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本報告書は経済産業省の平成 24 年度環境対応技術開発等 室内環境における消費者製品 に含まれる化学物質の管理手法の開発 によって実施された内容です

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平成24年度環境対応技術開発等

「室内環境における消費者製品に含まれる

化学物質の管理手法の開発」

成果報告書

平成25年3月29日

(独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門

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本報告書は経済産業省の平成24年度環境対応技術開発等「室内環境における消費者製品 に含まれる化学物質の管理手法の開発」によって実施された内容です。

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分析・調査:独立行政法人 産業技術総合研究所 安全科学研究部門 環境暴露モデリンググループ グループ長 東野晴行 主任研究員 梶原秀夫 研究員 篠﨑裕哉 契約職員 村井賀子(2章、3章) 契約職員 高井淳(1章、2章)

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目次

1. はじめに ... 1 2. 実施内容の概略 ... 2 3. 実施内容およびその結果 ... 3 3.1. 室内濃度に関する情報収集・測定及び室内濃度推定のためのアルゴリズムの作成 3 3.1.1. 製品中での化学物質生成・分解に関する情報収集とモデル化 ... 3 3.1.1.1. 実施内容 ... 3 3.1.1.2. フタル酸エステル類分解について ... 3 3.1.1.3. ホルムアルデヒド生成について ... 7 3.1.1.4. アセトアルデヒド生成について ... 10 3.1.1.5. モデル式の検討 ... 12 3.1.2. 換気回数の測定 ... 13 3.1.2.1. 実施内容 ... 14 3.1.2.2. 方法... 14 3.1.2.3. 対象家屋 ... 15 3.1.2.4. 測定結果 ... 16 3.1.2.5. 住環境因子との関連性 ... 21 3.1.2.6. 小空間のモデル化 ... 21 3.2. 製品情報の収集 ... 24 3.2.1. 流通商品調査 ... 24 3.2.1.1. 商品の種類と商品購買数の入手 ... 24 3.2.1.2. 販売時点情報管理(POS)システム ... 24 3.2.1.3. リスト化の対象商品 ... 24 3.2.1.4. 情報入手対象データ ... 25 3.2.1.5. 商品の販売量データ ... 26 3.2.1.6. その他商品種類に関する調査(塗料) ... 39 3.2.1.7. 製品別商品選択についての検討結果 ... 41 3.2.1.8. 化学物質含有成分の調査 ... 42 3.2.1.9. まとめ ... 57 3.2.2. 塗料及び接着剤の購入・使用に関するアンケート調査 ... 58 3.2.2.1. 実施内容 ... 58 3.2.2.2. 目的... 59

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ii 3.2.2.3. アンケートの概要 ... 59 3.2.2.4. モニター属性 ... 62 3.2.2.5. アンケート調査結果 ... 62 3.2.2.6. 暴露係数の決定 ... 78 3.3. 室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成 ... 81 3.3.1. 既存モデル ... 81 3.3.2. 室内濃度推定モデルと発生源モデルの非定常化... 88 3.3.2.1. 定常モデルと非定常モデルの使用方法に関する考察 ... 88 3.3.2.2. 吸着モデルに関する考察 ... 92 3.3.2.3. 室内空気質モデルの開発 ... 94 3.3.2.4. 発生源モデルの開発 ... 94 3.3.3. 室内環境の世帯分布を推定する統計モデルの作成 ... 95 3.3.3.1. 推定対象 ... 96 3.3.3.2. 推定方法とその結果 ... 96 3.3.4. インターフェイスとデータベースの作成 ... 99 3.3.4.1. ツールの構成 ... 100 3.3.4.2. データベースの作成 ... 103 4. まとめ ... 104 5. 参考文献 ... 107 6. 付録 ... 111 6.1. 塗料・接着剤の購入・使用に関するアンケート調査の設問リスト ... 111 6.2. アンケート結果 ... 139 6.2.1. スクリーニング ... 139 6.2.2. 塗料 ... 141 6.2.3. 接着剤 ... 161

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1 1. はじめに 室内環境下において、消費者製品等に含まれる化学物質への暴露によって生ずるシック ハウス症候群や本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)などの健康影響 (以下「SHS・MCS 等」という。)は、様々な対策がとられてきたものの依然解決されて いない。SHS・MCS 等は、消費者製品に使用されている化学物質を室内で繰り返し使用(暴 露)することが発症の要因の一つであると考えられている。したがって、SHS・MCS 等の 対策には、消費者製品に含まれる化学物質の適切な管理が重要となり、多種多様な製品が 混在する室内空気中の化学物質濃度(以下「室内濃度」という。)や、製品の使用などに伴 って生じる化学物質濃度の変化の情報を得る必要がある。 室内濃度の情報は、一般的にモニタリングや数理モデルによる推定などで得ることが可 能である。しかし、現状のモニタリング方法では、簡易な方法はあるものの、製品の使用 前と使用後などの室内濃度の変化をモニタリングで把握出来るような環境は整っていない。 またモニタリングでは、現状の濃度を知ることができるものの、費用や労力の面から測定 試料数は自ずと限られ、室内環境の化学物質濃度の全体像を簡易に把握することは難しい。 一方、既存の数理モデルによる推定では、将来および過去の室内濃度推定が実施可能であ り、室内濃度に対する製品別寄与率などを求めることも可能である。しかしながら、一部 のモデルを除き、複数の発生源を設定した推定や室内濃度の世帯分布の推定ができない、 モデル計算に必要な情報が不足しているなどの問題がある。さらに海外のモデルを使用す る場合には、暴露シナリオが我が国の実情に対応していないという問題もある。 以上のように、SHS・MCS 等の対策に資するための室内濃度の情報が不足していること から、室内で使用される多種多様な製品からの化学物質放散等に関する基礎データの収集、 データベース及び数理モデルの作成を実施することで、研究者や製品開発者等の専門家だ けでなく、一般消費者でも室内濃度を推定し、SHS・MCS 等に対する対策を検討できるよ うにする。 (独)産業技術総合研究所において開発された室内暴露評価ツール(iAIR)は、一般の 方の使用を前提としたユーザーインターフェイスやデータベースを備えた、我が国に流通 している多種多様な製品を放散源として室内濃度や暴露濃度の世帯分布を推定できる唯一 のツールである。iAIR は、長期平均的な室内濃度の世帯分布の計算、世帯人員の推定によ る個人暴露濃度の分布の計算、製品の持ち込み数や化学物質の放散速度の推定などの機能 を持つ。そして、モンテカルロ・シミュレーションを用いることで室内濃度や暴露濃度の 分布を推定できること、複数の製品からの放散を同時に評価できること、データベースか ら自動的にデフォルト値を算出するユーザー補助の機能があること、種々の我が国の統計 データを備えていることなどの特徴がある。そこで本事業ではiAIR をベースとして改修や データの追加を実施することで、研究者や製品開発者等の専門家だけでなく、一般消費者 でも室内濃度を推定し、SHS・MCS 等に対する対策の検討を可能とすることを目的とする。

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2 2. 実施内容の概略 室内環境下において、消費者製品等に含まれる化学物質への暴露によって生ずるシック ハウス症候群や本態性多種化学物質過敏状態(いわゆる化学物質過敏症)などの健康影響 (以下「SHS・MCS 等」という。)の対策に資するための室内濃度の情報が不足している ことから、以下の項目について調査・研究・開発を実施することで、研究者や製品開発者 等の専門家だけでなく、一般消費者でも室内濃度を推定し、SHS・MCS 等に対する対策を 検討できる環境を整備する。 (1)室内濃度に関する情報収集・測定及び室内濃度推定のためのアルゴリズムの作成 1)製品中での化学物質の生成・分解に関する情報収集とモデル化 2)換気回数の測定 (2)製品情報の収集 A)流通商品調査 B)塗料および接着剤の購入・使用に関する調査 (3)室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成 1)室内濃度推定モデルと発生源モデルの非定常化 2)室内環境の世帯分布を推定する統計モデルの作成 3)インターフェイスとデータベースの作成 実施体制は、以下のとおりである。 図 1 実施体制図

