英 国 会 社 法 改 正 の 課 題
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(2) 論. 説︵星川︶. 三六︵二七六︶.. 株式所有の分散という言葉で表現される投資の大衆化現象は︑株主の企業経営に対する支配力を著しく減退せしめて︑. 会社支配権の帰趨に大きな影響を及ぼしてきている︒そして一九四八年法自体がいわゆる経営者支配の現実にのつと. つて株主の保護を意図するものであつたのに︑その後の株主層の変化や企業経営者としての取締役への権限集中ほ︑. 現在この面での配慮を一層進める必要を生ぜしめている︒すなわちこれを株主層の変化にみても︑一方では株主数の. 増大にみられる少額投資者︵の営巴一︑日お簿9︶の増加があり︑この現象は当該会社に対する直接投資の面でも︑また. 投資信託を通じての間接投資の面でも著しい︒しかも投資信託は投資者の議決権を信託の運営者に委ねさせるという. 方式をとるために︑この制度の発達によつて株主が会社の経営に関与しえないという傾向は︑最も極端な形をとつて. 現われてくる︒他方︑戦後の社会保障に対する要求から生み出された各種の年金基金︵速霧一自注巳︶は︑莫大な基. 金とこれを運用する大規模な保険会社を出現せしめており︑この種の機関投資者による株式への投資の増大も前者と. は別の意味で新たな課題を提供する︒株主層にみられるこのような変化は︑取締役の地位にも当然反映し︑取締役に. ついては経営に関する権限が確立されるとともに︑経営専門家としての義務や責任が一層強く要求されてきている︒. かくて一九五九年一二月に︑現在の経済社会における諸種の条件や慣行に照らして︑取締役の義務および株主の権. 利は如何にあるべきか︑また会社法に一般的に如何なる改正を加えることが必要か︑を勧告せしめるため︑商務省長. 官モードリングは︑ジェンキンス卿以下各界の著名人一三名を会社法改正委員会の委員に任命し︑ジェンキソス卿を. ︶等の関連法令を険討せしめることになつた︒. 委員長として︑現行会祉法のほか一九五八年の詐欺防止︵投資︶法︵筈①汐薯①暮一89浮窪α﹇冒ぎ簿巨窪旦︾&︑ 一九こハ年の商号双︒山記去へ苗Φ勾①ぴq一.什冠p賦︒潜︒協燭g.ぎΦ.︑2㊤日①︑︸︒.
(3) もつともイギリスには︑大体二〇年の間隔をもつて会社法を改正し︑その改正法とそれ以前の法律とを統合して総 ︵一︶ 括法︵8霧○涯豊9㊤9︶を制定する慣行が一九世紀末葉から行われ現在に及んでいるといわれる︒この度の改正も. 新たな状況の進展によつてその時期が早められたとはいえ︑従来よりの慣行に従うものとも考えられる︒そこで今次. の改正事業が如何なる範囲にまでわたるかを述べる前に︑この慣行が生じた経緯と現在につながる過去の改正の成果 を瞥見しておきたいと思う︒. さて︑イギリスにおける近代的会社立法の基礎は一八六二年の会社法によつてきづかれた︒フランシス・パーマー ︵二︶. の言葉をかりれば︑それは﹃共同企業のマグナ・カルタ﹄︵ヨお塁︒貴鼠986b震㊤江おΦ馨①も冴⑦︶ともいうべき. ものであつた︒この法律は一八五六年の冒一導望o畠9B壌ξ︾9および一八五六年より一八六二年までの間に ︵三︶. 制定された五つの法律を中心に︑その他若干の法律を統合したもので︑会社に関する最初の大総括法であり︑立法技. 術の点からも整理統合の方法からも傑作とされている︒しかし当時の急激に発展する経済社会を背景にしてはなお実. 験的な段階をいでなかったために︑その施行から次の主要法である一九〇八年の会社法が成立するまでに一八を下ら. ぬ個別的な修正法が︑経験と緊急の必要に応じてその都度成立せしめられたのである︒この相次ぐ改正によつて︑会. 社関係法規は非常に複雑となり︑これを運用する人々の間から整理統合を求める声が強くなつた︒そこで商務省長官. は練達の実務家を委員に任命して会社法の改正事業にあたらしめ︑この委員会は調査研究の成果を一九〇六年にとり. まとめて提出した︒これが委員長の名にちなんで官アーバーン報告書︵い○唇ゴ旨男︒窓きといわれるものである︒. 三七︵二七七︶. 議会はこの報告書に示された勧告を採択して一九〇七年の会社法を制定したが︑同法はそれまでの関係法規とともに 英国会社法改正の課題.
(4) 論. 説.︵星川︶. 三八︵二七八︶. 第二の総括法である一九〇入年の会社法︵9糞饗鼠霧﹇9霧○包暮一〇三︾&に統合された︒ ︵四︶ ここにおいてこの方式が爾後の会社法の改正に関するパターンとなつたのである︒すなわち会社法の改正が望まれ. る場合には︑商務省長官の任命する委員をもつて構成する委員会にょつて調査・報告がなされ︑これに基いて議会は. 旧法の改正をも含めて新しい会社法に適当と考えられる委員会の勧告を採択し︑翌年に旧法および新法が一つの法律. に総括されて︑それ以前のすべての制定法を廃止するという方式である︒そしてこれがきわめて高く評価されたのは︑. イギリスのような不文法国において︑法律実務家に法律の検出を容易ならしめるという多大の利便を供したからであ ろう︒. ︵五︶ 一九〇八年法の顕著な特色は私会社︵層貯馨①8旨℃き繁︶制度の採用であつたといえる︒しかもこの会社形態に公. 募会社に比して多くの特典︑就中経理の公開免除という特典漆与えられたことから︑同法の施行後会社企業の中小企. 業分野への浸透は目覚ましく︑小規模な会社の設立が飛躍的に増大したので︑一九一三年に若干の必要な修正が加え. られたが︑その後もこうした会社の詐欺的な設立や経営失敗の事実が少なからずみとめられたために︑一九一八年に. レンバリー委員会︵ミ円窪嘗曙9導巨ヰ8︶が設置されてその対策を検討した︒しかしその勧告は実を結ばず︑次の. グリーン委員会︵98需9目巨ヰ︒①︶にいたつて前者よりも遙かに広範囲にわたる勧告を一九二六年に行い︑これ. をうけて改正法が一九二八年に制定され︑これは先例に倣つて一九二九年の会社総括法に統合された︒. 一九二九年法が会社法の近代化に寄与したところは大きい︒その注目すべき改正としては︑持株会︐社︵ぎ窪お. 8目短薯︶と従属会社︵鍔富§㊤還8目彊身︶という会社グループ悶に存在する特殊関係を認識し︑持株会社の貸借.
(5) 対照表に︑その従属会社の損益が持株会社の計算書類において如何に処理されたかを示す事項を追加せしめたことで. あり︑他は償還優先株式を承認したことである︒なお会社の計算について︑ことに貸借対照表の形式と内容を法定し︑. また各種の株式がある場合に︑ある種の株式の少なくとも一五パーセントにあたる株主は︑その権利を害する決議に. 対して裁判所に救済を請求しうる旨規定して少数株主の保護をはかり︑加えて取締役に対する貸付および報酬若しく. はその利益の開示を要求し︑会計監査役の権限を強化して︑総会に出席することを可能ならしめるとともに︑会社の. 役員およびその組合員の会計監査役への被選資格を排除して独立性を強化し︑また取締役および会計監査役の法定責. 任を軽減するとりきめは如何なるものも無効とした︒このほか特別決議を成立せしめる手続の簡易化や解散に関する 修正規定等があつた︒. しかし綜合計算書や私会社が公募会社の従属会社として利用されることの弊害︑あるいは株式取引に関する不正等. 幾多の問題が未解決のままに残されていた︒そこで一九三六年にアンダースン委員会︵︾巳震ω99ヨ邑ヰ8︶が設. 置され︑投資信託類似の制度について報告を行い︑さらに一九三七年のボドキン委員会︵閃o舞ぎOO目巨ヰ8﹀は登. 記会社以外の会社にも及ぶ証券取引の問題を検討し︑この両委員会の勧告は一九三九年の詐欺防止︵投資︶法に成文. 化されて︑株式取引所以外での職業的な証券取引に許可要件を課すことになつた︒また第二次大戦中政府は防衛規制. により資本の調達に制限を課したが︑これらは現在一九四六年の借盃︵管理および保証︶法︵劇○旨○惹廊︻9暮巨きα. ○舞声暮8呂︾&ならびにこれに基く諸取締規則によつて半恒久的に実施されている︒同法は︑詐欺防止︵投資︶法. 三九︵二七九V. と同様に︑適用の対象を登記会社に限つていないが︑登記会社に関するものがとくに重要性をもつている︒なおこれ 英国会社法改正の課題.
