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学位論文審査の要旨

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Academic year: 2021

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     博士(獣医学)大谷新太郎 学位論文題名

ウシにおける子宮内膜の組織学的変化と      受 胎 性 と の 関 係 に 関 す る 研 究

学位論文内容の要旨

第1章 未経産牛の発情周 期に伴う子宮内膜 の形態学的変化に関す る検討

  正常に発情を繰り返すウシの子宮腺細胞、間質細胞、内膜上皮細 胞および内膜機能層上層部における周期的変化を組織学的に検討し た。

  子宮腺細胞の核分裂像は、発情直前から増加し、発情期に最も多 くなった後、漸減し発情後5日目まで観察された。腺腔内分泌物は、

発情 後2日目から蓄積し 始め、4日目 から7日目ま で多量であった が徐々に減少し、11日目まで認められた。子宮腺細胞の核上空胞は、

発情後3日 目から7日 目までと、16、17日目に観察された。間質細 胞の核分裂像は、発情前日から増加し、発情期に極大値を示した後、

3日目には 見られなくなった 。その後、9日目に出現し、12日目ま での間は発情周期中で最も多かったが、13日目から急激に減少し、

15日目には観察されなくなった。問質細胞の水腫は、発情日におい て発情周期中で最も高度に認められた後、発情後1日目には減少し た。問質細胞の 偽脱落膜反応像は、発情後4日目から観察され、5 日目から6日目には、広範囲 の機能層において著しく増加し、8日 目まで認められた。内膜上皮直下の機能層での自血球浸潤は、発情 後7日目お よび8日目 においてのみ見られた。子宮出血は、発情日    

   

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と発情後1日目においてのみ観察された。内膜上皮細胞の核下空胞 は、5日目から6日目においてのみ認められた。

  以上の成績から、発情周期に伴って、子宮内膜を構成する細胞は 増殖像あるいは分泌像といった形態学的変化を示すことが明らかに された。

第2章胚の 着床と子宮内膜の形態学的変化

  発情から着床に向けての子宮内膜の形態学的変化をりピート・プ リーダー牛(リピート・ブリーダー群)と正常経産牛(対照群)と の間で比較検討した。

  対照群の発情後1日目および8日目における組織像は、正常牛に おける組織像(第1章)と一致した。これに対して、リピート・ブ リーダー群では、発情後1日目の、子宮腺において、腺細胞の核分 裂像は見られず、腺腔内分泌物と核上空胞が著明で明らかな分泌像 が観察された。問質細胞では、水腫が認められたが、核分裂像は見 られなかった。子宮出血は認められたが、自血球浸潤および内膜上 皮細胞の核下空胞は観察されなかった。また、発情後8日目には、

腺腔内分泌物が多く、腺細胞の核分裂像は見られなかった。問質細 胞 の核 分裂 像 およ び偽 脱 落膜 反応 像 は、 認め ら れな かっ た。

  以上の成績から、リピート・プリーダー群において、子宮腺細胞 および問質細胞の発育の、発情周期に同調しない例のあることが明 らかとなり、受胎における子宮内膜の適正な発育の重要性が示唆さ れた。

第3章発 崗司期に伴う子宮内膜のinsulin−likegroWthfactor一I (IGF、―I)およびepidermal growth factor(EGF)の局在にっいて   IG F‑IとEGFについて、正常牛で、子宮内膜における局在に発情 周期に伴う変動があるかどうかを免疫組織化学的に検討し、ついで、

リピート・プリーダー牛の子宮内膜における局在と比較検討した。

  正常牛では、発情周期を通して、子宮腺におけるIGF―I陽性細胞 は 少 ない のに 対 して 、内 膜 上皮 およ び問質 では多く観察され 、 IGFーIの局在していることが明らかとなった。IGF―I陽性細胞数は、

子宮腺では発情期に増加し、内膜上皮および問質においては発情期 および黄体中期に増加した。一方、リピート・ブリーダー牛におけ るIGFーI陽性細胞数を正常牛と比較すると、発情後1日目には子宮 腺および問質で少ない傾向があり、発情後8日目には内膜上皮で少 ない傾向があった。

