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3. 実施内容およびその結果

3.3. 室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成

3.3.2. 室内濃度推定モデルと発生源モデルの非定常化

3.3.2.1. 定常モデルと非定常モデルの使用方法に関する考察

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SHS への適用には室内および発生源の非定常モデルが必要である。加えて非定常時の精 度を高める上で、吸着の考慮が必要と思われる。またユーザーの使い勝手を考慮すると、

既存モデルでは十分ではない化学物質、製品、住環境のデータベースを搭載すべきと考え られた。非定常モデルおよび吸着モデルの有効性について次項で検討した。

89 以下の3つのシナリオを検討した。

表 37 検討シナリオ 項目 シナリオ

雑誌の購入1 週刊誌に使用された印刷インキに含まれるトルエンの一部が雑誌表面で一部残存し、

消費者の雑誌購入および持ち帰りにより、トルエンが一般住宅に持ち込まれるとした シナリオを設定した。

雑誌:400頁/冊 購入:週に一度 破棄:購入日から4週後 雑誌の購入2 週刊誌に使用された印刷インキに含まれるトルエンの一部が雑誌表面で一部残存し、

消費者の雑誌購入および持ち帰りにより、トルエンが一般住宅に持ち込まれるとした シナリオを設定した。

雑誌:400頁/冊 購入:1~28冊/月 破棄:別表の確率分布

接着剤の使用 接着剤に含まれるトルエンの一部が雑誌表面で一部残存し、消費者の雑誌購入および 持ち帰りにより、トルエンが一般住宅に持ち込まれるとしたシナリオを設定した。

使用:1~12回/年 使用間隔:無作為

表 38 雑誌の破棄頻度に関するアンケート調査 破棄頻度 割合

週に一度 1.9%

2~3週に一度 5.3%

月に一度 18%

2~3ヶ月に一度 11.6%

6ヶ月に一度 7%

年に一度 4.6%

それ以上の間隔 3.5%

出典:(独)産業技術総合研究所と(独)製品評価技術基盤機構2010

【雑誌の購入1】

非定常モデルと定常モデルの結果を比較すると、非定常モデルの推定最大濃度は定常モ デルの推定濃度の0.65~1.5倍の範囲であった。

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図 48 雑誌購入シナリオ1による非定常モデルと定常モデルの濃度推定結果

【雑誌の購入2】

購入頻度別に非定常モデルと定常モデルを用いて推定した。破棄頻度として確率分布を 採用したことから10,000回の無作為抽出で破棄期間を設定した。以下の図は28 冊/月の 購入頻度における結果の一例である。

図 49 雑誌購入シナリオ2による非定常モデルと定常モデルの濃度推定結果の一例(28 冊/月)

以下の図に示したように購入頻度が低いと、非定常モデルの推定最大濃度は定常モデル の推定濃度の3.5倍となった。雑誌の購入頻度が低く、実際の暴露シナリオでは、定常モデ ルは1/2倍程度の過小評価となる可能性が高いと考えられた。

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図 50 雑誌購入シナリオ2による非定常モデルと定常モデルの推定値の比較

【接着剤の使用】

非定常モデルの推定最大濃度は室内環境指針値(260 μg/m3)を超える場合があり、また 使用頻度が低いと定常モデルの推定濃度の 300倍以上となった。実環境を想定した場合、

約100倍の差が認められる可能性があると推定された。

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図 51 接着剤使用シナリオによる非定常モデルと定常モデルの推定値の比較

以上のことから、日常的に製品を購入する「雑誌の購入2」シナリオでは非定常モデル の推定最大濃度は定常モデルの推定濃度の 2 倍となるがリスク評価結果には大きな影響を 及ぼさない一方で、使用頻度が低くかつ使用量が大きい「接着剤の使用」シナリオでは非 定常モデルの推定は定常モデルの推定の 100 倍となりリスク評価結果に重大な影響を及ぼ すことが示唆された。消費者製品の室内への持ち込み当初に代表される、ごく短時間の高 濃度暴露による影響(例えばSHS)の評価には非定常モデルが必要であると思われる。