(独)産業技術総合研究所

株式会社 インテージリサーチ

経済産業省

プロジェクトリーダー 安全科学研究部門 環境暴露モデリンググループ付 東野晴行 委託 指示 協議 役務(外注) 役務(外注) エヌ・アンド・エス株式会社

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3 3. 実施内容およびその結果 3.1. 室内濃度に関する情報収集・測定及び室内濃度推定のためのアルゴリズムの作成 SHS・MCS の評価を行うためには、化学物質濃度の時間的変化の情報を得る必要がある。 特にMCS を考慮するのであれば、厚生省ガイドラインの13物質をはじめ、従来は影響が ないと思われる微量成分についても発生源および生成に関する情報を得る必要がある。ま た、換気は室内濃度を決める重要な因子であるが、国内では実測例が少ない。そこで室内 濃度の推定に欠かせない、放散に関する文献調査および換気に関する現場調査を実施した。 3.1.1. 製品中での化学物質生成・分解に関する情報収集とモデル化 製品部材中(例えば本棚やタンスなどの木工製品の部材中)での化学物質の生成・分解 に関する文献調査を行い、製品部材中の化学物質の生成・分解を考慮したアルゴリズムを 作成した。特に、接着剤中の脱ホルムアルデヒド反応、木材中のアセトアルデヒド生成、 樹脂材料中可塑剤であるフタル酸ジ-2-エチルヘキシルの分解および分解物である 2-エチル -1-ヘキサノールの生成について検討した。その結果、反応アルゴリズムとしては、フタル 酸ジ-2-エチルヘキシルの分解に関しては水分含量を考慮した1次反応モデル、ホルムアル デヒドの生成に関しては湿度条件を考慮した定常モデル、アセトアルデヒドの生成につい ては酵素反応モデル(ミカエリス・メンテン式)の適用が可能と考えられ、本調査・開発 事業の目標を達成した。以下に詳細を記載する。 3.1.1.1. 実施内容 室内環境では、部材中(ケース1)、部材表面(ケース2)、気体中(ケース3)におい て多岐にわたる化学反応が起こることが知られている(Uhde と Salthammer 2007)。この ような化学反応により生成する化学物質を二次生成物質と呼び、ヒト健康への影響が無視 できない可能性が指摘されている。そこで本事業では上述のケース1からケース3のうち、 まずケース1を対象として反応機構および反応速度に関する文献検索を実施した。対象と したのは、SHS の原因物質として考えられている代表的な物質(ホルムアルデヒド、アセ トアルデヒド、2-エチル-1-ヘキサノール)である。 文献調査は、1. 国立情報学研究所論文情報ナビゲータ(CiNii)による国内文献の検索、 2.収集文献の引用文献の調査、3.サイエンスダイレクトおよびウェブオブサイエンス による国外文献の検索、4.抽出文献の引用文献の調査の順番に調査を行った。ここで、 1、2については1980~2012 年、3、4については主として最新文献である 2005~2012 年を対象とした。 3.1.1.2. フタル酸エステル類分解について フタル酸エステル類の一つであるフタル酸ジエチルへキシル(DEHP)は部材中等の水 分と反応して 2-エチル-1-ヘキサンノール(2E1H)となることが知られている(Uhde と

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4 Salthammer 2007)。検索単語として分解される物質名、生成物質名、および材質などの単 語を用い、調査を実施した1。さらに文献の要約等から放散機構あるいは放散速度について の報告であるものを取り上げた2 表 1 調査結果の概略 調査工程 検索後の文献数 絞り込み後の文献数 1.国内調査 19 12 2.1の引用文献 18 2 3.国外調査 6 5 4.3 の引用文献 11 1 合計(重複を除く) 54 20 以降に該当文献の概略を示す。 Sjöberg(2000)は、コンクリート上に床材を配置した構造の床からの 1-ブタノールと 2E1H の発生機構などが調査可能な手法の構築を目的で、 Field and Laboratory Emission Cell (FLEC)による測定を実施し、床材から 360 μg m-3 h-1 の放散を報告し た。 柴田ら(2002)は 2E1H の室内濃度の調査を実施し、床から 620、623 μg m-2 h-1の発生 を報告した。 上島ら(2003)は 2E1H の放散量や、発生に関与すると考えられるコンクリート中の水 分含有率について検討するため、室内2E1H 濃度の測定を実施した。著者らは、床コン クリート上から12 mg m-2 h-12E1H が放散されていたこと、部位により濃度差がある こと、カーペット上よりコンクリート上で放散量が多いことを報告し、コンクリートか らのアルカリ水によって加水分解が起こっていること、壁や天井からの放散は吸着後の 再放散の可能性があることを示唆した。 横田ら(2004)は、塩化ビニル床材内の可塑剤分解物等の放散メカニズムの解明を目的 として、塩化ビニル床材単体とセルフレベリング(SL)材に塩化ビニル床材を施工した 複合建材の放散量などの測定を実施した。著者らは、塩化ビニル床材からの2E1H の放 散の原因として DEHP の加水分解だけでなく酸化も考えられること、SL 材内部のアル カリ水分によりDEHP が分解し、2E1H 放散量が増加すること、加水分解による 2E1H の放散量はある程度時間が経過した後に増加することを報告した。

1 ここまでの文献を「検索後の文献」とする。 2 「絞り込み後の文献」とする。

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5 長尾ら(2005)は横田ら(2004)に続き SL 材の含水率、水分の状態が化学物質放散量 に及ぼす影響を検討した。著者らは、実験で使用したSL 材は含水率が 4%程度を境に、 それ以上の含水率を有している場合は液水が支配的であり、それ以下では水蒸気が支配 的であると考えられること、2E1H 放散量は床下地材の水分の状態において液水が支配 的である場合に増加し、水蒸気が支配的である場合には増加しないことを報告した。 上島ら(2005)は、2E1H について室内濃度、発生源、自覚症状についてまとめた。著 者らは、床材がコンクリート表面に接していない部屋では放散量が少ないこと、床材と コンクリートが接触している部屋では放散量が多いこと、部屋間の DEHP の濃度差は 2E1H の濃度差と比べ小さいことから、2E1H の発生はコンクリート中の pH12~13 の アルカリ性水分と接触したDEHP が加水分解したものと考察している。 Nalli ら(2006)は、微生物による可塑剤分解および 2E1H の生産について検討を行い、 DEHP の微生物的分解によって 2E1H だけではなく、2-エチルヘキサン酸を生産するこ とを報告した。さらに、著者らは非生物学的な加水分解による半減期が長い(100 年) ことなどを引用し、微生物分解以外の2E1H の生成経路が重要ではないと指摘した。 長尾ら(2006)は長尾ら(2005)に引き続き 2E1H 放散量に対する接着剤の影響を調査 した。著者らは、一部のアクリル樹脂エマルジョン系接着剤より2E1H および 2-エチル -1-ヘキシル基を持つ化合物が放散すること、接着剤を塗布する面の状態(含水率)によ り、接着剤から放散する2E1H の放散量は大きく異なること、複合建材(塩化ビニル床 材+接着剤+SL 材)からの 2E1H 放散量は接着剤の種類に大きく影響を受けることを報 告した。 砂澤と松本(2006)は、2E1H の捕捉材を床材に添加することによる放散の低減化を目 的として、室内空気中の実態調査や放散の再現試験を実施した。著者らは、室内環境中 で2E1H およびその酸化物である 2-エチルヘキサナールを検出したこと、アルカリ水接 触後の床材は非接触の床材に比べ放散速度が高いこと、含水率の高いモルタルに施工し た塩ビ床材では一旦放散速度が増加後減少することなどを報告した。 米本ら(2006)は、2E1H の発生メカニズムとその抑制方法に関する検討を実施した。 著者らは、一部のアクリル系接着剤では2E1H および 2-ブタノールが発生すること、金 属板とSL 材との比較では同じ接着剤でも SL 材の放散速度が高いことなどを報告した。 粟木ら(2006)は 2E1H の発生状況の把握を目的に、コンクリートの含水率と 2E1H の 発生量の関係について検討を行った。著者らは、水分が多ければスラブ形状にかかわら ず2EH1 が発生すること、水分が少なければ発生量が少なくなる可能性があることを報 告した。

