問、および反映の6カテゴリー であった。実際のカウンセリングをこのような応答様式の定義に従って分賛した場合、どの応答 がどの程度用いられているのかが明らかになる。例えば、 "心理療法への3つのアプロ‑チ"
(Shostrum, 1966)では、クライエント"Gloria に対してRogers, Perls,およびEllisが行っ た実際のカウンセリングの応答様式が、 Hill etal. (1979)によって分類されている。わが国に おいては、さまざまな事例報告はあるものの、このようなカウンセラー間を比較しうるような形 での分析的研究はまだあまり進んでいない。研究1では、わが国で公表されている専門家による カウンセリングの面接事例に基づいて、実際にどのような応答様式が用いられているのかを検討 する。また、そこで得られた主な応答様式についてカウンセラーの意図に関する推測を行う。
応答様式と並んで、近年意図に関する研究がかなり盛んに行われるようになってきた (Elliott, 1985; Hill, & O'Grady, 1985; Gelso, Hill, & Kivhghan, 1991 ; Kelly, Hall, & Miller, 1989 ; Kivlighan, 1989 ; Kivlighan, & Angelone, 1991 ; Martin, 1984 ; Martin, Martin, Meyer,
& Slemon, 1986; Martin, Martin, & Slemon, 1987, 1989; Stiles, 1987)。意図については、先 の研究(玉瀬・西川, 1992)においてわれわれの基本的構想を述べている。意図は、元来カウン セラーの応答に至るまでの内的過程であって、直接に観察できないものであるO大塚(1991)は カウンセラーの応答の下位過程を識別、変換、および表出の3つに分けて分析しているが、われ われは意図の形成は、このうちの変換過程に含まれるものと考えている。玉瀬・西川(1992)で は、変換過程は情報の統合、意図の作成、および応答様式の選択という3つの過程から成るもの と仮定している。ここでの意図の形成が実際のカウンセラーの外顕的行動とどのように結びつい ているのかが問題である。研究者によって、意図はあくまでも行動を仲介する認知的要因として 扱うべきか、それとも意図も測定されたものであるかぎり行動の1側面であるとみなすべきかに ついては考え方の分かれるところである。従来の研究者の多くは、意図をカウンセラーの内的過 程そのものとして扱おうとしているが、必ずしもその検証方法は蒲足しうるものとはいえない。
ここではStiles (1987)に従って意図を観察可能なものとして取り扱うことにする。
・現在 京都市児童福祉センター療育謀心理治療士
161
研究1で扱う意図は、カウンセラーの意図そのものではなくて、第3者によって推測されたも のである。カウンセリング場面における意図として重要なものは、クライエントに受け取られる 意図であるといえる。その意味でカウンセラーの意図は応答を通して了解されるは.ずのものであ る。例えば、クライエントの感情を理解しようとする意図があっても、それが全くカウンセラー の言語的および非言語的行動に現われていなかったならば、クライエントはカウンセラーの意図 を知ることはできないであろう。このような意図は、カウンセリングにおいて有用なものとはな
りにくい.だからと言って、カウンセラーの意図のすべてがクライエントに伝わるとは考えられ ない。どのような意図が推測可能であり、どのような意図は推測できないのかについて検討する 必要がある。しかし研究1はこのことに直接答えるものではない。とりあえず推測可能なものに ついて検討を試みようとするものである。
研究2では、実験的な操作によって、意図を独立変数として扱い、あらかじめ聴き手に異なる 意図を持たせた場合に、その意図が応答様式として実際にどのような形で表現されるかを検討す る。従来の研究では、このような試みはほとんどなされていない。実際の面接にいかにさまざま な変数を当てはめて、複雑な相関的分析を試みても、要因の因果的関係をつきとめることは困難 である。その意味でカウンセリング領域においても、実験的手法によって1つ1つの要因につい て、より確実に因果的関係を吟味していく方法が試みられるべきではなかろうか。研究2はその ような意味での探索的な試みであるといえる。
研究3では、意図の流れについて検討する。まず、クライエントの発言に対するカウンセラー の応答を設定し、その応答をふまえて、次にどのような意図がもたれるのかを調べる。このよう な意図の形成過程が専門家の場合と一般の大学生の場合ではどのように異なるのかを検討する。
このように、本研究ではある応答からその応答の意図を推測する方法(研究1)、意図を設定 してそこから誘発される応答を調べる方法(研究2)、および前の意図と応答から次の意図を導 き出す方法(研究3)を用いて、意図と応答との関係を明らかにしようとしている。したがって、
本研究は1つの方法だけを用いて意図に関する事実を蓄積するというよりも、むしろ異なる研究 方法で意図の問題を検討し、今後の研究の足掛かりをっかもうとするものである。
