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日本内科学会雑誌第109巻第2号

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(1)

1.肺アスペルギルス症

 肺アスペルギルス症は,アスペルギルス属

(Aspergillus fumigatus,A. niger,A. terreus等)

を原因真菌とする呼吸器疾患で,侵襲性肺アス ペ ル ギ ル ス 症(invasive pulmonary aspergillo- sis:IPA), 慢 性 進 行 性 肺 ア ス ペ ル ギ ル ス 症

(chronic progressive pulmonary aspergillosis:

CPPA), 単 純 性 肺 ア ス ペ ル ギ ロ ー マ(simple aspergilloma)ならびにアレルギー性気管支肺ア ス ペ ル ギ ル ス 症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:ABPA)の病型に大別される1).な かでも,ABPAの病態は,アスペルギルス属に対 するアレルギー反応が中心であるが,他の病型 は感染症であり,宿主の基礎疾患により病像が 異なる.本項では,IPA及びCPPAに関する最新 の話題を概説する.

1)侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)

(1)‌‌侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)の‌

リスク因子

 IPAは急速に進行する感染症であるが,リスク 因子として,血液疾患等の好中球減少や免疫抑 制療法・ステロイド大量長期投与,臓器移植(特 に肺移植),肝不全,生物学的製剤ならびに慢性 閉 塞 性 肺 疾 患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)が知られている.アスペルギ ルスの感染防御の中心は好中球であり,好中球 減少はリスク因子の代表である.好中球減少の 程 度 及 び 減 少 期 間 を 同 時 に 表 す 指 標 と し て D-indexが知られているが,感染症発症までの累 積 のD-indexと し てcumulative D-index(c-D-in- dex)も提唱されている.c-D-indexは,経過中に D-indexをリアルタイムに評価することができ る.c-D-indexの最適カットオフ値を 5,500 と定

肺真菌症の臨床

掛屋‌弘

要 旨

 侵襲性肺アスペルギルス症は,好中球減少を伴う血液疾患患者や高用量ステロイド投与患者に発症することが 多いが,近年は,慢性閉塞性肺疾患に合併する例も注目され,それぞれのガイドラインが提唱されている.ま た,我が国では,肺非結核性抗酸菌症患者が増加しており,慢性肺アスペルギルス症の合併にも注意する必要が ある.両者が合併する場合には治療薬選択が難しく,予後も非常に不良である.肺クリプトコックス症の画像所 見は,免疫状態に応じて多彩な陰影を呈し,さまざまな呼吸器疾患の鑑別疾患として考慮する.

〔日内会誌 109:293~300,2020〕

Key words‌ 肺アスペルギルス症,肺クリプトコックス症

大阪市立大学大学院医学研究科臨床感染制御学

The Cutting-edge of Medicine;Management of pulmonary mycoses.

Hiroshi Kakeya:Department of Infection Control Science, Graduate School of Medicine, Osaka City University, Japan.

(2)

めると,肺感染症を発症するc-D-indexの感度及 び特異度は 87.7%,74.7%で,c-D-indexを評価 することでIPAの先制治療に結び付くことが示 唆されている2).また,血液悪性疾患における 糸状菌感染症の発症に関する研究では,19のリ

スク因子を多重ロジスティック回帰分析にて解 析し,重要な7つのリスク因子(表1)が規定さ れている.それらの複数のリスクを有する場合 には,60日以内に糸状菌感染症を発症する確率 が高く,発症確率を算出するノモグラムが提案 されている3)

(2)‌‌侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)の診断基準  血 液 疾 患 のIPAの 診 断 に は,EORTC/MSG

(European Organisation for Research and Treat- ment of Cancer/Mycoses Study Group)の診断基 準が広く用いられているが,ICU(intensive care unit)入室患者やCOPD患者に発症するIPAの診 断基準もそれぞれ提案されている4)(表2).診断 基準は,宿主因子(患者が真菌感染症を生じる 状態にあるか)や臨床的データ(真菌感染症を 表1 侵襲性肺アスペルギルス症の重要なリスク因子