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6 千野ら(2007)は、塩化ビニル床材内の DEHP の加水分解等により発生する 2E1H の 放散メカニズムを解明することを目的として、高含水のセルフレベリング材にDEHP 含 有や特徴が異なる床材を施行し、床材の違いが2E1H 放散量にどのように影響するか検 討した。著者らは、クッションフロアを使用した場合は初期の 2E1H 放散量が非常に大 きいこと、床タイルを使用した場合には放散量は低いが長時間経過すると放散量は徐々 に増加すること、床材間での放散量の増加傾向の違いが床材内での化学物質や水の拡散 性状、DEHP 含有量に影響を受けるものと考えられることを報告した。 Uhde と Salthammer(2007)は室内環境下における化学反応についてレビューを行っ た。この中で、有機エステルがカルボキシル酸あるはアルコールへ加水分解されること が報告されており、その例として、DEHP から 2E1H の生成、フタル酸ジ-n-ブチルから n-ブタノールの生成、フタル酸イソブチルから 2-ブタノールの生成があげられている。 なお、加水分解に必要な水分は、室内環境中の水分、たとえば製品中の水分や室内の気 中に含まれる水分である。 桑原と近藤(2007)は、アクリル樹脂の未反応モノマーであるアクリル酸-2-へキシルを 含む硬化塗膜からの2E1H の放散に関する実験を行った。著者らは、塗料中のアクリル 酸-2-へキシルは、弱アルカリ性によって一部は加水分解し、2E1H が生成する可能性が あり、セメントモルタル板に塗装された塗料は強アルカリ性になり、加水分解が促進さ れて、界面付近に大量の2E1H を生成すること、生成された 2E1H は塗装後に徐々に塗 膜表面に移行し放出されること、塗料中にアクリル酸-2-へキシルが存在しなければ、 2E1H を生成する反応は生じないと考えられることを報告した。 横田ら(2007)は 2E1H の発生メカニズムの推定を目的として、塩化ビニル床材および SL 材に塩化ビニル床材を施工した複合建材からの 2E1H の放散について検討した。著者 らは、複合材では2E1H の放散が認められること、その放散はある程度の時間が経過し た後に増加すること、複合材からの放散はSL 材の含水率に関係する水分状態が液水支配 である場合に放散量が増加し、水蒸気支配である場合は増加しないことを報告した。 千野ら(2008)は床用接着剤が床面からの 2E1H 放散に与えている影響を検討するため、 接着剤の種類と2E1H 放散量との関係を求める検討を行った。著者らは、一部の接着剤 で2E1H の放散を求め、時間とともに速やかに減衰すること、接着剤の種類によっては 高含水の床下地と塩ビ床材を接着しても2E1H 放散量は増加しない場合があること、接 着剤の種類によっては2E1H 以外にブタノールが生成すること、長期渡る放散に関して は加水分解の寄与が大きいとの推測が成り立つことなどを報告している。 柴田ら(2008)はセメントの種類による 2E1H 発生量の変化に着目して実験を行った。 著者らは、セメント6 種類に DEHP を添加した実験で、いずれのセメントでも 1 日後 5 mg m-2 h-1、その後10 mg m-2 h-1を超える2E1H の発生があったことを報告し、コンク リート柱のセメントとDEHP の接触が原因となることを示唆した。

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7 Chino ら(2009)は 2E1H の放散メカニズムの解明を目的として、高含水 SL 材に床材 を施工し、2E1H の放散を測定した。著者らは、床材と SL 材の組み合わせの放散速度は 床材だけの場合と比較して時々高いこと、接着剤がゴムラテックス樹脂の場合には低い こと、ゴムラテックス樹脂およびアクリル樹脂の場合には徐々に高くなることを報告し た。 Sakai ら(2009)は 2E1H の季節変動を検討するために、2004 年~2007 年に 56 建築 物の67 部屋から夏季と冬季の 2E1H 濃度を測定した。著者らは、大規模建築物の室内空 気の主たる有機化合物のひとつが2E1H であること、室内と室外濃度の有意な相関関係 がないこと、夏季の 2E1H 濃度の幾何平均値が 55.4 μg m-3と 冬季の幾何平均値 13.7 μg m-3と比較して有意に高いこと、この結果が床からの高い放散速度に由来することな どを報告した。さらに著者らは種々の根拠から、これらの結果は2E1H の放散速度は床 材中のDEHP のアルカリ加水分解に影響を与える因子に由来する可能性を示唆した。 Westberg ら(2009)は、フタル酸からの加水分解物の放散に関するモニタリング方法の 検討とその方法を用いた測定を実施した。著者らは、フタル酸のフタル酸ジ-n-オクチル とフタル酸ジイソノニルを用いた試験でpH10 または pH11 より pH12 や pH13 の条件 下で生成量が多くなることなどを報告した。 3.1.1.3. ホルムアルデヒド生成について 尿素樹脂等の樹脂成分が加水分解することでホルムアルデヒド(HCHO)が生じること が知られている(中西と鈴木2009)。検索単語として分解される物質名、生成物質名、およ び材質などの単語を用いた。 表 2 調査結果の概略 調査工程 検索後の文献数 絞り込み後の文献数 1.国内調査 40 8 2.1の引用文献 7 1 3.国外調査 25 2 4.3 の引用文献 12 7 合計(重複を除く) 84 18 以降に該当文献の概略を示す。 窪田ら(1978)は尿素-ホルムアルデヒド(UF)樹脂合板からの HCHO の放散メカニズ ムについて検討した。著者らは、硬化物から放散するHCHO は温度の影響を受け、温度 が高いほど放出量が大きいこと、高温下でも乾燥状態では放散が認められないこと、メ チロール基がHCHO の放散に関わることを報告した。

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8 Myers(1984)は HCHO 濃度と換気回数(N)や試料負荷率(L)との関連性について既存文 献をまとめ、合板などからのHCHO の定常放散に関して報告した。著者らは、チャンバ ー実験による濃度データと N および L に対する関係性は N/L を独立変数として含む 2 パラメータの方程式として記述されるとしている。 Meyer ら(1986)は、UF 樹脂で接着された木製品からのホルムアルデヒド放散機構に ついてまとめた。著者らは、UF 板では HCHO は様々な存在形態(メチレングリコール モノマーまたはオリゴマー、UF 樹脂結合状態など)をとること、これらの状態が潜在的 な加水分解HCHO 源であること、フェノール-ホルムアルデヒド(PF)ボードでは、HCHO は様々な存在形態(メチレングリコールモノマーまたはオリゴマー、PF 樹脂結合状態な ど)をとること、拡散過程はパネルからの放散速度に大きく影響することなどを報告し た。 Godish(1988)は、HCHO に関する発生源と室内の現状についてまとめ、UF 樹脂中コ ポリマー構造の終端のメチロール基が加水分解されることにより、ホルムアルデヒドが 放出されるとしている。