Iiu^^^^^^^B^u ∩
研究1の目的は、専門家のカウンセラーによって実際に行われた面接の遂語記録について、そ の応答様式を分類し、主な応答カテゴリーについてカウンセラーの意図を推測することであった。
応答様式の分類には、玉瀬ら(1991)の6カテゴリーとHill (1978)のものを参考にした合計9 カテゴリーを使用した。意図に関しては、 Hillら(1985)の"明確化"の意図を参考にした。本 研究では、聴き手が何を明確にしようとしているのかに焦点を当て、 "事実の明確化"と̀̀感情 の明確化"に分類することにした。明確化の対象を事実と感情の2つに限定したのは、これらが 面接の内容にかかわらずかなり客観的に聴き手の意図として分類しうると考えたからである。
方 法
逐語記録 分析には、 4名の専門家カウンセラーによって行われた6名のクライエントとの初
回面接記録が使用された。逐語記録は友田(1956, 1963, 1967)、大島(1963)、および田畑
(1982)から引用された。これらの記録はカウンセラー訓練に使用するためにあらかじめ逐語記
録にされているもので、カウンセラーとクライエントの発言を各ターン(交互に1回ずつ発言し たもの)ごとにとらえて記録してある。また、 4名のカウンセラーのうち1名は女性、残りは男 性であった。クライエントは女性3名、男性3名で中学生から大学生までの学生4名、社会人2 名であった。これらの事例の中に同一カウンセラー2名が行った面接が2例ずつ含まれている。
逐語記録の評定(1)応答様式 分類に使用した応答様式は、 "閉ざされた質問'' "開かれた 質問" "支持" "解釈" "指示" "反映" "意見" "最小限の励まし"ぉよび"その他"の9カテゴ
リーであった。
(2)意図様式 Hill and O'Grady (1985)の意図カテゴリーの"明確化"を参考にした。
Hillらの定義では、明確化はクライエントが述べたうちの特定の事柄を取り上げようとするもの である。ここでは、明確化の対象を"事実"と"感情"に分けて、 "事実の明確化"と"感情の 明確化''の2カテゴリーとした。意図については、応答様式の分類の結果、 "質問"と"反映"
の頻度が高かったので、これらの2カテゴリ‑についてのみ分類することにした。
手続き 分類評定は、第2著者と大学院修士課程において心理学を専攻している2名の学生 (男性と女性)の計3名によって行われた。評定は各評定者によって独立に行われた。各評定者 には、まず、本研究に関する簡単な説明が行われた後、応答様式の定義が示された。その後、練 習用のカウンセラー発言の分類が行われた。分類練習は著者と各評定者の分類結果が85%一致 するまで続けられた。その後、逐語記録の分類が行われた。その際、逐語記録ではカウンセラー 発言1ターンに、いくつかのユニットが含まれている場合があるので、対応すると考えられるカ テゴリ‑は1ターンについて3つまで選択してもよいことにした。分類の結果については、 3名 のうち1名だけが一致しない場合は2名の行った評定に従った。また、 3名全員が一致しない場 合は話し合いによって決定した。
次に決定された応答様式のうちの"閉ざされた質問"、 "開かれた質問"、および"反映"につ いて、意図に関する分類を行った。この場合も、応答様式に関する分類手続きと同様に、評定者 にそれぞれの意図の定義が与えられ、分類結果が85%一致するまで練習が行われた。分類の際、
評定者には"このカウンセラーは、この応答をすることで、事実を明確にしようとしているのか、
感情を明確にしようとしているのかを推測して下さい。"という教示が与えられた。練習の後、
逐語記録の分類が行われた。分類結果については、最終的な評定で3名のうち1名だけが一致し ない場合は2名の評定に従った。
結果と考察
3名の評定者が応答様式のリストにもとづいて計383ユニットを、意図様式のリストにもとづ いて計273ユニットを分類した。 3名の分類が一致した割合は、応答様式に関しては81.6%、意 図様式に関しては81.0%であった。また、カウンセラー発言の1夕‑ンごとに、評定者によっ て評定された応答カテゴリー数は平均1.3カテゴリーであった。
応答様式 本研究で使用した6事例全体の応答カテゴリ一一の使用頻度は表1のとおりである。
全体を通して最も使用頻度が高かったのは"反映"で、全体の54%を占めている。この頻度は、
Lee and Uhlemann (1984)や、 Hill, Thamas, and Rardin (1979)の研究において、 Rogers
の事例で示されたものと類似している。このことは、 4名のカウンセラーのうちの3名がクライ
ェント中心療法的な理論的指向性をもっていることからも予想される結果である。次に多かった
のは質問で、 "閉ざされた質問''が15.4%、 "開かれた質問"が3.4%で、合計18.8 であった。
衰1各事例の応答カテゴリーの使用頻度
事 例 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 合計 評定者間一致率 81.3% 75.C 81.6% 72.7 81.6%
