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これまで がん細胞および昆虫細胞に対する細胞毒性活性 抗ボウフラ活性 植物病原性カビに対する抗カビ活性 植物生長調節活性を調べています これらの研究は 植物性食品を含む植物の機能評価 リグナン骨格を持つ新農薬 医薬開発につながるものです 今後は リグナン類の生物活性の発現メカニズム研究も行っていく予

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教授:山内聡 研究テーマ I リグナン類の立体異性体の合成と生物活性 II 酵母還元生成物を利用した天然物有機化合物の合成 研究テーマ I リグナン類の立体異性体の合成と生物活性 食品性植物を含む植物は、多くの有機化合物を作り出す能力を持 っています。 リグナン類は、ベンゼン環部分(C6)と3つの炭素鎖(C3)の C6-C3 単 位が2−3単位結合したもので、食品性植物を含む多くの植物が作り 出す、とてもポピュラーな有機化合物の1つで、多くの種類の生物活 性が知られることから、古くから研究対象となってきました。しか し、リグナン類には、複数の不斉炭素が存在するため、鏡像異性体、 ジアステレオマーの複数の立体異性体が存在します。植物中には複 数の立体異性体が存在する例が知られており、食品性植物をはじめ とする植物の機能を明らかにするためには、リグナン類の立体異性 体を作り分けてから生物活性を調べることが求められます。植物か らリグナン類の立体異性体を取り出し、精製するよりも、有機合成化 学的手法を利用して立体異性体を作り分ける方が、とても効率が良 いのです。 リグナン類の立体異性体の合成法が確立すると、次に、それぞれの 立体異性体の生物活性試験を行い、最も高い生物活性を有する立体 異性体を調べます。 さらに、リグナン構造を持つ化合物の医薬、農薬へのシーズ開発研 究として、有機合成化学の手法を用いて、天然リグナンの構造を変化 させたリグナン誘導体を合成し、生物活性の評価を行っています。こ れを構造活性相関と言って、リグナン構造のどの部分が生物活性に 重要であるかを明らかにし、より高い生物活性を有する化合物のデ ザインにつながります。さらにはリグナンとの結合タンパク質を検 索するためのプローブ合成にもつながります。

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これまで、がん細胞および昆虫細胞に対する細胞毒性活性、抗ボウ フラ活性、植物病原性カビに対する抗カビ活性、植物生長調節活性を 調べています。これらの研究は、植物性食品を含む植物の機能評価、 リグナン骨格を持つ新農薬、医薬開発につながるものです。今後は、 リグナン類の生物活性の発現メカニズム研究も行っていく予定です。 以下に、具体的な研究例を示します。 1)3置換テトラヒドロフラン型リグナンについての研究 図 1, 2, 3 のように、立体異性体 1-8 の8つの立体異性体の合成を 行いました。 図1:3置換テトラヒドフランリグナン立体異性体 1、2 の合成

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図 2:3 置換テトラヒドフランリグナン立体異性体 3, 5 の合成

図 3:3 置換テトラヒドフランリグナン立体異性体 4,6-8 の合成

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異性体 1 が Rye grass(シバ)の根の生長を最も阻害することが分か りました。

論文: Journal of Agricultural and Food Chemistry, 59, 13089-13095 (2011)

2)4置換テトラヒドロフラン型リグナンについての研究 4 置換テトラヒドロフラン型リグナンは、薬草、スパイス、ナツメ ッグに含まれるリグナン類で、ベンゼン環が 4-ヒドロキシ-3-メトキ シフェニル質の場合、次のように 9-18 の立体異性体が考えられます。 図 4:4 置換テトラヒドロフランリグナンの立体異性体 まず、このすべての立体異性体の合成方法を研究しました。

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図 5:4 置換テトラヒドロフランリグナン立体異性体 9, 10 の合成 図 6:4 置換テトラヒドロフランリグナン 11-16 の合成 図 7:4 置換テトラヒドロフランリグナン 17, 18 の合成 合成によって得られたすべての立体異性体について、がん細胞に 対する細胞毒性活性を調べたところ、立体異性体 1 に最も高い活性 が観察されました(図 8)。次に、この立体構造に固定して、多数の 誘導体の合成を行い、細胞毒性活性を調べたところ、ベンゼン環上の

