会 社 の 機 関 を め ぐ る 国 際 会 社 法 上 の 分 析
松 井 秀 征
一 行為 等に 対す る法 的規 律
ઃ 抵触 法の 観点 から の分 析
⑴ 一般 的枠 組み
⑵ いわ ゆる
﹁公 法﹂ 的規 定の 扱い
実質 法の 観点 から の分 析
⑴ 兼 任 禁 止
⑵ 社外 性要 件
⑶ 監査 役等 の子 会社 調査 権 二 行為 主体 の責 任に 対す る法 的規 律
ઃ 抵触 法の 観点 から の分 析
⑴ 会社 に対 する 責任
⑵ 第三 者に 対す る責 任
⑶ いわ ゆる
﹁公 法﹂ 的規 定の 扱い
実質 法の 観点 から の分 析
本稿 は、 いわ ゆる 国際 会社 法と 呼ば れる 領域 の
( )
うち
、会 社の 機関 をめ ぐる 法的 規律 一般 につ いて 検討 を加 える
。
1
その 検討 の対 象は
、抵 触法 上の 問題
、お よび 実質 法上 の問 題に 大別 され る。 とこ ろで
、﹁ 機関
﹂と いう 概念 それ 自体
、わ が国 実質 法で ある 会社 法の 思考 様式 に強 く規 定さ れた 概念 で
( )
ある
。
2
しか し、 国際 会社 法の 問題 を考 える 場合 にお いて は、 わが 国実 質法 の考 え方 から ひと まず 離れ て、 抵触 法上 の観 点 から これ を検 討す る必 要が ある
。そ こで 本稿 では
、わ が国 実質 法の 機関 概念 が想 定し てい る内 容を 価値 中立 的に 評 価し て、 抵触 法上 の観 点か ら次 の点 を検 討す る。 すな わち いか なる 主体 によ る、 いか なる 行為 等に つい て、 いか な る場 合に その 効果 が会 社に 帰属 する のか
、と いう 点で ある
。ま た、 行為 等の 効果 帰属 と関 連す る問 題と して
、当 該 行為 等に 基づ いて 会社 なり 第三 者な りに 損害 が生 じた 場合
︱︱ それ が最 終的 に会 社の 行為 等と して 評価 され るか 否 かは 別と して
︱︱ 誰が どの よう な責 任を 負う べき かを 検討 する
。こ れは
、一 定の 行為 主体 がな した 行為 等に よっ て 損害 を被 った 者が ある 場合 に、 当該 行為 主体 が負 うべ き責 任に つい て、 いか なる 法に 従う べき なの か、 とい う問 題 に帰 着す る。 以下
、本 稿で は、 会社 への 行為 等の 効果 帰属 に関 する 法的 規律
︵一
︶、 そし て行 為等 に基 づく 責任 に対 する 法的 規律 の問 題︵ 二︶ につ いて
、そ れぞ れ抵 触法 の観 点、 およ び実 質法 の観 点か らど のよ うに 考え るべ きか 分析 を行 う。 なお
、実 質法 の観 点か ら分 析を 行う 際に は、 原則 とし て、 日本 法の 適用 に際 して 国際 的な 問題 が生 ずる 場合 を 念頭 にお いて 論ず るこ とと した い。 また
、本 稿で 検討 の対 象と する
﹁会 社﹂ とは
、わ が国 の株 式会 社、 もし くは 他 国に おけ るそ れに 相応 する 団体 を指 す。 これ は、 わが 国の 会社 法二 条一 号が 定義 する
﹁会 社﹂ とは 異な るの で、 注 意さ れた い。
( ) 国際 会社 法の 意義 につ いて は、
﹁会 社の 渉外 的私 法関 係を 規律 する 抵触 法お よび その 実質 法を 合わ せて
﹂理 解す るの が適 当で ある
、と の指 1
摘が ある
︵落 合誠 一﹁ 国際 会社 法 総論
﹂商 事法 務一 七〇 六号 五頁
︵二
〇〇 四︶
︶。 ( ) わが 国で 機関 とい う概 念は
、会 社な る団 体内 部に おい て、 その 機関 なる 地位 にあ る者 の意 思決 定な り行 為な りが
︵以 下、 これ らを 併せ て
﹁ 2 行為 等﹂ とい う︶
、会 社の 行為 等と して 評価 され る、 とい う意 味合 いを 担っ てい る︵ 谷川 久・ 新版 注釈 会社 法︵ ︶ 一頁
︵一 九八 六︶
︶。
一 行為 等に 対す る法 的規 律
ઃ
抵触 法の 観点 から の分 析⑴
一般 的枠 組み 会社 内に おけ る誰 の、 どの よう な行 為等 を、 いか なる 場合 に会 社の それ とし て評 価す べき か。 この 問題 は、 抵触 法の 観点 から 見る と、 当該 問題 の性 質決 定の 問題 とし て考 えら( )
れる
。そ して 伝統 的に は、 いず れも 法人 とい う単 位
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法律 関係 に属 する
、つ まり 会社 従属 法に 従う もの とし て考 えら れて
( )
きた
。ま た、 その 際に 挙げ られ る理 由が
、会 社
4
の内 部組 織の 問題 はそ の法 人格 と密 接な 関連 を有 する から だ、 とい うの も一 致し た意 見で
( )
ある
。と はい え、 ここ に
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いう
﹁密 接な 関連
﹂の 意味 は必 ずし も自 明で はな い。 そこ で、 会社 内部 組織 の問 題を 会社 従属 法に 服せ しめ ると い う結 論が 導か れる のは なぜ なの か、
﹁密 接な 関連
﹂と いう あい まい な表 現に とど まら ない
、よ り明 確な 説明 を尽 く す試 みを して みた い。
① 行為 等の 主体 との 関係 まず
、行 為等 の主 体の 観点 から 考え る。 これ は、 会社 の﹁ 誰﹂ の行 為等 が、 会社 のそ れと して 評価 され るか とい う問 題で ある
。 かり に、 これ につ いて 法人 の単 位法 律関 係と は別 の単 位法 律関 係に 服す るも のと しよ う。 どの よう な例 でも よい が、 たと えば
﹁あ る主 体の 行為 が会 社の 行為 とし て評 価さ れる か否 かは
、行 為地 法に よる
﹂と いっ た規 律を 仮定 し
てみ る。 これ は、 ある 主体 によ って なさ れた 行為 等を 会社 のそ れと して 帰属 させ るか 否か につ いて
、会 社従 属法 以 外の 準拠 法に 従う べき 可能 性を 認め る。 しか しこ のよ うな 規律 は、 会社 従属 法が 想定 して いな い組 織に よっ て行 為 等を なす よう 指示 する 可能 性も 拓く こと に
( )
なる
。先 の規 律の 下で
、日 本で 設立 され た会 社が ある 取引 をド イツ 国内
6
で行 った 場合 を考 えて みよ う。 この 場合
、会 社従 属法 は日 本法 であ るの に対 し、 行為 等の 会社 への 帰属 を決 する 法 がド イツ 法と なる
。す ると