(6) 論. 説︵星川︶. 四〇︵二八○︶. に関連してガワーは︑会社企業の発生時代に国家がいわば公けの利益という観点から特許状による法人格の付与を考 ︵六︶. 慮したのに対し︑現代では同じ観点から会社の資本調達が制限されているとして︑会社法史におけるこうした現象の 循環を指摘している︒. これらに続く現行会社法すなわち一九四八年法は︑既述の先例に従つて︑一九四三年六月にコーエン判事を委員長. として設置された会社法改正委員会︵普①9B且ヰ889旨℃き蜜ζ≦︾旨9α目①導︶の報告書︵09聲図名○邑. ﹃有効且つ公正な方法にて経営されている事業を不. に基いて制定をみた一九四七年法およびそれ以前の関連法令を総括したものである︒乙の法律の特色はコーエン委員 会の主眼としたところから窺い知ることができる︒その第一は︑. ﹃株主が会社の経営に一層有効な一般的監督権をより容易に. 当に拘束することなく⁝⁝合理的に必要とされるだけの情報が当該会社の株主や債権者はもとより一般公衆にも活用 されるようにとりはからうこと﹄であり︑その第二は︑. 行使しうるような方法を発見すること﹄であつた︒そこでまず会社の公的責任を重視し︑貸借対照表の非公開という. 特典をいわゆる特例私会社︵賃①日冥震貯暮⑦8巨彊ξ︶に限つて享受しうるものとし︑通常の私会社ことにその株. また︷般に承認されている会計原則を法文化して貸借対照表や損益計算書等の計算書類の作成に. 式が公募会社に保有されているものについては︑公募会社︵窟990e℃き璽︶と同様の公示義務が課されることにな つた︵二一九条︶︒. さらに少数株主の保護︵一二〇条︶およ. 適用し︵第八附則︶︑相互に連絡を有する会社については綜合計算書を︵一五〇1一五四条︶︑会計監査役には専門家 たる地位を要求して取締役に対する独立性を強化し︵一六〇ー一六二条︶︑. び会社業務の調査を命ずる商務省の権限を拡大するく一六四i一七五条︶などの非常に重要な多くの改正を行つたの.
(7) ︵七︶. である︒. ところでこの度のジェンキンス委員会は︑この現行会社法を諸種の観点から検討しているわけであるが︑その重点. がどこかにおかれているかは︑同委員会が各界の改正意見を徴するために作成した諮問事項に示されているといえる であろう︒次に煩をいとわずこれを掲げてみると︑. ︑ω会社の設立衡係︑ω二〇人以上の成員を有するパートナーシップの禁止︑㈹会社の分類︑㈲慈善および政治目的. の会社による贈与︑⑥取締役等による権限の行使および株主に留保される監督権の範囲︑㈲取締役の義務︑ω議決権. 制限株式または無議決権株式︑⑥少数株主の保護︑㈲特殊の株式の保護︑⑩商務省の検査役任命権︑⑪株式の保有お. よび支配関係の開示︑⑰株式の譲渡と名義書換手続︑⑬取締役の兼職︑αの従属会社・系列会社を通じて行う事業経営. の慣行︑⑮借入資本︑個ε容6<霞玄房︑働昌論見書︑目論見書に代る書面︑売出発行︑株主に対する株式の発行︑. 圏証券取引業に対する規制︑働投資信託︑⑳資本の減少および自己株式の取得︑⑳計算書類︑囲会計監査︑㈱年次報. 告書︑四会社と商号︑㈲外国会社︑⑫⑤業務執行︑⑳解散︑圏行政と法律の施行︑および四その他の問題である︒. かようにジェンキンス委員会の検討の対象は︑会社法の殆んど全領域にわたり且つ細部に及ぶきわめて広範囲のも. のであるが︑これらを通覧するとき︑そこに二つの異なつた系列の存することがみとめられる︒その一つは︑イギリ. ス会社法の長い発展の歴史を通じて形成されてきた特殊な制度ないし規定を︑現代的な観点から整理統合して︑不要. なものはこれをすて︑またその簡素化・合理化をはかる意図を包含するものであり︑その多くがたとえば定款の統合. 四一︵二八一︶. 問題や能力外原則の廃止︑営業許可証や法定総会・法定報告書に関する規定の当否といつた︑会社の設立関係に属す 英国会社法改正の課題.
(8) 論. 説︵星川︶. 四二︵二八二︶. る事項である︒これに対し他は︑資本主義経済の高度化にともない︑資本制企業としての会社の機構や活動に生ずる. 諸変化ならびに諸現象を︑現行会社法が充分に規律することができなくなつたことに基因する改正点であり︑諮問事 項の多くがこの系列に属している︒. 目下ジェンキンス委員会の活動は︑右の諮問に対してよせられた︑法曹界・実業界など各界有力団体の改正意見書. を整理し︑さらにそれぞれの代表者を委員会に招いて細部の意見をただすという段階を終え︑その記録を公表すると. ころまで進んでいる︒おそらくその反響をみたうえで︑数年内に委員会の報告書が作成され︑その勧告に基いて商務 省が改正法案を議会に提出する運びとなるであろう︒. しかしながら︑これらの意見書を初めとして改正意見の殆んどは︑依然現在における会社機構の内部的な改善に集. 中しており︑会社機構そのものに対する根本的な検討の必要性をみとめるものは少ない︒従つてこの限りで︑会社法. の改正事業もその規模の大きさに拘らず︑すでに一つの限界を示しているといえるのではなかろうか︒. ともあれ︑この度の改正事項の多くは︑現在の各国会社法に共通する課題であるともいえるだけに︑イギリスにお. ける成果は︑益するところ渉少なくないと思われる︒それ故本稿では主としてこの委員会記録︵屋巨什8a国く誌窪8. 富ざ昌富8器菩①9ヨ℃窪団冨頃9日日葺①①﹂8ごに掲載された改正意見に拠りつつ︑前記の第一の系列に属す. る諸問題と︑第二の系列のうちから比較的重要と考えられる︑取締役の義務︑富箒6︿R獣房︑少数株主ならびに少. Oo≦雲竃o号導OO目℃昏図■9≦︸N呂&こ這鴇℃や蕊.. 額投資者の保護および従属会社と系列会社の間題を選んで︑今次改正事業の概観を試みたい︒ ︵一︶.
(9) 尼巴臼①さOOヨ℃㊤ロ﹃ピ騨ヨNO夢①血こ一翫Pぴ鴇ωoげ目一簿犀oぬ㊤昌αO蝿員ざ℃.P. b巴9Φサ○やo津こ℃︒P. 同法が成立するまでの経緯については︑拙著・英国会社法序説二三〇1二七三頁を参照されたい︒. ︵二︶. パ. この会社形態については︑拙著・前掲書二入三・二八四頁︑および同書第二篇﹃英国における私会社制度﹄ を参照された. なお拙著・前掲書二〇八・二〇九頁︒. 会社法規の簡素化・合理化問題. 英国会社法敬正の課題. 四三︵二入三︶. 前にも触れたように︑イギリス会社法は︑過去百年にわたる立法の経験を集積した大法典であるが︑反面︑その規. た規定を放棄して︑新たな構想に基きこれを整理統合しょうとせずに︑旧い構造に新しい規定を安易に追加したため ︵一︶ に生じたものであり︑会社法をして歴史的遺物の博物館︵pお速鋒o曙9鼠の8誉巴邑塁︶たらしめているという︒. よれば現行法の複雑さは必ずしも︑経済社会の複雑性を反映しているためではなく︑相次ぐ改正もすでに旧式となつ. 会社法自体もそれを反映して︑技術的な規定をもつにいたることは避けえないであろう︒しかしシュ︑・・ットホッフに. 経済社会にとつて好ましくない官僚主義的な弊害を生ずることも否めない︒もとより会社の構造が複雑化するにつれ︑. 会社法が必要以上に技術的となり複雑化することは︑これを実際に運用する者に不便であるばかりでなく︑時には. 二. 拙著・前掲書二八五−二八七頁︒. OO≦霞︸oや9fで器︒. つ. パ パ パ. b㊤ぎ①烈oや鼻こや一〇●. 七六 五四三 ))い))). ハ.
