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大阪港夢洲トンネル夢洲側アプローチ部 開削区間における地下水対策

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(1)

大阪港夢洲トンネル夢洲側アプローチ部 開削区間における地下水対策

仁木  秀典

1

・黒川  文宏

2

・市川  晃央

3

・鳥越  廣美

4

・ 宮﨑  優

5

・辻  浩樹

6

・外山  純

7

1国土交通省  近畿地方整備局  大阪港湾・空港整備事務所(〒552-0007 大阪市港区弁天1-2-1

2国土交通省  近畿地方整備局  神戸港湾空港技術調査事務所(〒651-0082 神戸市中央区小野浜7-30

3正会員  博士(工学)  ㈱竹中土木大阪本店  工事部技術グループ(〒541-0053 大阪市中央区本町4-1-13

4㈱竹中土木大阪本店  Y2工区築造工事事務所(〒554-0051 大阪市此花区酉島2-6-4

5㈱竹中土木大阪本店  工事部技術グループ(〒541-0053 大阪市中央区本町4-1-13

6工修  大成建設㈱関西支店  Y1工区築造工事事務所(〒554-0024 大阪市此花区島屋3-10-34

7正会員  大林・錢高・あおみ特定建設工事共同企業体  Y3工区築造工事事務所(〒554-0013 大阪市此花区梅香1-14-3

夢洲トンネル夢洲側アプローチ部の開削工事は,OP+5.0mから最大で27.3mを掘削し,ボックスカルバ ートおよびU形擁壁を築造するものである.本工事では,OP-40.0m以深の洪積砂礫層において被圧地下水

位がOP+1.6mと高く,盤ぶくれ等に対する対策を必要とした.そこで,鋼管矢板土留壁を洪積粘土層

Ma12層)へ根入れさせ,鋼管矢板継手部の止水対策を実施した.掘削開始前には,掘削範囲約11,000m2 の大規模な揚水試験を行い.土留壁の止水性能が確保されていることを確認した.また、浸透流FEM解析 により土留壁の透水係数を求めた結果,計画時の1.0×10-5cm/secよりも小さな3.95×10-6cm/sec程度である ことが分かった。

キーワード:鋼管矢板土留、被圧地下水、止水対策、リリーフウェル、揚水試験 

1. はじめに

  大阪港夢洲トンネルは,咲洲と夢洲間(道路部の起終 点である咲洲地区コスモ7号線から夢洲地区幹線道路ま での区間)を結ぶ鉄道と道路が併設された区間を整備す るものであり,工法としては,海底区間を沈埋トンネル 工法,アプローチ区間を開削工法にて施工するものであ

る(図-1参照).

  その中の夢洲側アプローチ区間は,海底トンネルと若 令埋立人工島である夢洲の陸上までを取り付けるための ものであり,ボックスカルバートおよびU形擁壁の構造 から成るものである.本論文の対象としている区間は,

夢洲側アプローチ部の中で,写真-1中に記載のY1,Y2,

Y3工区であり,鋼管矢板土留壁により締切られた区間

図-1  夢洲トンネル位置図1)  写真-1  夢洲トンネルアプローチ区間全景 

Y1工区 Y2工区 Y3工区

立坑

(2)

積約11,000m,最大掘削深度27.3mである.概略平面を 図-3に示す.

図-2  概略平面図(鋼管矢板土留壁締切り範囲:Y1〜Y3工区) 

下り線 上り線

OP-41.102

OP-51.125 壁状地盤改良基礎 (深層混合処理) 1500

OP+1.600

3400

OP+5.000

38200 1500

2800

OP-19.480 OP-16.680 OP+5.000

(深層混合処理)先行地中梁

21055 55500

31645 625

図-3  断面図(Y2工区 A3断面) 