閉ざされた質問 開かれた質問 支 持 解 釈 指 示 反 映 意 見
6(7.5) 1(2.9) 6(10.2) 5(7.5) 25(28.7) 2(2.5) 2(3.4) 1(1.5) 4(4.6) 7( 8.8) 3( 8.6) 6(10.2) 6( 6.9) 3( 3.8) 5(14.3) 11(16.4) 6( 6.9) 1( 1.1) 52(65.0) 23(65.7) 40(67.8) 44(65.7) 30(34.5) 1( 1.3) 2( 2.3)
最小限の励まし 2(.2.5) 1( 1.5) 1( 1.1) その他 7(8.8) 3(8.6) 5(8.5) 5(7.5) 12(13.8)
16(29.1) 59(15.4) 4(7.3) 13(3.4) 9(16.4) 31( 8.1) 4(7.3) 29(7.6) 1( 0.3) 18(32.7) 207(54.0) 1( 1.8) 4( 1.0) 4( 1.0) 3(5.5) 35(9.1)
合 計 80 35 59 67 87 55 383 ( )内は%
質問全体の使用頻度はHill etal. (1979)の研究におけるゲシュタルト療法の提唱者である Perlsの結果と類似しており、 "閉ざされた質問"の使用頻度に関しては、 Lee and Uhlemann (1984)における行動療法家のLazarusの結果と類似している。全体的にはこれらの3カテゴ
リーが72.8%を占めており、次いで"支持"がS.1%、 "解釈"が7.6%であった。 "その他"は 9.1%を占めているが、このカテゴリ‑にはカウンセラ‑の自己開示などが含まれている. "最小 限の励まし"がわずか1.0%であったのは、 "フンフン、エェ"などの単純な相槌を入れていな いためである。
意図様式 表2は応答様式別に意図カテゴリーの使用頻度を示したものである。 "反映"に関 しては、事例①と③で"事実の明確化"の意図が73.1%と60.0%で多く、 ⑥では"感情の明確 化"がわずかに多く見られたが(55.6%)、それ以外の事例に関しては事実と感情の明確化の割 合は相半ばしている。 "質問"に関しては、全体を通して"開かれた質問"が"感情の明確化"
表2 各事例の応答用式別意図カテゴリーの使用頻度
事 例 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ 合計 評定者問一致率 78.3% 87.5% 83.3% 82.C 78.C 81.6% 81.C 反 映
事実の明確化 感情の明確化 合 計
37(73.1) ll(47.8) 24(60.0) 23(52.3) 16(53.3) 8(44.4) 120(58.0) 14(26.9) 12(52.2) 16(40.0) 21(47.7) 14(46.7) 10(55.6) 87(42.0) 52 23 40 44 30 18 207
質 問 (開かれた質問) 事実の明確化 感情の明確化
(閉ざされた質問) 事実の明確化 感情の明確化 合 計
2(25.0) 2(25.0) 1(16.7) 3(10.3) 1( 3.4)
4(50.0) 1(100) 6(75.0) 2(33.3) 15(51.7) 2(25.0) ‑ 3(50.0) 10(34.5)
29
3(15.0) ll(16.7) 1(5.0) 2(3.0)
5(25.0) 27(40.9) ll(55.0) 26(39.4) 20 66
( )内は%
の意図のもとに使われることはほとんどなかった(3.0%)。実際に逐語記録を見ても、この応答 は、面接の最初の場面やまだ話し始めていない漠然とした状態のクライエントに対して行われて いる。感情に焦点をあて、感情状態を明確にするのは質問よりも反映による場合が多いといえる。
事例⑤⑥で多く使用されている"閉ざされた質問"は、意図に関しては事例⑤では"事実の明 確化"、 ⑥では、 "感情の明碓化"と分類されることが多かった。このことは、意図カテゴリーの 使用パターンには事例間の差が現れやすいことを示唆している。質問はその性質上、カウンセ
ラーが主体となって動いている場面で使用され、反映は、クライエントが主体となって動いてい る場面で使用される。このことをふまえた場合、同じ"明確化の意図"で両カテゴリーを分類す る場合であっても、結果を解釈する際には注意しなければならない。たとえば、感情の明確化を 意図した質問によって、クライエントはカウンセラーの意図する感情を誘発されることになり、
感情の明確化を意図した反映によってクライエントは自分の中に潜んでいるもっとも主な感情を 自発することができるようになると考えられる。本研究で扱った意図はあくまでも、評定者に よって推測されたものであり、明確化の意図が実際にどの程度カウンセラーが意図したものと合 致しているかは明らかでない。
研 究 2
研究1では、専門家が行ったカウンセリングの逐語記録に基づいて、カウンセラーの応答様式 を分類し、応答の一部についてはその意図を推測した。これはいわば実態としての応答様式が、