World Health Organization(1989)は環境健康クライテリアで HCHO を取り上げた。 この中で、木材製品から継続的に、低率であったも何年間にもわたる長期間放散しうる ことを報告した。 Smith と Satola(1999)は、建材や家具から化学物質放散に関する研究や新たな知見よ り、二次生成について、ケース1:材料製造時の反応生成物が消費者のもとで放散、ケー ス2:消費者のもとで、表面または異種材料間での反応が起こる(例えば、コンクリート、 接着剤と床材間など)、ケース3:消費者のもとで、一次生成物が他の一次生成物や反応 性気体と反応、の 3 通りを想定した。これらの二次排出の原因の一つとして加水分解が 扱われており、ホルムアルデヒドの発生機構に関係して、UF ベースの接着剤は水に対す る安定性が低く、材料中の水分の存在がN-O 結合の加水分解につながること、これによ ってホルムアルデヒドが生産されること、UF ベースの接着剤は、一般的であり、したが ってこれに由来するホルムアルデヒド濃度が住宅やオフィスでかなり高くなる可能性が あること、特に、UF-結合パーティクルボードの上に水性床材用接着剤が塗布されてい ると、ホルムアルデヒドの高濃度、長期的な排出を引き起こす可能性があることを報告 した。 岩下と木村(1999)は、合板からの HCHO 放散量の経時変化を算定する手法に検討し、 た。著者らは、一次減衰モデル、二重一次減衰モデル、定常発生を加味した二重一次減 衰モデルの適合を試み、定常発生+二重一次減衰モデルの適合性が最も高いことを示し た。当該モデルのうち定常発生が「脱 HCHO 反応であると仮定されており、その値は 0.523~0.611 mg m-2 h-1であった。

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9 保利ら(2003)はスモールチャンバー法と既存の測定方法の比較を行った。著者らは、 建材に使用される接着剤の分解によってHCHO が徐々に放散されること、表面含有率の 減少後内部拡散が律速となり放散速度が徐々に小さくなること、その後の放散速度の減 少は小さく、長期にわたって放散が継続することを示唆した。 鈴木ら(2007)は、スモールチャンバーと簡易大型チャンバーとの比較試験において複 数の家具から放散するHCHO について検討した。著者らは、納入 10 年以上経過した家 具の一部において、F スター表示なしに相当する放散速度を示すことを報告した。発生 源あるいはメカニズムについての言及はないものの、未反応HCHO だけでなく、加水分 解後のHCHO の可能性もあると考えられる。 Uhde と Salthammer(2007)は反応生成物の室内空気質への影響のレビューを行い、 ホルムアルデヒド(HCHO)の生成についても言及している。著者らは、パーティクル ボード生産などに関わる尿素ホルムアルデヒド(UF)縮合樹脂を含む接着剤において、 未反応なホルムアルデヒド(遊離HCHO)ではなく、縮合物内の C-N 結合が加水分解さ れ、HCHO が放散する機構が存在することを示した。 市原ら(2008a、2008b、2008c、2008d)は建材からの長期間にわたる温湿度別放散傾 向の違いについて一連の検討を行った。著者らは、長期放散(100 日)において 28℃と 35℃では大きく異ならないこと、一方で 15℃の放散は非常に低いこと、ブランクと比較 して合板は長期間の放散が認められることを報告し、長期放散は加水分解により新たな HCHO が生成することの影響であると考察している。さらに相対湿度が高いと放散速度 が減衰しにくい傾向にあること、湿度が低いと温度影響が認められなくなること、湿度 10%では著しい放散速度の減衰が認められること、一方でブランクでは顕著な差が認め られないことなども報告した。

WHO Regional Office for Europe(2010)は室内空気質に関する化学物質のガイドライ ンをまとめ、HCHO も対象物質であった。この中で発生源に関して Kelly ら(1999)や Salthammer ら(2010)を引用し、まとめられている。

Salthammer ら(2010)は室内環境の HCHO に関するレビューを行い、HCHO の放散 メカニズムについてもまとめた。著者らは、UF の水耐性が低く、C-N 結合が加水分解 することを示した。 Hun ら(2010)は、新築ではない住宅の HCHO 放散源を検索するため、築年数 5 年以 上の住宅を中心にデータ解析を実施した。著者らは、放散のメカニズムの一つとして二 次放散について取り上げ、加水分解が長期間に渡る低放散の発生に寄与する可能性があ ることを指摘し、解析した住宅においてもこのメカニズムが存在した可能性が高いこと を示唆した。

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10 Blondel と Plaisance(2011)は、室内発生源の確認と定量、室内濃度と室内環境の関連 性の確認などを目的として、学生寮(24 室)の建物や家具の放散速度、室内や室外濃度 の測定を実施した。著者らは 7 年以上経過した建物や家具からの放散を認め、室内濃度 が温度に依存することを報告した。発生メカニズムについての言及はないものの、未反 応HCHO だけでなく、加水分解後の HCHO による影響の可能性もあると考えられる。 3.1.1.4. アセトアルデヒド生成について 木材へのエタノール添加においてアセトアルデヒドが生成することが知られている(中 西ら2007)。検索単語として分解される物質名、生成物質名、および材質などの単語を用い た。 表 3 調査結果の概略 調査工程 検索後の文献数 絞り込み後の文献数 1.国内調査 14 6 2.1の引用文献 3 2 3.国外調査 1 0 4.3 の引用文献 0 0 合計(重複を除く) 18 8 以降に該当文献の概略を示す。 堀ら(2004)は室内環境におけるアセトアルデヒドの発生源の検討として酢酸ビニル系 接着剤、木質材料などについて実験・実測を行った。著者らは、酢酸ビニル系接着剤では 乾燥開始後16-18 時間の総発散量は 10~30 μg g-1、その後も(5 日間)1/5~1/10 程度の 放散があったこと、湿度12%と 65%で 20 h の放散量を測定した結果、高湿度側で 4 倍 の平均発散速度を示したこと、木質材料では乾燥した心材からもアルデヒドが生成し発 生源になりうることを報告した。 塔村ら(2005)は、木材(素材)から放散される VOC を測定した。著者らによると、 アセトアルデヒドは外国産材ラミナで初期に50~80 μg m-2 h-1と高いこと、30 日後には 全ての試料で定量下限値に近い3 μg m-2 h-1以下に減少したこと、ヒバを除きプレーナー 加工の方が未処理より放散速度が減少したことを報告した。

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11 Tohmura ら(2005)は、スギと米マツの集成材についてアセトアルデヒド放散量を測定 した。集成材の接着剤は、フェノールレゾルシノール樹脂接着剤(PRF)としたが、7% のメタノール添加版(M-PRF)と、エタノール添加版(E-PRF)を用いて実験を行った。 著者らは、エタノール添加の接着剤を使用した集成材でアセトアルデヒド放散量がスギ で595~1,006 mg m-2 h-1、米マツで89~552 mg m-2 h-1と大きいことを報告し、放散す るアセトアルデヒドの主な部分は、既に存在しているのではなく、硬化過程でエタノー ルと木材の接触による相互作用(おそらく酸化)で生成されたと考えられることを示唆 した。 秋津ら(2006)はアセトアルデヒドの放散源や放散メカニズムを明らかとするために、 住宅等に使用される木材、接着剤、塗料および溶剤から放散されるアセトアルデヒドを 測定した。著者らは、接着剤や塗料に使用される溶剤のうち、エタノールでアセトアル デヒドの放散量が多く、接着剤や塗料から発生するアセトアルデヒドの原因として、エ タノールが関係することを示唆したが、その起源については特定していない。 秋津ら(2007)は秋津ら(2006)に続き、単板と石こうボードを用いたときの放散特性 について、透湿性能や木材成分との吸着や反応と関連づけて検討した。著者らは、エタ ノールを木材中に拡散移動させる場合、トドマツでは、エタノールに含まれる以上のア セトアルデヒドが放散されることから、木材成分と反応しアセトアルデヒドが生成され る可能性があることを示唆した。 石川ら(2009)は放散速度の低減方法を検討するため、杉材からの VOC 放散速度に対 する乾燥処理の影響を検討した。著者らは、乾燥方法によってアセトアルデヒドの放散 速度が変化しなかったことを報告した。 斉藤ら(2010)は、近年の住宅室内における空気中化学物質の実態を調査するため、実 測を行った。著者らは、硬化した酢ビ接着剤は加湿により未硬化時と同様の化学物質を 放散すること、木質建材・接着剤から発生後床下空間に滞留し隙間から徐々に放散が示 唆されること、酢酸ビニルが加水分解し、アセトアルデヒドまたはビニルアルコールが 生成し、不安定なビニルアルコールはアセトアルデヒド又はエタノールに変化する可能 性があることを報告した。なお、 これに先立つ斉藤ら(2005)の小型チャンバー法によ る測定では、塗布直後の未硬化酢ビ接着剤から発生する主な揮発性物質として MMB,ア セトン、酢ビ、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドを検出したとされる。

