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演奏上からみたAnalyseの重要性について

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(1)

 白鴎女子短大論集 2003,28(1),15−52

演奏上からみたAnalyseの重要性について

福 田 由紀子

 Ludwig van Beethoven(1770∼1827)作曲の 「恥r Elise,WoO.59」 (1810年)というピアノ曲は、あまりにも有名である。この曲を多くの著名 なピアニストが演奏しているが、それぞれに個性ある演奏で、聴いていてと ても楽しい。例えば、Vladimir Ashkenazy(1937∼)は、淡々と弾いてい るが、心に残る演奏であり、Philippe Entremont(1934∼)は、歯切れの よい演奏をしているが、聴かせどころを押さえているし、A1丘ed Brende1 (1931∼)は、ゆったりとしたテンポで弾いているが、かなり計算しつくさ れていても、それを感じさせないうまさがあるなど。  それでは、どうしてこのような演奏になるのだろう。  それは、それぞれのピアニストが譜面を色々な角度から読み、Beethoven の意図するところを汲み取り、自分のものとして表現しているからである。  ピアニストの:Kevin Kenner(1963∼)は、ピアノ情報誌に、演奏のため の準備として、作品の理解をどうしたらよいかについて寄稿している。(注 1)  「ステージで余裕を持って演奏するには、作品を作曲家の意図も含めて理 解することである。作品の大きな解釈ができたら、小さな楽節ごとに楽譜を 分析する。楽譜の中の色々な要素がはっきりしてきたら、作品を十分理解で きたことになる。演奏者は自分の思いを演奏に盛り込むことができる。こう した準備をすることで、その作品の一般的な解釈による演奏ではなく、演奏 者自身の解釈で表現した演奏をすることになる。作曲家のメッセージは楽譜 一15一

(2)

福田由紀子 の中に込められていると考える。」  また、日本人のピアニストの井上直幸(1940∼2003)は、著書の中でこの ように述べている。(注2)  「練習といった時に2つのことが頭に浮かぶ。1つはピアノに向かって実 際に弾くこと。もう1つは、弾かないで、楽譜を見る時間を作ること。もち ろん詳しいアナリーゼが必要な場合もあるが、まず曲の全体的な形を掴んで その曲の気分とか香りを直感的に感じ取る。次の段階で具体的に強弱、楽語、 リズムの変化、調性などを見ていく。ピアノを弾く人も、指揮者がスコア (総譜)を勉強するのと同じように、できるだけ深く楽譜を読むようにする。 難しいことだが色々な発見があり、楽しい時間になるはずだ。」  また、音楽教育者の渡辺圭子は、次の様に述べている。(注3)  「今は、作曲家の意図よりも演奏家が感じたままの演奏が多く、作曲家の 意図を汲んでいる演奏は一体どのくらいあるのだろう。『作曲家はホントに こんな演奏を望んでいたのだろうか』と、退屈だった演奏会のホールを引き 上げてくることがある。  より深く作曲者の意図を読み取るために、ただ単に、拍子、調性、形式等 にとらわれず、メロディや伴奏の音やリズムに従って譜を読んでいく。偉大 な作曲家ほど、メロディや伴奏の書き方を苦心していて、その書き方で奏法 まで丁寧に指示を出そうとしているとしか思えない。感性で弾くよりも、書 かれたとおりの演奏をしたほうが、誰が弾いても『いい曲になる』のだ。演 奏において感性で自由にできる部分の割合はごくわずかしかない、と断言で きる。」  以上3人の意見を要約して取り上げてみたが、いずれも譜面から作曲家の 意図を読み取ることの重要性を説いている。  私は、大学時代にAnalyse(楽曲分析)を学んでから、深く興味を持つよ うになった。作曲家が作ったのと同じ次元に自分を置いて、作曲家の意図し ていることを譜面から読み取るのである。約200年経った今でも、時を越え てBeethovenと同じ次元に自分を置くことができるのである。そして、1回 一16一

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演奏上からみたAnalyseの重要性について 目より2回目、2回目より3回目と回を重ねてAnalyseをしているうちに気 付かなかった事柄も気付くようになる。謎解きのような面白さがある。  今回は、曲を取りあけ㍉深く掘り下げてAnalyseをすることにより、作曲 家の意図してることがいかに多く読み取れてくるか、また、演奏する際に、 それらがいかに重要か研究していくことにする。

