陰嚢水腫の非観血的療法
川崎市立児童健康相談所山 本 喜 美 子
目 緒 言 第1章 臨床實駒例第2章
第1項第2項
第3項第4項
第5項
第6項
第7項
第8項
結 僻 主要丈獣 考. 按 陰嚢水腫の治療法 「ヘミシンJの臨床的慮用 陰嚢水腫に封ずる「ヘミシン」注射の適慮症 注 射 法 副 作 用 注射後の局所慮置治療成績
注射後の組織學的所見 緒 言 余等の診療所はその性質上殊に新旧三三に重黙を置くものにして,治療警學はその 第二義に属し且つ持三等治療を要¢るものは附近讐師の診療を乞はしめ,專ら保健指 導,相談,疾病豫防を目的とす。 當地工業都市に於ナる本所を回るNものは主として産業職士として日夜精鋤する者の家族にして・齢主婦と錐も皆一定の職業鮪し・蝶中は塀を託児脈保灘
乞ひ以て自己職務に精働するもの多し。故に一度びその子女にして病を得んかその打 撃たるや直ちに糊口に影響を友ぼすのみならすその職務に依りては熟練工の鉄弓によ り ’t國家生産能力にも累を及底こと少なからず。故に疾病の治療日激の短縮,輕費診 療の二大要望は一般開業警ノ)場合より一暦痛切に感ぜしめらる’X所なり。 かXる事情の下にある工都當市の保健相談所殊tc第二國民たる見童健康相談所の任 務事業も釜々重要性を加 つNあり○從って余等は可及的早く疾病を獲見し適當なる 塵置に依りて未然に疾病を防ぎ健康増進の指導を行ふ爲めに:看護婦をして隔日各戸を 一第 10 巷 397一98 山本=陰嚢水腫の非観血的療法 訪問せしめ,若し不幸既に疾病を稜見せんか最:も短時日に健康回復の道:を講ぜしめん と腐心するものなり。從って種々なる疾病に回して最も簡便にして根治早き方法を選 撰して適宜の虚置をと6.ざるべからざるは當然なり。故に假令外科的疾患と雄もなる べく帥座に治療可能なる方法を要望せらるるなり。 取扱へる患者は主として口曳より大艦14歳位迄の者にして今,昨年1月より本年7 月末日迄の患者総数及び男女別によりて月別すれば・第一表の如くにして1月は1年 中最:も少なく.3月に於て最:も多し。次に6月,7月,12月に一般に來院患者多し。 これを性別に比較すれぱ殆んど大差なきもの頭口し。次に同年に於ける生後1日より 生後6ケ月迄の乳三見の生年月別を比較すれば第2表の如くにして,6ケ月より生後 12ケ月のものが最も多く次に生後3ケ月より生後6ケ月のもの,次で生後1ヶ月より 3ケ月のもの,最も少なきは生後1日より生後1ケ月のものなり。然もこれ等も1年 中の中3月及び6月,7月,ユ2月に多きは第1表の場合と全く三一致するものなり。 次に疾病に依りて生後より7歳迄の幼児につき大別すれば第3表に示す如くにして 呼吸器疾患が最も多くその川敷の34.4%を占め,次で滑化器病19.8%,皮膚病13.4%, 眼病10・5%・外科的疾患7・9%・門門性疾患7・5%・耳鼻咽喉疾患5・9%・腎及び泌 尿器疾患04%,最:も少なきは心臓疾患にして僅にO.2%を示すのみ。 第 1 表 1600F ・1500 1400e 13001 1200; 1100 1000F 900 800 700 ・600 500t 400 300’ 200 toet 盛
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第2表
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一第 10 答 399一100 山本=陰嚢水腫の非観血的療法 余ぱ=ニケ所の診療所を鍍務するため二等今述べたる数は隔日に診療せるものの激に して,雫均値はこの適才を算するものとす。余のこxに第3表に示せる外科的疾患と は外傷,「ヘルニ寺」,.火傷,凍傷,鰹毒,化膿性淋巴腺炎,擦疽,先天性股開節 脱臼,陰嚢水腫,血管腫,急性炎症性疾患,血友病・骨髄骨膜炎を包含するもの にして,その中比較的千早は乳幼見の陰嚢水腫なり。之に就て余は非観血的根治療 法を試みたるに良好なる成績を實回するに至りその方法の簡便にして治癒率の高き 本法が内科馨に依りても容易に可能なる良法と思惟しこ玉にその詳細を登表せんと す。
第1章
臨床二二例
