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博 士 ( 環 境 科 学 ) 佐 藤 伸 学 位 論 文 題 名 Studies on Cadmium Transfer to Eggs from Hens Exposed to Cadmium

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Academic year: 2021

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(1)

    

博 士 ( 環 境 科 学 ) 佐 藤

  

伸 学 位 論 文 題 名

Studies on Cadmium Transfer to Eggs    from Hens Exposed to Cadmium

(カドミウム投与母鶏の卵へのカドミウム移行に関する研究)

学位論文内容の要旨

  カドミウムは、水銀や亜鉛と同じく、周期律表IIb族に属する遷移金属で、イタイイタ イ病の原因 物質として擬せられて以来、環境汚染物質として注目されて続けている。

  胎生動物の母体がカドミウムに曝露されると、その胎盤にカドミウムが蓄積し、母体か ら胎児への移行は阻止されることが知られている。たとえば、ヒトでは、胎児の肝臓のカ ドミウム濃度は低く、母親の肝臓の約1000分の1にあたるとぃわれている。また、ラット をはじめマウス、ウサギなどの妊娠中の母体にカドミウムを投与すると、それらの胎盤に カドミウムが蓄積し、胎児へのカドミウムの移行は認められなかったとぃう報告がなされ ている。一方、これら胎生の動物と比較して、鳥類などの卵生の動物では、カドミウムに 曝露された母体から卵ヘカドミウムの移行に関する報告は、ほとんどない。本研究の目的 は、カドミウムを投与した母鶏から卵ヘカドミウムが移行するか否かを明らかにすること である。

  方法を述べる。産卵期にあるニワトりに、異なる量のカドミウムを2日ごとに1〜6回腹 腔内投与し、最終投与の1日後あるいは、再度、産卵開始後に屠殺した。対照群として、

生理的食塩水を投与した。投与後、産まれた卵を集め、血液を採取し、屠殺して肝臓と卵 巣の卵胞を摘出した。卵胞は卵胞壁と卵胞卵黄に、また、産まれた卵は卵黄.と卵白に分け た。試料を湿式灰化し、そのカドミウム濃度を原子吸光法により定量した。卵胞壁および 肝臓のメタロチオネインは、ゲル濾過法および陰イオン交換法を用いて精製し、アミノ酸 組成と紫外部吸収スベクトルを調ベ、同定した。また、ニワトリ受精卵の卵黄にカドミウ ムを投与後、胚発生を孵化まで観察し、生存数を求め、カドミウムの胚発生・孵化への影 響を検討した。

  結果を以下に述べる。

  1)血液およぴ肝臓のカドミウム濃度

  母体が、どの程度カドミウム曝露を受けたかを調べるために、血液と標的臓器のひとつ である肝臓のカドミウム濃度を測定した。その結果、カドミウム投与量の増加に応じ、血 液および肝臓のカドミウム濃度は、増加した。肝臓のカドミウム量は、総投与量の40〜50

%を占めていた。このことから、カドミウムは母体のB干聴に多量蓄積し、さらに一部は血 液を介して母体内を循環していることが示された。

  2)卵胞の卵黄と卵胞壁のカドミウム濃度

(2)

  生殖器官のひとつである卵胞(卵胞壁と卵胞卵黄)では、卵黄物質は卵胞壁を介して蓄積 す るこ とが 知ら れて いる ので 、卵 胞壁 と卵胞卵黄にカドミウムが蓄積するかどうかを調べ た 。そ の結 果、 投与 量に 応じ て卵 胞壁 のカドミウム濃度は、肝臓中の濃度と同様に、増加 し てい るこ とが認められた。一方、巧p胞卵黄にもカドミウムは、少量蓄積している傾向が み られ 、そ の濃 度は 血液 より 低か った 。これらのことから、卵胞卵黄においてカドミウム 濃 度が 低い のは 、カ ドミ ウム に対 する 親和性が低いか、あるいは、卵胞壁は、カドミウム が卵胞卵黄へ透過しにくいバリアである可能性が示唆された。