1.言語と音楽言語の比較

 我々は生活をしていく中で、自分の思いを伝えるのに言葉をつかう。音楽 家は、それぞれの楽器や声で伝える。例えば、ピアニストはピアノの音でと いうように。  ここで方法手段としての話し言葉とピアノの音は自分の意思を表現するも のとして同じに扱われる。ゆえに、言語と音楽言語はたびたび比較される。 フランスのJacques Chailley(1910∼1999)による文章がわかりやすいので 引用する。(注4) r話し言葉と同様、音楽言語には三つの分析段階がある: 1 文法的分析に相当するものが「和声分析」である。単独に取り出した一  和音または小和音群中における各音の正確な意味を知ることである。 2 次に「調性分析」がくる。論理分析によって文構造との関係における語  の価値を知るように、それぞれの旋律または和声の単位をその前後関係  において知り、それらをある調性の意味をもった楽節としてまとめるの  である。 3 最後に「形式分析」がくる。これは、文学的分析に相当し、上にまとめ   られた楽節の配置を作品全体との関係において知らしめるものである。  それはテーマを明らかにし、そのプランと美的意図とを把握することを  可能にする。いい換えれば、作曲家の意図をじゅうぶんに理解し、その  芸術作品を十全に享受することを可能にするのである。』 一17一

(4)

福田由紀子 以上の観点から具体的に曲を取りあげてAnalyseしてみる。 互.Beethoven作曲rS旺CHS VARIATIONEN Fdur Opus34」の設定理由  この曲目設定の理由は、楽曲分析の上で比較的研究要素の価値が多くある 点、並びに自分自身としても、この曲を他の曲より多く演奏してきた点等か らである。  「変奏」とは、楽曲の構造をすべての面にわたって様々に変換する技術で ある。変奏類型からみれば、装飾変奏・音型変奏・定旋律変奏・定和声変奏・ 性格変奏の5つに分類されるが、この曲は性格変奏に属する最も顕著な例と されている。主題の種々な要素を性格的に変化させてゆくのである。具体的 に言えば、各変奏ごとに調も拍子も速度も変化し独自の性格を描き出すので ある。Beethovenが得意とした変奏というジャンルで、この変奏曲をもって 性格変奏の様式を確立したということが定説となっている。以上の理由によ

りAnalyseの対象曲目をBeethovon作曲「SECHS VARIATIONEN Fdur

Opus34」(1802年)に設定した。

皿.作品を通してのAnalyseと演奏の実際について

 研究方法としてrSECH:S VARIATIONEN Fdur Opus34」の譜面を一 段毎に掲げ、その下に和声分析をしたものを書き記した。また、調性は各変 奏の冒頭に記し、形式に於いてはアルファベットを用い各フレーズの最初に 記した。  更にその下にAnalyseの結果、譜面より読みとれた事柄と変化・反復・対 照に注意しピアノ演奏に重要な点を記した。これは言葉や説明では、言い尽 くせるものではないが、なるべく具体的に附記した。  楽譜は、今回は、Wiener Urtext Edition をとりあげたが、今後は、他 の版との比較研究を詳細に行なっていく所存である。 一18一

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(7)

-演奏上からみたAnalyseの重要性について  ここでは、運動のリズムを八分音符にとっている。  アウフタクトの出だしでかかれているので、1小節の1拍目の和音は、ガ タッと出ずに軽く弾く。  第1小節目に、和音の揺れがあるが、Vともとれるし、偶成和音からの見 方をすると、非和声音(刺繍音)ともとれる。  第1、第2小節のバスの音は、へ長調の主音であるへ音で書かれてあるが、 これはへ長調の調性の強い主張ととれる。ゆえにへ長調の意識一しっとり とした落ち着きさ等一を忘れないようにしたい。また、バスのへ音の表情 もほしい。  第2小節のザは、平の和音についた記号で袈の中のグであり、團の∫とは 異なる。  團から國にいく接続部では問をあけずにいく。何故なら音符の書き方が 而と16部音符が一本の線でつながれており、♪房とは書かれていないから である。  國は團よりも広がっていかねばならない。その理由は、バスの音がひらが なへ音と1オクターブ下がっている。また、右手に装飾音がついていて、ア ルトの,匡「という音型を、回と比較してみれば、團の陀fよりは・・【」:∫の方 が動きを感じることができる。さらに、crescがついている、という点から である。 このcrescは次の小節の1拍の!に向かっていく。∫の記号のついた和音は 嘱であり、圓の平よりも、はるかに不協和の感じの強い和音である。  圃の終わり方は、1度で終わる安定終止型であるが、次にくる囹のフレー ズを考えに入れて、第22小節の終わり方とは、気持ちの上で異なるように弾 く。  團も國も各々4小節であるが、細かくみると、前半と後半の2フレーズに わかれる。前半は重く、後半は軽く弾くようにして、決して同じ比重では弾 かない。  第9小節は、テノールとソプラノが3度違いで、同じ音型のハーモニーを 一21一