余の症例は生後1ケ月より生後3ケ月に及ぶ乳兄,9人11例〆生後3年のもの1人1例1(し て先天性陰嚢水腫(Congenita1)及び索扶陰嚢水腫(Funiculaf)に寂する竜のは除外せし総計12 例とす。その中右側8例,左側4例にして右側は左側の倍率を示す。水腫.の容積は最も大なるも の10c.aにて最:も小なるもの’2 c.αにして年均5.4qαなPo「ヘミシン」注射同数は皆1同にて全 治し2同行へるものは僅かに1例なり。注射量は0.1乃至O.4e.aにて季均O.3aαなη。特に副 作用と認めらるるものなけれども第8例1ケ月の霞割10c息の容積を有しO.3c.aを注射せるもの及 び第11例2ケ月の男児7e・aの容積を有する水腫に014qαを注射せるに翌日注射側の陰嚢獲赤, 局所熱感,腫脹せるも翌々目には全く準常に復したVo注射の結果は全例とも確實k奏効せる.も のにして1年8ケ月の遠隔成績に於ても杢部全治し再凌を見ず。 「ヘミシン」注射による陰嚢水腫根治成績 症例 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 .12 姓 名 寺 渡 多 藤 山 邊 成 川 野 本波多野
宮 渡 村 成 武 邊 山生後細麟癸喫譲
2ケ月 冶: 2ケ月1:左 1ケ月剣左… 1ケ月孚1右40 日i左1
40 日ig 1 1ケ月 右! 11ケ月じ右
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2ケ月け右、 1−i 5c.a 4c.o. 6c.c, 4c.a 5c.a 4aa 6c.a 10e.a 2g.a 7c.a 7c.G 5,2aa ]L:’:”’ i注旛藷圃結果
1 1 1 1 1 1 1 1. 1 2 1 11・ I o.3c.a l o.3c.a ( I O.3c.a O.3c,a I o.3c.a l O.3c.a I o..obc.a i噴霧駿
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0.2c.α… 無 無 無 無 無 蕪 無 無 良 良 良 良 良 良 良 良 良 良 良 良遠轍側磯
1ケ月孚良 10ケ月牛良 7ケ月孚良 7ケ月酔罵 9ケ月 良 9ケ月 良 1ケ月 良. 1ケ月 良 3ケ月 良 1年目 良 8ケ月 良 1年8ケ月良 無 無 無 無 無 無 無 無 無 無 無 無一第10谷400一
山本=陰嚢水腫の非観血豹療海 IQI
第2章 考
.按 抑も陰嚢水腫は睾丸回雪に液艦の潴溜するの謂にして之を急性慢性の爾者に分つこ とを得るも余のここに論じ叉臨床上経験せるものは総て慢性陰嚢水腫を意味す。淋毒 性,尿道「ブジー」叉は導尿の目的を以て尿道内に器械を挿入せし場合,叉は尿道結 石による尿閉に際して起因する炎症或ひは露護腺炎に合併症として現はれる種々なる 原因による尿道炎症に因する副睾丸炎の場合に,副睾丸の腫脹二野と同時に睾丸輩膜 に炎症性滲出物の蓄積することあり。之帥ち急性陰嚢水腫と構せらるるものにしてこ れ等は特別に陰嚢水腫としての治療を要せす原因となれる炎症の溝失に依ilて陰嚢水 腫も自然消滅するものなり。こエに述ぶる慢性陰嚢水腫の原因が睾丸の肥大に依る場 合あり。これ二次性陰嚢水腫と即せらるるものな妬然れども陰嚢水腫は概むねその 原因は不明にして何等:炎:症性塗化を認むるを得す。かかるものを原獲性陰嚢水腫と穆 せられ,慢性陰嚢水腫の大部分を.占むるものなり。且っての原脂性慢性陰嚢水腫にも 水腫の生ぜし場所及び形態に依りて種々子別せらるも,(第一圖参照)通常Vaginal Hydroce/e最:も多し。 (1)先天性陰嚢水腫(COngenital hydrocele・) こは睾丸輩下鞘歌突起が下降し荷且つ腹腔と連絡せるものにして,トレンデレンブ ルグ三位に患者を仰臥せしむるときは腹腔内に清失するものなり。 (2)三見陰i嚢水腫(lnfantile hydr6cele・) 本症は睾丸輩膜内の腹膜鞘状突起内に液肥潴溜し且つ腹膜門門突起は上部のみにて 三等されたる場合なり。 (3)索状陰嚢水腫(Funicular hydrocele.) 腹膜鞘歌突起はその下部に於て閉塞し上部は交通する爲めに骨盤高位に於て上部の 潴溜液は腹腔内に滴下し去る。 第 1 圖。
先天的ttt Congen’italo) )・ o
重刀見1性 臨月犬 工nf’ant臼e FuniCU「ar 一一一一第 10・巷…401一。
開塞性Encysted
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鞘状 Vag’inai102 山本・=陰嚢水腫の非観j血的療法
(4)閉塞性陰嚢水腫叉は精系水腫(Encysted hydrocele.)