(10) 論. 説︵星恥﹀. 四四︵二八四︶. 定中には︑かつてはきわめて有用であつたにしても︑現在ではもはや無用化したもの︑あるいは有害視すらされてい. るものも存在しており︑その検討はまさにジェンキンス委員会の課題の一つといえるであろう︒従つて︑その諮問. 事項中にも会社の設立に関連して︑定款の様式の複雑性︑その目的条項︑これと関係ある能力外の法理︵鼻参≦おω. 3・鼠需︶を如何にすべきか︑さらに定款の変更を如何なる範囲までみとむべきか等の問題が包含されている︒しか. 会社の定款に関する問題. もこれらの多くが︑イギリス的な特殊性をもつために若干の附加的な説明を必要とするであろう︒. ⑥. イギリスでは︑会社の設立に際して基本定款︵目①旨9き含導9霧ω8す試Ob︶ならびに附属定款︵p益9$9霧8♀. 豊oεの二種の定款の作成が要求され︵一条・六条︶︑この両定款の結合をまつて初めて会社は完全にその活動をな すことができる︒この点大陸法系の定款方式と著しく異なつている︒. ところでこの制度の淵源は︑特許状によつて会社企業に法人格が付与された時代に遡る︒この時代には︑特許状. をもつて会社の目的・資本・組織等を定め︑会社の経営に関する事項は自治法に委ねられたのであり︑その余韻が現. 在にまで尾を引いているともいえよう︒しかし現行法と直接的な結びつきをもつ定款方式は︑一八四四年の登記法. ︵甘一暮望o爵9目窓巳霧図お韓声註9きα閃品三㊤什一9︾8以後のことに属する︒すなわち同法のもと会社の設. 立に先立つて発起人は現在の基本定款にあたる設立証書︵匿a9器庄①日①耳︶を作成してこれを届出で︑その審査. を経た後本登記の完了をまつて初めて︑法人格を取得した会社が内部的な事項に関する自治法規を制定するという方. 法が採られたのである︒これが一八五六年の会社法により︑仮登記および本登記の制度が廃止されて︑単一登記制度.
(11) ︵二︶. となつたことから︑現在の基本定款および附属定款という二分方式に転化したものと考えられる︒しかもこの分離を. みたとき︑立法者は基本定款を会社の基本法として株主︑とくに少数株主および会社債権者のためにこれを変更し得. ないもの︑これに反し附属定款は株主総会において自由に変更しうるものと把握した︒それ故一八五六年法は︑資本. を増加する場合のほか基本定款の変更をみとめていないが︑附属定款については︑明文をもつて︑株主総会の特別決. 議にょり変更しうるものとした︒くだつて︑一八六二年会社法においても︑商務省の同意をもつてする商号の変更︑. 資本の増加︑全額払込済株式の簿・良への転換等︑同法が明文をもつてみとめる場合のほかは基本定款の変更を禁. じ︑会社の目的の変更もみとめられず︑この状態は一入九〇年まで続けられたが︑同年に若干の特定の目的について ︵三︶. 変更がみとめられることになつた︒これに対し一九四八年法では︑従前よりもはるかに広汎な目的の変更をみとめて︑. むしろ基本定款の可変性を原則としている︒その結果従来のように二つの定款を併存せしめる実質的な理由の多くが. 解消せしめられたともいえるであろう︒のみならず別個の定款を有することは︑作成の手続や変更の方法を煩鎖なら. しめる以外の何ものでもない︒それ故改正意見の多くは両者の統合を主張しているが︑この点について商務省の態度. は可成り慎重である︒すなわち︑両定款の統合権を法律をもつてすべての会社に与える一方で︑会社が従前通りの定 ︵四︶. 款の方式を採用する場合はこれをもみとむべきであるという︑きわめて漸進的な提案を行なつている︒このようにま. ず会社に選択権を与えて︑漸次一本化の方向を目指すところに経験主義ないし改良主義的なイギリス人の思考方式が 反映しているかに思われる︒. 四五︵二八五︶. 定款に関する他の重要間題は︑目的条項の記載と能力外の法理の存廃に関するそれである︒ 英凋会社法改正の課題.
(12) 論. 説︵星川︶. 四六︵二入六︶. 能力外の法理は︑判例法によつて確立された会社法上の基本原則であり︑会社の能力はその基本定款に記載された. 目的条項︵〇三8粧9雲ω①︶によつて定まり︑これを諭越する行為は会社の能力外の行為で無効であるとする︒この法. 理も︑かつては︑株主の利益を保護する機能を果していた︒すなわち株主は自己の出資が︑定款に記載せられた事業. 以外の如何なる危険にも曝されないことをこの法理によつて保障されていたのである︒しかし現在︑会社の目的条項. ︑瓢〜. は非常に広い範囲にわたつて記載され︑取締役は如何なる行為をもなしえ︑定款による拘束を受けないと同一の状態. となつている︒取締役は株主から定款違反を指摘されないよう︑また自己の行為が目的の範囲内なりや否やを法律家. に相談する煩を避けるために︑目的条項を可及的に多方面にわたつて記載しており︑株主の保護という観点からは︑. この法理を維持する価値渉ない︑というのが実情である︒他方︑会社と取引する相手方にとつても︑この法理の適吊. によウて当該取引が無効とぜられ︑不測の損害を蒙るおそれがある︒かくてこの法理の存在は取引の安全を著しく阻. 害するものとなつてきている︒前回の改正に際しコーエン委員会は︑﹃能力外の法理は株主にとつて一つの幻想的保. 護︵巳霧o曙嘆oε&8︶であり︑しかも会社と取引する相手方にとつては一つの陥穽︵営竃毘︶となりうる︒⁝⁝如. 何なる会社も︑それが会社法の成立前に設立されたものであると︑その後に設立されたものであると︑またその基本. 定款に記載されていない事項であるとに拘らず︑取引の相手方に対しては個人と同様の能力を有すると考うべきであ ︵五︶. る︒会社の能力に関する基本定款の現存規定および将来基本定款に採り入れられるこの種の規定は︑取締役によつて. ﹃この法理は過去において如何に有益なるものであつたにしても︑そして長い存在を保つ. 行使さるべき権限に関する︑会社と株主間の契約としてのみ効力を有すべきである﹄と勧告した︒カーン.フロイン トもこの見解を支持して︑.
(13) ︵六︶. た法理ではあるが︑もはや法欝史の忘却のかなたに清え去るべきである﹄と主張した︒にも拘らず議会はこの勧告を. 採択せず一九四七年法︑従つてこれを総括した一九四八年会社法にも︑これを積極的に廃止する明文を設けなかつた︒. ﹃この事件はコーエン委員会が. しかしこうした議会の立法措置から︑再びこの法理が適用されて取引の相手方が不測の損害を蒙るという事件. もつともその廃止に代え株主総会の特別決議をもつて︑基本定款の目的条項を変更・拡張しうるものとしている︵五 条︶︒. ︵七︶. が起つた︒すなわち︑一九五三年のジョン・ビューフォート事件である︒ガワーは︑ ︵八︶. 如何に正しかつたか︑またその勧告をうけ容れなかつたことが︑如何に後悔すべきであつたかを立証するものであ る﹄と批判してい る ︒. 能力外法理の存廃問題がジェンキンス委員会の採り上げるところとなつたのは︑かかる経緯に基く︒これに対して. 弁護士会一般審議会︵O窪段毘9琶昆9芸Φ団蝉H︶は︑﹃基本定款記載の目的条項は︑一九四八年の会社法により︑. 従来よりも容易に変更しうるものとされたので︑能力外の法理は会社と取引する不注意な相手方にとつて︑一層陥穽と. なり易いものとなつた︒かかる者に︑自己が取引するすべての会社について︑常に有効な目的条項の規定に︑不断の ︵九︶. 注意を払うことを期待することはできない﹄として︑まずこの法理の廃止に同意を示し︑この観点から現行法第五条. の修正を提案している︒それによれば︑①会社が通常︑適法がつ有効になしうる行為をなした場合に︑当該会社がそ. の行為をなす能力を有しなかつたとしても︑その行為を善意で信頼した者については有効である︒ただし会社のかか. る行為に関係ある取締役若しくは役員は︑それにより会社の被つた損害に対して責を負う︒⑪何人も︑当該行為に関. 四七︵二八七︶. する明文の規定を除いて︑会社の基本定款の一部を知つていたという事実のみでは︑その行為が会社の能力外である 英国会社法改正の課題.