(8)

福田由紀子 きかせているし、バスとアルトがへ音とへ音を同じリズムで保続している。  囹フレーズの前半は、8小節の最後の音から12小節の最初の音までで、11 小節のソプラノのトがヤマとなる。  第12小節と第13小節とは同じ音型の繰り返しであり、強く呼びかけたい気 持ちの表現である。第13小節の変化(●o・ゲ・cresc)を意識したい。  第14小節目は、國に戻る気持ちで弾く。  再現の團團は、和声的にも最初の團國と変わりはないが、常に再現である ことの意識がなくてはいけないと思う。 一22一

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(12)

福田由紀子  速度についての標示がないので、テーマと同じ速度と考える。  変奏1で、二長調になったり、32分音符や64分音符が急にでてくる事など、 普通の変奏曲では考えられない。ゆえに、曲全体が、キリッと感じられるよ うに弾くべきだろう。  運動のリズムを、ここでは16分音符にとっている。  出だしは、脂このようにスラーが別々に書かれていても、線が一本で結 ばれているので、根本的に月月このように弾いてはいけない。  第1、第2小節のバスが保続音として、二長調の主音である二を打つので 変奏1では二長調の意識をもちたい。  テーマの2小節の和音は平であったが、変奏1では、いきなり業と変化し ている。

 右手の旋律を図式するとくこのようになり左手の和音数の変化は2

3443322となるので、気持ちの上で、そこに当然<>の表現

が欲しい。  第3小節の2拍目右手の64分音符の頭は、イ奇音である為、意識して弾きた い。  國は少し動きはじめる。         第5小節の2拍目幽の3番目のアクセントは、表現の面白さが感じとれ る。  圓では、9小節のテノールは、二のみで書かれてあるが、テーマでも述べ たように、そこに表情が欲しい。  第10小節の右手の終わりの休符は、11小節のホヘ向かっての緊張感の為の 休符と考えられる。  第14小節のcresc・!・リズムの細かい動きは次は何が来るのかを期待さ せる感じである。       か  國の15小節は、3番目のアクセントだが、ここでは、∈望2番目のトリル ヘと、変化がみられる。

 第17小節の後半の右手の音型は、////と上型の広がりを示し

一26一

(13)

演奏上からみたAnalyseの重要性について ている。  回の3小節の音型はく/\〈〈であった。 常に曲は前へ前へと進展していることがわかる。  最後の國においては、6連符でかかれ、左手が三和音となっているから、 今までの團國圖を含めて、一番力を発揮する。どっしりと総まとめの意味で 弾く事に留意したい。  テーマは、極めて細かいリズムによる装飾的な旋律で、とり入れられてい る。 一27一

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(16)