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12 Tohmura ら(2012)は、Tohmura ら(2005)に続き、木材へのエタノール添加による アセトアルデヒドの放散メカニズムについて検討した。著者らは、エタノールが木材に 追加されたときにのみのアセトアルデヒド生成(10.5~438 μg 24h-1)が認められること、 スギとヒノキ両方のサンプルで辺材に比べ心材でより大きなアセトアルデヒド生成が認 められたこと、酸化エチレンガス滅菌では生木でアセトアルデヒド排出量減少効果があ ったが、気乾材では効果がなかったこと、オートクレーブ滅菌では生木と気乾材両方か らのアセトアルデヒド排出を防ぐことができたことを報告した。また、木材に最初から あるアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)と外部からとりこまれた ADH がエタノール の添加により誘導されることでアセトアルデヒド生成し、これが木材から放散する主要 因であると想定されることを示唆した。 3.1.1.5. モデル式の検討 本事業では、情報データベースのキーワード検索だけでは対象外の文献を多く含んだこ とから、文献要旨から放散機構あるいは放散速度での絞り込みを実施した。さらに引用文 献調査も実施したことから、各項目に関しておおむね網羅的な検索が実施できたと思われ る3。しかしながらモデル化まで実施している文献はほとんどなかった。また、モデル化を 検討するための必要となる分解生成物等の時間的変化に関する情報もなかった。したがっ て本項ではこれまでの知見を総合して反応機構についてまとめ、反応機構から適用可能な 計算アルゴリズムを提案した。 【フタル酸エステル類】 フタル酸エステル類の分解に関しては、微生物による分解(Nalli ら 2006)、アルカリ条 件下における加水分解(上島ら2003 など多数)の二つの反応機構が提案されている。2E1H 放散に関して複数の報告例がある強アルカリ条件下では微生物が分解反応を担うことが困 難であること、微生物分解を報告した文献において加水分解を否定した根拠となった加水 分解速度の報告文献がコンクリート条件下の測定ではないこと、測定pH が 8.0 とアルカリ 性と言いがたいことも考慮に入れると、現状では微生物による分解の寄与は低いと考えら れる。アルカリ条件下における加水分解には水分が必要であり、材料中の水分に関しては 液体と気体が存在するが、これまでの調査の結果では液体が重要な役割を果たしているも のと推定されている(横田ら2007)。計算アルゴリズムとしては、水分含量を考慮した1次 反応モデルの適用が可能と考えられる。 【ホルムアルデヒド】 原材料に含まれるホルムアルデヒドが残留し放散するケースも考えられるがそれ以外に 尿素樹脂の分解によるホルムアルデヒドの生成についても多くの報告がある。反応機構に 3 国内情報は学会発表要旨も対象としたので、全体として国内情報がやや多めである。

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13 ついて検討した文献は多くないが、尿素樹脂のメチロール基が加水分解され、ホルムアル デヒドが生じるメカニズムが妥当だと考えられる(窪田ら1978)。この生成は加水分解反応 であることから、材料や環境の湿度条件が重要であり、10%などの低い条件では加水分解反 応自体が起こらないこと、十分な湿度条件であれば湿度依存性および温度依存性が認めら れていることが示されている(市原ら2008a、市原ら 2008b、市原ら 2008c、市原ら 2008d)。 モデルについては一例存在する(岩下と木村1999)。このケースでは二重一次減衰モデル と定常モデルの組み合わせで放散速度を推定しており、定常モデル部分が加水分解のホル ムアルデヒドに相当している。ただし、基本としている二重一次減衰モデルは一次減衰モ デルよりも長時間の放散に対して適合性がよいことが指摘されているが(岩下1999)、数ヶ 月にも及ぶ場合には二重一次減衰モデルは過小評価となりべき乗関数モデルが適切である との報告(Han ら 2012)もあり、岩下と木村のモデルをそのまま利用することは困難であ ると考えられる。しかし、反応機構から他の放散に比べて相対的に遅い反応であることは 確実であることから定常モデルに近似することは可能であると考えられる。したがって湿 度条件を考慮した定常モデルの適用が可能と考えられる。 【アセトアルデヒド】 アセトアルデヒドの生成については情報が少なく、速度論的な検討を行うところまで到 達していない。定性的にはアルコールデヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.1 等)によるエタノール の脱水素反応で、その分解産物としてアセトアルデヒド生成されるものと考えられている (Tohmura ら 2012)。アルコールの起源は溶剤など日常的使用されている消費者製品に含 まれていたものと想定されている。この他の反応機構としては、酢酸ビニル系接着剤の加 水分解による放散が考えられている(堀ら2004、斉藤ら 2010)。反応機構としては木材か らの放散には酵素反応モデル(ミカエリス・メンテン式)の適用が可能と考えられ、一方 酢酸ビニルに関するモデルについては反応機構に関する情報が少なく、アルゴリズムの選 択は困難であった。 3.1.2. 換気回数の測定 室間換気やクローゼット・押し入れなどの小空間における換気状況を検討するため、延 べ6 軒の住居において 1 軒当たり 12 点の換気状況測定(換気回数など)を実施した。換気 回数は住宅周辺の環境、生活行動だけでなく、室外の風速、室内外温度差によって変動す る。これらのことから、同一住宅において異なる時期に2回の測定を行った4。換気回数の 測定には二酸化炭素(CO2)を利用したJIS A1406 の濃度減少法を用いた。また、一般家 庭における測定時の安全性に配慮して、高圧ボンベを用いない CO2の発生方法を利用する ものとした。同時に居住者に対して目的、方法、安全性などの説明を行い、十分な同意を 得た上で測定を実施した。取得した換気回数データと住環境因子との関連性について相関

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14 関係の検討を行い、さらに重回帰分析を実施し、小空間に関する換気回数推定のための簡 易モデルを作成した。それに加えて、モデル化の検討として、これまでに実施した住環境 と換気状況に関するアンケート調査の結果をまとめ、簡易モデルのパラメータについての 情報を整理し、本調査・開発事業の目標を達成した。以下に詳細について述べる。 3.1.2.1. 実施内容 室内濃度を推定する上で重要なパラメータとして換気回数がある。換気回数は、1 時間あ たりの空間内の空気が入れ替わる割合と定義することができ、国内外で複数の住宅に関す る調査事例がある。しかしながら、国内の測定事例では測定対象数が少なく、長期にわた る測定の結果も報告されていない。一方、住宅全体の換気回数ではなく、防虫剤を対象と した衣装ケースの測定なども実施されている。しかし押入やクローゼットなどの測定例は ない。このような現状のため、室内濃度推定時の換気回数設定においても困難が伴ってい る。そこで、換気回数の情報がない押入やクローゼットに関しての測定を実施し、推定モ デルの作成を最終的な目的とした換気回数と環境因子との関連性の解析を実施した。 3.1.2.2. 方法 【換気条件の検討】 無換気、24 時間換気、レンジフードによる換気など、換気条件を変更して対象小空間の 換気回数の測定を実施した。換気条件とは、換気を行わない場合(「換気なし」)、24 時間換 気設備を使用した場合(「24 時間換気」)、キッチンにある換気扇・レンジフードを使用した 場合(「換気扇」)、扇風機:部屋に設置した扇風機を使用した場合(「扇風機」)、部屋に設 置されているエアコンを稼働させた場合(「エアコン」)、小空間が設置されている部屋の出 入り口を開放した場合(「部屋の開放」)、小空間の扉を開放した場合(「開放」)などの小空 間の換気の状態が変化する実験条件である。 換気回数は二酸化炭素を対象空間に導入し、対象空間の二酸化炭素濃度の減衰から算出 した。二酸化炭素の発生源としてドライアイスを用いた5。濃度測定には、センスエア社製 非分散型赤外線吸収法センサー(NDIR 方式センサー)およびティアンドデイ社製ワイヤレ スデータロガー対応二酸化炭素測定装置(NDIR 方式センサー)を用いた。方法の詳細につ いては JIS 法に準じた。なお、換気回数の推定は比較的単純な二酸化炭素濃度推定式によ る予測値と測定値の残差を最小となるように統計的に処理を実施した。 【連続測定】 日常の換気回数を把握するために、二酸化炭素の発生源を居住者の呼吸のみとし、対象 小空間内の二酸化炭素濃度の変動から換気回数を算出した。濃度の測定および換気回数の 5 二酸化炭素はステンレス容器内で 20℃前後まで加温し、気体として 10 m 以上のテフロ ンチューブを通して供給した。