(自動計断面

(自動計

(自動計測断

(自断面

(自

(自動計測断

ゾーン6 B4 ゾーン6 B3断面

ゾーン5 A2 ゾーン5 A1断面

ゾーン5 A5断面 ゾーン5 A3

4k662m045 Y3工区施工範囲

Y1工区施工範囲

4k406m000

Y2工区施工範囲 4k298m290

4k518m000

39.7m

288.2m (自動計断面

(自動計

(自動計測断

(自断面

(自

(自動計測断

ゾーン6 B4 ゾーン6 B3断面

ゾーン5 A2 ゾーン5 A1断面

ゾーン5 A5断面 ゾーン5 A3

4k662m045 Y3工区施工範囲

Y1工区施工範囲

4k406m000

Y2工区施工範囲 4k298m290

4k518m000

39.7m

288.2m

図-4  地層縦断図 

(3)

  本工事区間の地層構成を図-4に示す.当該地盤は,旧 海底面である沖積粘性土層Ac1層の直上に人工埋立地盤 である敷き砂層Bs層および埋土層Bsg層が存在し,旧海 底面下はAc1およびAc2層が25m程度堆積している.Ac2 層の下層地盤は,沖積砂層As層が薄く存在するが,OP-

40m付近から約10mの厚さで洪積砂礫層Dg1層が存在する.

この層は,難透水性地盤に挟まれており,被圧地下水位 がOP+1.6mと高い.その下部には洪積粘性土層Ma12層が 存在し,本工事では遮水層として鋼管矢板土留壁を根入 れさせている(施工基盤高:OP+5.0m).

  Y1工区およびY2工区の鋼管矢板は,夢洲が埋立られ る以前に海上から施工され,その後の埋立により鋼管矢 板に無視することの出来ない先行変位が生じている箇所 があった.また,洪積層へのバイブロハンマによる打設 であったことから,文献2)に記述されているように,継 手部のせり合いや押し引き等による継手形状の健全性の 不確かさや,ウォータージェット併用の打設に伴う鋼管 矢板周辺の地盤の緩みによる水みちの形成が懸念された.

そこで本工事は,掘削時の鋼管矢板継手部からの異常出 水防止やパイピング,掘削底面の安定確保(盤ぶくれ防 止)のために,継手部の止水対策とリリーフウェルを用 いたDg1層の被圧地下水位の低下対策を行った.

  以上により,本論文は,鋼管矢板土留壁継手部の止水 対策と対策後に行った現場揚水試験,その結果を用いた 土留壁の止水性能の評価について報告するものである.

2. 鋼管矢板土留壁継手部の止水対策   

  鋼管矢板の継手部の止水対策は,例えば,咲洲トンネ ルの施工実績3),4)がある.本工事も同様なものであり,こ れらの実施例と夢洲と対岸側である咲洲アプローチ部の 施工結果を参考に,継手内部の止水と継手背面の止水の 併用として対策を行った. 

     

(1) 継手内部の止水対策 

  鋼管矢板の継手形状は図-5に示すようなP-P継手であ る.この形状の継手内部は,セメント系注入材による充 填により止水対策を行った.まず,試験施工を実施し,

その結果より,写真-2のような3種類の継手形状に分類 することができ,充填の仕様を以下のように規定し施工 を行った.

・ 継手の口元3室の内,ロッド削孔可能な60mmの幅 を有する箇所において削孔を行う.

・ 削孔不能判定基準は,ロッド貫入速さ5cm/min以下 が10分以上継続しても改善されない場合とする.

・ 削孔完了後,水と空気によるエアリフト作用によ る継手内の洗浄を行う.

・ 充填材のゲルタイムは,注入ロッドの引上げ等を 考慮して,1分とする.