、場 合に よっ ては 共同 決定 制度 に基 づき
、労 働者 が選 任し た監 査役 の関 与す る監 査役 会 にお いて
、当 該取 引の 同意 可能 性を 検討 する こと も必 要と なり
( )
うる
︵ド イツ 株式 法一 一一 条四 項︶
。ひ いて は、 行為
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等の 会社 への 帰属 を決 する ため の法 的規 律が
、行 為等 のた びに 変わ りう ると いう こと も考 えら れる だろ う。 取引 A の際 には ニュ ーヨ ーク 州法
、取 引B の際 には ドイ ツ法
、と いっ た具 合で ある
。 むろ ん、 会社 従属 法と 会社 への 効果 帰属 を規 律す る法 とが 異な る場 合、 後者 の法 が想 定す る行 為主 体に つい て、 これ と等 価と 評価 しう る主 体を 前者 の法 に探 せば よい とい う解 釈も 成り 立た なく はな い。 しか し先 の例 で言 えば
、 ドイ ツ法 上義 務づ けら れる 労働 者選 任監 査役 の参 加し た監 査役 会と 等価 のも のを
、日 本法 上探 すこ とは 実際 上不 可 能で ある
。す ると 実質 法た る日 本法 の帰 結と して は、 一定 の意 思決 定等 につ いて 機関 決定 なし にな され るこ とに な り、 会社 の事 業活 動が 法的 瑕疵 を伴 って なさ れる こと にも つな がり かね ない
。 この よう な結 論が 導か れる のは
、行 為主 体の あり 方が
、法 人た る会 社の 構造 それ 自体 を決 定し てい るか らで あ る。 つま り、 ある 法域 にお いて 法人 たる 会社 を設 立す ると いう 行為 は、 とり もな おさ ずそ の地 の法 が規 定す る行 為 主体 のあ り方 を選 択す るこ とを 意味 する
。こ れを 拒絶 する こと は、 すな わち 設立 がで きな いこ とに ほか なら ない
。 した がっ て、 行為 等の 主体 に関 する 問題 は、 法人 の単 位法 律関 係、 つま り会 社従 属法 の規 律す べき 範囲 に含 まれ る もの とい うべ きで あろ う。 その 結果
、会 社に いか なる 行為 等の ため の主 体を 置く か、 その 主体 はい かな る構 成を と るか
、そ して その 主体 の構 成員 の資 格は どう ある べき かと いっ た問 題は
、会 社従 属法 に従 って 決せ られ るこ とに な
る。
② 行為 等の 手続
・内 容と の関 係 次に
、会 社内 の行 為主 体が
、そ の職 務遂 行と して 何ら かの 行為 等を なす 場合 を考 えて みる
。こ れは
、会 社の
﹁ど のよ うな 行為 等﹂ が、 会社 のそ れと して 評価 され るか とい う問 題で ある
。さ らに
、こ れを 行為 等の 手続 面と 内容 面 に分 けて 論じ る。 まず
、こ の行 為等 の手 続面 を考 える と、 行為 主体 の単 独の 行為 等と して なさ れる こと もあ れば
、合 議体 によ る意 思決 定を 前提 とし てな され るこ とも ある
。い ずれ の場 合で も、 行為 等の 手続 に関 する 法的 規律 は、 当該 主体 の存 在 を前 提と して はじ めて 意味 を持 つ。 また その 手続 は、 当該 主体 の行 為基 準と もな るこ とか ら、 常に 主体 それ 自体 と の関 係で
、画 一的 に決 せら れる べき もの であ る。 たと えば
、﹁ 行為 等の 手続 を規 律す る法 を会 社の 定款 で任 意に 指 定で きる
﹂と 仮定 して みよ う。 する と行 為等 の手 続に つい て、 日本 法を 会社 従属 法と する 委員 会設 置会 社が
︵会 三 二六 条二 項︶
、制 度化 され た委 員会 を持 たな い法 域を 定款 で指 定す るこ とも 観念 的に は可 能で
( )
ある
。し かし
、こ れ
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では 委員 会の 意思 決定 にか かる 手続 に関 する 法的 規律 が存 在せ ず、 結果 とし てそ の意 思決 定が 会社 にど うい う効 果 をも たら すの か確 定し ない
。 また
、行 為等 の内 容面 を考 える と、 これ は日 常的 な意 思決 定か ら極 めて 重要 な業 務執 行ま で多 種多 様で ある
。そ して 当該 行為 等の 内容 は、 とり もな おさ ず行 為主 体に かか る権 限や 義務 に依 存す るも ので ある
。こ れも
、先 の例 を
﹁行 為等 の内 容を 規律 する 法を 会社 の定 款で 任意 に指 定で きる
﹂と 変え てみ よう
。定 款で 会社 従属 法と 異な る法 域 が指 定さ れた 場合
、あ る行 為主 体に 関す る権 限や 義務 の規 定が 存し ない こと もあ りう るか ら、 その 場合 には いか な る行 為等 を会 社の それ とし て評 価し うる か判 断で きな く
( )
なる
。し たが って
、あ る行 為主 体の 行為 等を 規律 する 法
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も、 法人 の単 位法 律関 係に 含ま れる もの とし て、 原則 とし てそ の主 体を 規律 する 法と 同じ 法に 服さ せる こと が望 ま
しい 以 。 上の とお り、 行為 等の 手続
、お よび 内容 に関 する 法的 規律 は、 行為 主体 の存 在を 前提 とし ての み、 有効 に機 能 しう るも ので あり
、法 人の 単位 法律 関係
、つ まり 会社 従属 法に 含め るべ き問 題で ある
。す なわ ち、 会社 の行 為主 体 が有 する 権限
・義 務の 範囲
、お よび その 行使 は、 その 決定 の手 続の 面も 含め て、 会社 従属 法に 服す ると 考え るべ き こと にな る。
③ 行為 等の 会社 への 効果 帰属 最後 に、 行為 主体 が行 為等 を行 った 場合 に、 それ が有 する 効果 の検 討を 行う
。つ まり
、当 該行 為等 が﹁ いか なる 場合
﹂に 会社 のそ れと して 認め られ るか
、と いう 問題 であ る。 かり に、 行為 等に 関す る法 的規 律と 効果 に関 する それ を切 り離 した 場合
、ど のよ うな 結果 を招 くだ ろう か。 これ は、 本来
、そ の行 為等 を想 定し てい ない 法に よっ て、 その 効果 の判 断を 強い られ る可 能性 を生 じる
。こ のよ うな 例 は考 える のも ばか ばか しい が、 先の
②に 挙げ た例 でい えば