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15 推定方法は上記の【換気条件の検討】と同様である。 3.1.2.3. 対象家屋 温度条件の異なる二季節の実施を基本としたが、調査協力者の了承が得られないケース もあり、全ての住宅で複数回の試験は実施できていない。 表 4 測定環境 住宅 建て方 構造 築年数 換気 TkE 戸建 木造2 階建て 約10 年 TkN 戸建 木造2 階建て 約30 年 TkM 戸建 木造2 階建て 約10 年 TcA 戸建 木造2 階建て 約15 年 24 時間換気 TcS 共同 軽量鉄骨 約30 年 TkH 共同 鉄筋コンクリート 約5 年 24 時間換気 それぞれの住宅で、2カ所の測定場所を選出6し、換気条件を変更して換気回数を測定した。 6 一部の住宅では諸事情により 1 カ所の場合がある。

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16 図 2 測定場所 3.1.2.4. 測定結果 【換気条件の検討】 6 軒の住宅において換気条件を変更した換気回数測定を実施した。基本的には 1 住宅あた り2 小空間を対象として、1換気条件あたり 5 分以上、6 回の測定を実施した。測定準備、 CO2の供給、CO2の排気などを含めて一住宅あたり1.5~4 日間の測定期間が必要であった。 このため協力者の負担が大きく、協力者が辞退する事例があった。今後測定数を増やすた めには、測定方法の変更、測定数の削減などの工夫が必要である。 以下の図は実際の測定結果の一例で、換気回数推定のための二酸化濃度の変化を示した。

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17 図 3 二酸化炭素濃度の測定例(TkH 住宅)

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18 表 5 換気回数(h-1)の測定結果 測定条件 換気条件 住宅 小空間 測定 時期 換気 なし 24 時間 換気 換気扇 扇風機 エア コン 開放 番号 扉の 形状 TkE 1 折り戸 秋 1.55 - - 4.6 9.7 16 冬 2.05 - - 2.2 8 122 2 開き戸 秋 5.5 - 11 - - - 冬 1.04 - 11 2.4 1.2 34.4 TkN 1 引き戸 秋 8.3 - 22 9.4 - 15 冬 12.8 - 14.3 7.0 - 15.5 2 開き戸 秋 1.2 - 4.0 1.9 0.13 16.6 冬 1.2 - 7.2 1.4 4.6 54.9 TkM 1 引き戸 冬 2.8 - 2.1 2.0 1.6 2.1 2 開き戸 冬 2.5 - 3.6 4.2 - 11.3 TcA 1 引き戸 冬 0.93 3.1 - 4.0 - 5.4 2 開き戸 冬 0.93 0.60 - 0.21 - 0.84 TcS 1 引き戸 夏 2.4 - 1.5 1.6 - 16.5 冬 1.1 - - - - TkH 1 引き戸 夏 0.58 0.56 0.23 - - 20.4 冬 0.74 0.93 0.84 0.59 - 10.8 2 折り戸 夏 1.3 0.41 1.5 - - 13.0 冬 1.7 2.2 2.6 1.5 1.3 35.9 換気なし:換気を行わない場合、24 時間換気:24 時間換気設備を使用した場合、換気扇: キッチンにある換気扇・レンジフードを使用した場合、扇風機:部屋に設置した扇風機を 使用した場合、エアコン:部屋に設置されているエアコンを稼働させた場合、開放:小空 間の扉を開放した場合 【連続測定】 2 軒の住宅について 1 週間程度の連続測定を実施した。日常的な行動時の換気回数の変動 をとらえるために各家庭において生活制限等はない状況で測定を実施した。測定は 1 ある は2 分ごととし、毎時 00 分から 59 分までのデータを用いて換気回数を算出した。ただし、 測定誤差を考慮して、対象小空間とその小空間が接続する部屋の二酸化炭素濃度差が対象 小空間の5%よりも小さい場合には欠測値としてデータ解析から除いた。

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19 ・小空間:TkH-1 1 分ごとの測定結果を以下の図に示した。押入は対象小空間、部屋は対象小空間の接続し ている部屋、隣室はその部屋の隣の部屋を指す。対象小空間(押入)は子供部屋の押入で、 ほとんど開閉がない。部屋の二酸化炭素濃度は、夜間に高くなり、朝通学によって留守と なることで換気が進み低くなる傾向が認められた。小空間の二酸化炭素の変動は部屋の変 動に付随して起こっていた。 図 4 TkH-1 における連続 CO2濃度測定の結果 換気回数の推定結果を以下の図に示した。日常生活を行っている部屋の測定結果から換 気回数を算出したことから換気回数の変動が大きい。 図 5 TkH-1 における換気回数の推定結果

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20 ・小空間:TcS-1 2 分ごとの測定結果を以下の図に示した。押入は対象小空間、部屋は対象小空間の接続し ている部屋、隣室はその部屋の隣の部屋を指す。対象小空間(押入)は和室の押入である。 部屋の二酸化炭素濃度の変動は、利用頻度が低いこと、利用時間が短いことから、周期性 のない結果となっている。小空間の二酸化炭素の変動は部屋の変動に付随して起こってい た。 図 6 TcS-1 における連続 CO2 濃度測定の結果 図 7 TcS-1 における換気回数の推定結果 現状の方法では、押入のある部屋の利用頻度が低く、換気回数を推定できる条件(二酸

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21 化炭素の供給)が整っていないと推察された。また部屋を利用するときには押入の開閉を 伴っていると思われ、比較的高い換気回数であった。 3.1.2.5. 住環境因子との関連性 統計的な解析として相関関係の検討を実施した。 【換気条件】 換気回数と温度や湿度などの部屋の条件との相関関係を検討したところ、相関係数は、 換気条件:0.20、部屋の換気回数:0.17、小空間の湿度:-0.14、扉の形状:0.13、部屋と の温度差0.03、小空間の温度:0.03 となり、換気回数と相関関係の高い部屋の条件はなか った。 【連続測定】 ・TkH-1 環境因子との相関関係を検討した。小空間の温度:0.44、部屋との温度差:0.63、小空間 の湿度:0.24、部屋との湿度差:-0.33 の相関係数であった。今回測定した換気回数は検討 外の他の因子、たとえばレンジフードなどによる換気、押入の開閉などを含む1時間の平 均的な値であることを考慮すると温度差の相関係数0.63 も高い値であったと考えられる。 ・TcS-1 環境因子との相関関係を検討した。押入の温度:0.40、部屋との温度差:0.33、押入の湿 度:0.07、部屋との湿度差:0.19 の相関係数であった。高い相関係数を示す項目はなかっ た。 3.1.2.6. 小空間のモデル化 これまでの情報から換気回数のモデル化を試みた。上述の相関関係を考慮すると単独の パラメータではモデル化が困難なことが予想されたことから重回帰分析を実施した。パラ メータは部屋の換気回数、家の建て方、扉の形状、換気条件、小空間の温度、温度差、外 気温の7つとし、このうち家の建て方、扉の形状、換気条件についてはダミー変数を用い て解析に組み込んだ。この結果によると、相関係数0.39、決定係数 0.15 であり、決定係数 は低いものの相関係数はある程度の高さを持つモデル式となった。この原因は、住宅の構 造、扉の形状によって大きく換気回数が異なる結果となったことから換気回数を説明でき なかったものと推定された。今後、1.住宅の構造、扉の形状のことなる測定例を増やす こと、同一測定場所で長期間の連続測定を実施し、環境因子との関連性を解析することで、 詳細なモデル化を行うことが可能になると思われる。