(14) 論. 説︵星川︶. 四八︵二八八︶. ことを知つていたものとはみなされない︑という趣旨の条項を設くべきであるという︒このほか定款の変更に関連し. て︑会社が株主総会の特別決議をもつて目的条項を変更した場合︑会社の発行済株式または発行済の数種の株式の額. 面総額の一五パーセント以上にあたる株式を有する者︑その会社が株式会社でない場合は総社員の一五パーセント以. 上の者︑社債発行条件によつて異議権を与えられている社債権者にして社債総額の一五パーセント以上の社債を有す ︵九︶. る者は︑裁判所に異議の申立をすることができるとする第査条二項は︑貴重な少数者保護規定として︑現行法通り維. 持さるべきであると主張している︒最締役協会︵ご隆ε富9Uぎ90邑も︑①会社は基本定款に定められた目的. 条項を特別決議をもつて自由に変更しうるものとすること︑⑤基本定款中の目的条項を簡潔にするため︑附随的なも. のは鮒表に規定し︑これを採用することも可能ならしめること︑侮取引の相手方に関しては︑能力外の法理を廃止す. ること︑および御この場合に︑基本定款の目的条項を超えて会社が能動.受動の行為をし︑その結果会社に損害を生 ︵一〇︶ じたときは︑株主総会の承認なき限り︑取締役は責任を負うべきことの提案を行つている︒. これらはいずれも取引安全の保護という見地から︑能力外の法理の廃止を勧告するものであるが︑学者のうちにも. これを支持するものが少なくない︒たとえばガワーは能力外の法理は本来会社の能力外の行為に適用される法理であ ︵一一︶. るに拘らず︑実際上会社の取締役が権限を超えて為した行為にも適用され︑このことが混乱を生ぜしめた原因となつ. ている︒会社の能力と取締役の権限とは別個にとり扱わるべきであるとする︒たしかに会社が能力を超えた場合喚. 会社の対外的能力の問題であるのに対して︑取締役が権限を蹟越した場合は会社内部の問題であり︑このように局面. を異にするものを同一の法理で律することは適当でないであろう︒取引の安全保護という経済界の強い要望からも︑.
(15) 外の法理への執着はもはや断ち切らるべきものと思われる︒. 営業許可証・法定総会・法定報告書に関する規定. 条三項︶︒. それ故︑開業には資本を調達し会社登記吏から営業許可証の交付をうけ. この総会の目的は︑株. 次いで会社は︑営業開始の許可をえたときから一. のみならず︑この規定に違反して営業を開始し金銭の借入をなしたるときは︑違反の継続期. 英国会社法改正の課題. 四九︵二八九︶. 承認をうけようとする契約等を詳細に記載した報告書︑いわゆる法定報告書を全株主に送付しなければならない︵同. 関する事項︑設立費用︑取締役・会計監査役・支配人および秘書役の住所・氏名・職業ならびに総会において変更の. 主に可及的に早期に︑新会社に関する重要事項を知らしめることにあり︑従つてその開催の二週間前に︑資本調達に. ケ月以後三ヵ月以内に法定総会といわれる株主総会の招集を行わねばならない︵ニニ○条︶︒. 間中一日につき五〇ポンド以下の罰金に処せられる︵同条六項︶︒. 生しない︵同条三項︶︒. ることを要レ︵一〇九条︶︑ この交付前になした第三者との契約は︑単なる予約としてこの交付のときまで効力を発. 業開始能力を与えられる大陸法と異なる︶︒. めに︑営業を開始し借財をすることが許されない︵この点設立の過程において資本が調達され︑設立登記と同時に営. 怠ぎ暮①亀ぎ8壱oβはo嵩︶の交付をうければ法人格を取得しうるが︑この段階では未だ物的基礎が確立していないた. 周知のようにイギリスでは︑会社の設立についてまず定款を作成し︑これを会社登記吏に提出して設立証書︵8㍗. 総会︵ω富ε8蔓目8怠お︶および法定報告書︵ω富εε蔓器宕邑に関する規定がある︒. 現行法中さらに簡素化・合理化を要請されるものとして︑営業許可証︵8岳旨暮⑦ε8目目き8び5ぼ︒邑︑法定. ⑧. 能力.
(16) 論. 説︵星川︶. 五〇︵二九〇︶. 以上の諸規定は︑いずれも公募会社の設立に適用されるものであり︑私会社の設立については︑その適用をみない︒ ︵日二︶. そこで︑設立の段階において私会社形態を利用し︑会社成立後に公募会社に組織変更して開業に関する法の厳格な要 ︵一三︶. 件を回避する慣行が生じてきている︒そして改正意見のうちにはこの現実をみて︑右の諸規定をいずれも無用化した. ものとしてその廃止を主張するものもあるが︑それぞれの規定が存在理由をもつだけに︑慎重に考慮されなければな. 臨時決議と取締役持株登録簿に関する規定. らない問題であろう︒. ⑥. 前者とほぼ同一の観点から︑臨時決議と取締役持株登録簿に関する規定も間題となつている︒臨時決議︵の答蜜−. 9象壼曙器毘暮一8︶とは︑総会において議決権を行使しうる株主の四分の三以上の多数決によるものであり︑かつ. 総会の招集通知に臨時決議をなす旨の記載を要するものをいう︒一九二九年法によつて特別決議を確認する総会の要. 件が廃止されてから︑この決議を別種の決議として存在せしめる理由は失われている︒現在臨時決議と特別決議との. 唯一の実質的な差異は︑その通知の期間が後者よりも七日程短縮されていることであるが︑この差異とてその決議が. 年次総会にてなされる場合には消滅する︒従つて第一四一条一項はこれを削除し︑また会社法において臨時決議とい ︵一四︶ う場合には特別決議に代えるべきであると主張されている︒. また第一九五条によつて各会社は取締役持株登録簿︵おαq韓醇亀象お9・お︑て・富おぎ窪おω︶を備えておき︑取締役. が自らまたは受託者として保有するあるいは実質的な権利を有する︑その会社およびその従属会社または持株会社の. 株式または社債について︑その取得の期日︑価格またはその権利を失つた期日などを詳細に記載することを要する︒.
(17) この登録簿はもとより株主名簿とは別個のものであり︑後者には取締役の名義で保有される株式のみが記載される︒. ところで取締役が︑多数の会社の取締役を兼任する場合に︑その会社毎に右の登録簿の備えおきを要求することはま ︵一五︶. ことに煩鎖である︒従つて︑これを会社登記吏の事務所に集中し閲覧せしめるならば︑手数が省かれるとともにその 目的も充分に達せられるであろうとされている︒. ⑨ 会社の分類. 会社の分類は各種の観点からなされているが︑とりわけ公募会社と私会社︑私会社に関する通常の私会社と特例私. 会社との区分に問題が集中している︒もつとも前者については現在のところ殆んど異論をみていない︒. 前回の改正に際して︑コーエン委員会は︑会社債権者の保護をはかるために︑従来私会社にみとめられていたいく. つかの特典の廃止を勧告し︑計算書類提出義務の免除は︑私会社のうちでも純粋な家族的事業に限つて享受しうるも. のとした︒しかしこの勧告は議会の審議過程で修正を施され︑ここに特例私会社と呼ばれる特殊な会社類型がつくり ︵一六︶ 出されたのであ惹︒その結果︑私会社にはこの特例私会社と通常の私会社との二種が存在する︒しかし特例私会社に. 適用される第コ一九条および第七附則が必要以上に厳格であり複雑であることは否定しえない︒とくに第七附則の定. める会社の株式または社債に利害関係を有するものに関する規定は︑この種の会社形態を利用する者の理解を超える. ことが懸念されており︑この点の簡素化も進められなければなるまい︒また特例私会社については︑法の予想を裏切. ︵一七︶. つて︑経営規模の大きな企業にも利用されてきていることが問題となつている︒それ故︑計算書類の提出や専門家に. 五一︵二九一︶. よる会計監査︑取締役に対する貸付等に関する規定の適用免除を再考すべきであるとの勧告もなされており︑再び特 英国会社法改正の課題.
