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博 士 ( 理 学 ) 嶋 脇

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 嶋 脇    健      学位論文題名

Chemical Biology of proteoglycan biosynthetic pathway      (プロテオグリカン生合成機構に関する生物有機化学研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    プ ロテ オグリ カン(PG)とは、 コアタ ンパク 質と 呼ぱれ るタンパク質に1本以上のグリコサミノグリ カ ン(GAG)鎖 が 共有 結 合 し て いる 構 造 を も つ分 子 の 総 称 で ある 。GAG鎖 は ウ ロ ン 酸と ア ミ ノ 糖の2 糖 を繰り 返し単 位とす る特 徴的な 構造を 持ち、Xyl‑Gal―Gal‑GlcAという 共通4糖を介して、コアタン パ ク 質 中 のSer残 基 に 結 合 し て い る 。 ま たjこ の 共 通4糖 領 域 に 共 有 結合 す るGAG鎖 構 成 糖 の 違 い に基づ ぃて、 コンド ロイ チン硫 酸プロテオグリカン(CSPG)タイプと、ヘパラン硫酸ブロテオグリカン (HSPG)タ イ プ の ニ つ に 大 きく 分 類 さ れ る。 す な わ ち 、共 通4糖 領 域にGlcNAcがpl―4結 合 し た も の はCSPG、GalNAcがal−4結 合 し た も の はHSPGに 仕 分 け さ れf3。 ま た 、GAG鎖 は それ ら 基 本 的 糖 鎖 骨 格 に加 え て エ ピ マー 化 や 硫 酸 化な ど の 修 飾 に より 多 様 な 微 細構 造 を も ち 、こ の 特 異 なGAG 鎖 の構造 がプロ テオグ リカ ンの多 彩な機 能を担 うと考 えら れてい る。

    し か し 、 こ れら2タ イ プ のPGの 生 合 成分 岐 点 で あ る共 通 結 合4糖へ のへ キソサ ミン転 移メカ ニ ズ ム は 依 然不 明 の ま ま であ る 。 こ れ まで に 、 天 然から 単離さ れたPGの構造 をもと に、GAG鎖 生合成 の 仕分け 制御機 構につ いて 、以下 のニつ の仮説 が提唱 され ている 。

  1)「HSPGに は 、GAGに 直結 するコ アペ プチド 領域は 疎水性 アミノ 酸が 多く、 またそ の両側 もし く は 片側 に酸性 クラ スター ペブチH預 域が存 在する 」こ とがEskoら によ って報 告され ている 。こ のこと は 、HSPGタ イ ブ ヘの 糖 鎖 伸 長 を決 定 付 け る5番 目 の 旺 ーGlcNAc転 移 酵 素 が コ アペ プ チ ド を 認識 す る 部位を 有して いるこ とが 示唆さ れる。

2) 一 方 、「CSPGの 共 通 結 合4糖 領 域 のGalが 硫 酸 化 され て い る も のは 存 在 す る が、 そ の 領 域が 硫 酸 化さ れたHSPGは見っ かっ ていな い」こ とを菅 原らが 報告 してい る。こ のこと から 、共通 結合4糖上 の 硫 酸 基 の有 無 が こ の 仕分 け制御 機構に 深く関 与し ている と菅原 らは推 定して いる 。すな わち、 こ の 硫 酸 化 が5番 目 のa‑GlcNAc転 移 に先 行 し て い る とす れ ぱ 、a,‑GlcNAc転 移 酵素 が 硫 酸 基 によ っ て 阻 害 さ れ 、p―GalNAc転 移 酵 素 の み が こ の 共 通 結 合4糖 に 作 用 す る と 考 え ら れ る 。

本 研 究 で は 、 昔 原 ら の 生 合 成 仮 説 を 検 証 す る た め に 、 コ ア領 域 の 硫 酸 化さ れ う る 水 酸基 を フ ツ 素 化 し た コ ア 領 域 類 縁 体(PGイ ニ シ エ ー タ ー ) を 全 種 類 合 成 し 、CI‑IO―Kl細 胞 に取 り 込 ま せ 、細胞 が吐き 出した イニ シエー ターのCS/HSの組成 比を分 析した 。