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22 換気回数=部屋の換気回数×0.14―家の建て方×1.3+扉の形状×5.4+換気条件×1.3―小 空間温度×0.43―小空間湿度×0.25+温度差×0.46+外気温×0.32+5.75 上記モデル式のうち有意なパラメータは「部屋の換気回数」(P<0.05)、「扉の形状」(P <0.05)、「換気条件」(P<0.01)の3つであった。そこで3つのパラメータについて過去 のアンケート調査の結果をまとめ、モデル化の検討として情報の整理を実施した。 以下の表に示したように窓、24 時間換気やレンジフードの使用に関してはアンケート調 査((独)産業技術総合研究所と(独)製品評価技術基盤機構 2010)を実施している。上 記の3パラメータのうち「部屋の換気回数」、「換気条件」に関しての情報は得られると考 え、アンケート結果についてまとめた。なお、「換気条件」パラメータとは、「換気条件」 は、「換気なし」、「24 時間換気の使用」、「レンジフードの使用」、「部屋の開放」、「小空間の 扉の開放」など7の実験条件である。 表 6 換気に関するアンケート調査の実施状況 調査年度 回答者数 内容 平成19 年度 a 1,080 人 窓の有無と開閉頻度、換気扇の有無と使用頻度 平成20 年度 1,715 人 エアコンの有無と使用時間、窓の開放時間、24 時間換気の 有無 平成21 年度 a 2,313 人 24 時間換気の有無と使用時間 (独)産業技術総合研究所と(独)製品評価技術基盤機構 2010 7 測定住宅および測定小空間の形状や換気機能の有無によって全ての条件を実施できてい ない。また記述した以外の換気条件について検討を加えた場合もある。

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23 表 7 換気に関するアンケート調査の結果のまとめ 項目 回答 調査年度 窓 有無 居室・寝室 91% 平成19 年度 a 寝室 95% 平成20 年度 居室 96% 平成20 年度 開放時間 夏(分/日) 519±511 平成20 年度 冬(分/日) 83±188 平成20 年度 春・夏(分/日) 404±397 平成20 年度 レンジフード 有無 居室・寝室・キッチン 45% 平成19 年度 a キッチン 94% 平成19 年度 a 24 時間換気 有無 24% 平成20 年度 17% 平成21 年度 a 使用時間 (時間/日) 14±10 平成20 年度 17±10 平成21 年度 a 出典:(独)産業技術総合研究所と(独)製品評価技術基盤機構 2010 以上のようにモデル化にともない必要となるパラメータのうち「部屋の換気回数」、「換気 条件」についての情報はある程度得られた。今後、「扉の形状」に関するデータの取得が必 要となると思われる。

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24 3.2. 製品情報の収集 3.2.1. 流通商品調査 一般消費者用として市場に流通している商品の種類や化学物質含有率に関する情報を収 集した。製品は家庭用塗料、家庭用接着剤、住宅用クリーナー、住宅用ワックス、芳香消 臭剤、防虫剤、殺虫剤、シャンプー、洗濯用洗剤、トイレ用クリーナー、バス用クリーナ ー、台所用洗剤、ガラス用クリーナーの全14種類とした。14製品の実際に市販されて いる商品リストを主として販売時点情報管理(POS)システム情報に基づき作成し、あわ せて量的な情報も収集した。さらにその内容物についての情報を、公開情報に基づき集約 をはかり、本調査・開発事業の目標を達成した。以下に詳細について述べる。 3.2.1.1. 商品の種類と商品購買数の入手 商品の種類の調査として、実際に購入された商品リストの作成を試みた。方法としては、 販売時点情報管理(POS)システム情報に基づく商品種類、商品購買数を入手し、そのデ ータを集計した。 3.2.1.2. 販売時点情報管理(POS)システム POS システムは、販売店の会計時に商品のバーコード情報を読み取ることで商品管理を 行うもので、製造(販売)企業、商品名、購入数、購入価格などの情報を収集している。 国内では、以下の表に示したデータベースが存在している。 表 8 入手可能な販売時点情報管理システム情報の例 データベース 対象店舗 備考 日経POS 情報サービス スーパーマーケット、ドラッグストア TOPPAN POS スーパーマーケット、ドラッグストアなど 400 店舗 流通経済研究所 スーパーマーケットなど342 店舗 KSP-SP スーパーマーケットなど840 店舗 食品のみ インテージSRI スーパーマーケット、ホームセンターなど 3,110 店舗 3.2.1.3. リスト化の対象商品 本調査の対象となる製品群は、ホームセンターでの販売も考えられることから、(株)イ ンテージの構築しているインテージ SRI が最も適切であると思われた。このデータは、ス ーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストア、コンビニエンスストアの3,110 店舗 で購入された雑貨品(以下の表)の販売個数、販売金額などを収集したもので、全国推計

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25 値なども入手することが可能である。 SRI 雑貨の製品種類 歯ブラシ、電動歯ブラシ、歯磨、マウスウォッシュ、義歯用剤、その他口中衛生用品、 石鹸、入浴剤、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、アウトバスヘアケア、ヘア カラー、ホームパーマ剤、育毛トニック、制汗剤、洗濯用洗剤、中性洗剤、漂白剤、柔 軟剤、洗濯のり、その他衣料洗剤、台所用洗剤、クレンザー、住居用クリーナー、住居 用ワックス、トイレ用クリーナー、バス用クリーナー、ガラス用クリーナー、パイプク リーナー、その他住居用クリーナー、粘着クリーナー、家庭用手袋、化学雑巾、たわし・ スポンジ、水切り袋、廃油処理剤、殺虫剤、防虫剤、カビ防止剤、芳香・消臭剤、トイ レタンク用芳香洗浄剤、脱臭剤、除湿剤、ラッピングフィルム、アルミホイル、食品包 装用品、アルミガスマット類、食品保存用容器、フードカップ、ティッシュペーパー、 トイレットペーパー、ペーパータオル、ぬれティッシュ、使い捨て紙クリーナー、紙お むつ、大人用紙おむつ、生理用品、生理用ショーツ、防水・撥水剤、しわとり剤、絆創 膏、使い捨てカイロ、綿棒、靴クリーム、血圧計、体温計、低周波治療器、コンタクト 用剤、その他ベビー用品、サポーター、テーピング、歯槽膿漏治療薬、肛門洗浄剤、避 妊具・潤滑剤、清浄綿、マスク、磁気製品、フットケア用品、その他雑貨品、ドッグフ ード、キャットフード、その他ペットフード、ペット用品、ペット耐久用品、写真用フ ィルム、ビデオテープ、電池、カミソリ、掃除機用紙パック、電球、カーお手入れ品、 浄水器、線香、ろうそく、接着剤、粘着テープ、園芸用品、その他男性化粧品、クレン ジング、洗顔クリーム、コールド&マッサージ、化粧水、乳液、栄養クリーム、パック、 美容液、化粧用紙製品、その他化粧品、ハンド&スキンケア、ボデイ用、日焼け・日焼 け止め、エチケット品、リップクリーム、化粧下地、ファンデーション、おしろい、ほ おべに、口紅、その他リップ、眉目料、マニキュア、香水・コロン、ヘアブラシ、化粧 用コットン、化粧用小物、美容関連、ドリンク剤 3.2.1.4. 情報入手対象データ 本調査の目的を考慮して、上記データから以下の条件の集計データを入手した。