(18) 論. 説︵星川︶. 一℃㊤一目㊦び. O℃●. O℃●. O一叶こ. O一叶こ. 唱●. ℃●. 凱ひ・. 帆凱︒. OOげΦ昌閑①℃o昌℃㊤声●一ρ一●一ρ. 劇○霞山o︷円声血98竃ぎ葺霧9国<一α①昌oρや頃a.. 男塑一旨①烈. ωOびき一け一げOぬ a門げ① H旨℃犀O㊤叶一〇βω ○囲OO目℃ゆ路楼︼い帥妻菊①臣○吋幹い. 五二︵二九二︶. 一〇ひO﹃O賃H5㊤一〇h︼W9もo一β①ωω層9要一℃・ 一軌一●. 例私会社と通常の私会社という区分に菟検討が加えられることであろう︒ ︵一︶. ︵二︶. ︵﹃二︶. ︵四︶ ︵五︶. ︵七︶. Oo毒①きま箆.. この事件にづいては︑男勘旨霞りOや9fやo︒刈・一〇〇≦20や9f. ℃●. qOQ●. ℃●o. ︒S. ︵六︶国筈苧層Φ毒身9ヨ饗3・ピ署胃①一〇§︵︸男①註碧蔑昏Φ閑書O辱9昏①9旨巨9899目嚇身9≦︾ヨ①&葺①馨y. ︵入︶. 一い竃ぎ舞①のo協ロぐ箆窪8︸や89. O冒a①跨 鼠 嶺 菊 ① ≦ ⑦ ぎ 一 宝 9 や 蕊 9. ︵九︶. O一梓こ. =霞昌暮︒︒︒o騰国く置⑦b8 薯・慧N−q︒ω● O℃.. ○℃●. O一げこ. ℃●. 一凱N・. この経緯については︑拙著・前掲書三一五頁以下︒. ωOげヨ一叶倖げ○臣︾. ω9巨gげo鼻oや簿こや一貴鴇O①諾邑98一一〇︷9①望斜一い 屋壼梓①ωg団&窪8も︒8ざ. o①壼邑9き︒出o一菩①団㊤ツ賦霞壼仲①ωo協国く箆窪8︸や89. この点については︑拙著・前掲書三八○・三八一頁参照︒. ハ︸O巧①び. 一((((((( 六五四三二一〇 腕))))))).
(19) ︵一七︶. 会社法の現代的な課題. ビo昌型RoざN寓冒象霧○協国く箆①昌09サニ9.尉o㊤置9↓声αρ8賞ぎ5①ω9両く盈①昌8℃や駐$︒. 三. 上述したところとやや趣きを異にするのが︑以下論述を試みる諸点である︒これらはいずれも︑イギリス会社法が. 当面する重要問題であると同時に︑各国の会社法にても均しく論議の対象となつていることは︑前にも指摘した︒現. 取締役の義務. 代的な課題として一括したゆえんである︒ 一. 英国会社法改正の課題. 五三︵二九三︶. 立するまで︑産業資本の集中形態としての多くの会社企業が︑法人格を取得することが困難であつたために︑いわゆ. 務の性質が説明されてきた︒この観念は︑準則主義を採用したイギリス最初の会社法である一八四四年の登記法が成. いて業務を執行すべき者と考え︑その地位を信託法上の受託者︵ヰ羨εΦ︶のそれになぞらえて︑この基礎のうえに義. この点についてイギリス法では︑取締役を会社の名において行為するお①導であると同時に︑受託者的地位にお. 明らかにすることは極めて重要である︒. る︒かように︑取締役は会社の経営に関する中枢的な機関であるから︑業務執行につき如何なる義務を負担するかを. により︑株主総会の決議をもつて行使すべきものと定められた事項以外の一切の行為をなす権限を有するとされてい. イギリス会社法第一附則A表第八○条によれば︑取締役は会社の業務を執行する者であり︑本法若しくは業務規則. (.
(20) 論. 説︵星川︶. 五四︵二九四︶. る法人格なき会社︵蝿巳b8壱9緯88響瀦三①の︶として存在したという事実に由来する︒詳言すれば︑産業資本家達. は法人格なきことに基因する諸々の困難を克服すべく︑信託︵げ旨8の制度を利用した設立証書︵3a・詰①注①目①嘗︶ ︵一︶. によつて会社を設立し︑会社財産を受託者に信託財産として所有せしめ︑多くはこの受託者を取締役に選任して会社. の経営をこれに委ねるという方式を採つたのである︒爾来裁判所はこの法律関係を類推して︑株式会社の取締役をと. り扱つてきた︒しかし今日では︑取締役を受託者とみることは法律的にはもとより正確でなく︑また必ずしも有用と. はいえない︒そこで取締役は会社ないし会社財産の受託者というより会社のお①客であり︑夷Φ暮として会社に対. し信認的法律関係︵註8す莞琶暮δ霧匡℃︶にあるとみられている︒さらにガワーによれば︑この信認関係より生ず. る誠実義務︵α暮一$aαQO&置夢︶は事実上受託者に課されるものと同一であり︑この限りで取締役を受託者と表現. することはなお有効である︒ところが取締役に要求される注意や技能にいたると受託者の義務を類推することは必ず. しも正当ではない︒けだし受託者は信託財産について︑注意深くあらゆる危険を回避しなければならないが︑取締役. の義務は営利事業を遂行することにあるため︑そこには多少ともに投機的要素が包含されるからである︒それ故︑取. 締役の義務はこれを二分しうる︒その一が︑厳格な意味での受託者義務に類似する︑忠実および誠実という信認的義 ︵二︶. 務︵まき㌶曙α5一①ω︶であり︑その二が通常の受託者義務と根本的に異なる注意および技能義務︵α暮一Φω町8おき創 玲目︶であるという︒. 取締役の義務は︑その性質からも従来比較的抽象的に把握され︑具体的には義務違反の効果としての責任を論ずる. ことが多かつたといえるであろう︒コーエン報告書でもこれに触れることなく︑取締役の得た利益の開示に勧告の主.
(21) 眼をおいていたにすぎない︒そこで︑今次の改正問題として取締役の義務がとりあげられたのは︑いうまでもなく︑. その内容的な曖昧さから生ずる弊害を除去するためである︒そしてこの観点から︑ジェンキンス委員会の諮問事項は 次の五点に及んでいる︒. ﹃取締役の地位は専門職業化しておらず︑従つて︑技. ㈲ 取締役の義務は現在よりも厳格にまた明確に規定さるべきか︑その場合には如何なる点についてか︒ この諮問を積極的に肯定するのが商務省である︒すなわち︑. 能や能力に関しても︑一般にみとめられた基準といえるものが存在しない︒取締役が義務を有することは承認されて. も︑それが如何なるものであるかは一般に理解されていないので︑この間題についての判例法も一般人には理解し難 ︵三︶. い﹄として︑判例法やすぐれた慣行のうちから︑この点に関する原則を抽出し︑新会社法かまたは特別法をもつて規. ﹃取締役は常時公正かつ誠実に. 定することを示唆している︒しかし具体的に如何なる点に及ぶべきかは必ずしも明らかでない︒イギリス商業会議所 連合会︵蔚8︒す試8良卑葺のびO富ヨぎ諺900目巨巽8︶もこの必要性をみとめ︑. 行為し︑会社の利益を促進するために︑その最善をつくさなければならない︒取締役はその地位にともなう義務の履. 行において︑相当の注意を払わなければならない﹄との一般的な義務および責任規定を立案したが︑かような一般規. 定は︑問題を残すおそれあるものとして排斥され︑これに代る︑新たな取締役の選任登記の際会社登記吏は︑ ﹃取締 ︵四︶. 役の義務﹄を規定するパソフレットをその者に送付し︑またその要約は新法に規定して︑これに法的効力を附与すべ. きであるとの提案に一部の支持があつた旨を報告している︒これに対しこの点に全く言及しないか︑必要性はみとめ. 五五︵二九五︶. ても規定することの実際的な困難を訴えるもの︑さらに現行規定をもつて充分とし︑これ以上の改正を不要とみるも 英国会社法改正の課題.
