• 検索結果がありません。

2015 年 12 月 総 説 レンズ光学の基礎 4: 光学系の瞳 加藤欣也高輪オプトコンサルティング Fundamentals of Lens Optics 4:Pupil of the Optical System Kinya Kato Takanawa opt Consulting レンズの瞳

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "2015 年 12 月 総 説 レンズ光学の基礎 4: 光学系の瞳 加藤欣也高輪オプトコンサルティング Fundamentals of Lens Optics 4:Pupil of the Optical System Kinya Kato Takanawa opt Consulting レンズの瞳"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

2015 年 12 月

総 説

レンズ光学の基礎4:光学系の瞳

加藤 欣也

高輪オプトコンサルティング

Fundamentals of Lens Optics 4 : Pupil of the Optical System

Kinya Kato

Takanawa opt Consulting

レンズの瞳は開口絞りの像である。レンズおよびレンズ系の入射瞳は物体空間から見た開口絞りの像,射出瞳は像 空間から見た開口絞りの像である。別の言い方をすれば入射瞳,開口絞り,射出瞳はそれぞれ共役面である。

顕微鏡対物とリレーレンズを繋ぐ際,顕微鏡対物の開口絞りとリレーレンズのそれとは共役面でなければならない。

顕微鏡対物の射出瞳とリレーレンズの入射瞳が共役面であることが重要である。そうでないと視野周辺の像強度が急 激に低下する。解決策は対物とリレーレンズの間にフィールドレンズを挿入することである。同様の理由で撮像素子 の瞳とレンズ系の射出瞳を一致させることが望ましい。

瞳の球面収差によって視野周辺に影が生ずる。眼の移動に伴って,影は視野内を動き回る。瞳の軸上色収差によっ て視野中心と周辺における色調差が生ずる。眼の移動に伴って,視野のある部分の色調が変化する。

キーワード:瞳,入射瞳,射出瞳,瞳の球面収差,瞳の色収差

The pupil of a lens is an image of the aperture stop. The entrance pupil of a lens or lens system is the image of the aperture stop as seen from the object space. The exit pupil, however, is the image of the aperture stop as seen from the image space. In other words, the entrance pupil, the aperture stop and the exit pupil are conjugate planes.

In combining a microscope objective and a relay lens, the aperture stop of the microscope objective and that of the relay lens must be conjugate planes. It is important that the exit pupil of the microscope objective and the entrance pupil of the relay lens are conjugate planes. If not so, the image intensity will suddenly decrease at the edge of the field.

As a solution to this, a field lens is inserted between the objective and the relay lens. For the same reason it is desirable that the pupil of the image sensor is coincident with the exit pupil of a lens system.

Spherical aberration of the pupil causes formation of a shadow at the edge of the field. The shadow moves about in the field as the eye is moved. Longitudinal chromatic aberration of the pupil causes image color difference between the field center and field edge. The image color in some parts of the field changes as the eye is moved.

Keywords:Pupil, Entarance pupil, Exit pupil, Spherical aberratin of pupil, Chromatic aberration of pupil

1.は じ め に

光学系の瞳とは「開口絞りの(みかけの)像」である。

角膜と場合によっては眼鏡レンズを通して見えるみかけ の瞳孔が文字どおり眼の(入射)瞳になる。ここでは瞳 の重要性と瞳に収差があった場合の影響を解説する。

2.入射瞳,射出瞳

図 1,2 のような開口絞りをレンズ(群)の間に配置し た光学系(写真レンズを想定)を考える。図 1 において 物体(矢印)側から開口絞りを見ることは,前群レンズ による開口絞りの(みかけの)像を見ることを意味する。

前群レンズに入射する光線を屈折させずに破線のように

連絡先:108-0074 東京都港区高輪 1-27-37-830 高輪オプトコンサルティング 加藤欣也

(2015 年 9 月 11 日受理)

Contact to: Kinya Kato Takanawa opt Consulting

Takanawa 1-27-37-830, Minato-ku, Tokyo 108-0074, Japan (Received and accepted September 11, 2015)

(2)

延長すると,開口絞りは破線の位置にあるように見える。

これが入射瞳である。

同様に図 2 において像(矢印)側から開口絞りを見る ことは,後群レンズによる開口絞りの(みかけの)像を 見るのと同等である。像面に達する光線を後群レンズで 屈折させずに破線のように物体側に延長すると,開口絞 りは破線の位置にあるように見える。これが射出瞳であ る。