こは前者の攣型にして腹膜野田突起は上下に於て塞閉せられ2ケ所に於て三三の潴 溜あ、り。この他睾丸叉は副睾丸に於ても嚢腫性陰嚢水腫の形成せらるることあり。印
Encysted hydrocele of the testicle及びEncysted hydrocele of the epididymisな
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(5) Hydrocele en bissae.
画引は画人の斯く命名せる.ものにして・その形態が砂時計様にして中来に於て上下 せられ,上下に二分せられたる如く見ゆ。その中央の絞拒部は炎症性肥厚に依るとな、 す。
(6) Hydrocele Muliebris or H. feminae.
本症は大陰唇或はヌック氏管内に漿液の潴溜せるを云ふ。 (7)陰嚢血腫(H:aematocele.)・ 本症は外傷・腫瘍・陰嚢半睡穿刺後等に惹起せらるる睾丸輩膜内の賢母の謂なり。・. 第1項陰嚢水腫の治療法 かくの如く陰嚢水腫は種kなる形態を有するものにしてその治療法もその種類に依 りて自ら覆工せらるNものなり。二次性陰嚢水腫に於ては睾丸の治療を以て足れりと すQ今主として原獲性陰嚢水腫に於て述べん。陰嚢水腫の治療としては概ね手術的療 法に重きを置かれ・その手術法にも種kありて例之フォルクマン(Volkmann)氏手術 法・ジLプレーσ・b・・1・y)母法・ウ。リス,アンF“リ.一ス(Willy・A・d・ew・)氏疾, ウインケルマン(Winkelmann)氏船舶あり。之等は皆観血的治療法に驕すべきもの にして本症の非親旧的治療法として,前述の第二種に屡する索歌陰嚢水腫(Funicular> に於ては脱腸帯の使用を推奨するものあれどもその治療効果たるや甚だ疑はしきもの なり。この他に所謂穿刺術あり。然れども古き成書に於ては「トロアカール」による 本穿刺術は姑息的方法にして・潴溜液排出後室氣侵入によりて化膿の恐あり。依って 「ドレナーゼ」をなさざるべからすと云ふ。或は「ト・アカール」にて穿刺の後,「ト ロアカール」をそのま玉数日間放置し無菌的に墜迫下帯をなすと云ふも凹凹上困難な る:方法なり。その他,穿刺針にて水腫壁の内面を到る所穿刺粗雛にせしめ,以て壁の 癒看を企圖せるものあり。又硬固なる陰嚢水腫の穿刺は禁ぜられ,且つ「ドレナーゼ」, を使用せざれば炎症の波及によ1)て患者を重篤とする恐れありとして刺戟性物質の陰 嚢水腫内への注入を嚴禁せり。然れども矧亥の非手術的療灘防注射療法に於て種4 なる藥晶を痔核内に注入し以て血液凝固を思し次で痔核の組織化を計り全治せしめん 一第 10 壇塾402一
山本=陰嚢水流の非観血的療法 103 とする方法の四達を本症に慮回し水腫液排出後腹膜鞘歌突起内i・c藥品を注入し以て全 治せしむる非三野的方法の臨床上好結果を帯す獲表ありて本治療法は有効確實なる方 法となれり。 第2項「ヘミシン」の臨床的慮用 痔核治療の目的を以て学用せられたる手品は種々あれども・最も近代的にして悪用 範園も嘆く且つ副作用なきものとして「モレクラーマグネシウムJに依る法及び「ヘ ミシン」に依る法とす。平等は皆前述の如く痔核内凝固の組織化を目的とするものに してその他にヴォビー・・=L :=ットに依る「エレクトロコアグラチオン」が痔核及び血管 腫の治療として絹當好結果を得たる例あり。自Pち岡上;革島等によりて臨林上経回せ られ,痔核の軟きものにては奏効確實なるも硬きものにては著効確實ならすと云ふ。 