福田由紀子  テーマでは機能がTonicで、その中の揺れがあったのに対し、変奏Hは、 バスの保続音はなくなってT−S−Tと機能自体の揺れと変化している。  第1小節のπ】このリズムが、曲を生き生きさせている。仮に、このリズ ムでなく、∫刀や抄のリズムだとしたらスケルツァンド風のおもしろさは消 えてしまうだろう。  第3小節は1度の和音の中を自由に動いている。  圃の前半は、がっちりと、後半は軽く、同じ比重では決して弾かない。  國において、6小節のヅは2小節のヅよりもっと和音の緊張をだしている。 さらに、同小節の6拍目のバスの、ほ音のザ、7小節のソプラノニ音に向け てのイ・変ロ音も緊張を出している。仮に、変ロ・ハ・二音と跳躍なしの順 次進行であったなら、緊張は生まれなかったろう。  囹の10小節では、16分音符の線が全部離れているので、和音を感じて、そ の中で自由に弾く。  第11小節で、左手のハとハ音の線が結ばれている箇所は、しっかりと弾く べきだと思う。 第12小節からは、線で結ばれているので、がっしりと、またたっぷりと弾く と考える。  第14小節では、左手は半音階の下降進行で右手はへ音で止まっている。再 現團に導く為の接続部分である。  團の19小節にcresc.がかかれているが、これは回にも團にもなかったもの である。4拍目の和音の変化に対しての、また次にくるべき和音を想像させ る意味のcrescだと思う。  第20小節の!も始めてかかれてある。4拍目で機能がTに解決していない 為、不安定な感じを与える。  テーマは、自由な形でとり入れられている。 一30一

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演奏上からみたAnalyseの重要性について  8分音符の動きでかかれてある。それぞれが、生き生きとした音色で弾き たい。  圓でト音が保続音としてかかれているのでト長調の調性を感じられる。  右手と左手の動きは、右手をメロディー、左手を伴奏という型で捉えるの でなく、各々がメロディーとしてデュエットする楽しみと捉えると面白いだ ろう。  國の6小節の左手変ホを聴いて、團との和音の変化を感じる。團も團も2 小節までの和声構造はテーマとまったく同じである。しかし、團と圃のフレー ズをみると、テーマのように前半・後半の2つのフレーズには、分けられな い。  囹は、第10小節からの左手の後打ち音符で、動的な感じをうける。第11小 節の左手は、下降型・右手は上行型の音程の幅により広がりが感じられる。  第12、第13小節の<>は、和音の揺れに対してつけられたものと思う。 ソプラノに、イ・変ロ・イ音の動きがあるが、第13小節では内声の動きに変 化している。バスに保続音としてイ音(第12小節)・い音(第13小節)がかか れている。  國では、アルトのト音は、1拍目休みで、テノールニ・変ホ・二音が、ア ルトと一緒に動く。crescは、次のヅ変ホ音を弾く為の準備としてかかれて ある。  ゾは、1オクターブと3度跳躍したことの意識である。  テーマは、比較的、単純な形でとり入れられている 一33一

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(22)

福田由紀子  Tempo di Menuettoからメヌエットらしいテンポ、愛らしい雰囲気が欲 しいという事が読み取れる。  第1小節の第1音は、弾力のある音で弾きたい。バスの変ホ音の保続によ り変ホ長調を感じる。  第2小節の2拍目は、ソプラノの変ホ音のみ休符なしで」で書かれてある ので、この音の響きを大切にし、その響きから、次のト音が導かれる。  第4小節後半の接続部は、オクターブでかかれてあっても、團にいく橋渡 しであるから軽く弾くべきである。  國の5小節からは、和声構造は團と同じだが、左手の和音が三和音となり、 6小節の平でも和音の重なりが増えていて、5小節からcrescがかかれてあ るので、團よりも、もっとおおらかに弾く。  圏の入り方は、團とは対照的で、團では匂と音型が下がっていたのに対し、 囹では、」と広がりを感じさせる。右手がオクターブで動き、テノールが変 ほ音を保続している。  第11小節の左手のスタカーティシモは、広がりの中のスタカーティシモで 上行型でもあるから短く切るだけでなく、弾力のある音で、しかも一歩ずっ 踏み締める感じで弾くべきである。  國では16小節の和音が蝿となり内声が月と動いている。この動きは、圃の 出だしの動きを使ったものと考えられる。  國では、思い切ってリズムを3連符に変化させて、20小節のザの変ホ音ま で気持ちを高めていく。  テーマは、自由な形でとり入れられている。 一36一