  継手内部の充填は,全長に亘って施工を行う計画であ ったが,鋼管矢板打設時に継手内部に侵入した礫の存在,

鋼管矢板の変形,継手のズレと推定される影響により,

ボーリングマシンによる削孔が不能となる箇所が多数発 生した.その為,削孔不能となった深度から継手先端ま

写真-2  鋼管矢板継手状況  (iii) 3室削孔可能 (ii) 1室削孔可能(中央)

(i)  2室削孔可能(左右)

鋼管矢板 鋼管矢板

9.0

Φ165.2

図-5  鋼管矢板P-P継手一般平面図(単位:mm) 

(4)

では未止水状態となり,鋼管矢板締切り内へ地下水が容 易に流入可能な区間が残った.この対策として,未止水 区間については,鋼管矢板の背面から止水対策を行った.

(2) 継手背面地盤の止水対策 

  前述したとおり,継手内部の止水が不可能な範囲につ いて,鋼管矢板背面より,薬液注入(ダブルパッカー工

法)による地盤改良を行った.表-1に薬液注入の断面方 向範囲および注入形状の仕様を,図-6に薬液注入の平面 範囲を示す.

  表-2に注入率の一覧を示す.透水性が高く被圧帯水層 であるAs層およびDg1層の注入率は,重要度率120%を考 慮して45%とし,地層の不陸分1.0mを考慮して,対象層 の上下1.0mの範囲も45%の注入率とした.その他の層は 一般的な注入率を設定した. 

  なお,使用した注入材は,一次注入でセメント・ベン トナイト,二次注入で非アルカリシリカゾル系溶液型水 ガラスを用いた. 

表-2  注入率一覧 

一次注入 二次注入

埋土 Bsg 沖積粘性土

Ac1,2 沖積砂質土

As 洪積砂礫土

(天満砂礫層)

Dg1 洪積粘性土

Ma12U

45.0 5.0 35.5 40.5 10.0 18.0 28.0 土質種類

10.0 18.0 28.0 注 入 率 (%)

10.0 35.0 45.0

10.0 35.0

図-6  継手背面地盤の薬液注入一般平面図(単位:mm) 

1,500 248

1,500 2,372

円弧長1.5m 円弧長1.5m

1,5001,000

2,50072

注入範囲  掘削側 背面側

1.5m 継手内充填完了範囲継手内充填範囲

1.5m

2.5m 沖積砂質土層As

洪積礫質土層Dg1

掘削側 背面側

計画 止水下端

継手内充填完了範囲継手内未充填範囲

2.5m

1.5m

沖積粘性土層Ac1,Ac2

洪積粘性土層Ma12

沖積粘性土層Ac1,Ac2

洪積粘性土層Ma12

1.0m

計画 止水下端

沖積砂質土層As 洪積礫質土層Dg1 掘削側

背面側

1.5m 継手内充填完了範囲継手内充填範囲

1.5m

2.5m 沖積砂質土層As

洪積礫質土層Dg1

掘削側 背面側

計画 止水下端

継手内充填完了範囲継手内未充填範囲

2.5m

1.5m

沖積粘性土層Ac1,Ac2

洪積粘性土層Ma12

沖積粘性土層Ac1,Ac2

洪積粘性土層Ma12

1.0m

計画 止水下端

沖積砂質土層As 洪積礫質土層Dg1

・背面注入は継手充填完了下端とラップ長1.5mを確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の注入 は、継手注入の計画止水下端深度まで行い、遮水性能を確保する。

・洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の1.0mの注入に関しては、洪積 砂礫土層の不陸を考慮し、注入率は洪積砂礫土層と同等とする。

・背面注入は継手充填完了下端とラップ長1.5mを確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層とその上部に存在する沖積砂 質土層は、沖積粘性土層と1.0mのラップをとることにより、遮水性能を 確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の注入は、

継手注入の計画止水下端深度まで行い、遮水性能を確保する。

・洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の1.0mの注入に関しては、洪積 砂礫土層の不陸を考慮し、注入率は洪積砂礫土層と同等とする。