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置換基を変換した誘導体 19, 20 の活性が 1 よりも高いことが分かり ました。このことから、ベンゼン環上の置換基が活性の高さに影響を 与えることが明らかになりました。 図 8:4 置換テトラヒドロフランリグナンのがん細胞に対する細胞毒 性活性(菅原卓也先生との共同研究) さらに、合成したすべての立体異性体の植物成長調節を比較したと ころ、立体異性体 1, 2 が他の立体異性体に比べて顕著にそれぞれレ

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タス、ryegrass の成長を阻害しました(図 9)。

図 9: 4 置換テトラヒドロフランリグナン 1, 2 の 1 mM での植物に対 する生長調節活性

4置換テトラヒドロフランリグナンに関する発表論文 Organic & Biomolecular Chemistry, 3, 1670-1675 (2005)

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 71, 2248-2255 (2007) Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73, 1608-1617 (2009) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 62, 651-659 (2014) Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 80, 669-675 (2016) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 24, 4798-4803 (2014)

3)ブタン型リグナンについての研究

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図10:セコイソラリシレジノールの3つの立体異性体の合成 発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 72, 2981-2986 (2008) Journal of natural products, 68, 1459-1470 (2005)

次 に 、 が ん 細 胞 に 対 す る 細 胞 毒 性 活 性 を 調 べ た 結 果 、 (-)-dihydroguaiaretic acid (19)の活性が最も高いことがわかり、この立体 に固定して、ベンゼン環上の置換基が異なった誘導体の合成を行い、 図11 の化合物が合成した誘導体の中で最も高いことが分かりました。 また、植物性食品中の含まれるセコイソラリシレジノールの 2 つの 一級水酸基が還元されてなくなった構造の方が高い細胞毒性活性を 示しました。 図 11 中の(8R,8'R)-secoisolariciresinol は、細胞毒性活性はありませ んが、脂肪細胞に対する抑制効果があることが菅原卓也先生との共 同研究で示されました。

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図11:dihydroguaiaretic acid 誘導体のがん細胞(白血病)に対する細 胞毒性活性(菅原卓也先生との共同研究)

発表論文

Journal of Agricultural and Food Chemistry, 62, 5305-5315 (2014) Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73, 35-39 (2009)

Dihydroguaiaretic acid 誘導体のアカイエカに対する殺虫活性を調べ たところ、図12 の化合物に即効性が観察されました。約15分で半 数のボウフラが死んでしまいます。これは、ボウフラへの呼吸阻害で あることが分かりました。

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発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 75, 1735-1739 (2011) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 63, 2442-2448 (2015)

Dihydroguaiaretic acid には、植物病原性カビに対する抗かび活性が あることも分かりました。特にAlternaria alternata という黒斑点病菌 に対する活性が強いことが観察されました。誘導体合成と活性試験 によって、図13 の化合物が特に高い抗カビ活性を示すことが分かり ました。一方のベンゼン環のメタ位に電子吸引性の高いフッ素原子 を、他方のベンゼン環のメタ位にフェノール性水酸基を持っていて、 先ほどの立体異性体20 と同じ立体構造を持つ化合物に高い活性が見 られました。写真は、なしの葉を使った実験で、化合物を塗布した葉 には、病原性カビの発生が観察されませんでした(図13)。

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13:dihydroguaiaretic acid 誘導体の Alternaria alternata による黒斑 点病防止効果

また、病原性カビの黒色色素の生成を抑制する dihydroguaiaretic acid 誘 導 体 も 作 り 出 す こ と が で き ま し た ( 図 14 )。 天 然 体 の (+)-dihydroguaiaretic acid (DGA)では、培養した Alternaria alternata は黒い のですが、図 14 の 3 つの誘導体を加えた培地の Alternaria alternata は、白色の部分が多くなっています。これは、メラニン色素の生合成 阻害のためではないかと考えられます。

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図 14 : dihydroguaiaretic acid 誘 導 体 に よ る 植 物 病 原カ ビ で あ る Alternaria alternata の白化作用

発表論文

Journal of Agricultural and Food Chemistry, 61, 8548-8555 (2013) Journal of Agricultural and Food Chemistry, 65, 6701-6707 (2017)

4)γ−ブチロラクトン型リグナンについての研究

γ−ブチロラクトン型リグナンについては、4つの立体異性体が考 えられますので、まず、4つの立体異性体を合成しました(図 15)。

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図15:マタイレジノールの4つの立体異性体の合成 発表論文

Journal of natural products, 68, 1459-1470 (2005)

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 71, 1745-1751 (2007)