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演奏上からみたAnalyseの重要性について  この変奏曲の中で唯一の短調の変奏で、楽曲全体を通しての一番の揺れと とれる。  ハ短調でかかれているので葬送行進曲らしい感じがするが、真の意味の行 進曲とは、趣が違うように感じられる。  第1小節は、ハ短調の主和音でがっちりと弾く。左手の、は音を保続音と みなすことができる。  どの変奏も團においてI IV Iの揺れであったが、いきなり鶏という減七の 和音で出てくる。右手の主和音は付点四分音符ぎりぎりまでのばして猛に移 ることにより一層緊張した雰囲気をだせると思う。  第2小節の終わりから第3,第4小節にかけてのcrescでは徐々に迫って くる感じをだしたい。  圃に入ったらすぐPにして、前のガとの差をはっきり区別して演奏する事 により、曲に締まりがでてくる。  第8小節の終わりのガは、和音を1つずつかみしめて弾くべきだと思う。  囹の9小節の右手は、シンコペーションのリズムを感じて弾きたい。  第10小節では、1度とWの和音の繰り返しや右手の上行型によって動きの あるcrescがつけられたと考える。  第11小節のグは、シンコペーションのリズムからくる強調の意味のザであ ろう。  12小節から14小節にかけて月のリズムが、声部は異なるが6回出てくる。 この変奏の冒頭のリズムであるが、これを通して再現團に導かれている。  國では、同主調のハ長調へと一部転調がみられるが、ハ短調との違いを感 じて弾く。  第20小節のげのついた和音は、團とは異なり、よりいっそう不協和の強い 和音を感じる。  第22小節からの部分は、へ長調へ戻るための経過句と考えられる。  この変奏Vではテーマは、ハ短調に変化しているが、自由な形で、とり入 れられている。 一39一

(26)

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(27)

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(30)

-福田由紀子

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(31)

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(32)

-福田由紀子

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(33)

演奏上からみたAnalyseの重要性について  この変奏V[は、暑拍子でかかれているので軽快に弾きたい。  バスの動きを見ると、保続音がなくなっている。  第1小節の左手、内声の動きを感じたい。  第4小節、第8小節にあるゾは、普通は、衙音に強調の意味でつくのだろ うが、ここでは解決音につけられている。フレーズの終わりの部分でも、気 持ちは前へ進む為のザととれる。  第6小節の右手4拍目はフレーズの終わりの音として、また6拍目はフレー ズのはじめの音としての意識をもって音色を変えて弾きたい。  囹では、9小節から右手テ画1が6回続くが、はずんだ感じで楽しんで弾く 意味のものであろうと思う。これを通してハ長調へ転調している。  第12、第13小節のザは、4拍目の椅音へ向けて気持ちをもっていく為であ ろう。  國は装飾音をとり入れたテーマである。特にイ奇音の装飾音が多い。  テーマは、よく認識できる形で取り入れられている。  Cadaは42小節でかかれている。前半17小節(譜面上では39小節)までは、 変奏Wの続きと考えられる。  第25小節までのへ長調の明るさに対して、第26小節から第30小節まではへ 短調の暗さを感じて弾く。  第29小節からオクターブ上げ下げして同じ音型が繰り返される。  第32小節から左手に、ハ音や、は音のふんばりがみられる。  第35小節からは、ぐんぐんいくが、これらは次にくる形を期待させる。  後半は、(譜面上では40小節から)テンポが変わり、テーマを装飾して再 現している。出だしは、左右とも三和音である。  第43小節の接続部は、音が多くても、基本となる音は、ハ、ホ、ト、変ロ であるから、ごく自然に重たくならないように弾く。  今まで右手にしか出てこなかったテーマを團においては左手で弾く。  囹は、左手が分散和音の形で現れる。第50小節のザは、和音の響きを意識 するグと考えられる。 一47一

(34)

福田由紀子  第53小節のcrescは、気持ちの高揚の意味であろう。  第60小節では、カデンッ風にかかれている。左手の和音を聴き、その響き の上にのるように弾くべきだろう。  第61小節からは、回想部と考えられる。テーマが二分の一の長さの音符で かかれている。  最後の64小節の終わり方は、テーマでみせた終わり方とは違う。テーマで は、一本の線で3個の音が結ばれていたが、ここでは、3個とも別々にかか れ、また、C音A音の旋律が内声におかれている。ゆったりとした音で終わ りをつくると良いと思う。 一48一

(35)