充填完了位置がAsおよびDg1の場合 充填完了位置がAsおよびDg1層以浅の場合

・背面注入は継手充填完了下端とラップ長1.5mを確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の注入 は、継手注入の計画止水下端深度まで行い、遮水性能を確保する。

・洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の1.0mの注入に関しては、洪積 砂礫土層の不陸を考慮し、注入率は洪積砂礫土層と同等とする。

・背面注入は継手充填完了下端とラップ長1.5mを確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層とその上部に存在する沖積砂 質土層は、沖積粘性土層と1.0mのラップをとることにより、遮水性能を 確保する。

・大深度・高被圧である洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の注入は、

継手注入の計画止水下端深度まで行い、遮水性能を確保する。

・洪積砂礫土層下部の洪積粘性土層の1.0mの注入に関しては、洪積 砂礫土層の不陸を考慮し、注入率は洪積砂礫土層と同等とする。

充填完了位置がAsおよびDg1の場合 充填完了位置がAsおよびDg1層以浅の場合

1.0m 1.0m

注入範囲 

注入範囲 

(5)

3. 現場揚水試験   

(1) 揚水試験の概要 

  前章で述べた止水対策を施した鋼管矢板土留壁の止水 性能の確認および盤ぶくれを防止するために必要な水位 低下量14.4m(Dg1層の被圧地下水位OP+1.6mからの水位 低下量:荷重バランス法により算定)の確認のために揚 水試験を実施した.

  揚水対象層は,OP-40〜50m付近に堆積している洪積 砂礫層Dg1層(As層を含む)であり,揚水は締切り範囲 のほぼ中央に位置しているリリーフウェルDW1から行 った(図-7参照).

  揚水井戸DW1の構造は,今回の揚水試験における対 象層の全深度に亘って巻線スクリーンを設置している.

それ以外の層にはスクリーンを設けていない.また,井 戸の直径は600mmである.

  試験方法は,基本的に24時間の連続揚水とし,揚水量 および水位低下の経時変化により揚水期間を判断した.

  計測項目は,図-7に示した揚水井戸の揚水量および水 位,観測井戸の水位,掘削範囲内のDg1層に設置した間 隙水圧計,鋼管矢板土留壁の前背面に設置した間隙水圧 計による水位である.計測項目の詳細は,表-3のとおり である.井戸の水位は手動計測,それ以外の計測は自動

計測により行った.

(2) 揚水試験の結果 

  揚水試験は,揚水開始後24時間で揚水量と水位が安定 したと判断して終了した.

  揚水試験による水位変化の経時グラフを図-8に示す.

(自動計測断

(自面)

(自動計測断

(自断面

(自

(自動計測断面)

ゾーン6 B4断面 ゾーン6 B3

ゾーン5 A2 ゾーン5 A1断面

ゾーン5 A5断面 ゾーン5 A3

4k662m045 Y3工区施工範囲

Y1工区施工範囲

4k406m000

Y2工区施工範囲 4k298m290

4k518m000

39.7m

288.2m

間隙水圧計

間隙水圧計 間隙水圧計

間隙水圧計 間隙水圧計

間隙水圧計A1下り 間隙水圧計A1上り

間隙水圧計A3下り 間隙水圧計A3上り

間隙水圧計L22 DW-L1

DW-L2

【揚水井】 DW-2 DW-1

間隙水圧計R22

DW No.1 DW No.2

(自動計測断

(自面)

(自動計測断

(自断面

(自

(自動計測断面)

ゾーン6 B4断面 ゾーン6 B3

ゾーン5 A2 ゾーン5 A1断面

ゾーン5 A5断面 ゾーン5 A3

4k662m045 Y3工区施工範囲

Y1工区施工範囲

4k406m000

Y2工区施工範囲 4k298m290

4k518m000

39.7m39.7m

288.2m

間隙水圧計

間隙水圧計 間隙水圧計

間隙水圧計 間隙水圧計

間隙水圧計A1下り 間隙水圧計A1上り

間隙水圧計A3下り 間隙水圧計A3上り

間隙水圧計L22 DW-L1

DW-L2

【揚水井】 DW-2 DW-1

間隙水圧計R22

DW No.1 DW No.2

図-7  井戸および間隙水圧計配置平面図 

表-3  計測項目一覧 

計測頻度

(分/回)