マタイレジノール (matairesinol)は、多くの食品性植物に存在する ので、アレルギー抑制活性を測定するために、菅原卓也先生との共同 研究で、IgE 産生抑制活性を測定しました(図 16)。その結果、立体 異性体22 が最も高いアレルギー抑制活性を持つことが分かりました。 さらに、誘導体を合成し構造活性相関研究を行いました。 図 16:マタイレジノールの 4 つの立体異性体の抗アレルギー活性 (IgE 産生抑制活性)

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発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 74, 1878-1883 (2010)

γ−ブチロラクトン型リグナンの一つに、アクチゲニン(arctigenin) という、ゴボウの種子に含まれる、がん細胞に対する細胞毒性活性を 有する化合物があります。このアクチゲニンにも 4 つの立体異性体 が考えられますが、そのうちの(8R,8'R)体のベンゼン環上の置換基を 変換した多数の誘導体を合成してがん細胞である HL-60 細胞および HeLa 細胞に対して細胞毒性活性試験を行ったところ、ベンゼン環上 に2 つのクロロ基と1つのブチル基を持つ誘導体 26 が天然の(8R,8'R) 体のアクチゲニンと同等かそれ以上の高い活性を持つことがわかり ました(図17)。 図17:アクチゲニン誘導体のがん細胞に対する細胞毒性活性 発表論文

Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 27, 4199-4203 (2017)

次に、アクチゲニンの4つの立体異性体27-30 を合成後、がん細胞 である HL-60 細胞とヨトウ蛾の細胞である Sf9 細胞に対して細胞毒 性活性を調べました。がん細胞に対しては、すべての立体異性体に活 性が認められましたが、昆虫細胞に対しては、立体異性体27 と 29 に 活性が観察されました。このことから、8 位の立体構造よりも、8'位 の R 体の立体構造が昆虫細胞に対する細胞毒性活性のために重要で あることが示唆されました。このことは、昆虫細胞中にアクチゲニン のレセプタータンパクの存在を予想させる結果でもあります。現在、 27 の立体構造に固定してベンゼン環上の構造と活性との関係を調べ ています。また、立体異性体27 の昆虫細胞に対する細胞毒性は、が

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ん細胞に対する活性よりも強いということも興味深いことです。 図18:アクチゲニンの 4 つの立体異性体の細胞毒性活性の比較 5)フロフラン型リグナンについての研究 フロフラン型リグナンは、ゴマに多く含まれるますが、野菜類にも 含まれることが分かっています。ピノレジノール、メデイオレジノー ル、シリンガレジノール、セサミン、セサモリン、セサモリノール、 サミンの両鏡像異性体を合成し、植物の成長に与える影響を比較し ました。その結果、(+)-セサミンは、レタスの根の成長を促進し、芽 の成長を阻害しました。(-)-セサモリンは、ryegrass の芽の成長を阻害 しました(図19)。

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図19:フロフラン型リグナンの植物成長調節活性 発表論文

Journal of Agricultural and Food Chemistry, 63, 5224-5228 (2015)

これまでのリグナン類は、C6-C3 単位の 8 位と 8'位が結合したも のですが、次に、それ以外のリグナン類の研究について説明します。

6)C6-C3 単位の 2 位と 9'位が結合したリグナンの合成

モリノール C および D は、C6-C3 単位の 2 位と 9'位が結合して、立 体異性体の関係にあります。以下のように合成しました。

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図20:モリノール C, D の立体異性体の合成 発表論文

Organic & Biomolecular Chemistry, 1, 1323-1329 (2003)

7)1,7-seco-2,7'-cyclolignan についての研究 このリグナンは、通常のリグナンの C6-C3 単位の 8 位と 8'位との 結合が、1 位と 7 位との間が解列し、2 位と 7'位とで結合した構造を とっています。簡単に言うと、一方のフェニル基が7'位に転移した構 造になっています。以下のように、全立体異性体の合成を行いまし た。

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図21:1,7-seco-2,7'-cyclolignan の 4 つの立体異性体の合成 発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 78, 19-28 (2014)

次に、誘導体の合成を行って、がん細胞に対する構造活性相関の研 究を行いました。その結果、次の化合物に最も高い細胞毒性活性が観 察されました。また、アポトーシスを誘導することも確認されまし た。 図22:1,7-seco-2,7'-cyclolignan 誘導体のがん細胞に対する細胞毒性活

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発表論文

Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 24, 4231-4235 (2014)

