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博 士 ( 理 学 ) 阪 田 義 隆

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 理 学 )

  

阪 田 義 隆

学 位 論 文 題 名

    Geostatistical Reservoir IVIodeling of Trending     Heterogeneity Specified in Focused Recharge Zone:A Case Study of Toyohira River Alluvial Fan

,Sapporo ,

Japan     

(伏没涵養帯に着目した帯水層の漸移異質性に関する地球統計学的

    

モデリング―豊平川扇状地を例として−)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

    近 年の気候変動や人口 急増は世界各地, とりわけ乾燥・半乾燥地域において深刻な水資 源不足 を招いている,粗粒 な沖積層は乾燥地 域における貴重な地下水貯留層だが,その賦存 量は有 限で,かつ地下水位 の低下や汚染の影 響はその高透水性ゆえ広範囲に及ぶ,持続的な 地下水 の利用・開発を目的 とした地下水モデ リングでは,透水性の空間変化の再現が最大の 課題で ある.特に地球統計 学的手法はデータ の不足と不確定性を考慮する点で決定諭的手法 に比べ 優位だが,粗粒な沖積層ではその漸移異質性によって必要な定常性仮定を満たさない,

オーダ ー変化する透水係数 の空間変動から巨 視的トレンドを抽出するには,多数の原位置デ ータが 必要であるため,特 に深部方向の漸移 異質性のモデル化はほとんど行われていない.

    本 研究の目的は,豊平 川扇状地における 扇状地礫層の漸移異質性,特に鉛直方向のトレ ンドを 明らかにするととも に,地球統計学的 モデリングを通じて,漸移異質性に起因する複 雑な地 下水流動や物質移送 が定量的に再現可 能なことを示すことである.この目的に対し,

本研究 は河川沿いの伏没涵養帯に着目した.伏没涵養帯は涵養量や範囲の特定が可能な点で,

降雨に よる面的涵養と区別 される,河床から 鉛直方向に浸透レた地下水流は深部への浸透過 程で異 質性の影響を受け様 々な速度・方向に 変化する.特に透水性が深度減衰する漸移異質 性下で は,地下水流が浅層 部に集中し,深層 部で定常となる.また地下水温は表流水との変 化コン トラストが大きく, 伏没涵養帯内での 良好なトレーサーになりうる,この水位・水温 分布を 伏没涵養帯内で密に 測定,解析するこ とで,漸移異質性の詳細な評価が可能となる.

    ま ず豊平川扇状地にお ける伏没涵養帯を 特定するため,地下水面標高と鉛直動水勾配の マッピ ングを行った.既設 井戸の水位は異な る時期や深度で観測されており,そのマッピン グには 不確定性を伴う.こ のため長期観測デ ータの変動分析を踏まえたフィルタリングとク リギン グ法を組み合わせる ことで,より信頼 性の高いマップを得た.特にスクリーンが複数 設置さ れる深井戸の場合,観測水位が代表する深度の特定は困難なため,スクリーンの上端,

中間, 下端の各深度でマッ ピングを行い,交 差検証法により最も妥当なマップを選定した,

    次 いで,伏没涵養帯の 区間と伏没量を把 握するため,豊平川にて同時流量観測を実施し た.豊 平川の流量観測は, 礫床河川に特有の 複雑な水深・流速の分布によって大きな観測誤 差を伴 い,これまで伏没量 の定量評価が困難 であった,本研究では,可搬式ドップラ一流速 計の採 用と流速測定測線の 細密化を組み合わ せた観測法を考案した.扇頂から扇端まで河川 流 量を 連 続的 に観 測 し, 流量 の 縦断 分布 と その 変化 か ら伏没区 間と伏没量を特定し た,

    本 研究では,特殊サン プラーで採取した 不攪乱試料を用いた礫質土の透水係数モデルを 導出し ,透水係数の深度プ ロファイルとその トレンドを推定した.不攪乱試料の礫間の細粒 部の充 填度(基質充填度) を4段階 (I〜IV) に分類し,高充填部の透水性は粒径の二乗,低 充填部 の透水性は分布長の 二乗に比例すると した合成透水係数モデルを導き,試料採取深度 での現 場透水試験の実測値 を再現するようパ ラメータの最適化を行った.次いで,透水係数 モデル を扇頂,扇央,扇端 の連続コアに適用 し,対数透水係数の深度プ口ファイルとし,更

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(2)

に推定誤差 を緩和する移動平均 を施して,対数透 水係数の移動平均 と深度との回帰分析を行 っ た . こ の 回 帰 式 を 変換 し ,透 水係 数 の鉛 直ト レ ンド が指 数 減衰 式と し て導 かれ た ,     推定し た鉛直トレンドに地 球統計学的手法を 組み合わせること で,漸移異質性を反映し た多数の透 水係数分布が生成で きる.生成した透 水係数分布を用い て水位・水温分布を計算 レ,観測値 との再現性を比較評 価することで,漸 移異質性モデリン グの重要性が示される,