よって開口絞り,入射瞳,射出瞳は互いに共役である。

そこで改めて図 3,4 に入射瞳に入る光束と射出瞳より出 る光束をそれぞれ実線で示した。瞳は光束の仮想的な出 入り口であり,入射瞳を入口,射出瞳を出口とみなせる。

光束を決定するのが開口絞りであるから当然である。

3.接眼レンズと瞳

図 5 は 1 眼レフカメラの例であるが,交換レンズに接 眼レンズ(光学ファインダー)を加えた図である。各レ ンズは薄肉レンズと仮定している。開口絞りの中心と共 役な点(両者円で表示)に眼をおくと,全視野を見るこ とができる。この共役面をアイポイントといい,カメラ 光学系の射出瞳になっている。破線の光線に注目すると,

交換レンズの射出瞳中心(破線円で表示)とアイポイン トが共役である。接眼レンズの焦点距離を fe,ファイン ダースクリーン(中間像点)から交換レンズの射出瞳ま での距離を L,接眼レンズからアイポイントまでの距離 をbとし,レンズ光学の基礎 2 の(12)式((*)で表記)に おいて,fo=Lと置くと

e

e e

o

b f f f

f

1 ··· (*)

e

e e

b f f f

L

 

   

1  ··· (1) (1)式は「アイポイント位置」が接眼レンズ単独では決 まらず,「交換レンズの射出瞳位置によって変動する」こ とを示している。レンズ光学の基礎 2 の「7.望遠鏡の倍 率」の図 5 では,対物レンズを薄肉レンズとしているの 図 1 入射瞳

開口絞り 入射瞳

光学系(写真レンズ)

像面 前群レンズ

図 2 射出瞳

開口絞り 射出瞳

光学系(写真レンズ)

像面 後群レンズ

図 3 光束の入り口(入射瞳)

開口絞り 入射瞳 像面

光学系(写真レンズ)

図 4 光束の出口(射出瞳)

開口絞り 射出瞳

像面

光学系(写真レンズ)

図 5 瞳の共役関係

ファインダー スクリーン 開口絞り

交換レンズ 射出瞳

接眼レンズ

アイポイント

fe

L b

(3)

2015 年 12 月 レンズ光学・加藤欣也

で,対物レンズの射出瞳位置は固定となるが,レンズを 交換する光学系(一眼レフカメラ,顕微鏡など)では,

交換レンズや対物レンズの射出瞳位置を一定の範囲内に 収める必要がある。

4.リレーレンズと瞳

図 6 のように(顕微鏡の)対物レンズにリレーレンズ を繋ぐ場合を考える。レンズは薄肉レンズ,開口絞りは レンズの中心にあるとする。光軸上の物点は実線のよう に結像するが,破線で示す軸外の光線はリレーレンズを 通過できず,軸外の像が形成できなくなる。実際は視野 中心から離れるにつれて急激に像強度が低下し,ある視 野より外側では光が全く到達せず,真っ暗になる。これ は対物レンズの開口絞りとリレーレンズの開口絞りが共 役でないために生ずる。

そこで図 7 のように中間像位置に開口絞り同士が共役 になるようレンズ(フィールドレンズ)を付加すると,

すべての軸外光線がリレーレンズに到達し,周辺光量の 低下を防ぐことができる。フィールドレンズは 2 組の光 学系(対物レンズとリレーレンズ)を繋ぐ架け橋の役割 を果たしている。

対物レンズの開口絞りからフィールドレンズまでの距

離をa,フールドレンズからリレーレンズの開口絞りまで

の距離をb,フィールドレンズの焦点距離をfとすれば,

ガウスのレンズ結像式(レンズ光学の基礎 2 の(2)式(**) で表記)より,フィールドレンズの焦点距離(屈折力)

を決定することができる。

a b f 1 1 1

··· (**) ここまでは薄肉レンズを仮定していたが,実際の光学

(レンズ)系では(対物)レンズの射出瞳位置とリレー

レンズの入射瞳位置より,フィールドレンズの焦点距離 を決定する。

このように光学系では物体と像の共役だけでなく,瞳 の共役関係も非常に重要である。照明光学系ではコンデ ンサレンズの開口絞り(射出瞳)と対物レンズの開口絞 り(入射瞳)が共役である。また顕微鏡や望遠鏡の写真 撮影ではカメラの(入射)瞳と接眼レンズの射出瞳(ア イポイント)を一致させる必要がある。このように光学 系の瞳位置は複数組の光学系を繋ぐ際,不可欠な情報で ある。