以前の糸状菌感染症の既往 好中球<100/mm3,10日間 CMV再活性化もしくは発症 重症リンパ球減少(<50/mm3

高用量ステロイド(30日以内のPSL 0.5 mg/kg)

ハイリスク化学療法 コントロール不良の悪性疾患 CMV:cytomegalovirus

表2 IPA診断基準の比較

Bulpa診断基準 ICU診断基準 EORTC/MSG診断基準

宿主要因

ⅰ.肺機能(COPDのGOLDガ イドライン分類,ステー ジⅢ,Ⅳ)の患者

ⅱ.ステロイドの使用(使用 量や期間は問わない)

ⅰ.ICU入室時もしくは先行する好 中球減少(実数<500/mm3

ⅱ.細胞傷害性の治療を受けてい る血液疾患もしくは悪性腫瘍

ⅲ.ステロイド使用(PSL換算>20 mg/日)

ⅳ.先天的もしくは後天的な免疫 不全

ⅰ.真菌症の発症に関連する最近の好 中球減少の既往(<0.5×109/l,10 日間以上)

ⅱ.同種造血幹細胞移植(ASCT)

ⅲ.ステロイド使用(PSL換算0.3mg/

kg/日,3週以上)

ⅳ.90日以内のT細胞免疫不全に関す る治療の使用(シクロスポリン,

TNF-α阻害薬,特異抗体製剤,ヌ クレオシドアナログ)

ⅴ.先天的な重症免疫不全

臨床的データ

ⅰ.適切な抗菌薬等に無効な 最近の呼吸困難の増悪

ⅱ.胸部画像所見の増悪(3カ 月以内)

ⅰ.以下の1つ以上の兆候や症状を

①3日間以上の適切な抗菌薬投与有する に無効な発熱

②抗菌薬使用後,解熱48時間以降 の再発熱(他に明らかな発熱の 理由なし)

③胸膜炎性痛

④胸膜摩擦音

⑤呼吸困難

⑥喀血⑦呼吸障害の増悪

ⅱ.胸部X線もしくはCTによる異常 所見

CTで下記の3つの所見の1つを有する ことⅰ.halosign(±)の境界明瞭な濃い

ⅱ.aircrescentsign結節影

ⅲ.空洞

真菌学的検査

ⅰ.下気道検体からのAsper- gillusの 培 養 陽 性and/or

ⅱ.抗アスペルギルス血清抗鏡検陽性 体陽性(沈降抗体を含む)

ⅲ.血清GM抗原2回連続陽性

ⅰ.下気道検体からのAspergillus 培養陽性

ⅰ.下気道検体からのAspergillus培養 陽性and/or鏡検陽性

ⅱ.血清もしくは,BALのGM抗原陽性 ASCT:autologousstemcelltransplantation,TNF:tumornecrosisfactor,BAL:bronchoalveolarlavage

(3)

疑うような臨床所見があるか),真菌学的検査

(真菌感染症を示唆する検査所見があるか)か ら構成され,基礎疾患に応じた診断基準が示さ れている.

 EORTC/MSGの診断基準では,宿主因子とし て,好中球減少(<500/μl,10日間以上)やス テロイド(PSL(prednisolone)換算 0.3 mg/kg/

日,3週以上),同種造血幹細胞移植等が挙げら れる.その画像的特徴としては,halo signやair crescent sign,空洞影が知られている.一方,

Bulpaの診断基準に示されるCOPDに合併する IPAでは,肺機能低下やステロイドの使用が宿主 因子に挙げられる.COPDでは,GOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)

分類II~III期の患者に比較し,IV期の患者に発症 率が高く(p=0.032),アスペルギルス属の定 着例から多く発症することが知られている5). その画像所見では,halo signを呈する症例は限 られ(9.1%),浸潤影(63.3%)や結節影(5.4%)

が報告されており,血液疾患のIPAとは画像的特 徴が異なる4).診断には,下気道検体からのア スペルギルス属の検出や血清もしくは気管支洗 浄液中のガラクトマンナン(galactomannan:

GM)抗原検査等の真菌学的検査が重要である が,IPAは病勢が急速であるため,真菌の培養結 果を待たずに治療を開始することが重要であ る.COPDに合併するIPAの発症頻度は高くない

(0.36~1.0%)と考えられるが,その予後は非 常に不良である.