、日 本法 を従 属法 とす る委 員会 設置 会社 の意 思決 定の 効 果を 委員 会制 度を 持た ない 法で 判断 する とい う、 理解 し難 い状 態が 生じ る。 これ は、 効果 の発 生、 不発 生に つい て 判断 不能 な状 態が 生じ るこ とに 他な らず
、や はり 行為 等に 関す る法 的規 律と その 効果 に関 する 法的 規律 は同 じで あ るこ とが 求め ら
( )
れる
。も っと も、 会社 を代 表す る主 体が 対外 的取 引行 為を なし
、そ の効 果が 会社 外の 第三 者と の関
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係で 発生 する 場合 には
、取 引安 全と の関 係で 問題 が生
( )
じる
。
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以上 より
、行 為等 の効 果に 関す る法 的規 律も
、行 為主 体の 存在
、お よび その 行為 等の 存在 を前 提と して はじ めて 有効 に行 いう る。 した がっ て、 これ も法 人の 単位 法律 関係
、つ まり 会社 従属 法に 含ま れる とい うべ きで ある
。
④ ま と め 以上 の検 討よ り、 会社 内に おけ る誰 の、 どの よう な行 為等 を、 いか なる 場合 に会 社の それ と評 価す るか とい う問
題は
、い ずれ もそ れを 法人 の単 位法 律関 係に 属す る問 題と して 考え るべ きで ある
。さ もな いと
、適 切な 法的 規律 を 行え ない 場合 の生 じる こと が明 らか だか らで ある
。 以上 のよ うな 帰結 が導 かれ るの は、 以上 の一 連の 問題 につ いて
、次 のよ うな 因果 律が 存在 する こと によ るも ので ある
。あ る法 域で 会社 を設 立す る場 合、 その 実質 法の 定め る行 為主 体の あり 方は
、当 該会 社の あり 方を 決め るも の とし て、 その 受容 が求 めら れる
。そ して
、そ の行 為主 体の なす 行為 等は
、当 該行 為主 体の 存在 を前 提と する
。さ ら に、 その 行為 等の 効果 は、 やは りそ の行 為主 体、 およ び行 為等 の存 在を 前提 とし てい る。 この よう な﹁ 設立
︱︱ 行 為主 体︱
︱行 為等
︱︱ 効果 発生
﹂と いう 因果 律を 前提 とす る限 り、 解釈 論と して は、 会社 の行 為等 に関 する 規律 は、 法人 の単 位法 律関 係、 つま り会 社従 属法 に依 拠せ ざる を得 ない
。な ぜな ら、 会社 従属 法と いう パッ ケー ジに よ らず して 法的 規律 を行 うこ とは
、以 上の 各部 分に 整合 性を 欠い た法 的規 律を 及ぼ すこ とと なり
、そ の結 果と して
、 以上 の因 果律 が破 壊さ れて 適切 な法 的規 律が 行え ない こと を意 味す るか らで ある
。従 来の 議論 が説 く、 会社 内部 組 織の 問題 の法 人格 との
﹁密 接な 関連
﹂と は、 まさ に会 社内 部組 織の 行為 等に 以上 の意 味で の因 果律 が存 在す るこ と を意 味し てい る。 ただ し、 これ には 若干 の留 保も 必要 であ る。 第一 に、 以上 の因 果律 に従 って 会社 従属 法と いう パッ ケー ジを 適用 する のは
、あ くま でも 会社 運営 の仕 組み に適 切な 法的 規律 を行 う上 で必 要だ から であ る。 それ なら ば因 果律 が保 障 され
、会 社運 営に 対す る法 的規 律を 適切 に行 いう る限 り、 会社 内部 組織 の問 題に つい て、 会社 従属 法以 外の 法が 規 律す る選 択肢 を認 める こと も理 論上 はあ りえ ない 話で はな い。 この 考え 方に つい ては
、当 事者 に会 社従 属法 のパ ッ ケー ジか らの 離脱 を認 めう るか とい う問 題が
、別 途現 れる こと を指 摘し てお く。 第二 に、 甲国 の会 社法 のパ ッケ ー ジを 適用 され てい る会 社が
、乙 国で も活 動す る場 合に
、乙 国が 自ら の政 策的 観点 から 当該 パッ ケー ジに 介入 する と いう こと があ る。 この 場合 も、 会社 内部 組織 に関 する 問題 につ いて
、会 社従 属法 のパ ッケ ージ から の逸 脱が 生じ
、
やは り整 合性 を欠 いた 異な る法 的規 律が なさ れる 可能 性が 生じ うる
。こ れは
、い わゆ る﹁ 公法
﹂的 規定 の扱 いに 関 する 問題 であ り、 以下
、項 を改 めて 検討 を加 える
。
⑵
いわ ゆる﹁公 法﹂ 的規 定の 扱い
① 問題 の所 在︱
︱金 融商 品取 引法 の委 任状 勧誘 規制 を例 に︱
︱ わが 国の 金融 商品 取引 法に は、 会社 の行 為主 体に よる 行為 等を 規律 する 規定
、具 体的 には 行為 等の 手続 を規 律す る規 定が 存在 する
。議 決権 の代 理行 使の 勧誘 に関 する 規定
、つ まり 委任 状勧 誘に 関す る規 定が それ であ り︵ 金商 一 九四 条︶
、金 融商 品取 引所 に上 場し てい る会 社の 株主 総会 に際 し委 任状 勧誘 を行 おう とす る者 は、 委任 状用 紙と 参 考書 類を 交付 すべ きこ とが 求め られ る︵ 金融 商品 取引 法施 行令 三六 条の 二
( )
以下
。︶ この 委任 状勧 誘に 関す る規 定は
、
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金融 商品 取引 法に 規定 が置 かれ てい るこ とも あり
、準 拠法 選択 とは 別の 観点 から 法の 規定 の適 用関 係が 決ま ると 考 える こと も可 能で ある
。つ まり
、日 本法 を従 属法 とす る会 社が 委任 状勧 誘を 行っ た場 合で も、 なお 金融 商品 取引 法 の規 制に 服さ ずと もよ い場 合が ある か、 ある いは 外国 法を 従属 法と する 会社 が委 任状 勧誘 を行 った 場合 に、 わが 国 の金 融商 品取 引法 の規 制に 服す るべ き場 合が ある か、 とい うこ とで
( )
ある
。
13
以上 の問 題を より 一般 的に 論ず ると
、当 該規 定が いわ ゆる
﹁公 法﹂ 的規 定か 否か
、す なわ ち﹁ 法規 から のア プロ ーチ
﹂が 妥当 する か否 かと いう 問題 にほ かな ら
( )
ない
。当 該問 題を 検討 する に当 たっ ては
、個 別規 定が 実現 しよ うと
14
して いる 政策 目的 を基 礎に
、そ の目 的を 実現 する 手段