  3)卵胞壁・肝臓のカドミウム結合成分

  卵胞 壁は 肝臓 に対 して カド ミウ ム濃 度比で約10%を占めたので、カドミウムが卵胞壁で ど のよ うな 生体 成分 と結 合し てい るか を調べた。卵胞壁の可溶性画分に全体の約70%のカ ド ミウ ムが 見い ださ れた ので 、こ れを 出発材料としてカドミウムと結合している生体成分 を 精製 し、 同定 した 。こ の成 分は 、低 分子量夕ンパク質であり、27モル%とぃう高いシス テ イン 含量 を有 して いた 。ま た、 次に 多いアミノ酸としてりジン、セリンが認められたこ と 、フ ェニ ルア ラニ ンな どの 芳香 族ア ミノ酸はほとんど含まれていないことが明らかにな っ た。 この 結合 成分 の吸 収ス ペク トル では 、中性 域のpH245〜255 nmの範囲にかけて肩 を もち 、こ れを 酸性 条件 下に する と、 その肩が明らかに消失していることが認められた。

こ の現 象は 、VasakとKagiの解 析に より 、カ ドミ ウム がシ ステ イン 残基のSH基を介して結 合 して いる こと を示 して いた 。こ れら の結果から、肝臓の場合と同様に、卵胞壁から得ら れたカドミウム結合成分は、メ夕口チオネイン(重金属結合低分子量タンパク質)であるこ とが明らかになった。  、

  4)カドミウム投与後の産卵の停止

  カド ミウ ムを 多量 投与 後、 産卵 の停 止が認められた。卵胞卵黄は卵として形成されず、

母体内でなんらかの形で、吸収さ,れているか、あるぃは、退行していることが考えられた。

  5)産まれた卵のカドミウム濃度

  一方 、産 まれ た卵 ヘカ ドミ ウム は移 行しているかどうかを検討した。その結果、卵黄の カ ド ミ ウ ム 濃度 は、0.04 ygg湿 重量以 下で あっ た。 卵白 では 検出 限界 以下 であ った 。   また 、産 卵停止したのち、再び産みはじめた卵の卵黄では、カドミウム濃度は、O.02〜 0.03ug/g湿重 量と ぃう 範囲 の値 であ った。このことは、母体から産まれた卵へのカドミ ウムの移行が制限されることを示していた。

  6)カドミウムの胚発生・孵化に対する影響

  産ま れた 卵に 検出 され たカ ドミ ウム は、胚発生・孵化にどういう影響を与えるかを評価 す るた めに 、産 まれ た卵 の卵 黄に 含ま れていたカドミウム量に相当するカドミウム量をニ ワトリ受精卵の卵黄に投与した。その生存数は、生理的食塩水投与群に対して、ほとんど変 ら なか った 。一 方、 これ より 多い 量を 投与した群では、孵化日数とともに、生存数は著し く 減少 した 。こ のこ とよ り、 産ま れた 卵に含まれたカドミウム量は、胚発生・孵化に影響 を与えなぃことが明らかになった。

  本研究をまとめると、胎生動物における胎児(仔)へのカドミウムの移行の制限と同様に、

卵 生動 物の 一種 、す なわ ちニ ワト りの 母体から卵へのカドミウムの移行が制限されるとぃ う 結論 を得 た。 カド ミウ ムが 、母 体の 肝臓にあるいは、卵胞の卵胞壁に蓄積することによ り 、卵 への 移行 は制 限さ れて いる 可能 性が考えられた。さらに、様々な機構が考えられる が 、肝 臓の 場合 と同 様に 、卵 胞壁 で見 いだされたメ夕口チオネインがカドミウムを捕捉す る こと によ り卵 胞卵 黄へ の移 行の 制限 を担っている可能性も考えられた。本結果から、こ れ らの 可能 性を 特定 する こと は、 今後 の課題として残されるが、ニワトりの母維から卵へ

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(3)

