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新しい線路下横断水路補修工法の開発

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Academic year: 2022

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新しい線路下横断水路補修工法の開発

JR西日本 正会員○ 田中 智也 JR西日本 山口 善彰

㈱大阪防水建設社 大日向正明 JR西日本 小寺 信行 1.はじめに

鉄道線路の路盤下を横断する水路管(以下“伏び”と称す)は,明治期に敷設されたものが今なお数多く供用されており,

それらの多くは陶管である.長期間供用されてきた結果,一部の伏びには破損・変形が生じており,破損部から伏び背面の 土が流出し,最悪の場合,路盤の陥没に至る.破損した伏びを修繕するには,管内を樹脂でライニングする方法が用いられ ているが,樹脂ライニングでは破損・変形の程度が大きい場合,元の断面までの復元が困難なため,適切な対策でない場 合がある.このような場合,既設伏びの隣に伏びを新設するなど,多くの費用と工期を要している.そこで今回,破損・変形 がある程度大きくても,通水断面が確保でき,既設伏びが修繕可能な工法を考案し,現場での検証を行ったので報告する.

2.伏び修繕方法の検討

破損・変形の発生した伏びの例を図-1に示す.今回考案した工法は,このように損傷した伏びの内部に拡径用パッカー と称するチューブにロール状の形状保持板(鋼とステンレスの複合材)を巻きつけて挿入した後,水圧で膨張させ,破損・変 形した伏びの断面を復元するものである.この形状保持板には爪状の突起が設け

られており,一旦拡がると元に戻らないように加工している(図-2)ため,拡径用パ ッカーは減圧後収縮するが,形状保持板により,矯正した管の断面形状を保持す ることができる.その後,拡径用パッカーを引き抜き,伏び破損部の止水,管内粗度 の改善を目的として通常の樹脂ライニングを施工する.図-3に工法の概要を,図- 2に拡径用パッカーと形状保持板をそれぞれ示す.

本工法導入にあたって,検討しなければならない課題として,(1)管矯正に必要 な水圧および拡径用パッカーの耐圧能力,(2)拡径用パッカー膨張時の路盤隆起 等の軌道影響が挙げられたので,以下のとおり検討を加えた.

3.水圧による変形矯正方法の検討 (1) 矯正に必要な水圧の設定

破損して落ち込んだ伏び上部を持ち上げて矯正するには,上載土圧 に相当する拡径用パッカーの抵抗水圧が必要となる.そこで,図-4のと おり管破損部に崩壊線内の土重量が載荷されるものと仮定した.

一方,鉄道の盛土には高さ10mを超えるものもあり,土被りが大きい場 合には上載土にアーチ作用が働き,土圧が軽減されるため,伏び上面 には一定高さより下の土の重量のみが加わるものと考えた.この高さを上 載土の有効高さ呼ぶこととし,これを求めることにした.図-5はテルツァギ

キーワード 線路下横断水路管,陥没,鉄道構造物,維持管理

連絡先 〒601-8411 京都市南区西九条北ノ内町5-5 TEL075-682-8116

図-1 破損した伏びの例

拡径用パッカー 形状保持板

図-2 拡径に使用する器具 図-3 工法の概要

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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Ⅳ‑352

(2)

土被り(m) 1.0 2.0 3.0 4.0 抵抗水圧(Mpa) 0.05 0.17 0.37 0.63 表-1 土被りに応じたパッカー内の必要水圧 の緩み土圧算定式1)を用いて管に作用する緩み土圧と土被りの関係を表したもので

ある.これによるといずれの伏び径でも土被り3~4mで頭打ちとなっているため,これ を目安として,上載土の有効高さを4m以下として計算することとした.

有効高さよりも下かつ崩壊線内の上載土重量が伏び破損部に作用すると考え,こ れを伏び破損部の面積で除したものを拡径用パッカーに必要な抵抗水圧Psとして 次式に示す.

Ps=γs{(2d’/tanθ+W)+W}/2W (1) ここに,W:伏び破損幅(伏び内径)

d’:上載土の有効高さ γs:土の単位体積重量

式(1)で計算した結果を表-1にまとめる.これによると,必要抵抗水圧は 0.63MPa以上となり,以下の検討に用いる必要抵抗水圧を0.7MPaに設定し た.

(2)拡径用パッカーの膨張量

鉄道の線路はミリ単位で変位管理を行っており,拡径用パッカーの過大 膨張による軌道面の隆起は許容することができない.そこで拡径用パッカー の膨張量について検討を行なった.伸縮性のない素材であるφ300mm拡径 用パッカーを用いて膨張試験を行った結果,図-6に示すとおり,破裂直前 の0.8MPaでφ311.1mmと管径よりも11mm大きくなるだけであった.また 0.9MPaで破裂したが,伸縮性がないため,破裂時の衝撃はほとんどなかっ た.以上のことから,拡径用パッカーに設計許容水圧以上の水圧がかかっ ても,膨張による変形は路盤内で収まり,軌道の変位を発生させる程度のも のではないと考えられる.

4.実用性の検証

表-2に示す3箇所を選定し,供用中の線路下の破損伏びを用いた施工 試験を実施した.図-1の箇所における施工後の状況を図-7に示す.3 箇 所とも破損した伏びの破片が背面でせり合い,若干いびつな断面となった が,通水断面としては問題ないレベルに矯正されたことを確認した.また,

全箇所で軌道の変位を計測したが,施工中,施工後とも全く変位は認めら れなかった.

5.まとめ

本研究において,軌道変位に対する厳しい制約がある鉄道線路下において,伏 びの変形を矯正する工法を開発し,安全に施工できることを検証した.これまで行 っていた撤去・新設工法は工期も長く,伏びの変状が発見されても施工完了までの タイムラグが生じていた.本工法を採用することにより,撤去・新設工法に必要な重 機進入路や作業ヤードの整備は不要となり工期は数週間から 1~2 日に大幅に短 縮される.さらに費用は3分の1程度に削減できたこともあわせ,線路陥没等のリス ク軽減に貢献できると考えている.今後も古い鉄道構造物を安全に供用してゆくた め創意工夫に努めてゆきたい.

参考文献

1)鉄道総合技術研究所:鉄道構造物等設計標準・同解説(シールドトンネル),2002.12

表-2 施工性試験実施箇所

A B C

伏び径(mm) 300 300 300

土被り(m) 1.4 2.2 1.3

伏び延長(m) 12.6 15.8 15.2

破損・変形延長(m) 0.7 1.5 4.8

施工箇所 伏び諸元

図-6 加圧によるパッカー外径の変化 285

290 295 300 305 310 315

0 0.2 0.4 0.6 0.8

パッカー内水圧(MPa)

パッカー(mm)

破裂

管径

図-7 施工後の状況 図-4 破損伏びの上載土

図-5 土被りと緩み土圧の関係

0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0

0 2 4 6 8

土被り(m)

土圧kN/)

伏び径φ200 伏び径φ250 伏び径φ300

伏び径φ400 伏び径φ600

土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月)

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参照

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