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3. 実施内容およびその結果

3.3. 室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成

3.3.1. 既存モデル

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ソフト European Union System for the Evaluation of Substances(EUSES)

http://ecb.jrc.it/Euses/

概要 吸入、経皮、経口の暴露評価が実施可能なスクリーニングモデル。室 内濃度推定は定常を仮定したボックスモデルが用いられている。また 評価には旧バージョンのConsExpoも使用可能である。

パラメータ 製品量、製品の使用頻度、化学物質の含有率、化学物質の物性や部屋 の容積、換気回数などの数値が必要である。データベース等は準備さ れていない。

放散速度推定 定常 インターフェイス

備考 吸着や気中分解には対応せず。

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ソフト ConsExpo 4.1

http://www.rivm.nl/en/healthanddisease/productsafety/ConsExpo.jsp 概要 RIVMによって開発された消費者製品を対象とするモデル。室内濃度の

推定だけでなく、吸入、経皮、経口経由の摂取量も推定可能である。

対象製品は消費者製品(非食物)である。室内濃度推定は非定常のボッ クスモデルが用いられている。

パラメータ 暴露経路の共通のパラメータとして、製品の使用頻度、ヒトの体重、製 品量または製品中化学物質含有率が必要となる。吸入暴露(すなわち室 内)の評価には暴露期間、部屋の容積、換気回数の情報を設定する必要 がある。追加的に揮発性有機化合物の吸入評価には、適用期間、放散面 積、物質移動速度や製品の平均分子量、またスプレーの吸入評価にはス プレー時間、部屋の高さ、放出速度、密度や粒子の分布等が必要である。

暴露シナリオのデータベースが搭載されており、シナリオの選択によっ て上記のパラメータの大部分のデフォルト値が設定される。

確率密度関数を設定することも可能であるが、デフォルト値は用意され ていない。

放散速度推定 瞬時拡散、定常、蒸発、スプレー インターフェイス

備考 吸着や気中分解には対応せず。パラメータの確率分布を考慮可能。

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ソフト Exposure and Fate Assessment Screening Tool(E-FAST) v2.0

http://www.epa.gov/opptintr/exposure/pubs/efastdl.htm

概要 米国の EPA によってスクリーニングを目的に開発されたモデル。大 気、水域に排出された化学物質による暴露、一般的なヒトへの吸入や 飲料水と魚の摂食による暴露を想定している。この中の一つのモジュ ールとして消費者製品の使用に伴う吸入・経皮暴露の評価が可能。室 内濃度推定は非定常のボックスモデルを用いている。

パラメータ 化学物質含有率、化学物質の蒸気圧や分子量が必要ある。他のパラメ ータは、シナリオの選択(洗浄剤、塗料、繊維保護、固形芳香剤、石 けん、廃油)により使用頻度、製品量、使用期間、換気回数、暴露期 間、体重などのデフォルト値が入力される。

放散速度推定 一次減衰、二重一次減衰、蒸発 インターフェイス

備考 使用時の生活行動と使用製品の状況などについて1時間ごとの入力が 可能である。

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ソフト Wall Paint Exposure Model(WPEM) v3.2

http://www.epa.gov/oppt/exposure/pubs/wpemdl.htm

概要 米国のEPAによって開発された塗料からの暴露を推定するモデルで、

ブラシ等を使用して塗られたペンキから消費者がどの程度暴露するか を推定する。室内濃度推定は非定常のボックスモデルを用いている。

パラメータ 住居の種類,塗布面積,換気回数,塗布表面形状,塗料量,塗布期間、

塗料の種類、化学物質の種類を選択が可能で、塗布期間以外はデフォ ルト値を搭載している。

放散速度推定 一次減衰モデル(パラメータ推定機能を含む)

インターフェイス

備考 吸着モデルの選択が可能。

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ソフト Multi-Chamber Concentration and Exposure Model(MCCEM) v1.2 http://www.epa.gov/oppt/exposure/pubs/mccemdl.htm

概要 米国のEPAによって開発された建て方別の化学物質の室内濃度の平均 値とピーク濃度を推定するモデルで吸入暴露評価に用いる。室内濃度 推定は非定常のボックスモデルを用いている。デフォルトでは家、ア パート、タウンハウスのみを推定可能であるが、ユーザーがデータを 準備することで他の室内にも適用可能である。

パラメータ 建物、解析時間、放散源の場所、放散開始時間、放散終了時間、放散 速度係数、吸着速度、生活行動、呼吸率を設定する必要があり、ユー ザーが入力を行う。建物に関してはデータベースを持ちデフォルト値 を入力できる。

放散速度推定 定常、一次減衰、二重一次減衰 インターフェイス

備考 複数発生源(最大4つ)、複数の部屋を設定可能。吸着モデルの選択が 可能。モンテカルロ法による放散速度と吸着係数の評価が可能。

以下に一覧としてまとめた。

87 表 35

既存の室内濃度推定ツールの一覧

ツール名 室内モデル 発生源 放散モデル 必要なデータ 適用性等22 EUSES

v2.1

完全混合

定常状態 製品 定常 製品使用量、製品中の物質重量比、部屋の容積、

日平均暴露発生回数、暴露時間

SHS:×

MCS:×

ConsExpo v4.1

完全混合

非定常状態 製品

瞬間 製品量、製品中の物質重量比、分子量、蒸気圧、

部屋の容積、換気回数、暴露時間

SHS:○

MCS:×

定常 製品量、製品中の物質重量比、放散時間、部屋 の容積、換気回数、暴露時間

SHS:○

MCS:×

揮発

使用量、製品中の物質重量比、分子量、蒸気圧、

使用時間、放散面積、放散時間、部屋の容積、

換気回数

SHS:○

MCS:×

スプレー

スプレー製品量、スプレー時間、不揮発性成分 比率、大気中浮遊比率、部屋の容積と高さ、換 気回数、暴露時間

SHS:○

MCS:×

E-FAST v2.0

完全混合 非定常状態

クリーナー

ラッテクス塗料 一次減衰、二重一次減衰

製品使用量、製品中の物質重量比、分子量、蒸 気圧、部屋の容積、換気回数、暴露頻度、暴露 時間、生活行動 等

SHS:○

MCS:×

WPEM v3.2

完全混合 非定常状態 (吸着モデル)

アルキド塗料

ラッテクス塗料 一次減衰

塗料中の物質重量比、塗装面、塗装回数、塗装 時間、分子量、蒸気圧、建物の種類と容積、塗 装空間、換気回数

SHS:○

MCS:×

MCCEM v1.2

最大4ゾーン 完全混合 非定常状態 (吸着モデル)

製品(複数) 定常、一次減衰、二重一 次減衰

放散量、初期放散量、製品量、減衰定数、吸着 面積、吸着速度、住居の種類、ゾーン容積,ゾ ーン間換気量、ゾーンごとの活動時間、呼吸率

SHS:○

MCS:△

22 SHSの場合、○:適用可能、×:適用不可、MCSの場合、○:適用可能、△:適用可能な場合がある、×:適用不可

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SHS への適用には室内および発生源の非定常モデルが必要である。加えて非定常時の精 度を高める上で、吸着の考慮が必要と思われる。またユーザーの使い勝手を考慮すると、

既存モデルでは十分ではない化学物質、製品、住環境のデータベースを搭載すべきと考え られた。非定常モデルおよび吸着モデルの有効性について次項で検討した。