(3)‌‌侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)の‌

マネジメント

 各種ガイドラインは,IPAの治療として,第一 選択薬にVRCZ(voriconazole)(A-I),その代替 薬としてアムホテリシンBリポソーム製剤(lipo- somal amphotericin B:L-AMB)(A-II),第二選 択薬としてキャンディン系薬(カスポファンギ ン(caspofungin:CPFG)(B-II),ミカファンギ ン(micafungin:MCFG)(B-II))及びイトラコ ナゾール(itraconazole:ITCZ)(B-II)を推奨し

ている1)

 黄色ブドウ球菌やカンジダによる菌血症の診 断や治療に関する遵守すべきポイントとして,

バンドルが提唱されているが,IPA診療における 遵守ポイントがEQUALアスペルギルススコア 2018 として提唱されている.そのスコアには,

IPAの診断や治療,経過観察の遵守項目が提案さ れている(表 3)6)が,遵守項目には,全ての施 設で実施が難しい真菌の遺伝子検査や薬剤感受 性検査等も含まれている.近年,形態学的にア スペルギルス属を同定することには限界があ り,遺伝子検査の重要性が示唆されているが,

遺伝子検査を実施してA. fumigatusの類縁種・

隠蔽種のA. felisと同定し,薬剤感受性結果に応

じて,アゾール系薬から感受性を示すキャン ディン系薬を選択することで治療に成功した症 例が報告されている7).また,従来は欧米で分 離されていたマルチアゾール耐性アスペルギル ス属が,我が国でも報告されているが,最新の 疫学情報でも,京都・滋賀地区で分離されたA.

fumigatusの 12.7%がアゾール耐性で,多剤ア

ゾール耐性株も検出8)されており,今後の動向 が注目される.このように,IPAのさらなる診療 の質の向上には,正確な菌種同定や薬剤感受性 検査が重要で,実施できる診療体制の確立が求 められる.

2)慢性肺アスペルギルス症(CPA)

(1)‌‌慢性肺アスペルギルス症(CPA)の基礎疾患  慢性肺アスペルギルス症(chronic pulmonary aspergillosis:CPA)は,1 カ月以上の経過で咳 嗽や喀痰,発熱等を伴い,画像所見も緩徐に増 悪するアスペルギルス属による感染症である.

病理組織学的な特徴により,慢性壊死性肺アス ペ ル ギ ル ス 症(chronic necrotizing pulmonary aspergillosis:CNPA)と慢性空洞性肺アスペル ギルス症(chronic cavitary pulmonary aspergil- losis:CPPA)に分類する考えもあるが,臨床経 過やそのマネジメントに大差はなく,我が国で

(4)

はCPPA,欧米ではCPAと称される.CPAは,陳 旧性肺結核症や非結核性抗酸菌(nontubercu- lous mycobacteria:NTM)症,COPD,肺囊胞を 含む空洞性病変等の肺の基礎疾患を有する患者 に発症する.近年,我が国でもNTM症患者の増 加が報告され,NTM症と合併するCPAが注目さ れている.

 Takedaら の 報 告9)で は,NTM症 に 合 併 す る CPAのリスク因子の解析において,NTM症患者 の 11.0%(9/82) にCPAを 発 症 し た. ま た,

NTM症の病型では,結節・気管支拡張型より線 維空洞型(odds比 3.489,p=0.002)の方が,

また,ステロイド非使用例より使用例(odds比 2.745,p=0.041)の方がCPAを発症しやすかっ た.さらに,CPAの合併は生命予後に関与し,

NTM症と診断後 3 年の時点での死亡率は,CPA 非合併群が13.7%(10/73)であったのに対し,

CPA合併群で 55.6%(5/9)と有意に高かった

(p=0.009).