(22) 論. 説︵星川︶. 五六︵二九六︶. の等消極的な態度を示す見解の方が多数である︒たとえば︑取締役協会は︑取締役の義務ないし責任は︑非常に広汎. に亘りかつ重いものであるから︑これを現在以上に明確化し厳格にすることはきわめて困難であり︑却つてその一部 ︵五︶. を免れしめる結果となろう︒少数の好ましからざる取締役を牽制する目的で︑大多数の善良な取締役の活動を不当に. 阻害するおそれすらあると主張する︒また取締役の役割は事実上会社の規模と業種によつて異なるので︑これらに共 ︵六︶ 通した一般的基準を設ける試みからは殆んど成果を期待しえないことを指摘するものもあるが︑現在までの大勢は︑. 公募会社の取締役の義務やその対株主関係の複雑であることをみとめ︑若干の重要点で責任を明確にする以外︑広汎 ︵七︶ な規制を設けることは困難であり︑また好ましくないとするエコノミスト誌の見解に代表されるといえるであろう︒. ㈲取締役は一般にその信認的地位より生ずる法的義務を認識しているか︒ ︵八︶. この質問には多くが全く口をつぐんでいる︒そして若干の肯定的見解に対しこれを否定する見解は︑私会社ないし. は小規模会社の取締役について義務観念の乏しいことを指摘している︒なお本問と関連して勅許会計士協会の審議会. ︵9琶99夢①冒旨εε90富詳段a訪82導㊤算巴⇒国お蚕巳窪q≦巴色は︑第一九一条の規定の不備により︑. 取締役が信認的地位より生ずる義務を回避しうることに注意を促す︒すなわち同条は︑取締役の地位の喪失に対する. 補償としてなされる支払は︑支払案の詳細を株主に開示し︑会社に承認されるまで︑これをなしえないことを規定し. 取締役および役員による自社株式の取引. ている︒しかるに同条は従属会社の取締役としての地位の喪失について︑持株会社の取締役になされる支払にまでは ︵九︶ 適用されないため︑かかる場合にも適用されるよう拡大さるべきであると勧告している︒. ⑥.
(23) 取締役は会社業務に関する内部的な知識を利用して︑自ら保有じ若しくは実質的な権利関係を有するその会社︑ま ︵一〇︶. たは同一グループ内の他の会社の株式および社債を有利に取引することが可能である︒そこでこうした行為を抑制す. るため︑現行法はコーエン委員会の勧告を容れて︑株主ならびに社債権者に限り︑年次株主総会開催目の一四日前よ. りその終結後三目までの期間︑取締役の持株登録簿を閲覧しうることにしている︵第一九五条ω㈲項︶︒ この現行開. 示規定をもつて充分とするものもあるが︑多くは要件のこれ以上の強化を支持している︒それは同条の適用が取締役. 以外の役員には及ばないことや︑取締役による株式買受権︵o導一9︶の取引にも及ぶか否か明らかでなく︑さらに第 ︵一一︶. ㈲項の登録簿閲覧権も制限されすぎているとの感を与えているからであろう︒そこで同条の改正意見を集約すれば︑. 大略次の通りである︒すなわち︑①取締役持株登録簿の対象は取締役以外の役員をも包含するよう拡大さるべきであ. る︑㈹同条の開示要件はo冥δ⇔取引にも適用されるように規定さるべきである︑侮この持株登録簿は︑取締役名簿. や秘書役名簿と同様に︑通常の営業時間内何時でもまた何人に対しても公開さるべきであり︑御さらに適正な手数料 の支払によつてその謄本を入手しうるようにすべきである︒. イギリス工業連盟︵頴審声江89醇径浮H邑塁菖①ω︶はこれに加え︑取締役持株登録簿を常時公開せしめること. が実行不能である場合には︑商務省に必要に応じて登録簿の公開を命ずる権限を附与すべきであるという︑前回のコ ︵一二︶ ーエン委員会の勧告を採択するのが適当であると附言している︒. 五七︵二九七︶. なおこの問題は︑後述する冨冨6く震葺島の慣行との関連においても最近大きな論点となつてきている︒それ故 ︵一三︶ 第一九五条と同一の要件がこの場合にも適用されなければならないとする見解が示されている︒ 英国会社法改正の課題.
(24) ④. 論. 説︵星川︶. 取締役の利益の開示. 五入︵二九八︶. 現行会社法第一九九条︵および附表A第八四条︶により︑取締役は会社との契約またはその計画において︑直接た. ると間接たるとを間わずに︑受ける利益のすべてを取締役会に開示しなければならない︒この要件をさらに進め︑取 ︵一四︶. 締役会での開示のほか年次株主総会に先立つて株主に送付される資料にかかる開示の説明書を包含せしむべきである. 一般に現行規定をもつて充分と考えられているものとも解. との意見もあり︑また軍ンドン株式取引所︵曽o鼻国蓉富夷ρい○区9︶はすべての公募会社について現行法の強化 ︵一五︶. を主張しているが︑概してこの蒔の改正意見は少なく︑. され︑むしろ現行規定の緩和を主張する見解のみられることが注目される︒たとえばスコットランド勅許会計士協会. ︵冒豊言富90富耳巽&卜︒8q暮き富9ω8菖p且︶は︑第一九九条は理論的にはすぐれた規定とはいえても︑如何. なる意味でも実際的な規定とはいえない.通常の事業慣行に従えば︑会社の目常締結する多くの契約の詳細は︑取締. 役会の議題とならないものであるのに︑同条の厳格な履行を要求すること﹁は不当な負担となる︒それ故同条の適用は︑ ︵一六︶. 取締役会の議題にのぼる契約または契約案における﹃重要なる利益﹄︵p身ヨ暮窪巴旨富お簿︶の開示にとどめるべき. 法人︵び○象88麸○声審︶淋取締役となることはみとめらるぺきか︒. であるという︒そして商務省もこの問題の再検討を約している︒ ⑥. この諮問に対する賛否はほぼ同数を占める︒賛成意見は濫用の事例なきことを理由とするが︑反対意見は取締役の. 個人的義務ないし責任という観念は︑会社運営の基礎となつており︑また個人と同一の法的制裁に服しえないことを あげ︑個人のみが取締役たる適格を有するものとして禁止規定を設けるべしとする︒.
(25) このほかにも取締役については︑年齢制限や資格株︑また若干の事項を取総役会の決定に留保することの可否等が 再検討を要する問題としてあげられている︒. さらにイギリスにあつても︑いわゆるビジネス・ビュー冨ークラシーという言葉で表現されるような取締役への権. 限の集中現象がみられ︑それと相対的に株主の会社経営に関与しえないという傾向が強まつていることは前述した︒. 他方大株主である機関投資者も投資している会社の経営に干渉しないのが通常であるから︑会社経営に対する株主の. 支配権は︑コーエン委員会にて検討された当時よりも減退しているものと思われる︒そこでこうした面での是正は︑ ︵一七︶. ⑥取締役の選任に関する規定︑㈲株主に対する開示規定︑および⑥株主が取締役に委任しがちな一部の権限を明文を. この間の詳細は︑拙著・前掲書二三入頁以下参照︒. ︒●. もつて株主に留保する規定といつた三方向ではかる必要のあることが指摘されている︒いずれもその限度をめぐつて. ︵一︶. OO零①びOやo詳こ℃やミジミド. 大きな間題を提起することであろう︒. ︵二︶. 8冒営耳①ω9国≦号琴9℃や一まP一鴇ρ. またスコットランド商業会議所審議会も取締役の義務の大要を︑会社法の附表に規定. 同じく乞鉢δ塁一〇げ帥旨び霞9↓目帥αρ凱竃ぎ舞霧9国く置go①︸や80. ︵三︶. ︵四︶ q客営幕$亀国ぐ置窪o①㌧やミS. =冒ぎ暮①の9国く置窪oρや這凱ら. 同じく国a㊦声江§9劇匡蔚げH昌α霧良$お冒嘗暮⑦ω9国く箆①蓉ρサ玉&ら. することも一法であるとする︒一N冒旨暮$9国く崔①琴ρ℃.8命. ︵五︶. 五九︵二九九V. 9毒亀・幽窪①国毒のo︒一①叶ざ凱匡霊醇9国く置窪︒ρ℃●一§9廟︾ωの・畠江・昌・=鷺①馨目︒算月崔ω戸δ旨昌暮①ω・協 国<一〇①8ρ℃●認︒●. 英国会社法改正の課題.