  EGF陽性細胞は、正常牛では、発情周期を通して内膜上皮および

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子 宮 腺で 非 常に 少な い のに 対 して 、 問質 で は多 く観 察 され 、EGFの 局 在 して い るこ とが 明 らかとなっ た。内膜上皮 および子宮腺に おけ るEGF陽性 細 胞は 、発 情 期お よ び黄 体 後期 に増 加 した 。 一方、問 質 に おけるEGF陽性細胞 は黄体期に多く 、発情期には 減少した。なお、

問 質 にお け るEGF陽性 細 胞数 の 極大 値 を示 した 時 期は 、 子宮内膜 上 皮におけるIGF‑I陽性細胞数の極大値を示した時期と一致した。一.方、

リ ピ ー ト ・ プ リ ー ダ ー 牛 では 、 発情 後1日目 お よび8日 目の 内 膜上 皮 のEGF陽 性 細 胞 数 は 、 正 常 牛 に 比 べ て 多 い 傾 向 が あ っ た 。   以上 の成績から、 ウシ子宮内膜 におけるIGF−IおよびEGFは子宮腺 細 胞および問質細 胞の増殖に影響を及ぽしていることが示唆された。

ま た、リピート・ ブリーダー牛 において、正 常牛と比べるとIGF‑I陽 性 細 胞数 の 少な い傾 向 のあったこ とは、形態学 的にも核分裂像 のな い所見と合致し、IGF―I発現に何らかの障害のあることが考えられた。

第4章 子 宮 内 膜 不 全 牛 に お け るpolyvrnyトpyrrolidone iodine製 剤(PVP―I冫 子 宮 内 注 入 の 受 胎 率 に 及 ば す 影 響

  子宮 内 膜の 発 育に異 常の認められた りピート・プ リーダー牛の 子 宮 内 にPVPーIを注 入し、直 後に回帰する 発情周期にお いて、その子 宮 内 膜が ど のよ うに 変化するかを 組織学的に検 討した後、子宮 内膜 の 発 育に 異 常の ある ことの疑われ るウシに対し てPVPーIを投与し、

受胎 率が向上する かどうかを従来法であるPGF2投与と比較検討した。

  発情 後1日目 、 正常 な 無処 置 牛( 対 照群 )で は 子宮 腺細胞およ び 問 質 細 胞 の 核 分 裂 像 が 見 ら れ た の に 対 し て 、PVP一I子 宮 内 注 入

(PVP―I冫 群ではどちらの細胞においても核分裂像は観察されなかっ た 。 このPVP−I群 の組織像 は、子宮腺に 関しては、正 常牛の発情後 6日 目 か ら8日 目 に お け る組 織 像と 一 致し 、 問質 に関 し ては 、 発情 後1日 目 か ら3日 目 に お け る 組 織 像 と 一 致 し て い た 。 発 情 後8日目 に は 、両 群 とも に腺 腔内分泌物が 多く、子宮腺 細胞の核分裂像 は認 めら れなかった。 問質細胞の核分裂像は、両群ともわずかであった。

し か し、 偽 脱落 膜反 応像は、対照 群では見られ たのに、PVP−I群で は 認 めら れ なか った 。これらの結 果から、PVP−I群の 子宮腺の組織 像 は 、正 常 牛の 発情 後9日 目か ら10日 目に おけ る 組織 像と一致し 、 問 質 の組 織 像は 、正 常 牛の 発 情後8日 目か ら13日 目に おける組織 像 に類 似していた。

  薬剤 投 与後 初 回発情 での受胎率は、 人工授精が投 与後21日以内に 実 施 され た 場合 、両 群間の受胎率 に有意差はみ られなかったが (36 Vs25%丶pO.35) 、21日以降に人 工授精された場 合を含めるとPVPー I群 に お い てPGF2。 群 よ り も 高 い 傾 向 が 認 め ら れ た (46vs25%、

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Pく0.06)。受胎に要した授精回数は、PV P‑I群およびPGF2a群でそ れ ぞれ 、1.5土0.7回 および1.5土0.6回と ほば同 じで あった 。   以上の成績から、子宮内膜の周期的発育に異常のあるウシに対し て、PVP−Iを子宮内に注入すると、表層部の再生に伴って内膜組織 は形態学的に修復されることが示唆された。また、子宮内膜の周期 的発育に異常のあることが疑われるウシに対して、PVP一Iを子宮内 に 注入 す る と 、 受胎 率の向 上しう ること が明ら かと なった 。

