東京女f医科大学看設学部紀要Vo.l7. 2004
〔退任教員特別寄稿原稿〕
光受容器と光受容細胞の進化
一奇蹟の眼イソアワモチ背眼を中心としてー
片 桐 康 雄 *
E v o l u t i o n o f p h o t o r e c e p t o r s and e y e s
‑On t h e s p e c i
白c i t yo f Onchidium d o r s a l e y e
ーYasuo KATAGIRI *
地球上の多くの生物は光を受容し、生命活動の維持に利用している。動物では光は単細胞動物から晴乳類に至るほと んどすべての種で最も重要な感覚情報として利用されている。最近の研究により光を受容する視物質口ドプシンの分子 情造については無脊椎動物から脊椎動物にいたるまでかなりの普遍性を示していることがわかってきた。多くの動物に は光を受容する器官として眼が存在し、眼の進化については Darwinが[種の起源jの中で自然淘汰の例として取り上 げて以来、多くの研究者により動物の系統発生学的な分類学上の位置と光受容器の構造の関連についての研究が行われ、
いくつかの有力な仮説が提唱されてきた。しかし、光を受容する細胞や器官は動物界で驚くほどの多様性を備えており、
光受容器や光受容細胞について従来の系統樹に当てはめることのできない多くの例外が発見されている。 ここでは今日まで明らかにされてきた光受容器の進化についての有力な仮説を紹介しながら、筆者が ソアワモチという
4
特寺異な動物の眼や光受容器について紹介したい。1.向光型眼(正位眼)と背光型眼(逆位眼)
眼のグランドデザ《ンは│恨の進化を考える上で煎要な問題である、大別すると動物の眼には 2種類の型が存在する。
すなわち、光受谷細胞が入射光側を向いている向光型眼(正佼眼 everseeye)と入射光の反対側を向く背光型眼(逆
f
衣 服 inverseeye)である。図1は無脊椎動物で最も進化した眼として知られている軟体動物イカのカメラ眼 (A)と、脊 椎動物ヒ卜の眼 (B)ついて比較したものである(Halderet al.. ] 995) 0 イカの眼には脊椎動物の眼に存不r
する強膜(角膜)、網膜、脈絡膜、硝子体、レンズ、眼房水などすべてが存在し、概観的な構造は驚くほど類似している。しか し こ の2 つの眼には根本的な違いが見られるO それは光受容細胞の光受谷部依(外節)がイカでは入射光側に存在するのに対して、
脊椎動物の光受谷細胞の粁体や錐体の外節は入射光から最も速くに伎鑑する。前者を向光型眼または正{衣服、後者を背 光型眼または逆位眼という。無脊椎動物のほとんどすべての眼や脊椎動物の松果体の光受谷細胞は光受容部伎が入射光 側に向いている向光型眼(細胞)であるのに対して、脊椎動物の眼の光受谷細胞では光は網膜中の数種類の細胞層を透 過して光受谷細胞に達し、さらに光受谷細胞の細胞体を透過して最後に視物質の存杭する外節部に到達する背光型眼で ある。脊椎動物の眼では網膜が逆転しているために逆転網膜(jnverted retina) といい、光受容細胞からの光情報は双板 細胞、神経節細胞とレンズ侭11に佼置する細胞に送られる。神経節細胞の軸索が視神経となって脳の視覚中枢に連絡するが、
網膜が逆転しているためにレンズ側に出た視神経は網膜の中心部を貰いて脳に向かうことになる。視神経の出[1になる 網膜の a部は光受谷細胞が欠落して盲点を形成し、受谷領野中に視野の欠落部伎を牛ーじることになるO
一方、無脊椎動物の眼では光受容細胞の外節はレンズ側に存在し、視神経は眼球の底部に集まり直接脳に向かうため に盲点を形成することはない(凶]B)。
*前東京女子医科大学看護学部基礎利学系(生理学)教綬
(Tokyo Women's Medical UniversilY, School of Nursing, SeclIon of Basic Science(Physiology), Professor, relired on March 31. 2004)
現在使刑されている人工的な光学装置はすべて入射光側に光センサーが装着されている。 純粋な光学装置としての眼 を考えると光のセンサーである受容細胞が入射光側に向いていない脊椎動物型の眼球の構造は理解できない。占くから Darwinの円然淘汰説に反対する人たちは脊椎動物の逆位眼を攻撃対象としてきた。脊椎動物の光受容細胞が細胞内情 報伝達系や網膜内あるいは中枢神経において高度な情報の増幅を行っていることは知るよしもなかった時代である。
A ヒ卜のU
I i !