 NTM症の治療で使用されるリファンピシン

(rifampicin:RFP) と ア ゾ ー ル 系 薬(VRCZ,

ITCZ)の併用時には,RFPの代謝酵素誘導作用 により,アゾール系薬の血中濃度が低くなる可 能性があり,VRCZは併用禁忌,ITCZは併用注意 とされている.そのため,NTM症とCPA合併時 には治療薬選択が限られる.CPA合併群では,

抗真菌薬治療導入率が低かったが,薬物相互作 用のために治療を見送られた症例もあり,今後 の課題である.

(2)‌‌慢性肺アスペルギルス症(CPA)の画像所見  CPAの画像的特徴は,新たな空洞性陰影の出 現や空洞性陰影の拡大,胸膜肥厚の進行,空洞 壁の肥厚等の所見が挙げられるが,新たに近い 将来の喀血を示唆する画像所見「scab-like sign」

表3 侵襲性アスペルギルス症診療バンドル(EQUAL)

診断(:我が国では限られた施設のみ実施可能) 点数 10日以上の好中球減少もしくは同種造血幹細胞移植→糸状菌予防内服もしくは週2~3回のGM測定 3

72~96時間以上続く発熱→CT検査 3

胸部CTで浸潤影があれば気管支鏡検査を行いBAL液で下記検査

・GM・直接検鏡

・培養・真菌PCR

11 11

BAL液の培養でアスペルギルス陽性であれば

・菌種の同定

・薬剤感受性検査 1

1 治療抵抗性の症例では生検で病理組織学的検査

・銀染色・PAS染色

・菌糸を認めれば分子生物学的診断

11 1

治療(:我が国では未発売) 点数

・isavuconazoleもしくはボリコナゾール

アゾール予防内服後では,アムホテリシンBリポソーム製剤(L-AMB)もしくは,カスポファンギン 5

・ボリコナゾール使用の際にTDMをしていなければ減点 -1

フォローアップ 点数

・7日目にCTフォローアップ 2

・14日目にCTフォローアップ 3

・21日目か28日目にCTフォローアップ 2

BAL:bronchoalveolar lavage,PCR:polymerase chain reaction,PAS:periodic acid-Schiff,

TDM:therapeutic drug monitoring

(5)

(かさぶた様サイン)が報告されている(図1).

Satoら は,CPA患 者 の 120 症 例 の 計 829 のCT

(computed tomography)画像を評価し,本サイ ン を 見 出 し た.scab-like signを 有 す る 患 者 の 87.3%(48/55) にCT検 査 後 55 日 以 内(平 均 12.0 日)に喀血がみられたが,有さない患者に はみられなかった(0/684)(p<0.0001).喀血 におけるscab-like signの感度及び特異度は,そ れぞれ 97.9%,99.9%と高い.また,本サイン がみられた直後に手術が実施された症例の病理 組織学的検討では,同部位はフィブリン膿性塊 もしくは血痂で,まさに「かさぶた」が剝がれ る こ と に よ り 喀 血 し た も の と 考 え ら れ て い る10).本サインが認められる患者には,将来の 喀血の可能性が示唆され,症状出現時には早期 の来院を促すことが求められる.