平野性血管腫にては通電1ケ所5秒程度にて数圓反覆して奏効すと云ふ。海綿様血管 腫にては時々針歌電極を用ひ良結果を學ぐと云ふ。」これ等の治療の中注入後の刺戟少 なく効果多き階下として「ヘミシン」の慮用範園尤も大なり,且つこれは1ガングリ オン」,陰嚢水腫,肥厚性鼻炎等に生憎さる。鄭ち川崎,高崎,野元等は「ガンダリオ ンー・及び陰嚢水腫に階層し・田中・山本・川原等は慢性鼻炎に堅甲し良結果を得たり。 田中,山本は臨床的慢性鼻炎に卜しては1同使用:量0.3乃至O.7 ac.1こして1同にて 著効あれども多くは3,4同にて全治せり。欝血性鼻炎に最も有効にして自畳症状を 訴へざるIC至ると。實質性鼻炎にては前者セこ比しその効梢劣れり。然れども甲介切除 の際注射を施せしものにては出血少なし。高崎はα2%「アラビアゴム」叉は「ゲラ チン」溶液に次硝酸蒼鉛を:10%の割合に懸液:とし,1時聞!00度滅菌せる液を自製 し鷹用せり。 第3項陰嚢水腫に封ずる「ヘミシン」注射の適評症 腹膜鞘歌突起の腹腔と交通せる解剖學的形態にある,前章の第1に解する先天性陰 嚢水腫及び第3の索歌陰嚢水平に於ては本注射療法は適當ならず。腹腔内との交通 のため注入液による陰嚢7k腫物の閉塞tc支障を興すのみならす,時に炎:症の腹膜波及 を顧慮せざるべからす。配れ共「ヘルニアJの非観血的注射療法の實施せられつXあ る現今に於ては爾今後の研究をまちて注入藥の改良に依りて之等種kの陰嚢水腫は勿 論「ヘルニア」に樹しても危瞼なく注射に依る根治療法の實施奏効せらるることあら ん。ハリスは「サ■ラゾール」Sylasolなる藥晶を「ヘルニア」嚢内に注入し非観血 的に根治せしを臨床上報告するも,不幸余は未だ臨床的経験を有せす。 要するに,陰嚢水腫の非観血的治療法としての注射療法は奏効確實にして;注射同 一第 10 巻 403一
亘04 山本;陰嚢水腫の非観血的療法 数も1同・注射量も少量にてこれ足れ砂とする・もめ. ノ,乳兇性陰嚢水腫Infantile HydroceIeなり。その他の陰嚢水腫と錐も容積甚しく大なるもののみには数同反覆注 射に依り全治し,他は皆一剛。て全治するものなり。故に絶三帰禁忌を干すb只陰嚢 .di1腫,實質性陰嚢水腫,精系彌漫性水腫に於ては注意を要す。陰嚢血腫は,外傷,腫 瘍文は陰嚢水腫穿刺等の原因に依りて,1睾丸輩膜内に出血せるものにして,波動を呈 し,濁音を讃明し得れども,光線に封して陰嚢水腫の如く透明ならざる故水腫との旧 刊容易なり。脚質性陰嚢水腫とは,睾丸實質内に出血せるものにして,精系三三性水 腫は精系の軍純性浮腫の謂にして絶望に注射は禁忌なるのみならす,全く無意義たる や論を侯た歩。
第4項注 射法
先づ陰嚢を全艦にわたり清浮溝毒す。この際特に幼見にありてば,陰嚢皮膚甚しく 織細なる故,刺戟強き皮膚溝毒液を使用する場合,早早,グ・、・シッヒ氏に依る時或は 「フォルマリンアルコP一一ル」,「アルコホールー1,「エーテル」等を用ふるときは皮膚炎を惹 起する可能性多き故に下等の皮膚消毒藥はさけ,水溶性「マーキ=L・ク・一ムー旨液に て皮膚溝毒を行ふを可とすQ次で水腫の存在せる側の陰嚢の後方より助手をして握り 緊張せしめ,水腫の殆んど中央に,一刺の下に皮膚を通し水腫内まで,皮膚に直角に 穿刺す。針は細小なるを要す。次に除々に水腫液を吸引し全部除去せるとき針を水腫 内に刺入したるまX注射筒のみを針より離し,充分井野によりて混合せる「ヘミシン」 懸液の適當量を入れ,直ちに針に接合して注入するものなり。