どのような頻度で出現しているのかを知るためのものであった。また、意図についても、質問ま たは反映という応答様式が、事実を明確にしようとするものであるのか、感情を明確にしようと するものであるのかに関して、評定者間の一致率で見る限り、かなり正確に推測しうることが明 らかにされた。ここで調べられた意図は、応答から推測されたものであるが、質問と反映という 応答様式が、感情を明確にしようとして用いられる場合と、事実を明確にしようとして用いられ る場合がほぼ半々であったといえる。
研究2では、意図と応答様式との関係を実験的な手法を用いて、より明確に捉えることを試み る。実際の面接場面では聴き手は、意図の行動化を瞬時に行うので、意図と実際に行われている 応答の関係を解明することは非常に難しい。この過程を実験的に検討することが研究2でのねら いである。ここでは、意図を指定して応答を誘発し、一定の意図のもとでどのような応答様式が より多く出現するかを調べる。研究1にならって"事実の明確化"と"感情の明確化"の2つの 意図が指定された。研究2の第1の目的は、意図があらかじめ決められている場合に、その意図 はどの程度正碓に行動化され、言語的応答として示されるのかを検討することである。
ところで、研究1では、応答様式および意図の使用頻度には、面接を行っている個々のカウン
セラーの理論的指向性とともに、面接の主題が影響することも示唆された。このような面接の主
題が応答に影響を及ぼすことを示した研究はこれまでにもいくつか行われてきている
(Cummings, 1989; Gelso etal, 1985; Melnick, 1975)。研究2では、面接の主題を大学生に
とって馴染みやすい"進路"と"友人関係"にして、意図と応答様式との関係に主題による違い
が現われるかどうかについても検討する。従来の研究から、進路は認知的に解決されやすい主題
であるので、面接は事実的な情報の収集に焦点があてられ、友人関係は感情的要素をより多く含
む主題であるので、面接では感情的側面に焦点があてられると期待される。研究2の第2の目的
は、主題によって聴き手の意図と応答様式の関係がどのように異なるかを検討することである。
方 法
要因計画 2 (意図:事実明確化、感情明確化)× 2 (主題:進路、友人関係)の要因計画が用い られた。
参加者 大学生60名(男子20名、女子40名) 30組が実験に参加した。これらの参加者は15 組ずつ事実明確化群と感情明確化群に割り当てられた。それぞれの15組のうち7組は友人‑過 路、残り8組は進路‑友人の順に主題を変えて面接が行われた。
手続き 実験は2名1組ずつ行われた。 2名の参加者は面接室に案内され、机をはさんで向か い合って座った。お互いの簡単な自己紹介の後、実験者から次のような教示を与えられた。
"これからお2人に、聴き手と話し手になって、簡単な面接を行っていただきたいと思います。
お話ししていただく主題は̀進路'と̀友人関係'の2つです。実験の手続き上、面接内容は録 音しますが、結果は統計的に処理しますので、このことによって、お2人にご迷惑をおかけする ことはありません。面接は、それぞれの主題について聴き手と話し手を交替していただきます。
はじめの主題は友人関係(進路)についてです。この時に聴き手になった方は、次の進路(友人 関係)が主題の時は話し手になって下さい。制限時間は厳密ではありませんが、 5分たったとこ ろでテープを切りますので、それを合図に終えていただくようお願いします。何か質問はありま せんか。"
一方の参加者に最初に聴き手になってくれるように頼み、聴き手の意図に関する教示を書いた 用紙を手渡した。意図教示の内容は次のとおりであった。
̀̀これからの数分間は、あなたが聴き手となって、話し手の述べる事実と感情のうち、事実 (感情)をできるだけ明確にするように心がけて面接を行って下さい。面接は次に示した質問で 始めるようお願いします。 ・̀あなたの進路(友人関係)について、何か話していただけません か?'この後は、自由に質問をしながら面接を進めて下さい。''
逐語記録 30事例× 2主題‑ 60事例の逐語記録を作成した。逐語記録の作成後、評定者3名 が独立に応答様式の分類を行った。応答様式は研究1と同様に、閉ざされた質問、開かれた質問、
支持、解釈、指示、反映、意見、最小限の励まし、その他の9カテゴリーで、玉瀬・大塚・西川 (1991)およびHill (1978)の定義に従って定義されたものである。 1ターンにつき最大3カテ ゴリーまで選択してもよいことにした。評定者は第2著者と心理学専攻の大学院生2名であった。
分類の前に、まず、実験の目的について簡単な説明が行われた。分類練習は、応答様式リストと 照らし合わせながら8‑10応答分(約1事例分)連続して一致するまで話し合い、修正しなが
ら行われ、必要に応じて著者が例文を示して説明を行った。指導と訓練に要した時間は約1時間
であった。分類練習の後、評定者には引き続き逐語記録の分類を行わせた。応答様式の分類の結
果、もっとも頻度の高かった"開かれた質問" "閉ざされた質問"および"反映"の3応答につ
いては、再び同一の評定者3名によって意図様式の分類が行われた。分類に際しては、 "この聴
き手は、この応答をすることで、事実を明確にしようとしているのか、感情を明確にしようとし