・方 法と して
、当 該規 定を 会社 従属 法に かか わら ず適 用す べ きこ とが 不可 欠か 否か
、と いう 点を 判断 する 必要 があ る。 なお
、こ の検 討に 際し て注 意を 要す るの は、 金融 商品 取 引法 等の よう に、 全体 とし て見 れば
﹁公 法﹂ 的な 行政 法規 であ って も、 その 個々 の条 文の 中に は、 伝統 的な 国際 私 法の アプ ロー チ、 つま り﹁ 法律 関係 から のア プロ
( )
ーチ
﹂に 委ね られ るべ きと 思し き民 事法 的な 規定 の含 まれ てい る
15
場合 も少 なく ない
、と いう 点で
( )
ある
。し たが って 以下 では
、金 融商 品取 引法 とい う全 体で 問題 を把 握す るの では な
16
く、 個別 の規 定で ある 同法 一九 四条 の趣 旨を 検討 する 必要 があ る。
② 規定 の趣 旨 委任 状勧 誘に 関す る金 融商 品取 引法 規定 の趣 旨は
、旧 証券 取引 法の 時代 から 必ず しも 一義 的に 理解 され てき たわ けで は
( )
ない
。一 つに は、 株主 に対 する 議案 の開 示を 主眼 とし
、実 質的 に会 社法 三一
〇条 や三 一一 条等 の規 定と 区別
17
すべ き質 的差 異は ない との 考え 方が ある
。こ の考 え方 によ れば
、ア メリ カの 連邦 証券 規制 を継 受し たと いう 歴史 的 経緯 ゆえ に金 融商 品取 引法 に規 定が 置か れて いる もの の、 実際 には 法規 から のア プロ ーチ を基 礎づ ける 強い 政策 目 的を 有す ると は考 えに くい
、と いう こと にな る。 つま り、 会社 従属 法と して 日本 法が 選択 され ては じめ て適 用に な る性 格の 規定 だと いう こと にな るだ
( )
ろう
。
18
これ に対 して
、委 任状 勧誘 に関 する 金融 商品 取引 法の 規定 は、 株主 総会 にお いて 自己 の思 うま まに 決議 を行 い、 もっ て株 価に 影響 を与 える こと を防 止す るこ とを 目的 とし てお り、 それ は金 融商 品取 引法 の目 的か ら導 かれ るの だ とす る考 え方 もあ りう る。 この 論者 は、 当該 規定 が、 金融 商品 取引 所上 場会 社の 大株 主に 対す る特 殊な 行政 調査 手 段を 定め たと 論ず る
( )
から
、む しろ 法規 から のア プロ ーチ に親 和的 な議 論と なる
。つ まり
、本 稿の 文脈 から すれ ば、
19
わが 国の 金融 商品 取引 所に 上場 する 会社 が委 任状 勧誘 を行 おう とす る限 り、 必ず 適用 され るべ き﹁ 公法
﹂的 規定 だ とい うこ とに なる
。 そこ で、 改め て金 融商 品取 引法 一九 四条 を見 ると
、﹁ 何人 も、 政令 で定 める とこ ろに 違反 して
、金 融商 品取 引所 に上 場さ れて いる 株式 の発 行会 社の 株式 につ き、 自己 又は 第三 者に 議決 権の 行使 を代 理さ せる こと を勧 誘し ては な らな い﹂ と規 定さ れて いる
。こ の条 文に いか なる 政策 目的 が存 する か。 そし て、 その 政策 目的 は法 規か らの アプ ロ ーチ を基 礎づ ける だけ の意 味を 有し てい るか
。こ の点 を考 える に当 たっ て、 私は
、当 該規 定の 文言 のう ち、 次の 二
点に 注意 すべ きで はな いか と考 えて いる
。第 一に
、こ の規 定の 名宛 人が
﹁何 人も
﹂と され てい る点
、そ して 第二 に、 この 規定 によ る規 律が
﹁金 融商 品取 引所 に上 場し てい る株 式の 発行 会社
﹂を 前提 とし てい る点 であ る。 以下
、 この 点を 順次 検討 する
。 まず 第一 に、 規定 の名 宛人 が﹁ 何人 も﹂ とさ れて いる 点で ある
。こ の規 定ぶ りか らは
、会 社が 委任 状勧 誘を 行う 場合 のみ なら ず、 株主
、あ るい は第 三者 がこ れを 行う 場合 も規 律の 対象 とし てい るこ とが わか る。 たし かに
、会 社 のみ が委 任状 勧誘 を行 うよ うな 例で あれ ば、 これ は実 際上
、会 社法 に定 めら れた 書面 投票 の場 合と 果た す機 能は 変 わら
( )
ない
。こ の場 合に は、 当該 規定 が会 社法 の規 定と 質的 な差 異が ない とい う先 の評 価も あり うる
。し かし
、た と
20
えば 取締 役選 任・ 解任 議案 にか かる 株主 提案 がな され
、こ れに 伴っ て委 任状 勧誘 が行 われ る場 合、 この 規定 の意 味 は格 段に 異な る。 なぜ なら
、こ の委 任状 勧誘 は、 当該 勧誘 を行 って いる 株主 と現 経営 陣と の間 で、 支配 権争 奪の 問 題が 生じ てい るこ とを 意味 する から であ る。 この 場面 にお ける 当該 規定 の意 味は
、金 融商 品取 引所 上場 会社 にお い て支 配権 争奪 が生 じて いる 場合 に、 適切 な開 示を 前提 とし て株 主に 議決 権を 行使 させ
、金 融商 品市 場を 通じ た会 社 支配 権移 転の 機能 を保 護し よう とす る点 にあ る。 そし て、 当該 機能 の保 護と いう 目的 を実 現す るに は、 わ﹅ が﹅ 国﹅ の﹅ 金﹅ 融﹅ 商﹅ 品﹅ 市﹅ 場﹅ が﹅ 用﹅ い﹅ ら﹅ れ﹅ る﹅ 限﹅ り﹅
、必 ず金 融商 品取 引法 一九 四条 を適 用す ると いう 必要 があ る。 第二 に、 改め て金 融商 品取 引法 一九 四条 を見 ると
、﹁ 金融 商品 取引 所に 上場 して いる 株式 の発 行会 社﹂ を前 提と して いる
。金 融商 品取 引法 上、
﹁金 融商 品取 引所
﹂と は、 同法
﹁第 八十 条第 一項 の規 定に より 内閣 総理 大臣 の免 許 を受 けて 金融 商品 市場 を開 設す る金 融商 品会 員制 法人 又は 株式 会社
﹂を 指す
︵金 融商 品取 引法 二条 一六 項︶
。こ れは
、 原則 とし て、 わが 国の 主権 が及 ぶ範 囲に おい て金 融商 品市 場を 開設 する 法人 に対 して
、規 制を 及ぼ すこ とを 念頭 に おい てい る。 した がっ て、 金融 商品 取引 所に 上場 して いる 株式 の発 行会 社に 対し て委 任状 勧誘 の規 制を 行う こと は、 やは りわ が国 の金 融商 品市 場の 有す る機 能を 保護 する とい う目 的︱
︱支 配権 移転 に伴 う市 場機 能の 保護
︱︱ が
存在 して いる とい うべ きで あろ う。 そし て、 この 目的 を実 現す るた めの 手段 とし ては