(26) ︵六︶. 論. 説︵星川︶. 轟ピぎ暮$ 9 国 く 置 ① 琴 ρ ℃ ・ ま P. ビO同q男一①貝O網一N目一昌仁叶OQDO臣国く一α①bOρ ℃・一一3. ︵七︶. 六〇︵三〇〇︶. ︵八︶ 2舞δ昌巴O﹃年旨σ巽9同吋㊤山ρ凱ピβ自一89国く箆①⇔oρ℃●ωいQo引三歴幻①四ω貫9国劇霞財2⑦ざ凱冒β信富のo幽国ぐ箆oβ09. ℃●目P ︵九︶ 一Q oピ首暮$9国く箆①昌oρ℃℃・峯O査云O卸. ︵一一︶. ジェンキソス委員会に提出された改正意見のうちでも第一九五条の要件強化を支持する見解は︑勅許会計士協会・会社. ︵一〇︶Ooゲ窪菊①℃o拝饗声αq円p嘗ω︒︒9︒︒S. 会計士協会・取締役協会・投資信託協会・冨ンドン株式取引所・イギリスエ業連盟・イギリス商業会議所・商務省等有力な一 〇以上の団体に及んでいる︒ ︵一二︶一︒ ︒罵壼奮9穿こ窪8︸や玉よ. o︒. ︵二二﹀〇二z窒εp国鼻8国壼琴巨艮琶Φω﹂冒ぎ暮8£国≦号琴ρやひご劇op&9り区98目5霧凪国≦38ρ. 閏8三蔓9︾α︿Oo鉢$︾一ひ欝ミ鼠ぎ暮霧9国く峯①p8︾や憲OQ. ℃﹂鴇○・. ︵一四︶. H昌の江一信叶①○協∪耳ΦO酬○目の︾一一竃一昌9叶①のO︷国く一仙①昌09℃●qO9. 賦ピぎ暮窃9国く置魯09℃︒=ひ9. 一ひ廼一刈9一昌9叶Oω○臣国<一qO昌Oρ℃●一いいO∴. ︵一五︶ ︵一六︶. ︵一七︶ 団Op鼠9円声血ρ8匡冒耳oo︒9国く箆①δoP℃や一まQ︒︸一まP. 二 鼠屏①6<R獣房. (.
(27) イギリスにおいても会社の合併について︑二つ以上の会社が新会社を設立するために協同する新設合併と︑一つの. 会社が他の会社を吸収する吸収合併の方法とがみとめられている︒これらの法律上の合併︵3甘お塑目巴窄ヨ葺一9︶. に対し︑ある会社が他の会社の支配権の獲得を目的として︑その株式を取得することによる事実上の合併︵留富90 二︶ 伊S巴αq㊤ヨ鋒8︶も経済界においては屡々みうけられる︒この方法によるときは︑会社の存在はそれによつて何らの. 影響もうけず︑またその機構を変更する必要もなく︑ただ株主に変動を生ずるのみである︒それ故︑法律的観点から. は︑合併とはいいえないが︑実質的には法律上の合併と異なるところがないといえるであろう︒けだし支配権が獲得 ︵二︶ されれば︑その会社は︑取得会社の従属的存在となり︑事実上独立性を失うにいたるからである︒. かような経済的効果をもたらす方法の一つに支配株式の譲渡行為がある︒すなわちある会社が他の会社の株式を譲. 受けんとする場合に︑その会社の株主に持株を特定の条件で譲受けることを申込み︑これに対して一〇分の九以上の. 株式を有する株主の承諾を得ることができれば︑残余の一〇分の一の反対株主の株式をも強制的に買取ることが可能. とされる︒室冨6︿窪怠審とはこのように二つ以上の会社闇に事実上支配関係を設定するため︑株式の譲受申込を. なすことをいう︒合併と異なる点は二つ以上の会社間の契約によつて行われるのではなく︑譲渡会社が支配関係を設 定しようとする会社の株主との間に︑株式譲渡契約が締結されることにある︒. 従つて譲渡会社は︑一定の価格の株式譲受を譲渡会社の株主全体に申込むのであるが︑この申込に対しては九〇パ. ーセントの株主が承諾することを要するものとされている︒そのため︑譲受会社はまず取締役と事前交渉を行い︑. 六一︵三〇一︶. 締役の有する株式の譲受価格ならびに他の株主に勧誘してもらう譲受価格についてとりきめるのが通常である︒しか 英国会社法改正の課題. 取.
(28) 払調. 説. ︵星川︶. 六二. ︵一二〇二︶. しこの際︑果して取締役が自己の会社の利益において行動するかは疑問であろう︒しかも訂寄6ぐ巽げ箆の基調は. 飽くまでも︑この申込を承諾する株主の全部が同一の条件で株式の譲渡を行うところにあるので︑仲介者たる取締役 ︵三︶ だけが特別の支払をうけるような契約を締結すれば︑この目的は明らかに害される︒譲渡会社の取締役は自社の株主. と譲受会社の中間にあつて︑必要数の株式をとりまとめるために斡旋を行う者であるから︑何らかの名目で許されざ. る利益をうけることも充分に考えられる︒そしてかかる事実がある場合には︑他の株主は直接間接に不利益を蒙り︑. さらに申込を受諾しない株主の株式は︑強制買取の対象とされるのであるから︑この点についての考慮が一層必要と. されるであろう︒そこで取締役はうくべき補償の詳細を譲受申込の通知に添えて株主に公表し︑これを保証するあら. ︵四︶. ゆる適当な行為をなすべき義務を負い︑同時にその補償は︑譲渡の対象となつた種類の株式を有する株主の総会にて 承認されなければならないとされている︵二二九条︶︒. また現行法第二〇九条は︑εぎ6<巽巨岳に関する少数株主の保護規定として知られている︒詳言すれば︑前述. の株式譲渡の申込は︑四ケ月以内に株式の価格において一〇分の九の株主の承諾をうることを要するが︑承諾がえら. れなかつたとき︑当該申込は無効となる︒これに対し必要数の承諾を得ることができれば︑譲受会社はその株式を譲. 受け︑次いで反対の少数株主 ︵α奮Φ耳δ嘗ヨ旨&身︶に一ケ月以内にその保有株式の買取の希望を通知し︑この通. 知後多数株主が承諾したと同一の条件で︑その株式を買取ることが可能となる︒ただし反対株主が︑その通知の日か. ら一ケ月以内に裁判所に異議を申立て︑裁判所が別段の命令を下したときはこの限りでない︒右の通知後裁判所に異. 議の申立がなされないとき︑またはな零れても︑それが不成功に終つたときは︑譲受会社は適法に作成された譲渡証.
(29) 書をそえて︑通知の写しを譲渡会社に送付し︑譲渡を受けた株式の対価を支払つた後︑株主として株主名簿に登録さ. れる︒この場合︑反対の少数株主にも株式買取請求権がみとめられている︒すなわち譲渡された株式が︑その譲渡の. 期目に譲受会社若しくはその名義人または譲受会社の従属会社に保有される株式と合算して︑譲渡会社の株式の価格. において一〇分の九に相当するときは︑譲受会社は一ケ月以内に残余の反対株主にその事実を通知しなければならな. い︒この通知に基きかかる株主は三ケ月以内に︑申込を承諾した株主の株式が譲渡されたと同一の価格で︑または譲. 受会社の同意を得︑あるいは裁判所の定める条件で︑自己の株式の買取りを譲受会社に請求することができる︒. この第二〇九条の規定内容や趣旨からも知られるように︑現行法は貫ざ6<巽瓢身に伴う少数株主の保護に主眼. をおいて規定したものであり︑この慣行を積極的に把握しこの観点から規定したものとは考えられない︒. そこでジェンキンス委員会の宣ぎ6<震σ箆に関する諮問は︑最近の経済界におけるこの種の慣行の盛況にかん. がみて︑これを明確に法文化する意図からなされている︒従つてその手続や株主が株式を譲渡すべきか否かを決定す. るに必要な資料を開示するには如何なる規定を設くべきか︑また譲渡会社の取締役の任務およびかかる行為に要する. 資金あるいは反対の少数株主の株式強制買取については如何に対処すべきか等に及んでいる︒これに対する改正意見. 中最も注目に値するのは取締役協会と会社会計士協会︵宏ω8鼠怠990震寓譜α窪αOoも○声ε距80毒富鴬ω︶のそ. れであるが︑前者はまずこの慣行に明確な定義を与えることを提案し︑それも特種の株式を取得する一般的な申込に. も適用されるほど広義のものであること︑また$ざ6<巽亘畠に関する規定は必らず会社法中において︑譲受申込. 六三︵三〇三︶. 会社ならびに被申込会社の取締役会にその手続や資料に関する要件に従う義務を課し︑これを会社法の附表に規定す 英国会社法改正の課題.