ているのか推測して下さい。''と教示した。分類の練習については、応答様式の場合と同様で
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結果と考察
各群逐語記録における応答の平均パターン数は、事実明確化群では9.4 (SD‑ 4.2)、感情明確 化群では8.3 (SD‑2.6)であった。 2群の間に有意差はなく、 5分間にはぼ8‑9ターンのや りとりがあったといえる。 lターンあたりの分類カテゴリー数は事実明確化群では1.32 (SD‑
0.25)、感情明確化群では1.35 (SD‑0.34)であった。 2群間に有意差はない。 3名の評定者の 合計622ユニットについての一致率は、 93%であった。
9つの応答カテゴリーのうち、 68.1%は質問で、そのうち"開かれた質問"は31.8 、 "閉ざ された質問"は36.3%であった。 "反映"は質問に次いで多く、全体の14.3 であった。 "最小 限の励まし" "意見" "解釈" "その他"は合わせて17.5%で、支持と指示はともに見られなかっ た。表3は、応答様式で質問と分類されたものを各群ごとに主題別に意図を推測して分類した結 果を示したものである。この表ですべての条件をこみにした424ユニットのうち88.4%は事実 の明確化の意図で使用されている。表3から、事実明確化群では閉ざされた質問で事実の明確化 の意図がもたれ、感情明確化群では開かれた質問で、感情の明確化の意図がもたれる傾向がうか がえる。表4は、応答様式で反映と分類されたものを各群ごとに主題別に意図を推測して分類し た結果を示したものである。この表から、両群ともに事実の明確化の意図をもつ割合が高いが、
主題が友人関係である場合は、事実明確化群では事実反映の意図がもたれ(95.2%)、感情明権 化群では感情反映の意図がもたれやすい(38.1%)といえる。
以上の結果から、専門家ではない大学生が聴き手および話し手となって、ある与えられた主題 について短い会話を行った場合に、次のような結論が導かれる。聴き手が一定の意図をもって相 手の話を聴く時、聴き手はいくつかの応答様式のうち、質問をもっとも多く用い、次いで反映を 多く用いる傾向がある。これは、専門家カウンセラーの6つの初回面接を分析した研究1の結果 とは著しく異なっている。研究1では、反映が54.0%で質問は開かれた質問と閉ざされた質問
表3 "質問"における各群の評定された意図の頻度
事実明確化群 感情明確化群 応答用式 評定された意図 進 路 友人関係 進 路 友人関係 閉ざされた質問
開かれた質問
事実明確化 感情明確化 事実明確化 感情明確化
59(53.6) 73(59.3) 2( 1.8) 3( 2.4) 46(41.8) 46(37.4) 3( 2.7) 1( 0.8)
38(40.9) 39(39.8) 7( 7.5) 5( 5.1) 39(41.9) 35(35.7) 9( 9.7) 19(19.4)
合 計 110 123 93 98 ( )内は%
表4 "反映"における各群の評定された意図の頻度 事実明確化群 感情明確化群 評定された意図 進 路 友人関係 進 路 友人関係 事実明確化 12(75.0) 20(95.2) 21(67.7) 13(61.9) 感情明確化 4(25.0) 1( 4.8) 10(32.3) 8(38.1)
合 計 16 21 31 21
( )内は%
を合わせて18.8%であった。研究2では質問をすることが教示の中に含まれているので質問が 多くなるのは当然であるとみなされるかもしれない。しかし、カウンセリング技法訓練の初期段 階では、一般に質問が多発される傾向がみられる。感情の明確化を意図している場合でも、初心 者または一般の大学生にとっては質問の様式を用いてしまう傾向があるといえよう。玉瀬・西川 (1992)は、大学生に悩みの相談文に対する満足度および有用度を評定させ、質問と指示は高く 評定されるが反映はもっとも低く評定されることを示している。
感情の明確化を意図させた場合でも、開かれた質問と閉ざされた質問を合わせた質問全体では、
結果的にはほとんどの場合、事実の明確化を意図したものと評定されている。開かれた質問では、
主題が進路である場合よりも若干、友人関係である場合に感情の明確化の意図があるものと評定 されている。
反映については、主題によってかなり違いがあり、とりわけ友人関係を主題とする場合、事実 の明確化を意図させるとかなりの割合で事実の明確化を意図する反映を行い(95.2%)、感情の 明確化を意図させると感情の反映を意図する反映を行っている(38.1%)と評定されている。研 究2では、面接の主題としての進路は認知的側面が重視されるものであり、友人関係は感情的側 面が重視されるものであるという期待のもとで行われたが、反映に関する結果は、このような考 え方に一致する傾向を示している。研究1に比べると研究2の結果は、一般の大学生では感情の 明確化が実際にはかなり難しいことを示唆している。
研 究 3
研究2では、操作的に参加者に事実の明確化を意図させた場合、その意図は行動化されやすい が、感情の明確化を意図させた場合はこれを行動化することはかなり難しいことが示唆された。