箇所数

(箇所)

揚水量 ノッチタンク

(水圧計) 自動計測 1 1

水位 ミリオン水位計 手動計測 30 1

観測井戸 水位 ミリオン水位計 手動計測 30 5

土留締切り内Dg1層 水圧 間隙水圧計 自動計測 30

(Y2工区:1分) 5

鋼管矢板土留壁前面 水圧 間隙水圧計 自動計測 30

(Y2工区:1分)

6

(深度方向に 1〜6箇所)

鋼管矢板土留壁背面 水圧 間隙水圧計 自動計測 30

(Y2工区:1分)

6

(深度方向に 6〜8箇所)

計測項目

揚水井戸DW1

計測方法

-40 -30 -20 -10 0

07/10 07:30 07/10 13:30 07/10 19:30 07/11 01:30 07/11 07:30 時間

水位低下量(m)

DW-L1 DW-L2 DW1(揚水井戸) DW2 DW-L1 DW-L2

(ii)  水位低下量(揚水井戸・観測井戸)

(i)  DW1揚水量

10 20 30 40 50

07/10 07:30 07/10 13:30 07/10 19:30 07/11 01:30 07/11 07:30 時間

被圧水頭(m)

掘削側 背面側

(iii) A1上り間隙水圧計による被圧水頭

(鋼管矢板土留壁の壁面に設置,Dg1層)

図-8  揚水試験結果

0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7

07/10 07:30 07/10 13:30 07/10 19:30 07/11 01:30 07/11 07:30 時間

揚水量(m3/min)

0.36m3/min

揚水開始 揚水停止

(6)

び観測井戸の孔内水位である.また,図-8(iii)は,A1上 り側の鋼管矢板土留壁のOP-44.54m位置の壁面に設置さ れている間隙水圧計の計測値であり,Dg1層の被圧水頭 である.

  図-8(i)より,揚水開始より約8〜9時間は揚水量が安定 しておらず,これ以降は概ね安定しており,揚水量は,

揚水開始から24時間後で0.36m3/minであった.また,図- 8(ii)および(iii)より,揚水量が安定していない時は,水位 が急激に低下している間であることが分かる.揚水開始 から約9時間以降(7/10 19:30以降)は,揚水量および水 位低下量は安定している.このときの水位低下量は,揚 水開始から24時間後で,全計測値の平均をとると,

21.4mとなった.これは,盤ぶくれを防止するための水

位低下量14.4mを満足するものである.(掘削工事では,

水位制御装置により水位を管理した.)

また,図-8(iii)より,土留壁の掘削側および背面側の 壁面の被圧水頭の計測結果は,揚水開始時から停止まで で,揚水を行った掘削側で18.8m,背面側で3.4mの変化 があった.したがって,掘削側と背面側の水頭差は,

A1上り計測位置で15.4mであった.

  図-9に,揚水開始より24時間後における,揚水井戸か ら各水位観測地点までの水平距離と水位低下量の分布を

いて,ほぼ同一の水位低下量を示している.これは,土 質調査時のAs層およびDg1層の透水係数が現場透水試験 結果より,As層で1.07×10-1cm/sec,Dg1層で2.72×10-1cm/sec と透水性の高い地盤であることによるものであると考え られる.