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26 表 9 本事業において入手したデータの概要 項目 内容 店舗業態 スーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストア、コンビニエン スストア 対象市場 雑貨品 対象期間 2009 年 1 月から 12 月の年計 データ指標 販売個数、販売金額、販売容量8 対象製品 洗濯用洗剤、台所用洗剤、住居用クリーナー、住宅用ワックス、トイレ 用クリーナー、バス用クリーナー、ガラス用クリーナー、シャンプー、 殺虫剤、防虫剤、芳香・消臭剤、接着剤、粘着テープ 対象データ 製品の販売個数・金額、容量の上位50 製品リスト 図 8 データのイメージ 3.2.1.5. 商品の販売量データ 各製品別に販売シェアを記載するとともに、代表的な含有成分を選定するための商品9 数について検討した。なお、商品個数の検討においては商品の形状などを考慮せず、50%10 8 集計可能な製品のみ 9 正確には商品ではなく、商品ブランド別に近い単位である。すなわち、容量あるは詰替商 品など内容物が同じにもかかわらず製品番号が異なるものを合わせて一つの商品としてい る。 10 データとしては、販売個数、販売金額、販売容量がある。シェアの計算には販売容量を

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27 のシェアを超す商品個数と設定した。 【住居用クリーナー】 販売個数、販売容量では3商品、販売金額では4商品で寄与が 50%を超えた。代表的な 含有成分を選定するための商品個数は3商品(販売容量)である。 図 9 住宅用クリーナーの販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【住居用ワックス】 販売個数、販売容量、販売金額において2商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成 分を選定するための商品個数は2商品(販売容量)である。 図 10 住宅用ワックスの販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【殺虫剤】 販売個数、金額において上位50製品で寄与が 50%を超えない。したがって本調査のみで 用いたが、製品の内容によっては販売容量の情報を収集できない場合があった。この場合 には、販売個数などでシェアを推定した。

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28 は代表製品を選択することができない。 図 11 殺虫剤の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 殺虫剤は製品の用途や形状などで36のカテゴリーに分けることができる。これによる と「ハエ・蚊」用が33%、「虫除け」24%、「ゴキブリ」用が 13%とこれらで寄与が 50%を 超えた。それぞれの中では、以下が主たる製品である。「ハエ・蚊」では約半数(45%)が 「ハエ・蚊用エアゾール」、「虫除け」では半数以上(54%)が「シートタイプ、携帯タイプ を除いた虫除け」、「ゴキブリ」は「ゴキブリ用エアゾール」と「毒餌剤」で半数以上(59%) であった。 【殺虫剤(ハエ・蚊用エアゾール)】 販売個数、販売金額において2商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成分を選定す るための商品個数は2商品である。 図 12 殺虫剤(ハエ・蚊用エアゾール)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア

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29 【殺虫剤(虫除け)】 販売個数、販売金額において8商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成分を選定す るための商品個数は8商品である。 図 13 殺虫剤(虫除け)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【殺虫剤(ゴキブリ用エアゾール)】 販売個数、販売金額において1商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成分を選定す るための商品個数は1商品である。 図 14 殺虫剤(ゴキブリ用エアゾール) 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【殺虫剤(毒餌剤)】 販売個数、販売金額において2商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成分を選定す るための商品個数は2商品である。

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30 図 15 殺虫剤(毒餌剤)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【防虫剤】 販売個数、販売金額では3商品、販売容量では2商品で寄与が 50%を超えた。代表的な 含有成分を選定するための商品個数は2商品(販売容量)である。 図 16 防虫剤の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【芳香消臭剤】 販売個数、販売金額、販売容量において上位50製品で寄与が 50%を超えない。したが って本調査のみでは代表製品を選択することができない。

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31 図 17 芳香消臭剤の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 芳香消臭剤は製品の用途や形状などで10カテゴリーに分けることができる。これによ ると「トイレ」が40%、「室内」が 35%、「衣類」用が 22%で、これらで寄与が 90%を超え た。 【芳香消臭剤(トイレ)】 販売個数、販売金額では4商品、販売容量では3商品で寄与が 50%を超えた。代表的な 含有成分を選定するための商品個数は3商品(販売容量)である。 図 18 芳香消臭剤(トイレ)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【芳香消臭剤(室内)】 販売個数、販売金額では6商品、販売容量では3商品で寄与が 50%を超えた。代表的な 含有成分を選定するための商品個数は3商品(販売容量)である。

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32 図 19 芳香消臭剤(室内)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【芳香消臭剤(衣類用)】 販売個数、販売容量、販売金額において1商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成 分を選定するための商品個数は1商品(販売容量)である。 図 20 芳香消臭剤(衣類用)の販売シェア 【接着剤】 販売個数、金額において上位50製品で寄与が 50%を超えない。したがって本調査のみ では代表製品を選択することができない。

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33 図 21 接着剤の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 入手した POS データでは、詳細なカテゴリーの設定がなされていない。そこで上位 50 位の商品について接着剤(以降以外)、瞬間接着剤、シーラントの3カテゴリーに分けて集 計11を実施したところ、以下の表となった。 表 10 製品カテゴリー別市場構成 製品カテゴリー 接着カテゴリー内の割合 販売個数 販売金額 接着剤 18.9% 12.5% 瞬間接着剤 10.3% 8.2% シーラント 15.6% 14.0% 50 位までの製品 47.7% 35.9% 各カテゴリーの代表容量がそのカテゴリーの中で最も販売個数の多い製品12の容量であ ることを仮定して、カテゴリーごとの販売容量を推定した。これによると、上位50 位の商 品ではシーラントの販売容量の寄与が大きい。カテゴリーの寄与率が50 位以下の商品でも 一定であるとしたならば代表製品としてシーラントを選択可能である。販売個数では5商 品で寄与が50%を超えた。代表的な含有成分を選定するための商品個数は5商品である。 11 一部に障子や襖用ののりが含まれていたので除外した。 12 接着剤 4901490130238、瞬間接着剤 4901490301157、シーリング 4901761385152 を採 用した(数字はJAN コード)。

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34 表 11 販売容量の概算結果 製 品 カ テ ゴ リ ー 製品個数 代表容量 推定した販売容量 千個 mL L 割合 接着剤 4,300 20 86,000 7% 瞬間接着剤 2,400 2 5,000 0% シーラント 3,600 330 1,200,000 93% 【粘着テープ】 今回入手したPOS データでは粘着テープカテゴリーに混乱が見られる。たとえば最も販 売個数の多い商品はDIY に使用されているような粘着テープ製品でなく、10位までの商 品のうち9商品が粘着テープ商品ではなかった。上位50位までとしても粘着テープ製品 は一部であった。 図 22 粘着テープの販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 【シャンプー】 販売個数では20商品、販売容量では24商品、販売金額では50商品で寄与が 50%を 超えた。代表的な含有成分を選定するための商品個数は24商品(販売容量)である。

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35 図 23 シャンプーの販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア シャンプーは製品の用途や形状などで4カテゴリーに分けることができる。これによる と「共用」が94%、「男性」が 6%で、これらの寄与は約 100%であった。 【シャンプー(共用)】 図 24 シャンプー(共用)の販売シェア 内側の円グラフは上位50 商品のシェア、外側の円グラフは上位4商品のシェア 販売容量では20商品で寄与が 50%を超えた。代表的な含有成分を選定するための商品 個数は20商品(販売容量)である。 【洗濯用洗剤】 販売個数、販売容量では6商品、販売金額では7商品で寄与が 50%を超えた。代表的な 含有成分を選定するための商品個数は6商品(販売容量)である。

図  43  使用用途別の製品種別
図  46  用途別の塗料種別
図  62  計算結果の表示画面

参照

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■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 31年2月)』(P95~96)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 27年2月)』(P90~91)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 30年2月)』(P93~94)を参照する こと。

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