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学位論文審査の要旨

主査  教授  金川弘司 副査  教授  板倉智敏 副査  教授  岩永敏彦

副査  助教授  奥田  潔(岡山大学)

学 位 論 文 題 名

ウシにおける子宮内膜の組織学的変化と      受 胎 性 と の 関 係 に 関 す る 研 究

  本 研 究 で は 、 ウ シ 子 宮 内 膜 の 変 化 と 受 胎 性 と の 関 係 を 組 織 学 的 に 解 析 する こ と を 目 的 と し て 、 ま ず 、 正 常 に 発 情 を 繰 り 返 す ウ シ の 子 宮 内 膜 を 組 織 学 的 に検 討 し た 。 検 討 項 目 は 、 子 宮 腺 細 胞 の 核 分 裂 像 ・ 核 上 空 胞 、 腺 腔 内 分 泌 物 、 問 質細 胞 の 核 分 裂 像 ・ 水 腫 ・ 偽 脱 落 膜 反 応 像 、 内 膜 上 皮 直 下 の 機 能 層 で の 自 血 球 浸 潤、 子 冨 出 血 お よ び 上 皮 細 胞 の 核 下 空 胞 で あ る 。 そ の 結 果 、 発 情 周 期 に 伴 っ て 、 子宮 内 膜 を 構 成 す る 細 胞 は 増 殖 像 あ る い 憾 分 泌 像 と い っ た 形 態 学 的 変 化 を 示 す こ とが 明 ら か に さ れ た 。 次 に 、 発 情 か ら 着 床 に 向 け て の 子 宮 内 膜 の 形 態 学 的 変 化 を り ピ ー ト ・ ブ リ ー ダ ー(RB)牛 と 正 常 牛 と の 間 で 比 較 検 討 し た と こ ろ 、RB牛 に お いて 、 子 宮 腺 細 胞 お よ び 問 質 細 胞 の 発 育 が 、 発 情 周 期 に 同 調 し な い 例 の あ る こ と が明 ら か と な っ た 。 そ こ で 、 発 情 周 期 に 伴 う 子 宮 内 膜 増 殖 の 機 序 を 明 ら か に す る 目的 で 、 正常 牛 お よ びRB牛 の 子 宮 内 膜 に お け るinsulinーlike growth factorーI(IGFI冫 と epidermal growth factor (EGF)の 局 在 を 免 疫 組 織 化 学 的 に 比 較 検 討 し た 。 そ の 結 果 、IGFIお よ びEGFは ウ シ 子 宮 内 膜 の 増 殖 に 影 響 を 及 ぼ し て い る こ と 、R13 にお い て 、IGFI発 現 に 何 ら か の 障 害 の あ る こ と が 分 か った 。 さ ら に 、 実 用 的な 子 宮内 膜 の 修 復 法 と し てRB牛 へ のpolyvinylpyrrolidone iodine (PVP」I冫製 剤子 宮 内 注 入 の 効 果 を 検 討 し た と こ ろ 、 内 膜 組 織 が 形 態 学 的 に 修 復 さ れ る こ と に伴 っ て 受 胎 率 の 向 上 す る こ と が 分 か っ た 。 こ れ ら の 実 験 結 果 よ り 、 ウ シ 子 宮 内 膜の 発 情 周 期 に 伴 う 形 態 学 的 変 化 お よ びRB牛 に お け る 内 膜 の 形 態 学 的 異 常 を 初 め て明 ら か に し 、 ま た 、 そ の 発 生 機 序 の 一 端 と し て 細 胞 増 殖 因 子 の 発 現 に 障 害 の あ るこ と を 明 ら か に し た 。 さ ら に 、 内 膜 を 修 復 す る こ と に よ り 、 よ り 高 い 受 胎 率 の 得ら れ る こと も 実 証 し た 。

  こ れ ら の 成 果 は 、 ウ シ 子 宮 疾 患 の 診 断 技 術 を 向 上 し 、 畜産 お よ び 胚 一 母 胎 関係 研

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究の発展に貢献するところが大きい。よって、審査員一同は、大谷新太郎氏が博 士 〔 獣 医 学 ) の 学 位 を 受 け る 資 格 を 有 す る も の と 認 め た 。

参照

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