4. 鋼管矢板土留壁の止水性能評価 

(1) 浸透流FEM解析による土留壁の透水係数の推定    3章で述べた揚水試験の結果より,揚水量および水位

-30 -25 -20 -15 -10 -5 0

-150 -100 -50 0 50 100 150

揚水井(DW1)からの距離(m)

水位低下量(m)

Y3工区 Y1工区 Y2工区

DW1【揚水井】

DW No.1 DW No.2 DW2 DW-L1 DW-L2

平均水位低下量 21.43m

図-9  揚水試験範囲の水位低下量 

表-4  解析断面および解析定数の概要(揚水井戸位置) 

19.1

24.7

0.6

7.1 Ac1

Ac2 Bsg

As

透水係数

(cm/sec) 備  考

2.27E-02

8.52E-06 層  厚

(m)

17.6

現場 透水試験

現場 透水試験

2.72E-01

1.00E-07 1.07E-01

Creager の方法 Creager の方法

Ma12 検 討 断 面

土質 深  度 (GL-m)

19.1

43.8 44.4

51.5

69.1 Dg1

▽ OP+5.0m

▽ OP-14.1m

▽ OP-38.8m

△ OP-39.4m

▽ OP-64.1m

▽ OP-46.5m

41.2m

2.5m

55.5m

▽ OP+1.6m

▽ OP-19.48m

揚水井戸

Ma12 検 討 断 面

土質 深  度 (GL-m)

19.1

43.8 44.4

51.5

69.1 Dg1

層  厚 (m)

17.6

現場 透水試験

Creager の方法 による評価

現場 透水試験

2.72E-01

1.00E-07 1.07E-01

Creager の方法 Creager の方法 透水係数

(cm/sec) 備  考

2.27E-02

8.52E-06 Ac1

Ac2 Bsg

As

19.1

24.7

0.6

7.1

▽ OP+5.0m

▽ OP-14.1m

▽ OP-38.8m

△ OP-39.4m

▽ OP-64.1m

▽ OP-46.5m

41.2m

2.5m

55.5m

▽ OP+1.6m

▽ OP-19.48m

揚水井戸

(7)

低下量を用いて,鋼管矢板土留壁の透水係数を推定する. 

a) 解析概要 

  今回用いた解析コードは,二次元飽和・不飽和浸透流 解析プログラムUNSAF-2D(UNsaturated-Saturated Analysis program by Finite element method)である.

  解析方法としては,土留め壁内への地下水の流入の主 要因と考えられるものが,鋼管矢板土留め壁の継手部で あることから,土留壁の透水係数によるパラメトリック スタディを行い,揚水試験結果で得られた定常状態にお ける揚水量のときの土留壁の透水係数を求めた.

  解析の条件は以下の通りである.

・ 断面方向の対象条件を考慮した1/2モデルの2次元定 常解析とした(図-10参照).

・ モデルサイズは,Siechardt式により影響圏半径を算 定し,掘削幅の1/2と土留壁厚と影響圏半径の和と して設定した.

・ 深度方向には,鋼管矢板が根入れしているMa12層

が17.6mと厚く堆積していることから,Ma12層下端

までをモデル化した.

・ 境界条件は,土留壁で締切られた内部(掘削側)

の揚水対象層であるDg1層(As層を含む)上端にお いて,揚水試験で得られた揚水開始24時間後の平 均水位低下量21.4mに相当する水頭固定条件とし,

モデル右端の側方境界は,自然水頭固定条件とし た.

・ 土留壁厚は1200〜1800mmの鋼管矢板が使用されて いるが,解析においては,透水距離に対する換算 が容易であることから,単位幅1.0mとしてモデル 化した.

  表-4に解析断面と解析に用いた定数を示す.解析断面 は,鋼管矢板土留壁で締切られた範囲のほぼ中央である 揚水井戸DW1の設置されている断面を採用した.また,

解析に用いた透水係数は,土質調査時に現場透水試験を 実施している層については試験値を,それ以外について は,Creagerの方法により決定した.

b) 解析結果 

図-11に浸透流FEM解析による土留壁の透水係数と揚 水量の関係を示す.

図-11(a)より,土留壁の透水係数が1.0×10-5〜1.0×10-2cm/sec で急激に揚水量が増加する傾向であることが分かる.