、金 融商 品取 引所 への 上場 と いう わ﹅ が﹅ 国﹅ の﹅ 金﹅ 融﹅ 商﹅ 品﹅ 市﹅ 場﹅ と﹅ の﹅ 関﹅ 連﹅ 性﹅ を手 がか りに
、委 任状 勧誘 に関 する 規制 を必 ず適 用す ると いう 方法 をと る必 要が 生
( )
じる
。
21
③ ま と め たし かに 金融 商品 取引 法一 九四 条の 規制 は、 実質 的に
﹁私 法﹂ 的性 格を 有す るよ うに も見 える
。そ れは
、純 粋に 会社 側か らの み勧 誘が 行わ れる よう な場 合に つい ては
、妥 当し うる 説明 であ
( )
ろう
。し かし 当該 規定 は、 同時 に、 会
22
社の 支配 権争 奪に 用い られ るこ とも 予定 して いる
。そ して 支配 権争 奪に 伴う 開示 は、 わが 国の 市場 機能 保護 とい う 目的 に直 ちに 結び つき うる
。こ の目 的を 実現 する ため には
、当 該規 定の 適用 を会 社従 属法 が何 であ るか とい うこ と に依 存す るこ とは でき
( )
ない
。し たが って
、わ が国 の金 融商 品取 引所 にそ の株 式が 上場 され てい る発 行会 社に つい て
23
は、 会社 従属 法が 何で あれ
、金 融商 品取 引法 一九 四条 は適 用さ れる とい うべ きで ある
。つ まり
、当 該規 定は
﹁公 法﹂ 的規 定で あっ て、 準拠 法選 択の 枠組 みに 従わ ない 性質 の規 定で ある
。 なお
、当 該規 定が 従属 法を 問わ ず適 用さ れう ると いう 視点 が必 ずし も明 確で はな かっ たた めか
、わ が国 の委 任状 勧誘 内閣 府令 は、 委任 状勧 誘の 際の 開示 事項 につ いて
、会 社従 属法 が日 本法 であ る場 合を 想定 した 規定 にな って
( )
いる
。そ の結 果、 会社 従属 法が 外国 法と なっ てい る場 合に は、 その まま では 対応 でき ない 規定 が多 い。 その 結果
、 問 24
題と なる 会社 の従 属法 上、 対応 可能 な範 囲で 対応 する とい う中 途半 端な 解決 にな る可 能性 はあ る。 立法 論と して は、 会社 従属 法に 対し て中 立的 な規 定と する か、 もし くは 会社 従属 法が 日本 法で はな い場 合を 想定 した 規定 を置 く 必要 があ る。
実質 法の 観点 から の分 析ここ から は、 実質 法で ある 当該 会社 従属 法の 解釈 上、 生じ うる 問題 を検 討す る。 主と して 検討 対象 とな るの は、 実質 法た る会 社従 属法 の定 める 要件 が、 当該 会社 限り で完 結せ ず、 他会 社と の関 係で 規定 され てい るよ うな 場合 で
( )
ある
。わ が国 の会 社法 を例 にと ると
、か ねて より 指摘 され てい るの が、 機関 の兼 任禁 止に 関す る問 題、 社外 役員 の 社 25
外性 要件 に関 する 問題
、そ して 監査 役等 の子 会社 調査 権に 関す る問 題で ある
。い ずれ も子 会社 との 関係 で問 題と なる もの であ るが
、わ が国 の会 社法 上、
﹁子 会社
﹂に は外 国会 社も 含む もの とさ れる こと から
︵会 二条 三号
、会 社法 施行 規則 三条
・二 条三 項二 号︶
、そ れぞ れに 難し い問 題が 存在 して いる
。
⑴
兼 任 禁 止① 問題 の所 在 わが 国の 会社 法に よれ ば、 監査 役設 置会 社の 場合
、監 査役 は、 子会 社の 取締 役、 支配 人、 ある いは 執行 役等 の地 位を 兼任 でき ない
︵会 三三 五条 二項
。︶ 委員 会設 置会 社に おい ても これ は同 様で あり
、監 査委 員会 を組 織す る取 締役 は、 子会 社の 執行 役や 業務 執行 取締 役等 の地 位を 兼任 でき ない
︵会 四〇
〇条 四項
︶。 この よう な兼 任禁 止の 趣旨 は、 監査 する 者と され る者 が同 一で ある 場合 には
、監 査の 実質 が伴 わな いと いう 点に
( )
ある
。
26
とこ ろで
、わ が国 会社 法の 兼任 規制 は、 同一 会社 内に おけ る地 位兼 任を 禁ず るの みな らず
、子 会社 にま でこ れを 及ぼ して いる
。子 会社 取締 役は
、実 際上
、親 会社 取締 役︱
︱親 会社 監査 役の 監督 対象 であ る︱
︱の 指示 を受 ける の みな らず
、親 会社 監査 役か ら子 会社 にお ける 事業 の報 告を 求め られ
、業 務や 財産 の調 査を 受け る︵ 子会 社調 査権
。 会三 八一 条三 項︶
。し たが って
、親 会社 監査 役と 子会 社取 締役 等と の兼 任を 認め ると
、監 査対 象か ら指 示、 監督 を受 ける のみ なら ず、 監査 され る対 象と 監査 する 主体 が一 致す るこ とに なる
。こ れで は、 監査 の公 正を 欠き
、権 限の 適 切な 行使 がで きな いだ
( )
ろう
。つ まり 当該 規定 は、 子会 社に おけ る業 務執 行権 限と 親会 社に おけ る監 査権 限と の相 克
27
に対 応す るこ とを 予定 して おり
、子 会社 にお ける 業務 執行 権限 の有 無が 一つ の判 断基 準に なる
。 以下 にお いて 検討 すべ き問 題は
、こ こに いう 子会 社の 従属 法が
、外 国法 であ った 場合 で
( )
ある
。な ぜな ら、 当該 子
28
会社 の準 拠す る外 国法 にお いて
、わ が国 の会 社法 がい う取 締役
、支 配人
、あ るい は執 行役 なる 地位 と全﹅ く﹅ の﹅ 等﹅ 価﹅ の﹅ 地﹅ 位﹅ が存 在す るこ とは あり えな いか らで ある
。も とよ り、 形式 的な 訳語 の対 応関 係の みで この 点の 対応 関係 を判 断 する こと は、 わが 国会 社法 の規 制趣 旨を 損な う可 能性 が高 く、 避け られ ねば なら
( )
ない
。
29
あく まで もわ が国 会社 法の 兼任 禁止 規定 は、 親会 社に おけ る監 査の 実効 性確 保の 観点 から 設け られ てい る。 した がっ て解 釈論 上は
、以 上の 趣旨 を実 現す べく
、親 会社 監査 役が
、わ が国 会社 法上 兼任 禁止 とな って いる 子会 社取 締 役等 と、 機﹅ 能﹅ 的﹅ に﹅ 見﹅ て﹅ 等﹅ 価﹅ の﹅ 地﹅ 位﹅ に就 いて いる か否 かを 個々 の子 会社 ごと に判 断す るこ とに なろ う。 以下 では
、監 査役 設置 会社 と委 員会 設置 会社 のそ れぞ れに つい て、 具体 的な 例を 挙げ なが ら考 察す る。
② 監査 役設 置会 社の 場合 繰り 返す よう に、 親会 社が 日本 法を 従属 法と する 監査 役設 置会 社の 場合