この懸液は少時放置す るも直ちに,次硝酸蒼鉛の沈澱を生じ注射針につまりて注入不可能となることあり。 故に操作は可及的速やかなるを要す。且つ注射’筒内に懸液を注入する聞,水腫内に刺 入せられたる針の移動ぜざる様充分の注意を:要す。水腫外の皮下叉は精系等の組織丙 に注射液のもれるときは,疹痛と同時に炎症を惹起する恐れあればなり。 注射量 陰嚢水腫の場合に勝ては,その水腫の容積に依りて多少加減を要するも, 1同の注射量は水腫容積のe.5%迄にて足れりとす。余はα1乃至0.4α。,三世0.3c.c, を用ひたり。高崎は自製0・2%「アラビアゴム」又は「ゲラチン」を基質とせ.る,10% 次硝酸蒼鉛懸液の0・lo.c,乃至1c・e・を用ひ,野元は「ヘミシンJO・3c.c・乃至2c.c.を使 用したり。然れ共「ヘミシン」の注射量はあまりに多きに過ぐるよりも,少なき程度 にて充分なる効果を墨ぐるものなり。・ 注射同轍同数も水腫の大小に依り異なれども甚しく大なるものに非ざる限り,唯 1同の注射に依りて奏効確實なり。余も客積7c£を有せる第10例の1例のみ2同反 一一一ff. 10 ig 404一山本=陰嚢本腫の芝浦卑的療法 105 覆したるも,他は皆1同にて全治せり。川崎も只1同の注射に依りて皆全治し再獲を 冷すと云ふ。本剤が慢性鼻炎の如き實質性臓器内に注射せらるる場合と,陰嚢水腫の 如き嚢腫性臓器に注入せらるる場合とは,自から差異あるは論を侯たざる所なり。田 中,山本等の研究に依れば,慢性鼻炎の際に於ては,1同にても相當著効ををさむる も,全治迄には3,4同の注射を反覆せざるべからすとなす。叉川原は,慢性鼻炎に は1同乃至3同の注射を必要となし・且つ三悪注射を繰返すも樹奏効せざるときは・ 既にその後注射を反覆すと蹉も全く無効なりと云へり。この黒占陰嚢水腫に於ては唯1 同の注射にて殆ど全部全治し且つ再護を見ざること甚だ異れり。次に甚しく水腫の大 なるξきは隔日に2・3同反覆削れば全治せざるものなしと云ふも誤りなし。
第5項副作用・
馬弓に依りて全身的,叉は著しき局所的副作用を全く経験せす。現今に至る迄,他 の臨床治瞼例報告者も,陰嚢水腫内「ヘミシン1注射に依りて起れる副作用を罰す。 只,鼻科領域に本剤を慮用したる田中の不幸なる一例を鼓に引用し)・ささか注意を換 起せんとす。 交替性鼻閉を主訴とせる,54歳の女性,右下甲介粘膜下に「ヘミシンJO・7e・aを注 射せしに,直ちに顔面蒼白,右顔面三三,腫脹,甲介腫脹著明,多量の漿液性鼻汁の 漏出,注射側の甚しき偏頭痛あり。48時間後次第に輕快,5日後治癒せりと云ふ。田 中は,本症を「ヘミシン」の局所作用に依りて起れる廣義の中毒症斜な蔓と結論すれ ども,O.7c.e.の容量に依りて中毒を惹起せりとせば,その野物の毒性たるや甚しきも のにして,到底局所注射藥としては嚴禁すべき藥品たるはまぬがれざる所なり。故に 本症に於ては,むしろ,甚しき過敏性を有する注射部位に重黙を置き本副作用を考慮 せざるべからすと吊棚す。 第6項 注射後の局所虚置 本剤注入後,時に,局所に梢熱感,輕度の獲赤,浮腫を見ることあり。これむしろ 注射の反慮と見徹すべきものにして,斯かる症歌あるときは,局所に冷漁布を行へば 1日にして消退するものなり。注射刺入部は絆好書を使用せす,沿毒「ガーゼ」にて 塵迫するか又は「コ・ヂウム」液を滴下し置けば可な!o注射翌日,既に注射を施さ れたる水腫は硬度を増し,梢腫脹するも,そのまX放置するときはこの硬き部分は漸 次沿失し4.週を出ですして全く治癒に及ぶものなり。時に甚しく大なる水腫に達ては 第1同注射の翌日に穿刺に依りて再び水腫液を除去するときは,梢血性を帯びたる漿 液を出すを見るべし。この際再び少量の「ヘミシン」を注入するか或は只水腫液を除 一第 10 巻 405一106 山本==陰嚢永腫の非親血的療法 去せるのみにても可なり。