このことは主題によっても異なり、友人関係を主題にする場合の方が進路を主題にする場合より も感情の明確化の意図は行動化されやすいといえる。
さて、研究3では応答様式としては質問と反映に限定して、 1つのターンにおける事実明確化 と感情明確化の意図が、次のターンにおける意図の形成にどのようにつながっていくのかを検討 する。カウンセラーがある応答を選択し、それに対してあるクライエントがある応答を返したと すると、その次の応答をする場合に、カウンセラーはどのような意図を形成するのであろうか。
カウンセリングの過程は、このようなカウンセラーとクライエントのやりとりの連鎖であるとみ なされるので、限定された条件のもとで、聴き手の意図がどのように形成されていくのかを検討 することは有意義であると考えられる。研究3のもう1つの目的は、標本集団による意図の形成
の仕方の違いを調べることである。先の2つの研究から、専門家と一般の大学生では、応答の仕 方がかなり異なることが示唆されている。研究3では、同一の調査用紙を用いて、専門家と一般 の大学生に回答を求め、意図の形成の仕方の違いを調べる。 2つの標本集団についての調査は 別々の日程で行われたものであるが、ここでは2つの調査を合わせて報告する。
予備訊査 本調査を行う前に、調査における例文を作成するために、予備調査が行われた。予 備調査では、悩みの領域として、 2つの領域を取り上げた。その1つは個人的な領域であり、
"将来のこと"と"自分の性格"であった。もう1つは対人関係的な領域であり、 "家族との関
係"と"友人関係"であった。大学生男女108名を対象にして、上記4領域における悩みの例を
参考にして、もし専門家のカウンセラ‑に相談するとすればどのように話すかを考え、例にな
らってできるだけ自分の経験に近いかたちでその悩みの文章(4、 5行程度)を作るように求め た。 1人1文ずつであったので、 4つの領域でそれぞれ24‑28個の例文が収集された。類似し た例文をまとめ、各領域を代表する悩みを集約した。これらの例文を参考にして、最終的には
"進路"に関する悩みと"友人関係"に関する悩みをそれぞれ2文ずつ作成した。これらの例文 に対して、事実の明確化を意図した質問と反映、感情の明確化を意図した質問と反映をそれぞれ 作成した。
例えば、 "私には親友と呼べる友達がいません。自分の本当の姿を見せてしまうと、友達が離 れていってしまう気がして‑自分をさらけ出すのがとても恐いんです。"という友人関係に関す る例では次のとおりである。 "あなたにとって親友っていうのはどんなふうなの?もう少し話し てくれますか?" (事実明確化質問)、 "友達に対して、ありのままのあなたを見せることができな いんですね。" (事実明確化反映)、 "恐いっていうのはどういうふうなの?もう少し話してくれ ますか?" (感情明確化質問)、 "本当の自分を友達に見せるのが恐いような気がするのね。" (感情 明確化反映)。これらのカウンセラ‑の応答に対して、再びそれぞれのカウンセラーの応答に 沿ったかたちでクライエントの応答文が作成された。
本研究の主な目的は、このようなクライエントの応答に対して、話し手(カウンセラー)の側 にどのような意図が形成されるかを調べることであった。
方 法
調査対象 学部大学生110名(男子39名、女子71名)とカウンセリングに従事している専門 家23名(男性2名、女性21名)がこの調査に参加した。専門家の平均年齢は45.3歳(SD‑
10.6)で、年齢の範囲は26‑63歳であった。このうち2名は心理判定員、 4名はカウンセラー、
17名は電話相談員で、職歴の平均年数は4.4年(SD‑ 3.8)で、年数範閲はl ‑20年であった。
材料 予備調査にもとづいて進路および友人関係に関する4つの悩みの陳述文を作成し、それ らを用いて調査用紙を構成した。調査用紙は5枚で、内容は2部構成となっている。第1部は、
第l夕‑ンのカウンセラーの応答4文を被調査者の好みに従って順位づけさせるものであり、第 2部は、第1ターンのカウンセラーの応答4文に対するそれぞれのクライエントの発言を受けて、
次のカウンセラーの応答の意図を選択させるものである。図1は、研究3における調査の流れを 図示したものである。
第1ターンのクライエントの発言については、個人的な問題としては"進路"が取り上げられ、
対人的な問題としては"友人関係"が取り上げられている。それぞれの領域で、陳述文は2文づ つ作成された。本調査で直接扱わなかった"自分の性格"と"家族関係"に関する結果は、 4文 を作成する際、その内容を部分的に取り入れたり、参考にしたりした。なお、各陳述文には悩み
の事実内容の表現に加えて、クライエントの直接的な感情表現が1つずつ含まれている。続くカ ウンセラーの応答は、各陳述文に対して4応答ずつ作成されている.すなわち、カウンセラーが クライエントの述べる事実関係を明確にしようという意図をもっている事実明確化質問と事実明 確化反映、感情を明確にしようという意図をもっている感情明確化質問と感情明確化反映である。
応答を作成する際には、クライエントの陳述の中で述べられている表現を使用しながら、できる だけ自然な会話の流れをつくるようにこころがけた。