8 イカの眼
神経節細胞 双極細胞 光ぅ之容細胞
占 山 亡訂
e 三三
主 / z 昌
光受容細胞(錐体と粁体)
光受容細胞
= 主 >
入射光の方向
1;(:11.ヒトのカメラ眼 (A)とコウイカのカメラ眼(8)(Halder et a ,.l1995.改変)
2.光受容細胞の微細構造一繊毛型光受容細胞と感粁型光受容細胞一
動物における光受容機能は単細胞便物から備わっているが、眼という光受容器官の最も古い原型は動物進化系統樹の 上でいつ頃出てきたのだろうか? そ の 初 期 の 構 造 と 機 能 は 、 ど の よ う な も の だ っ た の だ ろ う か ? GehringとIkeo (}999)はl個の光受容細胞と l個の色素細胞の2細胞で構成された原始眼を報告した。このような原始眼からどのよ うにして脊椎動物にあるカメラ娘のような巨大で複雑な構造の眼に進化したのだろう。最近、環形動物多毛類の1種 で 担 輪fyJ)牛ーの2細胞から成る原始眼がやがて成体の感粁型の眼に発達することが報告されている (図2B. Arendt et aL. 2002)。このような非常に巾純な眼によって幼生は光の方向を見て定光性を示しまた、原始的な日周期時計を同調させ る。 yJ)lj:=時の巾純な眼が視覚の原形として機能し、成体の完成された限に発達していく様子はあたかも、系統樹上で原 始眼が高度に分化した眼に進化していく様子を示唆しており、 [個体発生は系統発牛ーを繰り返す」というヘッケルの進化 論に適合する。軟体動物の腹足類イソアワモチには多煮の光受容装置が備わっているが、表皮下には眼の形態を取らな い皮膚光覚細胞が散在し、その微細形態は背限の感杵型光受容細胞と同様である。(Katagiriet aL. 1985. 1990.片桐他,
1997)0
ワ 白
A
c
光受容細胞
A B C
D E F
玉二工玉工二玄
E
東京女了ー医科大学看護学部紀要Vo.l7. 2004
凶2環形動物多毛類ゴカイλ忌relsの映の後期発午 A. 24時間担輪子幼'‑E
B. 72時 間 幼 生 c . 成 熟 成 体 (Arend. t2003.改変)
図3 光 受 容 細 胞 の 形 態 A‑ C, 向 光 型 眼 D ‑ F, 背 光 型 眼 A,ヒドロ虫綱 Leuckarl
ω
raの上皮中の眼点 (Singla 1974) B,多毛類Neanlhes幼生の上皮下の眼.(Eakin とWestfall 1 964a) . C,頭足類コウイカのレ ンズ眼.D,ひる綱 Piscico/aの phaosome細 胞 に よ る 色 素 杯 眼 (Hesse 1902, Plate 1924). E,多毛類Armandiaのprostomialな色 素杯単眼 (HermansとCloney, 1966). F,脊 椎動物のレンズ眼 lep表皮または角膜.Ip 色素細 胞 (pz)の レ ン ズ 機 突 起 sz感 覚 細 胞 :vb硝チ体(Salvini‑Plawen and Mayr, 1977)