(30) 論 ︵五︶. 説︵星川︶. ぺきことを勧告している︒. 六四︵三〇四︶. さらにその手続について︑右の申込が譲渡会社の株主に対して直接なされた場合は︑株主は遅滞なくこれを取締役. に通知し︑取締役がこの申込を検討するために七日の猶予を与え︑それから検討の結果を記載した書類を株主に送付 ︵六︶. したのち二一目間公開せしめること︑また申込が取締役を通じてなされた場合にも同様に二一日問公開せしむべきで. ︵七︶. あるとの主張がなされている︒いずれの場合にもこの申込に対する取締役会自体の片寄つた意見または申込を受諾す. べきか否かの勧告ないし助言を禁じ︑他方株主自身の決定に必要なあらゆる資料を利用せしめることは︑たしかに考 慮に値する問題であろう︒. 前にも述べた通り︑$冨−o<震三審は往々取締役を仲介として行われているので︑取締役の地位はきわめて微妙. といえる︒従つて︑取締役の所持するあらゆる関係資料を株主が利用しうるように保障する一方で︑取締役が自己の. 有する株式の譲渡を承認しているか︑譲受申込会社その他と如何なる契約を締結しているか︑さらに地位の喪失に対. する補償金のほか如何なる利益をうけているか等︑利益の開示の面でも現在以上に強化することが多くに支持されて. いる︒このほか株式譲受申込会社の同一性を明らかにするために︑申込会社若しくは終局の買取会社の商号および住 ︵八︶. 所︑買取会社が従属会社であるときはその持株会社の商号をも開示せしめること︑のみならず畠ざ6︿R巨畠に要 する資金関係の開示すら提案されている︒. とれらに対して︑反対株主の株式買取請求に関する現行規定については余り異論がみられないようである︒ ︵一︶o薯20 や 鋒 も 姦 凱 ︒ ・.
(31) 三. ︒Pおρ Oo巧①び○やo一梓こ℃や轟o. ︵二︶ Oo≦撃oや9fやま一● ︵三︶. ︵四︶ この現行法の規定は︑ 一九二九年法第一五五条と一九四七年法第一一条とを結合したものである︒. 一九二九年法のもとで. も︑譲渡会社に反対株主の株式に対する強制買取権がみとめられていたが︑次のような制限があつた︒すなわち譲受を希望す. る株式の一〇パーセント以上をすでに保有する会社は部ぎ6<霞び箆をなしえず︑また会社がこの契約の対象となつている. 株式の九〇パーセントを取得した場合には︑反対株主の株式買取を強制しうるのに反し︑反対株主は自己の株式の買取を譲受. 会社に請求することができなかつた︒さらにまた譲受会社が反対株主に株式を買受ける旨の通知をなし︑裁判所によつて反対. の命令がなされなかつたときは︑譲渡会社はその譲受会社を株主として登録する義務を負つた︒その結果︑反対株主の株式が. 譲渡証書の作成なくして譲渡されることになり︑適法な譲渡証書が交付されない限り︑会社が株式の譲渡を登録することは違. 法であるとする︑一九二九年法第六三条に抵触したのである︒現行法の規定は︑この欠陥を是正するため︑コーエン委員会の. 一一竃日昇霧9南く置①琴ρ℃.o︒Oピ. 勧告を容れて改正されたものである︒ ︵五︶. ︵七︶. oGP =蜜日β富の9国く誌o昌oρやoo2∴旨竃ぎ賃叶霧○協国ぐ置①βoρヤGo. ぎの江葺富鉱U一器90お︶=冒日昇$9国くこ①旨○ρ︾OoO廿. OO QQ ︵六︶ >めの09帥広050協O①円江ゆ①畠P昌qOON℃OH騨叶①︾OOO蝿昌一欝ロ仲ω一一N冒一5q一①ω○﹄国く一αΦ昌Oρ唱●○ Q●. ︵八︶. 少数株主の保護. 英国会社法.改正の課題. 六五︵三〇五﹀. 前述したように取締役の権限の拡大とともに︑ とくに大資本を有する会社について︑ 株式が無数の少額投資者に分. (.
(32) 論. 説︵星川︶. 六六︵三〇六︶. 散されてきていることから︑株主に与えられた権利の行使も有効になしえないことが多くなつてきている︒また多数. 派株主による会社支配も︑株式会社においては承認されている原理であるが︑ときに少数株主を圧迫しその犠牲を強. いる事態を生ずれば許容されえない問題となる︒それ故︑一方では株主をして会社の管理につき容易に有効適切な監. 督をなしうる方法を発見すること︑他方では多数派株主の支配的地位が横暴をともなうような場合に︑商務省および. 裁判所の権限をもつてこれを阻止すること等に︑前回の改正時におけるコーエン委員会の主眼がおかれていた︒現行. 法はその勧告をいれ少数株主の保護規定を設けたのであるが︑ジェンキンス委員会でも再びこの問題がとりあげられ ている︒. 現在︑少数株主の保護に関する主要な規定は︑裁判所の救済命令を定める第二一〇条である︒同条によれば︑会社. の業務が一部株主に対する圧制的︵o毛お隆ε︶な方法をもつて執行されたときは︑被圧制株主または商務省は︑裁. 判所に救済命令を請求することができる︒この場合裁判所は右の請求に理由がありかつそのために会社に解散を命ず. ることが︑被圧制株主に却つて不当な損害を与えるものとみとめるときは︑適正と思量する命令を発することができ. る︒この命令は会社の将来の業務執行方法を定めるものでも︑被圧制株主の株式を会社または他の株主に買取らしめ. るものでも差支えない︵同条二項︶︒このほか裁判所が解散を正当かつ衡平︵冒幹窪q8鼠$亘Φ︶として職権をもつ. てこれを行う場合の第二二二条︑および出資義務者たる株主の請求によつて解散命令を発する第二二五条の規定があ. る︒後者について裁判所は︑解散を請求した当該株主がこの解散請求以外にも救済を有する場合であつても︑解散せ. しめることが正当かつ衡平とみとめられるときは解散命令を発することを要する︒ただし当該株主が他の救済方法に.
(33) 訴えることなく専ら解散命令のみを求めることが不当と考えられるときは︑これを拒否することも可能である︒. さらに商務省の会社業務調査権限に関する第一六四条・第一六五条・第一七二条の規是︑貫ぎ6<震び箆に際して の少数株主の保護に関する第二〇九条の規定もそれぞれ有用とされている︒. ﹃正当かつ衡平﹄の原則に基き解散命令. しかしこれらの諸規定により︑少数株主は無節操な取締役や大株主の陰謀から保護されるわけであるが︑最も効 果的な救済と考えられている第二一〇条についても︑圧制の証明のほかに︑. を正当化する事実の存在︑ならびに解散が被圧制株主を不当に害することの証明をも要求されている︒そこでこの. 二つの条件は同条の救済に関する裁判所の権限に必要以上の拘束を課すものとみられ︑取締役協会はこの要件の削除 ︵噌︶. と死亡株主の人格代表者にもこの救済の申立権が与えられるべきであると提案している︒スコットランド弁護士会. ︵評︒巳芝9︾身08富ω︶も同条の適用条件の緩和に全く同意見であるが︑さらにこの救済を圧制以外の不正︑たと. えば少数株主を虐待しまたは少数株主の利益を害するあらゆる行為にも適用しうるようにすべきであると勧告してい. る︒なお同会は︑請求者が第二一〇条の命令をえた場合に︑裁判所は衡平の理念に反しない限り︑請求者︵会社が訴. 訟に現われてくるときは会社︶の諸費用を訴の対象たる行為の当事者たる取締役および株主に︑連帯してあるいは裁. 判所が相当と思量する割合で負担せしめること︑また請求者が命令をえられなかつた場合にも︑訴訟によつて請求す. ることが妥当と思われるならば︑全当事者の費用を会社に負担せしめる権限を与えること︵裁判所の自由なる裁量に. 六七︵三〇七︶. 委ねられる︶を提案し︑これに加え第二二二条および第二二五条の救済についても︑証明・費用ならびにその方法上 ︵二︶ の疑問点を指摘している︒. 英国会社法改正の課題.
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