5.撮像素子と瞳

撮像素子(イメージセンサ)と瞳は何の関係もなさそ うであるが,実は深い関係にある。図 8 のように撮像素 子には各画素上にマイクロレンズが形成されており,光 をセンサに集光する。図では光軸に平行な光線しか描い ていないが,当然ながら斜めに入射する光線も存在する。

マイクロレンズの集合体がマイクロレンズアレイである。

図 9 に示すようなデジタルカメラでは,破線で示す最 軸外の光線はほとんどセンサに到達できず,周辺光量低 下(シェーディング)を引き起こす。図 10 ではセンサ位

図 7 フィールドレンズの効果

中間像

リレーレンズ 像

開口絞り 開口絞り

対物レンズ

フィールドレンズ 物体

a b

図 6 対物レンズとリレーレンズ

物体 中間像

リレーレンズ 像

開口絞り 開口絞り

対物レンズ

図 9 光学系と撮像素子

開口絞り

撮像素子 撮影レンズ

図 8 撮像素子断面図

センサ マイクロレンズアレイ

画素 光束

図 10 マイクロレンズの偏心

開口絞り

撮像素子 撮影レンズ

(4)

置は変えずに視野周辺のマイクロレンズをセンサ中心軸 より光軸側(内側)に偏心させている。半導体プロセス の都合からセンサ位置を変えるのは現実的でないからで ある。偏心量はセンサ中心から光軸に平行な光線が全て 開口絞り(射出瞳)の中心に到達するよう定める。図 11 では撮影レンズの射出瞳とセンサ面は実質的に共役であ り,L は「撮像素子の瞳距離」である。射出瞳の中心を 通る主光線に注目すると,次の関係が成り立つ。

fH

  L

δ ··· (2) (2)式における偏心量δは,画素サイズの半分以内にす る必要がある。このように光学系の射出瞳と撮像素子の 瞳を完全に一致させるのが理想であるが,実用的には一 定の範囲内で一致させるべきである。デジタルカメラの 交換レンズはそのように設計されている。

6.テレセントリックレンズ

(2)式において,L→∞(射出瞳無限遠に相当)ならδ

→0 であるから,どの位置にあるマイクロレンズも偏心さ せる必要はない。(射出)瞳が無限遠にあるレンズを(像 側)テレセントリックレンズと呼ぶ。図 12 のように開口 絞りをレンズの前側焦点位置に設置すれば,主光線は光 軸に平行になり,像面側から見ると開口絞りは無限遠に 存在することになる。半導体や液晶パネル用露光装置の 投影レンズは必ず像側がテレセントリックになってお り,基板(像面)がピント位置より多少ずれても正確な パターンを刻むことができる1)

逆に(入射)瞳が無限遠にあるレンズを(物体側)テ レセントリックレンズと呼び,図 13 のように開口絞りは レンズの後側焦点位置にある。物体面の位置が多少ずれ ても,固定像面における像は中心位置がぼけるだけで位 置ずれがないので投影機など測定機の光学系で広く使用 されている2)。顕微鏡対物レンズも基本的にそのように設 計されている。

7.瞳 の 収 差

最後に,瞳に球面収差や軸上色収差がある場合の影響 を検討する。図 14 はケプラー型望遠鏡のアイポイントに

おいて,瞳の球面収差がある場合を示す。瞳の球面収差 がなければ,開口絞りの中心を通る主光線(一点鎖線で 表示)はアイポイントの中心を通るが,収差があるため にアイポイントよりδ接眼側で光軸と交わる。アイポイ ントに眼をおくと,軸外光束(破線で表示)の一部が眼 の虹彩によって遮光され,視野周辺が暗くなる。ならば 眼をアイポイントよりδ接眼側に近づければ(現実には 機械的に困難)解消できそうだが,中間画角における主 光線の球面収差は一般にδより小さいため(レンズ光学 の基礎 3 の(4)ʹ式参照),光束の一部が遮光され,視野中 間部が輪帯状に暗くなる。このように光学系の瞳に球面 収差があると視野に同心円状の明るさむらが生ずる。