第7項 治療成績
治療全治率は甚しく良好にして,今迄の研究者も殆ど全部全治し混獲を見ざるを三 二す。川崎は臨床實験に於て,興味ある研究をなせり。師ち雨側の陰嚢水腫を有する 患者に,水腫液を除去後,片側ICは「ヘミシジ」の適量を注射し,反掛側には,同じ 條件の下に,リンゲル氏液を注入して,これを比較研究せり。その結果に依れば「ヘ ミシン」を注射せる側に湿ては,只ユua O注射に依りて全治に及べるも,リンゲル氏 液を注射せる封稔側に於ては,毎常3週後に至りて注射前と全く同様なる陰嚢水腫を 形成し全く治癒せざるを誰明せり。 第8項 注射後の組織學的所見 「ヘミシン」の注射は陰嚢水腫壁内面を鼻詰とし炎症機縛を起さしめ,次いで結締組 織の檜殖,疲痕形成,組織化に依りて全く承腫嚢を閉塞するものならん。この面縛は 痔核内注入の際に於ける機轄と殆んど同様なり。 叉鼻科方面に慮用せられたる場合の甲介の組織學的所見を見るに,田中け鼻甲介に 「ヘミシン」の注射を行ひ,一LXiの時日を経て之を切除し,無水「アルコールJ又は カルノイ氏液/tこて固定し,「ヘマトキシリン,’エオジン」の二重染色に依りてその組 織を槍索するに,主として血栓形成に基づく鼻甲介の血液量減三次v・で結締組織の増 殖・三三形成を螢寿・海綿様組織を實質性組織に攣じその容積を縮小せしむるととも に腺組織の一部をも破冠してその数を減じて分泌過多を制限するものなりと云へり。 結 群、 余は昭和14年1月より昭和!5年7月迄に本診療所を訪れ,たる生後1日より生後 3年に至る乳幼見の陰嚢水腫患者10人12例に賦して「ヘミシン」に依る非親1血的 治療法を試みたるに例外なく短時日に全治し,1年8ケ月に至る遠隔藁積を見るも乱 獲するものなし。 本法の方法,適慮症,副作用,注射後に於ける局所鍵化等を詳述し,本法は安全, 簡便にしてしかも治療成積の確實なる法なりと推奨せ妬 絡に臨み御校閲を賜りし綿引朝光博士に深謝す。 一第.10 餐≡…406一山本=陰嚢水腫の非観血的療法 107
主要文獄
1)倒中芳次郎J山本肇;大日本耳鼻咽喉科會會報,37巻,2號1338頁. 2) 田中芳…欠良B圃山本肇;愛4…口馨學會難言志,3S 6登き}4號,799頁. 3)松岡元次郎;内外治療,6年111號,387頁. 4)岡上芳次;日本外科學會雑誌,33同,2號,305頁. 5) 高崎英彦∫ 軍{馨團雑誌, 235 號, 115 頁. 6) 田中茂太郎;耳鼻咽喉科臨床,28巻,3號,418頁. 層7)川原傳吉1治療藥報,379號,21頁. 8)革島悟郎;日本外科寳函,10巷,1號,297頁. 9)野元芳馬;治療學雑誌,3巻,5號,564頁. 『10) 横山虎雄; 慶鷹馨學, 13 毬㍉ 7 4.T,it,979 頁。 ■1)川崎祓太郎;日」JI7■外科學會雑誌,31巻,1影虎,106頁・ 42)川崎頽太郎∫目本外科學會難誌,31巻,10號,1226頁. (15,9,19。完) 一一謔P0巻407一
108 山本=陰嚢水腫の非観血的療法
第二圃右陰憂水腫
第三圖 「ヘミシン」0。4cα注離礁萱ケ月にして全治再獲せず。