の カ ド ミ ウ ム の 移 行 が 制 限 さ れ る こ と を 明 確に し た点 に 本研 究 の特 色 があ る 。   過去、飼料中のカドミウムを摂取した産卵鶏の産卵率の低下、あるいは食卵中のカドミ ウム汚染の有無に関する研究がある。本研究では、新しい知見として、・カドミウム投与し た母鶏が産んだ卵のカドミウム濃度が低いこと、卵胞では、卵胞卵黄のカドミウム濃度は、

卵胞壁より低いこと、産まれた卵の卵黄に含まれていたカドミウム量は、胚発生・孵化に 影響を与えないこと、さらにカドミウムが蓄積した卵胞壁ではメタロチオネインが存在す ることを明らかにした点が挙げられる。

  本研究は、母から子(仔)への重金属の移行の機構の解明に貢献することが期待される。

(4)

学位論文審査の要旨 主査

  

教授

  

小 島

  

豊 副査 . 教授

  

齋 藤和 雄 副査   教授   保原喜志夫 副査   助教授   井上勝一 副査   助教授   神山昭男

学 位 論 文 題 名

Studies on Cadmium Transfer to Eggs    from Hens Exposed to Cadmium

( カド ミウ ム投 与母 鶏の卵へのカドミウム移行に関する研究)

  環境汚染 物質であるカドミウムが,胎生動物の母体に曝露されると,その胎盤にカドミ ウムが蓄 積し,母 体から胎児への移行が阻止されることが知られている。  たとえば,ヒ トでは, 胎児の肝 曦のカドミウム濃度は,母親の肝臓の濃度に比べ,非常に低いといわれ ている。  また,ラット,マウス,ウサギなどの妊娠中の母体にカドミウムを投与すると

,それら の胎盤に カドミウムが蓄積し,胎児へのカドミウムの移行は認められないという 報告がな されてい る。  これに対して,申請者は,鳥類などの卵生の母体から卵へのカド ミウムの 移行に関 する研究を行ってきた。  事実,卵へのカドミウムの移行およびそのメ カニズム に関する 研究は,ほとんどなされていなかった。  本論文では、卵生動物の母体 から卵ヘ カドミウ ムが移行するか否かを明らかにすることを目的として,産卵期にあるニ ワ ト り に 異 な る 量 の カ ド ミ ウ ム を 投 与 し , そ の 移 行 と 機 構 に 関 し て 述 べ た 。   申請者漣 、カド ミウム授 与後,産 まれた 卵を採取レ,最終授与の1日後あるいは,再度

,産卵開 始後の母 鶏を屠殺レたョ  血液,肝臓および卵巣の卵胞を摘出し,卵胞を卵胞壁 と卵胞卵 黄に,ま た,産まれた卵を卵黄と卵白に分け,湿式灰化後,カドミウム濃度を原 予吸光法により定量した。

  カドミウム投与量の増おロに応じ,母鶏の血液および肝臓のカドミウム濃度は増加した。

また 肝 臓 のカ ド ミ ウム 量 は ,総 授 与量の40〜50%を 占めて いた:  こ のこと は,カド ミウムは母体の肝貝蔵に多量蓄積し,さらに,その ‑‑^音¢iま血液を介して母体内を循環してい ることを示していた。  生殖器官のひとつである卵胞(卵胞壁と卵胞卵黄)で法,卵黄物質 は卵胞壁 を介レて 蓄積することが知られている、  由請著は,卵胞卵黄にカドミウムが蓄 積するか どうかを 検討した。  投与量に応じて卵胞壁のカドミウム濃度は,肝臓中の濃度

‑ 871

(5)

と 同 鎌 に , 増bciし て い る こ と が 認 め ち れ た 。   ぢ ,卵 胞卵 黄 にも カド ミウ ムは , 少量 蓄 積して いる傾向がみら才し,その濃 度fま血液.より低かった、 ,