次に眼をアイポイントにおき,そこで眼を光軸より上 下方向に移動させる場合を考える。瞳の球面収差がなけ れば,視野全体が暗くはなるが,明るさむらは生じない。

しかし図 14 のように瞳の球面収差があった場合,眼を 光軸より下に移動させると,元々明るかった視野中心部 が暗く,暗かった一方の視野周辺(図の破線部)が明る く,反対側の視野周辺は更に暗くなる。つまり眼の移動 によって視野の暗い部分が視野内で移動する。

図 15 は瞳に軸上色収差がある場合を示しており,煩雑 図 11 射出瞳とセンサ面の関係

δ

f f H 射出瞳

L

マイクロレンズ センサ

図 12 像側テレセントリックレンズ

開口絞り 撮影レンズ 像面

f f

図 13 物体側テレセントリックレンズ

開口絞り

f レンズ

物体面 固定像面

図 14 瞳に球面収差のあるケプラー型望遠鏡

アイポイント

対物レンズ 接眼レンズ

δ 瞳(開口絞り)

(5)

2015 年 12 月 レンズ光学・加藤欣也

さを避けるため軸外光束のみ描いた。主光線(太い実線)

のうち基準波長はアイポイントの中心を通るが,短波長 の主光線(太い破線)は色収差のため,画角によらずア イポイントよりδ接眼レンズ側で光軸と交わるとする。

また図示していないが,長波長の主光線はアイポイント より観察者側で光軸と交わるとする。そこでアイポイン トに眼をおくと,基準波長以外の軸外光束(破線で表示)

の一部が遮光され,視野周辺部が暗くなるばかりか,視 野中心(軸上)部とは色調が異なる。眼の位置をδ接眼 側に近づけると,視野周辺の色調は青味を帯び,逆に接 眼より遠ざければ赤味を帯びる。

眼を光軸より下に移動させると,視野中心部の色調は 余り変わらず暗くなるが,一方の視野周辺(図の破線部)

は青味を帯び,反対側の視野周辺は逆に赤味を帯びる。

このように瞳に収差があると視野の明るさむらや色む らが生ずるだけでなく,眼の位置を前後左右に移動させ ると,明るさむらや色むらが変化する。これはリレー系,

照明系,撮像素子などを含む光学系においても同様で,

眼の移動は開口絞りの移動,偏心(シフト)に対応する。

瞳は光学系にとって非常に大切であるにもかかわら ず,光学の専門書では簡単に触れられている場合が多く,

その概念や必要性を理解するのが難しいのが現実であ る。最後の瞳の収差による影響はやや専門的ではあるが,

専門書でも記述が少ないため,敢えて記載した3)。 今回をもってレンズ光学の基礎は終了とする。何らか の参考になれば幸いである。

文 献

1) 渋谷眞人: 絞りと瞳. レンズ光学入門, 29, アドコム・

メディア, 東京, 2009.

2) 渋谷眞人: 絞りと瞳. レンズ光学入門, 28, アドコム・

メディア, 東京, 2009.

3) Rudolf Kingslake: Eyepiece Design. Lens Design Fundamentals. 335, Academic Press, New York, 1978.

図 15 瞳に軸上色収差のあるケプラー型望遠鏡

アイポイント 基準波長

対物レンズ 短波長

接眼レンズ

δ 瞳(開口絞り)

参照

関連したドキュメント

(Construction of the strand of in- variants through enlargements (modifications ) of an idealistic filtration, and without using restriction to a hypersurface of maximal contact.) At

It is suggested by our method that most of the quadratic algebras for all St¨ ackel equivalence classes of 3D second order quantum superintegrable systems on conformally flat

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

This paper develops a recursion formula for the conditional moments of the area under the absolute value of Brownian bridge given the local time at 0.. The method of power series

Answering a question of de la Harpe and Bridson in the Kourovka Notebook, we build the explicit embeddings of the additive group of rational numbers Q in a finitely generated group

Then it follows immediately from a suitable version of “Hensel’s Lemma” [cf., e.g., the argument of [4], Lemma 2.1] that S may be obtained, as the notation suggests, as the m A

In our previous paper [Ban1], we explicitly calculated the p-adic polylogarithm sheaf on the projective line minus three points, and calculated its specializa- tions to the d-th

In order to be able to apply the Cartan–K¨ ahler theorem to prove existence of solutions in the real-analytic category, one needs a stronger result than Proposition 2.3; one needs