、当 該親 会社 の監 査役 は、 子会 社に おい て取 締役 その 他の 業務 執行 を担 当す べき 地位 に就 くこ とを 禁じ られ る︵ 会三 三五 条二 項︶
。 たと えば
、日 本法 を従 属法 とす る株 式会 社が 親会 社と なり
、ア メリ カの デラ ウェ ア州 法を 従属 法と する
c o r p o r a - t i o n
を子 会社 とす る場 合を 考え てみ よう。考 えう る兼 任の パタ ーン とし ては
、日 本親 会社 の監 査役 がデ ラウ ェア 州 子会 社に おけ る
o f f i c e r
の 地位 を兼 任す る場 合と、同 じく 日本 親会 社の 監査 役が デラ ウェ ア州 子会 社に おけ る
d i r e c t o r
の地 位を 兼任 する 場合 とが ある。こ のう ち、 前者 の
o f f i c e r
を 兼任 する 場合 を考 える と、 デラ ウェ ア州 法 上、 親会 社監 査役 が子 会社 の業 務執 行を 担当 する こと にな る。 この 子会 社o f f i c e r
は、親 会社 監査 役の 監視 対象 で あっ て親 会社 取締 役か ら直 接、 間接 に指 図を 受け うる
( )
こと
、加 えて 子会 社の 業務 執行 は親 会社 監査 役の 監査 対象 と
30
なり うる こと から する と、 兼任 は認 めら れる べき では ない
。
詳細 な検 討が 必要 なの は、 日本 親会 社の 監査 役が デラ ウェ ア州 子会 社に おけ る
d i r e c t o r
の地 位を 兼任 する 場合 であ る。 アメ リカ にお けるd i r e c t o r
は、 その 果た す実 質的 な役 割に おい て監 視︵ mo ni to r︶ が中 心で あり、そ の意 味に おい てわ が国 にお ける 監査 役と 変わ らな い側 面が
( )
ある
。し たが って
、会 社法 三三 五条 二項 にい う兼 任禁 止の 対
31
象と はな らな い、 とい う考 え方 はあ り
( )
うる
。た だし この 点を 検討 する 上で は、 なお 次の 二点 が障 害と なり うる
。第
32
一に
、子 会社
d i r e c t o r
を選 任す る権 限は、デ ラウ ェア 州法 上株 主総 会に ある が、 この 株主 とし ての 権限 を行 使す るの が親 会社 であ る点
。そ して 第二 に、 デラ ウェ ア州 法上
、子 会社 の
b o a r d o f d i r e c t o r s
が子 会社 経営 にか かる 究 極的 な権 限を 付与 され てい る点 であ る。 第一 の点 につ いて、具 体的 に何 が問 題に なる か。 親会 社が 子会 社株 主と して の権 限を 行使 する 場合
、こ れは 重要 な業 務執 行の 一環 とし て考 えら れる
。し たが って
、取 締役 会設 置会 社で あれ ば、 この 権限 行使 は親 会社 取締 役会 の 意思 決定 に基 づき
、取 締役 が行 うこ とに なる
︵会 三六 二条 四項
・三 六三 条
( )
一項
︶。 その 結果
、親 会社 監査 役と して は、
33
自ら 監視 すべ き対 象で ある 取締 役か ら子 会社
d i r e c t o r
とし ての 選任 を受 ける こと に( )
なる
。選 任権 の行 使と いう の
34
は、 株主 の取 締役 に対 する 監督 権限 の行 使と して 最も 重要 な内 容を なす から
、こ こで はま さし く監 視す る対 象か ら 監視 を受 ける こと にな る。 その 反面
、わ が国 の会 社法 上、 親会 社監 査役 と子 会社 監査 役を 兼任 する こと は可 能で あ る。 この 場合
、子 会社 監査 役の 地位 を選 任す るの は、 親会 社取 締役 によ る株 主と して の親 会社 権限 の行 使で ある
。 これ と同 様に 考え るの であ れば
、先 のデ ラウ ェア 州子 会社
d i r e c t o r
の兼 任は 問題 にす る必 要は ない かも しれ ない。 つま り会 社法 は、 親会 社取 締役 の親 会社 議決 権行 使に よる 子会 社役 員の 選任
、お よび それ に伴 う指 図や 監督 まで は 許容 して いる とも 考え られ る。 むろ ん、 親会 社監 査役 と子 会社 監査 役の 兼任 も好 まし くな い、 とい う議 論も あり う るが
、現 行法 の規 定を 前提 に解 釈論 を展 開す る限 り、 以上 の結 論に なる
。し たが って 第一 の点 は、 少な くと も現 行 法の 解釈 とし ては
、障 害に なら ない と考 える こと がで きそ うで ある
。
では
、第 二の 点は どう か。 デラ ウェ ア州 法上
、﹁ 本法 の規 定に より 設立 され た会 社の 業務
︵b us in es sa nd af fa ir s︶ につ いて は、 本法
、お よび 設立 定款 に特 に定 めの ない 限り
、
b o a r d o f d i r e c t o r s
に より、も しく はこ れの 指示 の下 で、 執行
︵m an ag e︶ され る﹂
。つ まり 子会 社経 営に かか る究 極的 権限 は、 子会 社の
b o a r d o f d i r e c t o r s
に存( )
する
。し
35
たが って
、親 会社 監査 役が 子会 社調 査権 を行 使す ると
︱︱ 後述 する よう に、 その 権限 行使 が外 国子 会社 の受 忍す る 限り にお いて 認め られ ると する と︱
︱そ の権 限行 使の 対象 には
b o a r d o f d i r e c t o r s
も含 まれ うる。こ のよ うな 構造 を見 ると
、結 局、 自ら の意 思決 定を 自ら が調 査対 象と する とい う、 会社 法三 三五 条二 項が 本来 禁圧 しよ うと して い た状 況を 招来 する ので はあ るま いか
。そ の意 味で は、 日本 親会 社の 監査 役が デラ ウェ ア州 子会 社の
d i r e c t o r
を兼 任す るこ とに つい ては、わ が国 会社 法の 解釈 とし て、 疑問 があ る。 以上 の検 討よ り、 親会 社が 監査 役設 置会 社で あっ て、 これ と外 国子 会社 との 間で 兼任 禁止 の問 題を 考え る場 合、 次の よう に結 論を 導く こと がで きる
。第 一に
、親 会社 監査 役の 監視 対象 であ る親 会社 取締 役が
、外 国子 会社 にお け る役 員の 選任 権を 行使 しう るこ とは
、わ が国 会社 法上
、以 上の 兼任 禁止 の問 題に は影 響を 与え ない