(3)慢性肺アスペルギルス症(CPA)の治療  我が国のガイドラインでは,初期治療には VRCZ(A I)やMCFG(A I),CPFG(A II)によ る点滴治療が推奨されている.また,その維持 療法には,VRCZ(B II)やITCZ(C1III)の内服 薬が使用される1).一方,米国感染症学会(Infec- tious Diseases Society of America:IDSA)のガイ ドライン11)では,初期治療にもITCZとVRCZが,

高い推奨度SR(strong recommendation)と高い エビデンスレベルHQ(high quality)で推奨され

ている.我が国と海外のガイドラインとの推奨 度の相違は,保険制度の影響もあるものと推測 される.このように,IDSAにおけるITCZとVRCZ の推奨度は同程度であるが,我が国からCPAを 対象とした長期維持療法における両薬剤の予後 調査研究が報告されている.最終転帰は,VRCZ 群(n=59)とITCZ群(n=101)とも有意差は 認められなかったものの,点滴抗真菌薬への変 更(再入院)が必要であった症例は,VRCZ群

(14.0%)はITCZ群(29.3%)より有意に少な かった(p=0.02).また,効果不十分により他 剤へ変更した症例も,VRCZ群(8.0%)の方が ITCZ群(27.6%) よ り 有 意 に 低 か っ た(p<

0.001)12).本研究からは,経口薬による長期維 持療法においてVRCZがITCZより優位である可 能性が示唆されるものの,本研究ではITCZカプ セル製剤が多く使用され,十分に血中濃度を保 てなかった可能性もある.一方,近年使用され ているITCZ内用液は,カプセル製剤より血中濃 度が高くなることが知られている.

2.肺クリプトコックス症

 ク リ プ ト コ ッ ク ス 症 は,Cryptococcus属

(Cryptococcus neoformans,C. gattii)による感 染症である.主に肺病変や脳髄膜炎,皮膚病変 図1 慢性肺アスペルギルス症の代表的な画像所見(A~Cは筆者提供,Dは文献10より引用)

A:空洞周囲浸潤影 B:胸膜肥厚 C:真菌球+浸潤影 D:scab-like sign

(6)

等を発症する.

 C. neoformansは世界中に広く生息し,我が国

のクリプトコックス症の大半はC. neoformans による感染症である.一方,C. gattiiは熱帯から 亜熱帯地域を中心に生息するが,1999 年以降,

北米太平洋沿岸を中心としたアウトブレイクが 注目されている.また,我が国では海外旅行歴

がないC. gattiiによる感染例が報告されており,

今後の動向に注目する必要がある13,14). 1)クリプトコックス症の基礎疾患

 クリプトコックスの感染防御は,リンパ球や マクロファージを中心とした細胞性免疫であ る.そのため,細胞性免疫が障害されるHIV/

AIDS(human immunodeficiency virus/acquired immunodeficiency syndrome)や血液疾患,膠原 病,糖尿病等の基礎疾患や,ステロイド,生物 学的製剤ならびに抗がん薬等の医原性要因が発 症に関与するが,本症は健常者にも発症する点 が他の深在性真菌症とは異なる.

 肺クリプトコックス症の全国的な疫学データ は限られるものの,河野らの長崎大学病院及び その関連施設における非HIV感染患者(151 症 例)の後方視的解析では,44.4%(67/151)は 健常者であった.一方,基礎疾患としては,糖 尿病32.1%(27例)が最も多く,次いで血液疾 患(HTLV(human T-cell leukemia virus)-1 キャ リアを含む)22.6%(19例),膠原病22.6%(19 例),腎疾患 16.7%(14 例),悪性腫瘍 13.1%

(11 例),慢性肺疾患 13.1%(11 例)等であっ た.また,ステロイドの使用は全体の37%に認 められた.その報告では,髄液検査が実施され た肺クリプトコックス症の11.5%(14/122)に 脳髄膜炎を合併していた15).脳髄膜炎合併例で も,中枢神経症状に乏しい症例もあるため,肺 クリプトコックス症患者の髄液検査の要否を慎 重に検討する必要がある.