脊椎動物における松果体などのように、多くの動物に版以外に光を感じる細胞が存在することが知られているO は虫 類では頭蓋骨の中央部が半透明で光が脳の・部に到達できるような構造になっていて、ろI良眼と呼ばれる。その直下に は網膜の光受谷細胞とよく似た外節を有する細胞が存在する。この細胞は明らかに光受容機能をもっているO また、面 白いことにその外節は入射光側に向いており逆転していない。最も原始的な光受容細胞は眼という形態を取らず、Iji.に 神経細胞や上皮細胞が光を感じる機能を獲得しただけのものだったろう。これを神経光覚や皮膚光覚といい節足動物や 軟体動物腹足類 (Katagiriet a ,.J1990.片桐他.1997)、原索動物ホヤ類 (Ohkumaet aし2000. Tsuda et a ,.l2001)な ど多くの動物で知られているO さらに、簡単な眼として扇形動物プラナリアなどに存在する眼杯があげられるO 眼杯は 色素細胞に裏打ちされた去皮がお椀状に陥入しただけの単純な構造であるが、プラナリアは左右の眼杯により光の入射i 方向を認識して明瞭な走光性を示すことができるO
Eakin (1965)が、光受容細胞は光受容部位膜の微細形態から繊主型と感粁型の2系統に分化したという仮説を発表し、
その後、多くの研究者によって議論が重ねられてきた(図4) 0
qJ
動物名 光受容部位 摘造 動物名 光受容部位 構造
輪形動物 l叫ti;(り.~判h、・11 弓状ラメラ 脊椎動物 錐体円板
得体円板
有肺類 織部直状
扇形動物 微繊毛
環形動物 日貨索動物 ラメラ
節足動物 側部直状
頭足類 微繊毛 有術動物 ラメラ
有爪動物
腔腸動物 側部微紙毛
側部不規則
性微級毛 海星類 底部微紙毛
milochot'ldrio "::'::YAM‑. J 0 appar01U
A感粁型光受容細胞 B繊毛型光受容細胞
│
刻4 光受谷細胞の光受科部位膜の進化のトーテムポール (Eakin.1965.改変)
脊椎動物の粁体や錐体をはじめ無脊椎動物も含めて多くの動物の光受谷細胞が繊毛細胞から分化してきた。光受容細 胞の微細形態を調べると繊毛細胞特有の構造が観察される。図5はJj.i‑繊毛細胞の遠佼端部の縦断{象と繊毛の3個所の 横断面の微細構造の模式図である。横断面には9対の微小管が同心円状に配列し、中心部には1対の中心小管 (9+ 2) が佼慣している。繊も細胞は身体中の多くの上皮組織を形成しており、その繊毛は蒸本的に運動性を有している。光受 容細胞の繊毛は中心小管を欠いた 9対の微小管 (9+ 0)が見られるのが特徴である。これは運動性を失っていることを 示すものである。
A m
m
川川川川川ー一ーー‑‑+
図5.単 A繊毛細胞の構造.繊毛細 胞は分化して眼の多数の独立した系 統に特殊化した A‑C、繊毛 (A.B) および中心小体 (C)の横断面 微 小管の配列を不している (central
palr,ダプレッ卜,トリプレッ 卜) [c, 中心小体の軸糸(キネトソー ムー基底小体) C2・斜位の中心小
体 •C l. 繊毛 cr.被小毛 ml ミ卜コンドリア.mv 微繊毛 ve 小胞]
(Salvini‑Plawen and Mayr, 1977)
<t
ーー一ー一→,
繊毛細胞が分化して脊椎動物の粁体や錐体が形成されたように、多くの動物の光受谷細胞は織も細胞より形成されて いる。図6は12種類の動物の光受容細胞の光受谷部佼膜の構造を示した模式図である。2種類の感粁型光受谷細胞(F.L) を除き、光受容部依膜の慕底部には繊毛細胞特有の構造である恭成小体が存在する。 1個の光受容細胞はI本 の 織 も が 分化した脊椎動物の粁体や錐体のような場合と多数の繊毛が光受容部位膜を形成する場合がある。