第2ターンのクライエントの発言は、できるだけ第1夕‑ンのカウンセラーの意図に忠実に会
話が進むように作成した。すなわち、カウンセラーによって質問されている場合には、できるだ
「 第 1 タ ー ン 「 「 第 2 タ ー ン「
ク ラ イ エ ン ト発 言 .◆カ ウ ン セ ラ 】応 答 ‑◆ ク ラ イ エ ン ト発 言 .●カ ウ ンセ ラ ー 応 答 .◆ 事 実 明 確 化 質 問 .● 第 2 文 一 ? (事 実 明 確 化 質 問 )
‑◆ 感 情 明 確 化 質 問 蝣 ・ 第 2 文 一 ? (感 情 明 確 化 質 問 ) 第 1 文 ^ s a " " " " " ‑ I
.◆ 事 実 明 確 化 反 映 ‑I 第 2 文 .◆? (事 実 明 確 化 反 映 )
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意 図 の 好 み の 評 定 意 図 の 選 択
(第 1 部 ) (第 2 部 )
図1研究3における調査の流れ
けその聴かれている内容に忠実に答えるようにし、反映が行われている場合には、カウンセラー が繰り返し述べて明確にしようとしている内容にできるだけ沿いながら、その悩みの新たな事実 関係や感情状態を表現するようにこころがけた。
第2ターンのカウンセラーの意図は、事実明確化質問、感情明確化質問、事実明確化反映、お よび感情明確化反映の4つであった。資料1は、実際に使用した調査用紙の最初の2貢を掲載し たものである。
手続き 調査は学部大学生については生徒指導の授業中に集団で実施された。第2著者が調査 の趣旨を説明した後で調査用紙を配布し、次のように教示した。
"この調査用紙は全部で5枚からなっています。最初の10分で1枚目を、その後で残りの4枚 についてお答えいただきたいと思います。まず調査用紙の1枚目をご覧ください。これはカウン セリング場面に関する調査です。ここでいうカウンセラーは̀聴き手'で相談を聴く人を示して いて、クライエントは̀話し手'で相談にやって来た人を示しています。四角い囲みの中には学 生クライエントの悩みの訴えが書かれていて、その下にはそれに対するカウンセラーの応答が4 つずつ書かれています。これは、カウンセリングにやって来た学生クライエントがカウンセラー
に初めて悩みを訴えている場面です。カウンセラーはクライエントと一緒にこれから面接を行っ ていく訳ですが、もしあなたがカウンセラーの立場なら学生に対してどのような応答をしたいと 思いますか? 4つの応答についてあなたが好む順番に1から4までの数字を記入して下さい。
どれが正しいとか良いとかいうことはありませんので、あなたがいいと恩う順に書いていただい て結構です。 10分後に残りの調査の説明をいたしますので、次に進まないでしばらくお待ち下
さい。 (10分経過後) 2枚目を開けて下さい。細い囲みの中に、前のページと同じ悩みが書かれ
ています。ここまでは前のペ‑ジと内容は一緒ですが、今度はそれに対して̀ク'のところでク ライエントが発言をしています。そこで、今度は2人の会話に注意しながらクライエントの発言 をよく読んで、あなたがカウンセラーならどのように応答すると思うかを( )の中に太線に囲 まれたA‑Dのうち1つ選んで記入して下さい。これについても、どれが正しいとか良いとか いうことはありませんので、あなたがいいと思うものを選んで下さって結構です。必ず(1)' (4)までを全て記入して下さい。悩み文は全部で4つですので、全部で16の( )に記入する ことになります。よろしくお願いします。''
専門家については、職場が児童相談所、大学、病院、および電話相談室というように多岐にわ たっているので、あらかじめ電話などにより個別に依頼し、郵送によって調査用紙を送付して回 答を求めた。調査用紙につけた依頼文の内容は次のとおりである。 "この調査は、カウンセリン グ技法に関する研究を目的としたものです。調査の結果はすべて統計的に処理されますので、個 人の方にご迷惑をお掛けすることはありません。調査用紙は全部で5枚からできています。まず 初めに、今のお仕事の経験年数、年齢、性別を1枚目の用紙にご記入ください。次にそれぞれの 質問項目に答えていただきますが、 1枚目と残り4枚とは答え方が違っておりますので、ご注意 ください。正しい答えはありませんので、あなたが思うままにお答えください。すべての( ) にご記入もれのないようお願い致します。"回答は調査を依頼してから2、 3週間後に返送して もらった。
結果の分析 調査の第1部の好みの順位づけに関しては、 4つの各陳述文について4つの意図 のうち、 1番と評定されたものには4点、 2番には3点、 3番には2点、 4番には1点を与えて、
好みの得点として分析した。第2部では得点化は行わず、各例文ごとの意図の選択頻度を算出し
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結果と考察
表5は、大学生を対象にした場合について、第1ターンに与えられた応答様式の"好み"得点 と標準偏差を主題別に示したものである。繰り返し要因を含む2(性別:男、女)× 2(主題:進路、