8)9-ノルリグナン (9-norlinan) についての研究 9-ノルリグナンとは、C6-C3 単位が2単位結合した構造から、9 位 の炭素が欠落したリグナン類のことを言います。通常はリグナン類 の炭素数は12 個ですが、ノルリグナンでは、11 個の炭素からなって います。図23 に合成方法を示します。 図23:ノルリグナン 31, 32 の合成 次に、メチル基が欠落していない前述のdihydroguaiaretic acid との がん細胞、昆虫細胞に対する細胞毒性の比較を行いました。この結 果、メチル基欠落した立体構造31 が最も高い細胞毒性活性を示すこ とが分かりました(図24)。 図24:dihydroguaiaretic acid と 9-ノルリグナンの細胞毒性活性の比較 発表論文

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Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 26, 3019-3023 (2016) 9)セスキリグナンについての研究 セスキリグナンは、C6-C3 単位が3単位結合したものです。Morinol A, B は、セスキリグナンであり立体異性体の関係にあり、不斉炭素 が4 個あることから合成で 24=16 個の立体異性体が考えられます。 図25、26 には、16 個の立体異性体の構築方法を示しています。 図25:立体異性体 33-40 の合成

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図 26:立体異性体 41-48 の合成 合成したすべての立体異性体の植物病原性カビAlternaria alternata に対する抗カビ活性試験においては、最も抗カビ活性が高い立体異 性体が42 で、50 mM での成長率が 43%であり、最も抗カビ活性が低 い立体構造が46 で、50 mM での成長率が 84%でした。 がん細胞に対する細胞毒性活性についても、立体異性体間で大き な差は観察されませんでしたので、立体異性体43 の立体構造に固定 して誘導体を合成して構造活性相関を調べました。その結果、図 27 の誘導体49 が 43 よりも高い活性を示しました。

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図 27:セスキリグナンのガン細胞に対する細胞毒性活性 発表論文

Journal of Natural Products, 70, 549-556 (2007)

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73, 129-133 (2009) Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 23, 4923-4930 (2013)

10)リグナン類の抗酸化活性について リグナン類の多くはフェノール性水酸基を持つことから、抗酸化 活性を有していますが、これまでに示したように、リグナン類には多 様な基本骨格があることから、この基本骨格が抗酸化活性にどのよ うに影響を与えるかを調べてみました。その結果、ベンジル位が酸化 されていない骨格の方が、抗酸化活性が高い傾向が示されました。こ のことからリグナン類が抗酸化活性化合物として機能すると、ベン ジル位が反応して酸化生成物が生成すると推定されます。増田俊哉 先生との共同研究では、ベンジル位が酸化されていない食品性リグ ナンの1つであるセコイソラリシレシノールが酸化反応の条件下で、 ベンジル位の1つが酸化された、やはり食品性リグナンの1つであ るラリシレジノールに変換されました(図28)。 図 28:リグナンのベンジル位の酸化の例

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発表論文

Food Chemistry, 123, 442-450 (2010)

Journal of Natural Products, 68, 1459-1470 (2005)

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 71, 2283-2290 (2007)

II 酵母還元生成物を利用した天然物有機化合物の合成 本研究室で得られた、次の酵母還元生成物を用いて、天物有機化合 物の合成に用いました。ラセミ体50 を酵母で還元すると、高い光学 純度の51 および 52 が得られます(図 29)。 図 29:ラセミ体 50 の酵母還元生成物 51、52 を天然物有機化合物の立体異性体の合成に利用する研究を 行いました。生物活性を有する天然物化合物の生物活性と構造との 関係解明研究への貢献を目的にしています。 1)ポリ不飽和脂肪酸合成への応用 生体内では、不飽和脂肪酸は代謝され、炎症作用物質へ変化しま す。不飽和脂肪酸代謝物である、6,7-hihydro-5-HETE lactone の両鏡像 異性体53、54 の合成を行いました(図 30)。

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30:6,7-hihydro-5-HETE lactone の両鏡像異性体 53、54 の合成 発表論文

Journal of Chemical Society, Perkin Transaction I, 2002, 2156-2160

2)dihydropinidine、epidihydropinidine およびジャコウネコのニオイ成 分のの両鏡像異性体の合成 6 員環のケトエステルの酵母還元によっても、高い光学純度で 55、 56 を得ることができます。この酵母還元生成物を利用して 6 員環の アルカロイドの 4 つの立体異性体 57-60 を合成することができまし た(図31)。 図31:6員環アルカロイドのすべての立体異性体の合成 また、同様の合成方法で、ジャコウネコのニオイ成分の両鏡像異性 体も61、62 の合成も行いました(図 32)。 図32:ジャコウネコのニオイ成分の両鏡像異性体