  第 ー 章 で は プ ロ テ オ グ リ カ ン の 生 合 成 機 構 に っ い て 現 在 ま で に 得 ら れ て い る 知 見 を 述 べ る 。

  第 二章で は、 天然に 豊富に 存在す るラク 卜ー スを原 料とし 、1,6―anhydro‑[3−lactoseを鍵中間 体 と し た 新 規 プ 口 テ オ グ リ カ ニ ′ コ ア4塘 の合 成 法 に っ い て述 べ た 。 本 研究 で は 、 糖 鎖合 成 に     ―194−

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おい て 最も 困難 であ り 煩雑 をグ リコ シル化反応と保護 基のかけわけを回避するため 、天然2 糖を 鍵 中間 体と して 合 成し 、そ こか らプロテオグリカ ンコア4糖領域の効率的合成 法を開発 した 。 これ ら、合成コア構 造は細胞培養においてプロテ オグリカンイニシエーター となるこ とが知られており 、2,3,4糖ペプチドイニシエーターの伸張活性についても検討を行った。そ の結果、3。4糖ペ プチドより、2糖ペプチドイ ニシエーターの伸張活性が 最も高く、分子量で は な く 糖 鎖 構 造 が 、 細 胞膜 通 過、 糖転 移酵 素作 用 に影 響を 与え てい る こと を発 見し た 。   第 三 章で は、プロテオグ リカンの生合成仮説を検証す るため、フッ素化類縁体を デザイン した 理 由と その合成法を述 ぺる。また、これらフッ素化 イニシエーターを用いた細 胞培養実 験の結果(CS/HSの 生成比)を述べる。

まず 、 フッ 素化類縁体の合 成にっいては、電子求引基で あるフッ素原子を官能基と して有し た糖 ド ナー は低活性である ことが予備実験で分かってい たため、第二章で用いたシ リレン基 をアクセプター保 護基として用いることでこ の問題を解決した。

また 、 多段 階を有する5種類 の類縁体を合成するにあた り効率的合成を目指し、Gal(シリレ ン 保 護 ) ーXyを 鍵 中 間 体 と し て 設 計 し 、 合 成 効 率 の 向 上 に 成 功 し た 。 これ ら 、合 成イ ニシ エ ータ ーをCH0←K1細胞で培養し、 吐き出されたイニシエータ ーを分析 した と ころ 、2番目 のGdの6位を フッ 素化 し たも のが 顕著 にHSを 生J殳 し てい るニ とが わか った 。 フッ 素無 置換 コ ント ロー ル物 質がCSを多く生成 していたのとは対照的であり 、2番目 Galの6位 硫 酸 化 がCSmSの 仕 分 け に 大 き く 影 響 し て い る こ と が 示 唆 さ れ る 。 また こ の結 果は 、現 在 まで に合 成さ れた 人 口イ ニシ エー ター がHSをせいぜぃ50% しか合成 でき な かっ たの に対 し 、初 めてHSの みに 合 成を 制御 でき るイ ニシエーターを開発 できたこ     〆

とになる。

  第四章は本研究 の総括を、またこれからの 展望にっいて述べた。

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学 位 論 文 審 査 の 要 旨 主査   教授   西村紳一郎

副査   教授   坂入信夫(環境科学院)

副査   教授   出村   誠 副査   助教授   門出健次

     学位論文題名

Chemical Biology of proteoglycan biosynthetic pathway      (プロテオグリカン生合成機構に関する生物有機化学研究)

  プロ テオ グリ カン(PG)は 、共 通4糖領 域に 共有 結 合す るGAG鎖 構成 糖の 違い に 基づ ぃて 、コ ンドロイチン硫酸プロ テオグリカン(CSPG)タイプと、ヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)タイプ のニ っに 大 きく 分類 され る。 こ れら2タ イプ のPGの生合成分岐 点である共通結合4糖へのヘ キソ サ ミ ン 転 移 メ カ ニ ズ ム は 依 然 不 明 の ま ま で あ り 、 以 下 の ニ っ の 仮 説 が 提 唱 さ れ て い る 。 1)HSPGには、GAGに直 結するコアベプチド領域は疎水性アミノ酸が多く、またその両側もしくは片 側に酸性クラスターペ プチド領域が存在する