  ; 欠 に , 卵 胞 壁 に カ ドミ ウ ムが 蓄積 して い たの で, 申請 者は , カド ミウ ム結 合生 体 成分 を ゲ ル 濾 過 , イ オ ン 交 換 ク口 マ トジ ゛ラ フィ ー によ り精 製し た。  この 成分 は, 低分 子 量蛋 自 質であ り,アミノ酸組成分析゜′) 結果から轟いシヌ゛署′i′ ンC諺を育していることが明ろかに な った 。  紫 外部 吸収 スベ ゥ 卜ル は, 中性 条件下にお |`て̲rl;3‑‑.255nmに肩を 示し,酸性条 件 下 で は , そ の 肩 は 消 失し た 。  これ らの こ とか ら, 申請 者は , 肝臓 の場 ふと 同様 に .ヰ ¢ 胞 壁で も ,カ ドミ ウム 結合 成 分は メタC亅 チオ ぇイ ン( 重 金属 結台 低分 子量 蛋 白質 )で ある こ とを明 らかにした。

  一 方 , カ ド ミ ウ ム に 多 量 曝 露 さ れ た 母 鶏 で は , 産 卵 の 停 止 が 認 め ら れ た。  卵 胞 卵黄 な 卵 と し て 形 成 さ れ ず , 母 体 内 で な ん ら か の 形 で , 吸 収 き れ て い る か , あ るい は選 行 して い る こと が 考え られ たョこれ に対して,産まォぇた事Fの 卵黄のカドミウム濃度は,0.n4p§,/g 湿 重 量 以 下 で あ っ た 。  卵 白 で は , 検 出 限 界 以 下 で あ っ た っ  ま た , 産 卵停 止し た のち , 再 び 産 み は じ め た 卵 の 卵 黄 で は , カ ド ミ ウ ム 濃 度 は,o.02O0:jpg/g湿重 量と い う範 聞 の 値 で あ っ た 。  こ れ ら の 事 実 は , 母 体 か ら 産 ま れた 卵 への カド ミウ ム の移 行ぬi, 制離 さ れ て い る こ と を 示 し て い る 。  ま た , カ ド ミ ウ ム を 受 精 卵 の 卵 黄 に 投 与 【た とこ ろ ,巌 ま れ た 卵 の 卵 黄 中 の カ ド ミ ウ ム 濃 度 で は , 胚 発 生 ・ 孵 化 に 影 響 を 与 え な い こと を証 明 した 。   以 上 の よ う に 申 請 者 は , 胎 生 動 物 に お け る 胎 児f仔 )へ のカ ド ミウ ムの 移行 の制 限 と同 様 に , 卵 生 動 物 の 一 種 , す な わ ち ニ ワ ト り の 母 体 か ら 卵 へ の カ ド ミ ウ ム の 移行 が制 限 され る こ と を 証 明 し た 。  過 去 , 飼 料 中 の カ ド ミ ウ ム を 摂 取 し た 産 卵 鶏 の 産 卵 率の 低下 , ある い は 食 卵 中 の カ ド ミ ウ ム 汚 染 の 有 無 に 関 す る 研 究 は あ っ た 。  こ れ に 対 し て, 本論 文 では 新 し い 知 見 と し て , カ ド ミ ウ ム 授 与 し た 母 鶏 が 産 ん だ 卵 の カ ド ミ ウ ム 濃 度 が低 いこ と ,卵 胞 で は 卵 胞 卵 黄 の カ ド ミ ウ ム 濃 度 は 卵 胞 壁 よ り 低 い こ と , 産 ま れ た 卵 の 卵 黄に 含ま れ てい た カ ド ミ ウ ム 量 で な 胚 発 生 ・ 孵 化 に 影 響 を 与 え な い こ と , さ ら に カ ド ミ ウ ムが 蓄礦 し た卯 胞 壁 でiまメ タロ チオ ネ ・イ ンが 存在 す るこ とを 明ら かに し た点 が攀 げら れる 。  本 研究 は, 母 か ら 子 ( 児 ・ 仔 ) へ の 重 金 属 の 移 行 の 機 構 の 解 明 に 貰 献 す る こ と が 期 待 さ 抑 , る 。   審 査 員 一 同 は , こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し , ま た 研 究 者 と し て 繊 実 か つ熱 心て あ り. 大 学院評 程における研鑞や取得葷位な ども併せて申請醤カく縛£f環境科′す)(・′)学位をうける のに充 分な資格を有するものと判定 した。

‑ 872 ‑

参照

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