また,図-11(b)を用いて,解析結果と揚水試験結果を 比較することで,地盤の透水係数のバラツキや解析にお ける種々の仮定等の影響を除けば,鋼管矢板土留壁の透 水係数の推定が可能である.先に述べた揚水試験の結果 から,揚水量は0.36m3/minであった.本図より,このと きの土留壁の透水係数は3.95×10-6cm/secとなる.

 

1,207.462m  土留壁 

Dg1 層上端 

図-10  FEM解析モデル

0 2 4 6 8 10 12 14 16

1.0E-10 1.0E-08 1.0E-06 1.0E-04 1.0E-02 1.0E+00 1.0E+02 土留壁の透水係数(cm/sec)

揚水量(m3/min)

a)  縦軸:実軸

b)  縦軸:対数軸

0.0001 0.001 0.01 0.1 1 10 100

1.E-10 1.E-08 1.E-06 1.E-04 1.E-02 1.E+00 1.E+02 土留壁の透水係数(cm/sec)

水量(m3/min

3.95×10-6

図-11  土留壁の透水係数と揚水量の関係 

(8)

  本工事において,計画時に井戸の揚水量の算定等に用 いた透水係数は,SMWのソイルセメントの透水係数の 下限値5)と同等と仮定し,k=1.0×10-5cm/secであった.前節 で推定した鋼管矢板土留壁の透水係数は,約11,000m2の 範囲における平均的な値として,k=3.95×10-6cm/secの値 を得た.この値は,計画時に想定した透水係数よりも小 さな値であり,鋼管矢板の継手部は良好な止水性能を有 していると推定できる.

実施工時においては,掘削が完了するまで,掘削に伴 う土留壁の変形に対して継手の止水性能が変化すること が考えられたが,継手部からの大きな出水は無く,概ね ドライの状態で掘削を完了することができた.施工結果 からも,土留壁は良好な止水性能を有していたと考えら れる.

 

5. まとめ 

  最大掘削深度27.3mの大深度開削工事において,鋼管 矢板土留壁の止水対策を確実に行い,掘削の開始前に揚 水試験を実施した.洪積砂礫層Dg1層を対象とした揚水 試験は,掘削範囲約11,000 m2で行い,盤ぶくれ防止に必 要な水位低下量を確保することができ,鋼管矢板継手部

  また,揚水試験結果を用いた浸透流FEM解析により鋼 管矢板土留壁の透水係数を逆算した結果,幾つかの仮定 条件はあるものの,k=3.95×10-6cm/secという良好な値を 得ることができた.

  この結果を受けて掘削を開始したが,大きな出水は無 く,盤ぶくれの発生を抑制することができ、安全に掘削 を完了することができた。

  最後に,今後の同様な開削工事の計画において,止水 対策や鋼管矢板土留の止水性評価の参考資料となれば幸 いである.

参考文献 

1) 国土交通省近畿地方整備局大阪港湾・空港整備事務所:大阪 港夢洲トンネルパンフレット

2) 稲積真哉,木村  亮,Arap Too Jonah Kiptanui,嘉門雅史,田 村博邦,萩原敏行,西山嘉一:海面処分場における鋼管矢 板遮水壁の遮水処理問題と遮水性向上技術,第 15回廃棄物 学会研究発表会講演論文集,pp.1154〜1156,2004.

3) 運輸省第三港湾建設局大阪港湾空港工事事務所:大阪市港湾 局大阪港咲洲トンネル工事誌,pp.Ⅲ-10〜Ⅲ-199,1998.

4) 木山正明,桜井  晋,森本信治:大阪港咲洲トンネルにおけ る土留工事について,基礎工,Vol27,No.8,pp.68〜74,1999.

5) 日本材料学会:ソイルミキシングウォール(SMW)設計施 工指針(改訂版),2002.

参照

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