解析に先立 ち,伏没涵養帯内の 地下水観測井を利 用し,水位・水温 の連続観測が行われた,

解析モデル は,観測測線に沿っ た断面二次元領域 での有限差分モデ ルとし,かつ河道から観 測孔間をImグリッドの高解像度 モデルとした.計 算には,水温変化 に伴う透水性の変化を忠 実に反映で きる地下水流・水温 移送の連成解析プ ログラムを用いた .透水係数分布は,トレ ンドを除い た残差成分を条件付 ガウスシミュレー ションによって100パターン 生成し,指数 減衰式によ る鉛直トレンドを加 え,漸移異質の透 水係数分布とした .また同じ残差成分に深 度平均(一 定)を加え,対比す る定常異質の透水 係数分布とした, 他の不確定条件(セルの 異方性,河 床の透水性,河床幅 ,熱拡散係数の異 方性,パリオグラ ムのレンジ,流体物性の 温度依存性 ,ブ口ック平均の影 響)も比較した計13ケースを設定し ,各100バ ターンの透水 係数分布で の水位・水温分布を 計算した.計算誤 差が基準以下とな る透水係数分布バターン を 各 ケ ー ス で 抽 出 す る こ と で , 解 析 条 件 が 再 現 性 に 与 え る 影 響 を 比 較 ・考 察し た .     以 上 か ら , 本 研 究 に よ っ て 明 ら か に な っ た 事 項 は 以 下 の と お り で あ る .

・豊平川扇 状地では,都市化の影響を反映した負(下向き)の鉛直動水勾配が全体を占める,

  扇央〜扇 頂部の河川沿いは伏 没涵養と水理地質 構造を反映した負 のピークが認められた.

・伏没涵養 帯は南大橋付近〜南19条大橋付近の約1.5km区間 に特定され,伏没量は約11113/S     と見積 もられた.同量は日 量に換算し,札幌 市の全地下水揚水 量の約8割 に相当する,

・ 不撹 乱試 料 の低 充填部 (基質充填度m,IV)は,採取深度にお ける高透水な水み ちを反映   する.特 に扇頂〜扇央では深 度30m以 浅に集積し,深度と ともに急減する傾 向があった.

・ 扇状 地礫 層 の単 位深度 の透水係数雷(m/s)は,不攪 乱試料の重量百分 率20%粒径面o (m)     と 基質 充 填度I〜 IVの分布長をム〜ム(m/m)を用い,下式 のようにモデル化 された.

    K〓6.89q/l,000)l・咆十ら)十O.016四十1.87ピ

・透水係数 の鉛直トレンドは,扇頂〜扇央部にて深度Z(m),地表での透水係数を脇(m′s)     とし, 以下の指数減衰式が 得られた.なお扇 端部では明瞭なト レンドは認めなかった,

    K=Koexp(一イZ)〓lO・23餓p(−0.llZ)atZくZ声30m

  減衰項」 扛0.n(m.1)は岩 盤での一般値の10〜1,000倍に達し,深度30mで収束する,こ   の深度ト レンドは,扇状地形 成時の急激な堆積 と,堆積後の間隙 構造の変化を反映する.

・透水係数 の水平トレンドは扇 央で最大となる「 こぶ構造」が推定 されたほか,その残差成   分の バリ オ グラ ムはレ ンジが水平1,000m,鉛直20mとなり, 強い異方性が認め られた.

・漸移異質 条件下では透水係数分布の幾っかは,.基準誤差以内で観測値を再現できた一方,

  定常異質 条件下での透水係数 分布はいずれも基 準誤差を満たすこ とはできなかった,また   他条件を 変えた場合も再現性 に与える影響は, 漸移異質性の有無 ほど大きくなかった.以   上から, 伏没涵養帯内の複雑 な地下水流動場を 再現するための漸 移異質性モデリングの重   要 性 と , 推 定 し た 鉛 直 ト レ ン ド ( 指 数 減 衰 式 ) の 妥 当 性 が 明 ら か と な っ た ,

・高解像度 モデルで基準誤差を 満たす透水係数分 布をプロック平均 (5m解像度)した場合,

  計算水位 ・水温は基準誤差を 満たさなかった. 広域モデルへのア ップスケーリングでは,

  単純なブ ロック平均では不十 分であり,異方性 を含む合成処理が 必要なことが分かった.

  最後に将 来計画として,扇状 地全体の三次元広 域モデリングの発 展に向け,解決すべき諸 課題(水理 地質構造,面的涵養,都市化,アップスケーリング)とその解決方針を議論した.