友人関係)× 4 (応答様式:事実質問、感情質問、事実反映、感情反映)の分散分析を行った。第 1の要因(男女)は被験者間要因であり、第2と第3の要因(主題、応答様式)は被験者内要因 であった。分析の結果、応答様式の主効果(F‑ 45.59, df‑ 3/324, pく.01)、性と応答様式の 交互作用 CF‑ 2.84, df‑ 3/324, pく.01)、および主題と応答様式の交互作用(F‑ ll.00, df
‑3/324,♪<.01)が有意であった。有意であった要因については、さらに多重比較を行った。
応答様式の主効果では、事実質問は他の3カテゴリーよりも得点が高かった(対感情質問: J‑
4.27, d/‑436, p<.01;対事実反映: t‑6.14, df‑436, p<.01;対感情反映: t‑4.18, df‑
436, p<.01)が、他のカテゴリ一間で有意差は見られなかった。質問に対して高得点が与えら れたことは、研究2で学生が質問を頻繁に使用していたことからも理解できる。性と応答様式の 交互作用に関しては、女子が男子よりも感情反映に高い得点を与えていることを示している(∫
‑ 2.99, df‑464, p<.01)c主題と応答様式の交互作用については、 "進路"において事実質問 に高い得点が与えられ(*‑3.84, d/‑872, p<.01)、 "友人関係''では感情質問に高い得点が 与えられている(t‑7.05,df‑872,p<.01)。この結果も研究2と矛盾するものではない。
表6は専門家に関する結果を示したものである。ここには人数が少ないので、男女をこみにし
た結果が示されている。 2(主題)×4(応答様式)の分散分析を行ったところ、応答様式の主効果
表5 大学生における第1ターンの"好み"得点
事実質問 感情質問 事実反映 感情反映 男 女 男 女 男 女 男 女 進 路
M 6.46 6.15 SD 1.52 1.77 友人関係
〟 5.85 5.17 SD 1.58 1.75
4.44 3.89 4.79 4.59 1.63 1.24 1.56 1.56
5.67 5.6 4.31 4.ll 1.46 1.58 1.68 1.57
4.31 5.37 1.45 1.65
4.18 5.10 1.75 1.79
荏:得点の範囲は2‑8点
表6 専門家における第1ターンの"好み"得点 事実質問 感情質問 事実反映 感情反映 進 路
M 3.70 SD 1.40 友人関係
〟 2.96 SD 0.95
3.83 5.57 6.91 1.34 1.31 1.10
4.87 5.26 6.91 1.83 1.51 1.44
注:得点の範囲は2‑8点
CF‑ 30.34, d/‑ 3/36, ♪<.01)が有意であり、応答様式と主題の交互作用(F‑ 2.63, df‑ 3 /36,♪<.10)も有意な傾向が見られた。これらの要因についてはさらに多重比較を行った。応
答様式の主効果では、感情反映は他の3カテゴリーよりも得点が高かった(対事実質問:t‑
10.40, d/‑88, p<.01;対感情質問: Z‑2.97, df‑88, p<.01;対事実反映: t‑6.09, df‑
88, ♪<.01)が、他のカテゴリー間で有意差は見られなかった。この結果は、専門家に関する われわれの期待と一致するものであった。また、 "友人関係"において感情質問の方が事実質問 よりも得点が高かったが(t‑4.58, df‑ 176, p<.05)、 "進路"ではその傾向は見られなかっ た。専門家については、研究3に参加した専門家の殆どが電話相談に従事している女性であり、
電話相談員として受けているトレーニングの経験がこの応答のパターンに影響を及ぼしている可 能性がある。また、女性としての傾向も現われているかもしれない。
表5と表6の結果を要約すると次のようになる。大学生は質問を用いて事実を明確化しようと する傾向があり、特に進路を主題とする場合はその傾向が顕著に現われる。一方、専門家は主題 にかかわらず反映を用いて感情を明確化しようとする傾向がみられる。
表7は第1ターンの応答から第2ターンの意図への流れについて、大学生と専門家の結果を主
題別に示したものである。この表から読み取れるように、大学生でも専門家でも、初めの応答が
質問による事実の明確化(A)または反映による感情の明確化(D)であった場合は、次の応答
でも同じ意図をもち続けようとする傾向がみられる。初めの応答が質問による感情の明確化
(B)であった場合は、専門家は同じ意図をもち続けようとするが、大学生は主題が進路である
場合は、次の応答が分散し(B, C, D)、主題が友人関係である場合は反映による感情の明確化
(D)を行おうとする。初めの応答が反映による事実の明確化(C)であった場合は、専門家は質
問による感情の明確化(B)を行おうとするが、大学生は主題が進路である場合は専門家と同様
表7 大学生と専門家の第1ターンから第2ターンへの意図の流れ(%) 進 路 友人関係 大学生 専門家 大学生 専門家
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