 Cryptococcus属が髄液や血液等の無菌検体か

ら検出される播種性クリプトコックス症は,

2014年9月に感染症法の5類全数把握疾患に規 定されたことによって,我が国の疫学が明らか になりつつある.2014~2015 年までに届け出 された 123 例の報告によれば,約 1 年間の患者 報告数は人口100万人あたり0.97人で,性別年 齢分布では男女比 1.6 で男性に多く,年齢中央 値は 74 歳であった.死亡例は 20 例認められ,

その年齢中央値が77歳であることから,高齢者 において罹患率・致死率が高かった.また,基 礎 疾 患 や 免 疫 抑 制 薬 の 使 用 者 が 85.4%

(105/123 例)であったが,18 例は明らかな基 礎疾患の記載はなく,健常者にも発症している ことが示唆された.一方,HIV感染例は6.5%(8 例)と限られており,我が国の播種性クリプト コックス症の疫学的特徴と考えられる16). 2)肺クリプトコックス症の画像所見

 肺クリプトコックス症は,免疫応答の違い で,結節影や空洞影,浸潤影,すりガラス影等 の多彩な陰影を呈する(図2).感染防御に重要 な免疫は細胞性免疫であるが,細胞性免疫が十 分保たれていれば,肉芽腫を形成して結節影を 呈する.肉芽腫は,時間の経過と共に,線維化 や肉芽腫病変自体の凝固壊死が中心部から進行 し,壊死組織の構造破綻により組織を排出する ことで,空洞影を呈すると考えられている.結 節影や空洞影は,肺癌や肺結核の鑑別が必要で ある.また,軽度の免疫不全状態では,市中肺 炎と鑑別される浸潤影を呈する.さらに,高度 な免疫不全状態では,小粒状影やすりガラス影 を呈する.また,それらの陰影の形成には,宿 主側の免疫応答だけではなく,菌側の要因も関 与すると考えられている.特に,一部のC. gattii は病原性が強く,宿主認識能からの回避機構が 発達している可能性が示唆されている17).  血清クリプトコックスグルクロノキシロマン ナン(glucuronoxylomannan:GXM)抗原検査 は, 本 症 の ス ク リ ー ニ ン グ に 有 用 で あ る.

Oshimaらの報告18)では,血清GXM抗原検査の感

(7)

度及び特異度は 73.9%,82.6%であったが,気 管支洗浄液中のGXM抗原検査の感度及び特異 度は 98.5%,97.8%とさらに高かった.また,

小さな陰影では,血清GXM抗原が陰性となる症 例があることが知られているが,径25 mm以下 でも,気管支洗浄液の方が血清よりGXMの検出 率が高く,気管支洗浄液を用いてGXMを測定す ることは早期診断に有用であることが示唆され ている.

3)肺クリプトコックス症の治療17)

 肺クリプトコックス症の治療は,脳髄膜炎の 合併の有無によって異なる.脳髄膜炎を合併し ない肺クリプトコックス症では(ホス)フルコ ナゾール((fos)fluconazole:(F-)FLCZ)が推 奨されるが,重要例や無効例ではVRCZもしくは L-AMBを選択する.一方,脳髄膜炎合併例では

L-AMB+5-FC(flucytosine)による治療導入(2 週以上且つ髄液培養陰性化まで),その後(F-)

FLCZによる地固め療法(8 週間),FLCZによる 維持療法(6~12 カ月)を行う.

おわりに

 肺真菌症の臨床に関して,肺アスペルギルス 症及び肺クリプトコックス症に関する近年の情 報を概説した.また,クリプトコックス症の最 新のガイドラインとして,「クリプトコックス症 の診断・治療ガイドライン 2019」(日本医真菌 学会,2019 年)17)が発刊されており,参照いた だきたい.

著者のCOI(conflicts of interest)開示:掛屋 弘;講演 料(アステラス製薬,MSD,大日本住友製薬,ファイ ザー)

図2 宿主免疫に応じて多彩な陰影を示す肺クリプトコックス症

孤立結節影 多発結節影

(+空洞影) 浸潤影 すりガラス陰影

(8)

文 献

1) 深在性真菌症のガイドライン作成委員会編:深在性真菌症の診断・治療ガイドライン2014.協和企画,東京,2014.

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参照

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