923 ‑

(3)

学位論文審査の要旨 主査   特任教授   池田隆司 副 査    教 授    日 置 幸 介 副 査    教 授    鈴 木 徳 行 副査    准教授    知北和久

学 位 論 文 題 名

    Geostatistical Reservoir IVIodeling of Trending     Heterogeneity Specified in Focused Recharge Zone:A Case Study of Toyohira River Alluvial Fan

,Sapporo ,

Japan     

(伏没涵養帯に着目した帯水層の漸移異質性に関する地球統計学的

    

モデリング―豊平川扇状地を例として―)

博士学位論文審査等の結果について(報告)

  

近年の気 候変動や 人口急増は 世界各地 ,とりわ け乾燥・ 半乾燥地 域において 深刻な水 資源不足 を招いてい る.粗粒 な沖積層 は乾燥地 域におけ る貴重な地下 水貯留層 だが,そ の賦存量は 有限で, かつ地下 水位の低 下や汚染 の影響はその 高透水性 ゆえ広範 囲に及ぶ. そのため ,持続的 な地下水 の利用・ 開発を目的と した地下 水モデリ ングが盛ん に行われ ている. しかし, その多く は透水性の空 間変化の 再現が最 大の課題と なってお り,これ を如何に 推定し検 証するかが問 われてい る.オー ダー変化す る透水係 数の空間 変動から 巨視的ト レンドを抽出 するには ,多数の 原位置試験 データが 必要であ り,特に 鉛直方向 の漸移異質性 のモデル 化はほと んど行われ ていない .本論文 は,この ような現 況にある透水 係数分布 について ,豊平川扇 状地の伏 没涵養帯 に着目し ,鉛直動 水勾配のマツ ピング, 礫床河川 での同時流 量観測, 礫質土の 透水係数 モデルの 構築,熱移送 モデルの 確率的シ ミュレーシ ョンを行 うことで ,基礎的 な問題と 実用的なモデ ルの構築 を目的と している. さらに, 帯水層の 漸移異質 性が複雑 な地下水流動 場とその 物質移送 に与える影 響ととも に,地下 水モデル に反映す べき重要性に ついて研 究したも のである.

  

本研究の 成果,お よび評価は 以下のと おりであ る.

・豊平川 扇状地で は,都市化 に伴い流 出域が消 失し,鉛 直下向き の動水勾配が 支配的で あった. 特に扇央部 の河川沿 いは,伏 没涵養帯 を反映す る下向きの動 水勾配ピ ークが認 められた. これは, 膨大な既 存井から のデータ を統計的に処 理する事 により得 られたものであり,優れたデータ処理能カが発揮されている.

924

(4)

・伏 没 量は , 南 大橋 付 近〜 南

19

条 大 橋 付近 の 約

1.5km

区間 で 約

1D13/S

と 見積 もられた .同量は日 量に換算 し,札幌市の全地下水揚水量の約8 割に相当する,

これは, 現場での検 証を自ら の測定で 行ったも ので,観 測能カにも長けている と評価さ れる,

・不撹 乱試料の 低充填部 (基質充填 度III ,1V )は 深度30m 以浅 に集積し ,深度 ととも に急減し た.この 低充填部の 分布深度 では,現 場試験で の透水係 数が著 しく高 い傾向に あった. また,不撹 乱試料か ら,透水係数K (m/s) について,不 攪 乱試 料 の重 量 百 分率

20

%粒 径 出o (m) と基 質 充 填度

I

IV

の分布長 を

Li

〜ム

( m/m) を用 いて定式 化した. さらに,透 水係数の鉛直トレンドを定式化するこ とに成 功した, これらは ,現位置で のサンプ リング, 実験室で の分析, および 統計的 処理を組 み合わせ て得られた ものであ り,独創 性と新知 見が随所 に見ら れる.

・透水係数の水平トレンドは,縦断方向(南北方向)では扇央部で最大となる「こ ぶ構造 」が認め られたが ,横断方向 には顕著 なトレン ドは認め られなかった.

断面二 次元モデ ルは横断 方向に相当 するため ,透水係 数分布は 鉛直方向の漸移 異質性 のみ仮定 し作成し た.この漸 移異質性 を仮定し 発生させ た透水係数分布 からは ,観測水 位・水温 を再現でき るパター ンが幾っ か得られ た.一方,定常 異質性 を仮定し た透水係 数分布から は,観測 値を再現 できるパ ターンは得られ なかっ た.また 他条件を 変化させた 場合の再 現結果へ の影響も 漸移異質性の有 無に比 べて顕著 で無かっ た.以上か ら,伏没 涵養帯の 複雑な水 位・水温分布に は礫層 の漸移異 質性が支 配的に係わ り,その モデル化 が重要な ことが明らかと なった ,これら は,モデ ルの構築と 巧みな数 値解析の 結果であ り,不確定性の 高い問 題に対し て新しい アプローチ による明 確な答え を示した ものと評価され る.

  

これを 要するに ,著者は 透水係数の 鉛直トレ ンドとし て指数減衰モデルを提 唱し, 伏没涵養 帯内での 透水係数分 布の地球 統計学的 な推定を 通じて,砂礫層 の漸移 異質性が 複雑な水 位分布・水 温移送に 支配的に 係わって いることを明ら かにし たもので ある.こ れらのこと は,粗粒 な沖積層 の地下水 モデリングにお ける地 下水流動 ・物質移 送に係わる 新知見を 得たもの として, 地下水学,地盤 工学, 陸水学, 水文学等 の諸分野に 幅広く貢 献すると ころ大な るものがある,

また本 研究成果 は既に, 国内外の学 会や専門 誌で発表 されてお り高い評価を得 ている .

  

よって ,著者は ,北海道 大学博士( 理学)の 学位を授 与される資格あるもの と認め る.

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参照

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