2) CSPGの 共通 結合4糖 領域 のGalが 硫酸 化さ れているものは存 在するが、その領域が硫酸 化さ れたHSPGは見っかって いなぃ

仮説1)はEskoらによっ て報告されている。このこ とは、HSPGタイプヘの糖鎖伸 長を決定付ける5 番目のa‑GlcNAc転移酵 素がコアペプチドを認識する 部位を有していることが示唆される。仮説2) は菅原らが報告してい る。このことから、共通結合4糖上の硫酸基の有無がこの仕分け制御機構に 深く関与していると菅 原らは推定している。

  本研 究で は、 菅原 ら の生 合成 仮説 を検 証 する ため 、コ ア 領域 の硫 酸化 され う る水 酸基 をフ ツ 素 化 し た コ ア 領 域 類 縁 体 (PGイ ニ シ エ ー タ ー ) を 合 成 し 、CHOIK1細 胞 に 取 り 込 ま せ 、 細 胞 が 吐 き 出 し た イ ニ シ エ ー タ ー 由 来 のCSmSの 組 成比 を 分析 する こと によ り 、コ ア領 域の 硫酸化とGAG生合成分岐 点の関係を明快に示すこと に成功した。

  第 一 章 で は プ ロ テ オ グ リ カ ン の 生 合 成 機 構 に つ いて 現 在ま でに 得ら れて い る知 見を 述べ る。

  第二章では、天然に 豊富に存在するラクトースを原料とし、1,6‐anhydro‐p_lactoseを鍵中間 体 と し た 新 規 プ ロ テ オ グ リ カ ンコ ア4糖 の 合成 法に つい て 述べ た。 これ ら、 合 成コ ア糖 ペプ チ ド構 造が 細胞 培養 に おい てプ ロテ オグ リ カン イニ シエ ー ター とな る報 告例 は 無か った が、

筆 者 は こ の 天 然 型 に 近 い 構 造 で も イ ニ シ エ ー タ ー と な る こ と を 証 明 し た 。   第三 章で は、 プロ テ オグ リカ ンの 生合 成 仮説 を検 証す る ため 、フ ッ素 化類 縁 体を デザ イン し た理 由と その 合成 法 を述 べた 。ま た、 こ れら フッ 素化 イ ニシ エー ター を用 い た細 胞培 養実 験の 結果 (CS/I・iSの生 成比 ) を述 べた 。具 体的には、フッ素 化類縁体の合成については 、電 子 求 引 基 で あ る フ ッ 素 原 子 を 官 能 基 と し て 有 し た 糖ド ナ ーは 低活 性で ある こ とが 予備 実験

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で分かっていたため、第二章で用いたシリレン基をアクセプター保護基として用いることで この問題を解決した。また、多段階を有する5種類の類縁体を合成するにあたり効率的合成 を目指し、Gal(シリレン保護)‑Xylを鍵中間体として設計し、合成効率の向上に成功した。

こ れら、合成イニシエーターをCHO‑K1細胞で培養し、吐き出されたイニシエーターを分析 し たところ 、2番 目のGalの6位をフッ 素化し たものが 顕著にHSを生成し ている ことがわ か った。フ ッ素無置 換コン トロール物質がCSを多く生成していたのとは対照的であり、2 番 目Galの6位硫 酸化がCS/HSの仕分けに大きく影響していることが示唆される。またこの 結 果は、現在までに合成された人工イニシエーターがHSをせいぜい50%しか合成できなか ったのに対し、初めてHSのみに合成を制御できるイニシエーターを開発できたことになる。

  第 四 章 は 本 研 究 の 総 括 を 、 ま た こ れ か ら の 展 望 に つ い て 述 べ た 。 す なわち、 著者は、 プロテ オグリカ ンの生 合成機構 につい て共通4糖領域 の硫酸 化の影 響 を有機合 成化学的 に証明 すること に成功 しており 、その手法は今後の生体物質の生合 成機構研究に大いに貢献するものである。

  よ って著者 は、北 海道大学 博士(理 学)の 学位を授 与される資格あるものと認める。

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