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105 をはかり、本調査・開発事業の目標を達成した。

B)【塗料および接着剤の購入・使用に関する調査】

前項で調査した製品のうち塗料及び接着剤に着目し、消費者の購入に関する行動の情報、

それらの使用状況や生活行動パターンに係る情報を収集した。本調査事業では、回答の精 度向上のために、製品(塗料と接着剤)×調査項目(購入行動と使用状況)の4カテゴリ ーに分けて回答項目が比較的少ないアンケートを実施した。購入行動に関する調査は、塗 料・接着剤の購入頻度(普及率)、種類(化学物質含有量)、用途、製品形状、購入者の属 性、所有数などの20項目(以降に示した基礎項目を含む)について約 1,000 人のアンケ ートを実施した。使用状況に関する調査は、使用頻度(行為者率)、使用量、使用時間、換 気の有無、使用場所など28項目(以降に示した基礎項目を含む)について約 1,000 人の アンケート調査を実施した。また、各アンケート調査において、基礎項目、例えば住宅の 建て方、世帯主との関係、世帯での回答者の役割、日曜大工の経験などの基礎的な項目も 同時に取得した。これらの情報をもとに、製品の使用行動と一般的な属性(個人)との関 連性について検討を行い、データベースに追加することでデフォルト値設定の基礎データ とした。以上のように本調査・開発事業の目標を達成した。

(3)室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成

室内で一般消費者が化学物質暴露によって受ける様々な影響(SHS・MCS等)を評価し、

適切に管理することに資するため、非定常の室内空気質モデル、発生源モデルおよびイン ターフェイスなどを統合し、室内濃度の時間変化と世帯分布が再現できるよう、プロトタ イプモデルの開発を実施した。本調査・開発事業では、これまで開発を行ってきたiAIRの 改良を行うことで、本調査・開発事業の目標の達成を図った。改良のベースとなるiAIRは 世帯分布の推定機能、ユーザーインターフェイス、データベースを備えているが、濃度時 間変化の推定機能を持っていない。そこで、iAIRに濃度時間変化の推定機能を追加した。

1)【室内濃度推定モデルと発生源モデルの非定常化】

改良のベースとなる iAIR の室内濃度推定モデル(計算パラメータは床面積、換気回数、

吸脱着、室外濃度、気中分解、放散速度など)は定常ボックスモデルであることから、時 間変化を推定するために非定常状態を扱える室内濃度推定モデルを作成した。また、発生 源モデルは、iAIR の発生源モデルに瞬時拡散モデルを加え、さらに二重一次減衰モデルを 追加した。なお、複数製品を放散源として計算可能なモデルの開発が求められているが、

iAIRは最大約60,000の放散源から室内濃度を計算することが可能であり、プロトタイプモ

デルには iAIR の仕組みを適用した。以上によって、E-FAST、ConsExpo4.1 や MCCEM 以上の機能を持つ室内濃度推定モデル及び発生源モデルとし、本調査・開発事業の目標を 達成した。

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2)【室内環境の世帯分布を推定する統計モデルの作成】

室内濃度の世帯分布を推定可能な無償の室内暴露評価ツールは iAIR 以外に存在しない。

iAIRは確率分布を扱うことができ、地方自治体別、地域別などの家屋情報などから計算パ ラメータを作成することが可能な統計モデルである。プロトタイプモデルでは、iAIRの計 算エンジンを利用してモンテカルロ・シミュレーションによりパラメータの確率分布を再 現することを可能とし、本調査・開発事業の目標を達成した。

3)【インターフェイスとデータベースの作成】

ユーザーの利便性向上を目的として、iAIRでは、インターフェイスをはじめ、計算パラ メータの推定機能、製品などの項目に関してデフォルト値設定機能を持つ。iAIRの持つ化 学物質に関連する計算パラメータのうち吸着係数・一次減衰定数・粒子吸着係数について、

物理化学的性質(例えば蒸気圧など)から値を推定する機能を、本事業において開発のプ ロトタイプモデルにも搭載した。また、iAIR と同等の専門家でなくとも運用可能なユーザ ーインターフェイス、計算に必要な製品・住宅などのデータベースをプロトタイプモデル へ追加し、ユーザーの利便性を確保した。これに計算パラメータの入力画面および室内濃 度の時系列変化など非定常モデルの計算によって得られる結果の表示・出力機能を追加し、

本調査・開発事業の目標を達成した。

(4)今後の課題

今後、SHS等の評価のためのツール開発には、

・換気回数の測定および換気回数推定モデルの開発

・暴露係数(普及率、行為者率、使用回数、使用量)の収集のためのアンケート調査

・暴露評価に必要な対象空間の情報の推定モデルの開発

・製品からの化学物質放散速度に関する情報収集(試験を含む)

などが必要であると思われる。

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