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幽6 光9:容部位般の機造 (c,、中心小体の軸糸) : A 鞭毛虫類 Vinobryon,の不動性鞭毛の基部の腫張による傍鞭 E型 B.苔癖虫綱 8ugulaのヒダのない多繊毛型 C ヒドロ虫綱 80ugainvilliaの微械毛を伴う繊毛型.~. ヒト デ Henriciaの微級毛を伴った複合(繊毛 感粁)型.E.腹足綱マイマイHe1ix幼生の遼位微級毛をもった感粁型 F. 頭索動物ナメクジウオの分岐型 G 毛顎動物ヤムシ Sagittaの内管をもった繊毛型. H. 多毛類 8ranchiommaの包 をもった繊毛型 1.多板類ヒザラガイ Onitoch i tonの績向きのラメラを伴う繊毛型 K.有帯類ミミズ Lumbricusの内 部に小胞 (phaosome)をもった感粁型 し有爪動物の機向きの微繊毛による感杵型. M. 輪虫類 Asplanchnaのラメ ラをもった分岐型. (Salvini‑Plawen and Mayr, 1977)
無脊椎動物の光受容細胞の多くは感杵砲で(凶6H,I)に見られる繊毛地光受容細胞はむしろ例外である。図7のイ ソアワモチ背眼は背光型の眼で、逆転した繊毛型光受容細胞をもち、眼の中央腹部に盲点をもっ無脊椎動物では板めて 稀な限である。背眼中央には細胞性のレンズがあり、レンズは主レンズ細胞と副レンズ細胞から構成されている。すべ てのレンズ細胞には入射光側に微繊毛が存在し(図8)、光刺激に対して脱分額性光反応を示し感粁型光受容細胞として も機能する(岡lOA)。
図7 イソアワモチ背恨の情造
中心部に細胞性のレンズが存在するレンズ眼で、 網膜は 1層の繊毛型光受容細胞からなる 光受容細胞は逆転し て光受容部位の外節は外周の色素細胞側にあり, レンズ 倶I1に軸索を出している 軸索は中央に集まり盲点を形成 して網膜を貫いて背眼の外に出る. レンズは主レンズ細 胞と副レンズ細胞から構成される すべてのレンズ細胞 には入射光側に微繊毛が存在し感粁型光受容細胞として も機能する.LC:レンズ細胞 M:微繊毛 ON:視神経 P 色素細胞層 R:光受容細胞 (Katag川 eta ,.l1985)
σO~沼 I eye
Lens cell
図8.イソアワモチ背限のレンズ細胞(感杯型光受容細 胞)入射光仮I1に発達した微繊毛を有する感杵型光受容細 胞の特徴を備えている 細胞質には ERが密に存在し,
そこにレチノクロームが局在する Ls:ラメラ体 Mv:微 繊 毛 Mミトコントリア N核 (K創 刊iriet a1., 1985)
FhJ
A c
図9 双殻類(二枚貝類)の外套眼の分化(背光型眼を 企む)
Aフネガイ Arca barba taの正位型陥凹眼 B.オオノガ イLimasquamosaの正位型ピンホール眼 Cヒレジャコ ナTridacnamaxima (Cardiaeea)の正位型閉鎖性レンス 眼お上び繊毛性感覚器 日ザノレガイ Cardiummuticumの 逆転網膜細胞をもった閉鎖型レンズ眼と繊毛感覚器 Eイタヤガイ Pecten max imusの閉鎖型レンズ眼。Cardium
と同様に遠位網膜にはi別立の繊毛型光叉容細胞を備えて いる (li,近位の網膜多細胞性のレンズnd.視神経の 述位分校 no視神経 so・繊毛感覚器 vm硝子体
(Salvini‑Plawen and Mayr. 1977)
逆{立眼はどのようにしてできたのだろうか。図9は こ枚員類の外套眼における眼の分化を示した仮説であるO 最も
J p .