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発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 68, 676-684 (2004) Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 70, 712-717 (2006)

3)6-アルキル-α-ピロン(6-alkyl--pyrone)化合物の合成(1):goniodiol のすべての立体異性体の合成 6-アルキル-α-ピロン化合物は漢方薬に使われる植物に含まれ、多 くの種類の生物活性が報告されていますが、構造と活性との関係、立 体構造が生物活性に与える影響など不明です。そこで、2 つの酵母還 元生成物を利用してgoniodiol のすべての立体構造の合成を行いまし た(図33、34)。6 位の不斉構築に酵母還元生成物の立体構造を利用 し、2 つの水酸基の立体選択的導入に、Shi のエポキシ化、AD-mix に よるグリコール化を利用しました。 図 33:goniodiol の立体異性体 63-66 の合成

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図 34:goniodiol の立体異性体 67-70 の合成

抗菌活性試験の結果、いずれの立体異性体もYersinia intermedia に 対してMIC3.1-50 mM の活性を示し、特に、立体異性体 63、65 に高 い活性が認められました。

発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 72, 2342-2352 (2008)

4 ) 6- ア ル キ ル - α - ピ ロ ン (6-alkyl--pyrone) 化 合 物 の 合 成 ( 2 ): boronolide の両鏡像異性体の合成 酵母還元生成物 51、52 を利用して boronolide の両鏡像異性体 71、 72 の合成を行いました。酵母還元生成物の立体を 6 位の不斉構築に 利用し、6 位に結合したアルキル基上の3つの酸素原子が結合した不 斉構築には (s)-または(R)-2-methyl-CBS-oxazaborolidine、AD-mix-ま たは AD-mix-を利用しました(図 35)。合成したどちらの鏡像異性 体も、シバの根に対する弱い成長阻害活性を示しました。

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図35:boronolide の両鏡像異性体の合成 発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 76, 1708-1714 (2012)

5 ) 6- ア ル キ ル - α - ピ ロ ン (6-alkyl--pyrone) 化 合 物 の 合 成 ( 3 ): cryptocarya diacetate の全立体異性体の合成 酵母還元生成物51、52 の立体構造を 6 位の不斉炭素の構築に利用 することによって、立体異性体73-80 の合成を行いました。6 位のア ルキル基上の2つの不斉炭素は、不斉allyl 化と、1,3-syn 還元または 1,3-anti 還元を利用しました(図 36)。

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図36:cryptocarya diacetate の全立体異性体の合成 発表論文

Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 79, 16-24 (2015)

6)6-アルキル-α-ピロン(6-alkyl--pyrone)化合物の合成(4) :1,3-polyol/-pyrone とその立体異性体の合成 この化合物は、cryptocarya diacetate よりも炭素鎖が長く、末端にフ ェニル基を持つ化合物です。cryptocarya diacetate の合成で用いた合成 中間体を用いました。得られた 8 個の立体異性体 81-88 を植物病原 カビに対して試験を行ったところ、0.5 mM での Alternaria alternata および Colletotrichum lagenarium の成長率が 50-70%でしたが、立体 異性体間での活性の差は確認されませんでした。

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図 37:のすべての立体異性体の合成 1,3-polyol/-pyrone の全 立体異性体81-88 の合成

発表論文

図 3:3 置換テトラヒドフランリグナン立体異性体 4,6-8 の合成
図 5:4 置換テトラヒドロフランリグナン立体異性体 9, 10 の合成     図 6:4 置換テトラヒドロフランリグナン 11-16 の合成    図 7:4 置換テトラヒドロフランリグナン 17, 18 の合成    合成によって得られたすべての立体異性体について、がん細胞に 対する細胞毒性活性を調べたところ、立体異性体 1 に最も高い活性 が観察されました(図 8)。次に、この立体構造に固定して、多数の 誘導体の合成を行い、細胞毒性活性を調べたところ、ベンゼン環上の
図 9: 4 置換テトラヒドロフランリグナン 1, 2 の 1 mM での植物に対 する生長調節活性
図 11 : dihydroguaiaretic acid 誘導体のがん細胞(白血病)に対する細 胞毒性活性(菅原卓也先生との共同研究)
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