。し かし 第二 に、 親会 社監 査役 が子 会社 調査 権を 行使 した 場合 に、 自ら の意 思決 定、 もし くは 業務 執行 それ 自体 が自 らの 調査 対 象と すべ き場 合が 生じ るの であ れば
、そ れは 監視 する 者と 監視 され る者 が同 一に なる とい う、 わが 国の 会社 法が 禁 止す べき だと 考え てき た状 況が 生じ る。 この 第二 の場 合に
、兼 任禁 止に 触れ る場 合の 限界 があ ると いえ
( )
よう
。
36
③ 委員 会設 置会 社の 場合 親会 社が 日本 法を 従属 法と する 委員 会設 置会 社で ある 場合
、そ の監 査委 員会 に属 する 取締 役は
、子 会社 にお いて 業務 執行 を行 うべ き地 位に 就く こと は禁 じら れる が、 重要 な業 務執 行に 関す る意 思決 定に 関わ るこ とは 可能 であ る。 たと えば 親会 社監 査委 員会 に属 する 取締 役は
、委 員会 設置 会社 であ る子 会社 の業 務執 行取 締役 でな けれ ば、 当 該子 会社 の取 締役 の地 位を 兼任 する こと は可 能で ある
。そ の結 果、 当該 子会 社に おい て、 重要 な業 務執 行に 関す る
取締 役会 の意 思決 定に 参加 する こと もで きる
︵会 四〇
〇条 四項
・四 一六 条一 項・ 四項 参照
。︶ この よう な制 度設 計に なっ てい るこ とを 前提 に、 再び
、日 本法 を従 属法 とす る株 式会 社が 親会 社と なり
、ア メリ カの デラ ウェ ア州 法を 従属 法と する
c o r p o r a t i o n
を 子会 社と する 場合 を例 に考 えて みる。も とよ り、 親会 社監 査委 員会 に属 する 取締 役が
、子 会社
o f f i c e r
の 地位 を兼 任す るこ とは、監 査役 設置 会社 の場 合と 同様
、兼 任禁 止規 定に 触れ ると いう べき であ る。 これ に対 して
、親 会社 監査 委員 会に 属す る取 締役 が、 子会 社
d i r e c t o r
の 地位 を兼 任す ると いう 場合、監 査役 設 置会 社の 場合 とは 異な った 結論 とな る。 本稿 の先 の検 討に よれ ば、 監査 役設 置会 社の 場合 に兼 任禁 止が 妥当 する か 否か の限 界は
、子 会社 調査 権が 及ぶ べき 業務 執行 上の 意思 決定
、な いし 業務 執行 を行 いう る地 位に つい てい るか 否 かと いう 点に あっ た。 とこ ろが
、わ が国 の会 社法 は、 親会 社、 子会 社が とも に日 本法 上の 委員 会設 置会 社の 場合
、 親会 社監 査委 員会 に属 する 取締 役は
、子 会社 の取 締役 の地 位を 兼任 する こと が認 めら れ、 子会 社の 業務 執行 上の 意 思決 定を 行い うる
。こ れと て、 親会 社監 査委 員会 に属 する 取締 役が 子会 社調 査権 を行 使し た場 合、 当該 意思 決定 に は子 会社 調査 権が 及ぶ と考 えら れる はず であ る。 した がっ て、 監視 する 者と 監視 され る者 が同 一と なる こと を防 ぐ とい う観 点か らは
、非 常に 問題 があ るよ うに 思わ れる が、 少な くと もわ が国 会社 法は
、こ の点 の相 克を 許容 して い る。 そう であ るな らば
、親 会社 監査 委員 会に 属す る取 締役 が、 業務 執行 上の 意思 決定 に関 与す るに とど まる 子会 社
d i r e c t o r
の地 位に 就任 する こと は、 少な くと もわ が国 会社 法上 の解 釈と して は可 能で ある。 ただ し以 上の 議論 は、 わが 国の 現行 の会 社法 の解 釈と して
、そ﹅ う﹅ な﹅ ら﹅ ざ﹅ る﹅ を﹅ 得﹅ な﹅ い﹅ とい う類 のも のに 過ぎ ない
。 監査 役設 置会 社と 委員 会設 置会 社と の間 で、 子会 社役 員と の兼 任禁 止の 妥当 すべ き範 囲が 異な るこ とに つい て、 合 理的 な説 明は 困難 であ る。 これ は、 デラ ウェ ア州 法を 従属 法と する 子会 社の 例を 出す まで もな く、 日本 法を 従属 法 とす る子 会社 の場 合で も生 じう る法 的規 律の 矛盾 であ る。 立法 論と して は、 この よう なね じれ は好 まし い状 態で は
なく
、監 視す る者 と監 視さ れる 者の 一致 を回 避す るの であ れば
、委 員会 設置 会社 の場 合に
、親 会社 監査 委員 会に 属 する 取締 役に つい ては
、子 会社 取締 役と の兼 任を 禁じ るべ きだ ろう
。
④ 兼任 禁止 規定 に違 反し た場 合の 効果 実際 上、 兼任 禁止 規定 に触 れる よう な親 会社 役員 と子 会社 役員 との 兼任 に対 する 需要 は、 あま りな いと 言わ
( )
れる
。し たが って
、以 上に 検討 した 問題 が実 務的 に顕 在化 する こと は少 ない と思 われ るが
、以 下で は念 のた め、 兼 任 37
禁止 規定 に違 反す る地 位に ある 者が 行っ た監 査、 ある いは 業務 執行 の効 果が
、わ が国 会社 法の 解釈 とし てど のよ うに 理解 され るべ きか
、国 際会 社法 上の 観点 から 検討 する
。こ こで も、 これ まで の例 にな らっ て、 親会 社監 査役
、 ない し親 会社 監査 委員 会に 属す る取 締役
︵以 下、
﹁親 会社 監査 役等
﹂と いう
︶が
、デ ラウ ェア 州子 会社
o f f i c e r
、 ない しd i r e c t o r
︵ 以下、﹁ 子会 社o ff ic er 等﹂ とい う︶ を兼 任し
、兼 任禁 止規 定に 違反 する 場合 を考 える こと と
( )
する
。具 体
38
的に 兼任 禁止 が問 題と なり うる 場合 とし ては
、子 会社
o f f i c e r
等 が、 その 地位 にと どま った まま 親会 社監 査役 等に 就任 する 場合、お よび 親会 社監 査役 等が
、や はり その 地位 にと どま った まま 子会 社
o f f i c e r
等に 就任 する 場合 であ る。 そも そも 同様 の問 題が 純粋 な国 内事 案と して 現れ た場 合、 これ はど のよ うに 解釈 され てき たの だろ うか。ま ず、 子会 社の 業務 執行 を担 当す る者 が親 会社 監査 役等 に就 任す る場 合に つい ては
、最 高裁 の判 例が
、傍 論と して 次の よ うに 述べ て
( )
いる
。す なわ ち兼 任禁 止規 定は
、﹁ 監査 役の 欠格 事由 を定 めた もの では ない と解 すべ き﹂ であ り、 また