純な外套眼は表皮が陥入して陥入部を硝子体が積っただけであり、開口部の聞いた眼杯型の正佼型1H艮
( A )
で光受容細胞 は入射光を向いているが,やがて開口部が閉じてピンホールを形成したピンホール眼になり (B)、角膜と多細胞性のレ ンズができて( C )
、さらに網膜が逆転し( D )
、ヒ皮にあった繊毛性感覚細胞を眼の中に取り込んで閉鎖型レンズ眼( E )
が完成したという (Salvini‑Plawenand Mayr, 1977)。
3.視物質と受容器電位
光受谷細胞の光受容部依膜には大量の視物質(ロドプシン)が存在し、光によって光異性化される。tp.純な原始限か ら高等なカメラ眼まですべての光受谷部佼膜はラメラ状に楢山、あるいは、脳板状に変形して表面積を増やしている。
光受谷細胞はその光受谷部位膜の構造から繊毛細胞の膜が変形した繊毛型光受容細胞と細胞表面が微械毛状に変形した 感粁型に分類されている (Eakin,1965)。いずれの光受谷細胞も光刺激により受谷器屯伎を発牛ーする。視物質が光に よって光化学反応すると色素タンパクの構造変化が起こるυ その構造変化が引き金となり、 cGMPやIPJ等の細胞内情 報伝達系を介して膜に受容器電付,を発牛ーさせる。受容器屯佼は、脊椎動物網膜の光受容細胞ではすべて光照射時に過分 板するのに対して、無脊椎動物の多くは脱分椋する。同10はイソアワモチ背眼の光応答で、
! T .
がレンズを構成するレン ズ細胞(感粁型光受谷細胞)、右が繊毛型光受容細胞からの記録である。レンズ細胞は背眼の中心部にf
i/:置し、光学的に レンズの役割をしているが、構造的にも機能的にも光受容機能を持つ感粁型光受容細胞である (Katagiriet a ,.l1981a. b. 1985.片桐他.1983.片桐と片桐.1998)。無脊椎動物のレンズ細胞は分泌物から構成される純光学的なレンズの場合が 多い。細胞性レンズをもっ眼としてホタテガイなどの外套眼があり、光学装置として機能していることが知られている。 イソアワモチ背眼のレンズ細胞は光刺激に対して脱分根性応答を示す。tp.離したレンズ細胞から同様の光応答が記録で きることからシナプスを介した2次的な反応ではなく、レンズ細胞自身が光受容機能を有することは確かである。イソ アワモチ背服には繊毛型と感粁型の2種類の光受谷細胞が存在することになる。 2種類のタイプの異なる光受容細胞の 存在は2枚貝のイタヤガイ (McRaynolds& Gorman. 1970)やホタテガイ (Shimatani& Katagiri. 1995)などの外套 限で知られている。イソアワモチ背限に入射した光はレンス細胞でl部吸収された後に網膜に達し繊毛型光受容細胞に 吸収される(凶7)。‑6 ‑
東京女(-医科大学看護学白i~紀要 Vol.7. 2004
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10 20 30 s e c同10 イソアワモチ背眼における2種類の受容器電位。左がレンズ細胞(感粁型光受容細胞)からの脱分極性光応答 で刺激光の強度を変えた時の応答を重畳している 右が繊毛型光交容細胞からの過分傾性光応答 静止電位が比較的浅 く光刺激で持続的に過分極し,一過性の脱分慢性 off応答をともなう。た│喝上段および右図下段の矩形波は光照射の7
ークを示す (Katagiri et al., 1985)
光受容部伎に達した光は視物質ロドプシンに吸収される。脊椎動物ではロドプシンは光異性化されて発色聞は 11‑cis 坦からall‑trans型に変換される。軟体動物では2種類の感光性色素タンパク質ロドプシンとレチノクロームが存在する。
光異性化されたロドプシンは最終産物としてメタロドプシンに変換され、レチノクロームはメタレチノクロームに光異 性化される。発色団レチナールはロドプシンではll‑cis型からall‑trans型に変換され、レチノクロームではall‑trans型 から ll‑cis型と結合してロドプシンが再牛AされるO 一方、メタレチノクロームは暗順応すると all‑trans型がはずれ、再 びll‑cis型のロドプシンに再生されるO 軟体動物では11‑cis型 が は ず れ 、 再 びall‑trans型と結合してレチノクロームが 再生する。このリサイクル過税にはレチナール結合タンパクが介有ーする (Terakitaet al.. 1989)。
