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3. 実施内容およびその結果

3.3. 室内濃度推定モデルのプロトタイプモデルの作成

3.3.3. 室内環境の世帯分布を推定する統計モデルの作成

室内濃度の世帯分布を推定可能な無償の室内暴露評価ツールは iAIR 以外に存在しない。

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iAIRは確率分布を扱うことができ、地方自治体別、地域別などの家屋情報などから計算パ ラメータを作成することが可能な統計モデルである。プロトタイプモデルでは、iAIRの計 算エンジンを利用してモンテカルロ・シミュレーションによりパラメータの確率分布を再 現することを可能とし、本調査・開発事業の目標を達成した。

3.3.3.1. 推定対象

本事業では、室内濃度推定に重要な寄与を示す住宅の容積を推定対象とした。

3.3.3.2. 推定方法とその結果

開発のベースとしたiAIRは建物建て方、延べ床面積、居室割合、居室数、居室面積など の情報について、統計調査の結果から導出した経験分布をパラメータとしたモンテカル ロ・サンプリング手法によるマイクロシミュレーションモデルを搭載している((独)産業 技術総合研究所2012)。プロタイプモデルでは、iAIRのマイクロシミュレーションモデル を利用した。以下にその内容について述べる。

図 54 住環境のマイクロシミュレーションモデルの概略

・住宅の建て方

住宅の建て方とは、戸建、長屋建、共同住宅などの種別のことである。iAIRでは、総務 省統計局による「平成17年度国勢調査(以降、国勢調査)」(2006、2007、2008)の住宅 の建て方別世帯数をもとに各自治体別の戸建、長屋建、共同住宅の割合を算出し、乱数を 用いて住宅の建て方を判定している。以下の図はモデルによる判定結果と、もととなった 統計値の比較結果である。モデルの結果に問題がないことから本事業では同様の推定モデ ルを搭載した。

建て方 床面積 居室割合 居室面積

居室数

住居の属性

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図 55 住宅の建て方の自治体別割合の計算値と統計値の比較

・延べ床面積

住宅の延べ床面積のばらつきを表現するため、iAIRでは、国勢調査の住居の建て方別延 べ床面積の階級別世帯数に対して、正規分布、対数正規分布、ワイブル分布の3分布の適 合性を検討し、推定誤差の最も少ない分布形状および係数を決定し、延べ床面積を決定し ている。検証として、計算した延べ床面積の自治体別平均値と総務省統計局(2005)によ る平成15年住宅・土地統計調査(以降、住宅・土地統計調査)の延べ床面積の自治体別平 均値の比較を行ったところ、統計値に対して計算値は概ねファクター2 以内(1/2~2 倍)

であった。

住宅の建て方(総世帯に占める割合)

0%

20%

40%

60%

80%

100%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

統計値

iAIR計算値

戸建 長屋建 共同住宅

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図 56 延べ床面積の自治体別平均値の計算値と統計値の比較

上図に示した延べ床面積の自治体別平均値の検証では延べ床面積のばらつきを検証でき ないことから、全国の延べ床面積の階級別世帯数を算出し、その結果を、先述と同じ住宅・

土地統計調査の結果と比較した。この結果、計算値と統計値は概ね一致していると考えら れた。モデルの結果に問題がないことから本事業では同様の推定モデルを搭載した。

図 57 全国の延べ床面積の階級別世帯数の計算値と統計値の比較 住宅の床面積(m2/世帯)

0 50 100 150 200 250 300

0 50 100 150 200 250 300 統計値

iAIR計算値

戸建 長屋建 共同住宅

住宅の床面積(m2/世帯)

0 50 100 150 200 250 300

0 50 100 150 200 250 300 統計値

iAIR計算値

戸建 長屋建 共同住宅

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・居室面積

延べ床面積は、居住空間以外の室内環境、たとえばトイレ、バスルーム、キッチンなど の床面積を含む。ヒトの滞在時間が長い居住空間で化学物質への暴露が起こるとするなら ば居室空間の化学物質濃度が暴露評価に必要である。iAIRでは、住宅・土地統計調査の統 計情報に基づく経験分布関数から乱数によって居室の床面積に占める割合を決定している。

本事業では同様の推定モデルを搭載した。

・居室数

居室数の推定は、生活行動を考える上でも、室内濃度を算出するための床面積の推定の 上でも重要である。しかしながら居室数に関するデータが十分にあるとは言い難い。住宅・

土地統計調査の結果によると、延べ床面積の自治体別平均値と居室数の自治体別平均値の 間に正の相関関係が認められ、その関係は線形であった。iAIRでは住宅・土地統計調査の 統計情報から乱数によって値を決定した。以下の図に計算値と統計値を比較した結果を示 した。この結果、計算値は統計値のファクター2(1/2~2 倍)以内であった。モデルの結 果に問題がないことから本事業では同様の推定モデルを搭載した。

図 58 居室数の自治体別平均値の計算値と統計値の比較