39
子会 社の 業務 執行 担当 者が 親会 社の 監査 役に 選任 され た場 合に は、 この 者が
﹁就 任を 承諾 した とき は、 監査 役と の 兼任 が禁 止さ れる 従前 の地 位を 辞任 した もの と解 すべ き﹂ であ る。 さら に、 かり に﹁ 監査 役就 任を 承諾 した 者が 事 実上 従前 の地 位を 辞さ なか った とし ても
、そ のこ とは
、監 査役 の任 務懈 怠に よる 責任
…… の原 因に なり うる のは 格 別﹂
、親 会社 監査 役選 任決 議自 体は 有効 であ る、 とい うの であ る。 この 論理 的帰 結と して は、 当該 監査 役が 行っ た
監査 も、 当然 に無 効と はな らな いと いう こと にな
( )
ろう
。こ れに 対し て、 親会 社監 査役 等の 地位 にあ る者 が、 子会 社
40
の業 務執 行担 当者 に就 任す る場 合に つい ては
、裁 判所 によ る判 断は なさ れて いな い。 ただ し、 わが 国の 従来 の議 論 にお いて は、 やは り親 会社 監査 役等 の地 位は 辞任 した もの と解 され
、そ の結 果、 その 後に 親会 社に おい て事 実上 監 査役 とし ての 職務 を遂 行し ても
、そ の監 査は 無効 であ ると 理解 され てき たよ うで
( )
ある
。
41
以上 のと おり
、わ が国 の従 来の 議論 は、 従前 の地 位を 辞任 する こと を条 件に 新し い地 位に 就任 する こと とし て、 兼任 禁止 規定 を解 釈し てき た。 これ は、 通常 の関 係者 の合 理的 意思 がこ のよ うな もの であ ると 考え られ るこ
( )
とや
、
42
新し く就 任し た地 位に おい て行 われ た行 為等 の法 的安 定性 を高 める こと にも なる から
、相 応の 合理 性あ る解 釈に も 思わ れる
。し かし
、こ の兼 任禁 止に 関す る問 題の 法解 釈は
、純 粋な 国内 事案 のそ れと して 考え ても
、以 上の まま 維 持す るこ とが 可能 かど うか 相当 に疑 問が 残る
。た とえ ば、 すで に先 の最 高裁 判例 との 関係 でも
、従 前の 地位 を辞 任 する とい う関 係者 の合 理的 意思 が推 認で きな いよ うな 場合 には
、そ の解 釈が 維持 でき ない こと は指 摘さ れて
( )
いる
。
43
しか も、 従前 の地 位を 辞任 する とい う解 釈は
、事 実上
、従 前の 地位 にと どま って 行わ れた 行為 等の 効力 をど うす べ きか とい う問 題を 生じ させ るか ら、 全体 とし てみ れば
、何 も法 的安 定性 を保 障す るこ とに はな らな い。 子会 社の 従属 法が 外国 法と なっ てい る場 合に は、 さら に指 摘す べき 問題 点が ある
。た とえ ば、 デラ ウェ ア州 子会 社の
o f f i c e r
等 が、 日本 法を 従属 法と する 親会 社の 監査 役等 に就 任し た場 合を 考え てみ る。 この 場合、先 のよ うな 従前 の子 会社
o f f i c e r
等 の地 位を 当然 に辞 任す ると いっ た解 釈は とり えな い。 なぜ なら、こ の子 会社 にお ける
o f f i - c e r
等 の地 位は 子会 社従 属法 によ って 決せ られ るべ き問 題だ から であ る。 つま り兼 任禁 止規 定の 解釈 に当 たっ て、 わが 国の 議論 が伝 統的 に行 って きた 従前 の地 位を 辞任 する とい う解 釈は、日 本法 を従 属法 とし てい ない 子会 社に ま でそ の射 程を 及ぼ そう とす ると
、困 難を 生じ させ るこ とに
( )
なる
。か りに 従前 の地 位を 辞任 する とい う解 釈を 前提
44
に、 親会 社監 査役 等の 地位 にあ る者 がな した 行為 等の 効果 に関 する 法的 規律 を考 える とす れば
、次 の二 つが あり う
るだ ろう
。第 一は
、デ ラウ ェア 州子 会社 にお ける
o f f i c e r
等 の地 位を 辞任 する とい う結 論が 導け ない 以上、親 会社 の監 査役 には 就任 でき ない
。か りに 監査 を行 った とし ても
、そ れは 監査 役の 地位 にな い者 によ る監 査と して 無効 で ある との 結論 であ る。 第二 は、 デラ ウェ ア州 子会 社に おけ る
o f f i c e r
等の 地位 は辞 任し てい ない とし ても、日﹅ 本﹅ 法﹅ 上﹅ は﹅ 辞﹅ 任﹅ し﹅ た﹅ も﹅ の﹅ と﹅ み﹅ な﹅ す﹅
。そ の後 の外 国子 会社 にお ける 業務 執行 は、 事実 上職 務を 遂行 した に過 ぎず
、親 会社 に おけ る監 査役 選任 は有 効で あり
、そ の監 査役 が行 った 監査 を当 然に 無効 とは しな いと する 結論 であ る。 この 二つ の うち どち らが 良い かと 問わ れれ ば、 会社 の行 為等 が事 後的 に効 力を 否定 され るこ との 法的 な不 安定 さか ら考 えて
、 わが 国の 会社 法の 解釈 とし ては
、第 二の 立場 の方 が好 まし い。 ただ し、 以上 の検 討が 提起 する 問題 は、 何よ りも 次の 点で あろ う。 まず
、従 来の 解釈 論が
、親 会社
、子 会社 とも 日本 法を 従属 法と する 場合 のみ を念 頭に おい てい た︱
︱か つて のわ が国 の議 論で はや むを 得な いこ とで ある
︱︱ と ころ
、国 際会 社法 の観 点か ら検 討す ると
、も はや その まま では 維持 でき ない とい うこ とで ある
。さ らに
、従 前の 地 位を 辞任 した もの と理 解す ると いう 従来 の解 釈論 は、 そも そも 純粋 な国 内問 題の 解釈 とし ても
、果 たし て会 社の 行 為等 を法 的に 安定 させ ると いう 観点 から は妥 当な もの かど うか
、問 い直 され るべ きだ とい うこ とで ある
。従 前の 解 釈論 に存 する 以上 の問 題点 を考 える と、 兼任 禁止 規定 に違 反し た場 合の 効果 は原 則と して 無効 とせ ず︵ した がっ て
﹁辞 任﹂ とい う解 釈を 必要 とし ない
︶、 解任 にお ける 正当 事由
、あ るい は任 務懈 怠に 基づ く損 害賠 償責 任と いっ た、 そ の他 のシ ステ ムで 対応 する こと とし た方 が好 まし いよ うに 思わ れる
。
⑵
社外 性要 件① 問題 の所 在 会社 法は
、社 外取 締役
、あ るい は社 外監 査役 の社 外性 要件 につ いて
、や はり 当該 会社 限り で完 結し ない 要件 を定