イカ網膜では抗体による染色でロドプシンが外節に、レチナール結合タンパクは外節と内節の両方に、レチノクロー ムは内節に存存することが証明された (Katagiriet a ,.l2001)。
イ カ 網 膜 と 同 様 に 、 イ ソ ア ワ モ チ 背 眼 で は ロ ド プ シ ン は 感 粁 型 光 受 谷 細 胞 ( レ ン ズ 細 胞 ) の 感 粁 と 繊 毛 型 光 受 谷 細 胞 の 外 節 部 に 局 在 し 、 レ チ ノ ク ロ ー ム は 感 粁 型 、 繊 毛 型 光 受 谷 細 胞 と も に 細 胞 体 に 局 在 し 、 レ チ ナ ー ル 結 合 タ ン パ ク は両細胞の光受谷部および細胞体の両方に存者Fすることが明らかになり、軟体動物などの無脊椎動物ではロドプシンと レチノクロームという 2種類の光受谷色素タンパクがレチナール結合タンパクを仲介としてリサイクルしているという Terakitaら(1989)の仮説を証明することができた (Katagiriet a ,.l2∞])。
図11.イカ網膜の視物質の局在左の模式図は光受容細胞の全体像を示している A対照.Bロドフシン抗体で11:外節が染まる Cレチナール結合タンパク抗体では外節と内節が共;こ染まる Dレチノクローム抗体では内節が染まる.Mミ卜コンドリア。 MB:多 小胞{本 Mv:微繊毛 N:t夏.OS外節 IS:内節 Dのスケールは100μm (Katagiri et al.. 2
∞
1)ロドプシンはレチナール(ビタミンAアルデヒド)とオプシンタンパクからなる。レチナールが種類の違うオプシン に結合することによって光の吸収波長が違ってくる。イソアワモチ背眼の2種類の光受谷細胞には光のスペクトル感度 の違いが見られる。レンズ細胞のスペクトル感度の板大が440nmであるのに対し、繊モ型光受谷細胞では480nmであるu
‑7 ‑
イソアワモチには主たる光受谷器として柄眼があり、その光受谷細胞のスペクトル感度の板大は510nm付近にある。こ のようにイソアワモチでは少なくとも 3種類のスベクトル感度の異なる細胞をもっていることになる。この動物に色覚 が存在するか否かは不明だが、色の識別にとって最も重要な関門となるスベクトル感度の異なる光受容細胞の存在は明
(図12)
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関12.イソアワモチの柄眼と背眼の光受容細胞のスヘ クトル感度幽線
.・背眼のレンス細胞(感杯砲光受容細胞), λmax = 440nm. 0:背眼の繊毛型光受容細胞,. Amax = 480nm 企:柄眼の光受容細胞, A. max = SIOnm 点線はD3I1nall のノモグラムを示す. (Katagiri,未発表)
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脊椎動物においては‑般的な背光眼(逆依眼)は進化上の適応不全の例としてあげられてきた。光受谷細胞の外節が 色素細胞を向く配列と網膜に視野の欠如個所を牛ーじる盲点の存在が、無脊椎動物の向光型の限(正位眼)と比較すると 明らかに非論理的と考えられたためであるo しかし、 実際には脊椎動物の眼の光学的な機能は械めて優れており、ヒト では暗順応後、 1個の光量子によって光異性化されたロドプシンが引き金になって光の感覚を牛Aじることが知られてい る。脊椎動物の光受容細胞ではロドプシンの光化学反応から細胞内情報伝達系や網膜内あるいは中枢神経において高度 な情報の増幅を行って感度を著しく上げている。
百メートル以上の上空から草原の草陰にいる小動物を発見する鷹や、高速で飛び凶りながら小さな虫を捕らえるツバ メの動体視力、また、暗い夜の森の中で野ネズミを捕らえるフクロウの視力は想像を超えるものがある。視覚の研究や 光学の研究開発によって高感度の光学装置が開発されているが、将来、彼らの眼に追いつくことができるだろうか。今 後の研究を待たねばならない。
‑8
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