      演奏上からみたAnalyseの重要性について

四 作品を通しての楽式構造について

上記のAnalyseをもとに、次のような各面をまとめてみた。

1.項 数

  テーマ+6つの変奏曲+コーダ 2.対比関係   拍子・調・調関係・速度(表1) (表1) 拍子 調 調関係 速度記号

Thema

Fd.ur

AdagioCantabile

Var.1

Dd.ur

Themaより

短3度下の調

Var.■

Bdur

Var.1より

長3度下の調 Allegro manon Troppo

Var.HI

Gdur

Var.:Eより

短3度下の調 Allegretto

Var.IV

Esdur Var.皿より

長3度下の調

Tempo diMemetto

Var。V

cmo11 Var.IVとは 同主調の関係 短3度下の調

MarciaAllegretto

Var.VI

Fd,ur  4度上行で

Themaと同じ調

Allegretto

Coda

巷一甚

Fd皿r

  40小節より

Adagiomolto

一49一

(36)

福田由紀子 3.楽式構造図式(表2) (表2) 楽 式構 造 図 式 囚8小節 圖6小節 囚8小節

Thema

ノ ノ a a a a 囚 團 囚 Var.1 ノ 〃 a a a ♂ 囚 團 囚 Var.1]: , 〃 a a a a 囚 團 囚 Var.皿 , 〃 a a a ♂ 囚 圖 囚 Var.IV ’ 〃 a a a ♂ 囚 圖 囚 Var.V aa 〃a 推移6小節 囚 圖 囚 Var.VI ノ 〃 ノ a a a a 囚 團 囚 Coda coda前半 17小節 a

ノa 〃a 砂a 回想部4小節

(37)

演奏上からみたAnalyseの重要性について  テーマと各々の変奏は、囚が8小節、圖が6小節から成り立っている囚圖 囚の三部形式である。  テーマと変奏1を除いて、変奏Hから変奏V[までは、反復記号がある。  調関係をみてみると、調の変化は、無秩序に行われているのではなく、一 つの法則のもとに行われていることに気づく。へ長調から短長交互に3度ず つ下がっていき、変奏Vでハ短調となり、6小節の経過句では同主調のハ長 調となり、変奏VIで再びへ長調へ戻っている。  各変奏において、すべて調、拍子、速度が変化し、それぞれの性格を描き だしている。 結  何故この和音がここに使われているか、何故この調性でここにかかれてい るか等、’和声、調性、形式等の分析をもとに楽譜を深く掘り下げて読むこと により、作曲家の意図を汲み取ることができるようになる。  演奏に際して意味をもたない鍵盤へのタッチは物理的な音にすぎず、未熟 ではあるが楽理的背景と感情とを多少なりとも備えた演奏は前者とは本質的 に異なってくる。  従って良い演奏をする為には、作曲家の意図としていることを譜面から読 み取り、作曲家が作った時と同じ次元に自分をおく事であると思う。すなわ ち再思考である。作曲家の時代的背景や、作品のかかれた当時の環境等、調 べる必要性は当然であり、漠然とした感覚だけでは真に迫る事はできない。 作曲家ですら様々な音楽的思考を行ってきたのである。現代での演奏には、 必然的にAnalyseする事の重要さが当然求められるはずである。  そして、Analyseを主体とする深い研究は、演奏上多くの効果があること は論ずるまでもないであろう。  従って、演奏とはAnalyseの基礎に立っての演奏に他ならないと考える。 一51一

(38)

福田由紀子 (注1)  MUJIK:A NOVA 78∼80頁 音楽之友社出版 (注2)  井上直幸 「ピアノ奏法」20∼30頁 春秋社出版 (注3) MUJIKA NOVA 54∼55頁 音楽之友社出版 (注4)  Jacques Chailley r音楽分析」藤田幸雄・若桑 2001年4月号 1998年 2002年2月号

 年

 6

4

 19

 版

 出

 社

訳友

共之

 楽

毅音

参考文献

 島岡 譲「和声と楽式のアナリーゼ」     音楽之友社出版  伊藤義雄「ベートーヴェンのピアノ作品」   音楽之友社出版  諸井三郎「楽式の研究V 変奏曲 その他」  音楽之友社出版  島岡 譲「音楽 理論と実習H」国立音楽大学       ソルフェージュ・理論委員会出版   〃  「音楽 理論と実習皿       〃   〃  「音楽 理論と実習IV」      〃 1964年 1962年 1968年 1971年 1971年 1975年

付記

 本稿作成にあたっては、賀集裕子先生(元国立音楽大学客員教授)、故 佐伯 武先生に御助言を賜りました。記して感謝申し上げます。 一52一

参照

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