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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) ミ ル ザ カ ハ リ ル バ ハ マ ニ

学 位 論 文 題 名

Varied prevalence of Borna disease virus infection in Arabic,          thoroughbred and their cross‑bred horses in Iran

    ( イ ラ ン に お け る ア ラ ブ , サ ラ ブ レ ッ ド およぴその交雑種間で異なるボルナ病ウイルス感染率)

学位論文内容の要旨

  ボルナ病ウイルス(BDV)は、18世紀後半にドイッで発生したウマに散在性の進行性脳炎 をもたらすボルナ病の原因ウイルスである。BDVは、ウマ以外にもウシ、ヒッジ、ネコお よびダチョウに自然感染することが報告されている。また、BDVは鳥類から哺乳類まで、

幅広い実験感染が可能であることも明らかにされている。ラットを用いた実験感染では、

脳脊髄炎を引き起こすことが証明され、ボルナ病を研究する上での有カな動物モデルと な っている。BDVは、好 神経性のエ ンベロープ ウイルスであり、約9000塩基の1本鎖 RNAをゲノムとするnonsegment negative strand (NNS)ウイルスである。BDVは少なくと も ヌ クレオ プロテイン(p40) 、ポリメラ ーゼコファ クター(p24)、マトリッ クス(

gp18)、 エン ベ ロー プ(gp56)お よび ポリ メラーゼ(p180)の5つのタ ンバク質を コー ドすることが報告されており、ゲノム構造の相同性からラブドウイルス科の狂犬病ウイル スや水疱性□内炎ウイルスとの類似性が認められる。しかしながら、BDVは球状(約100 nm)のウイルスであり、核内で複製するなどラブドウイルスとは異なる点もあることか ら、現段階では未分類である。

  これまで主に血清学的診断によりBDVの疫学調査が行われてきた。昨年我々とドイツの Bo de博士ら のグループ は、末梢血 単核球(PBMC)より抽 出したRNAを鋳型とす るRT‑

PCRによりBDVの遺伝子を検出することに成功した。このことにより、従来の血清学的診 断と併わせ遺伝子診断によるBDV感染の、より総合的かつ詳細な調査が可能となった。こ れらの検出系を用いて北海道におけるサラブレッドについて検査したところ、約30%のウ マがBDV陽性であることが明らかとなった。またその遺伝子配列の比較から日本由来の遺 伝子型がヨーロッノヾ由来の配列と違いはあるものの近縁であることが示唆された。このこ とは、日本国内の競争馬は欧米等から輸入される場合も多く、様々な形で日本と欧米間の ウマの交流は進んでいる現状を考えると理解できる。一方、イラン国においては外国との ウマの交流は少なくとも15年以上行われていない。そこで本研究では、イランのウマに おけるB DVの分布状況およびその遺伝子型を明らかにするために、テヘランの72頭のウ マ(アラブ(28頭)、サラブレッド(17頭)およぴ両者の混血ウマ(27頭)】について、

BDVの血清学的および分子疫学的検査を行った。血清学的検査は、p40およびp24のGST 融 合夕ンバク 質を抗原と するイムノブロット法により、分子疫学的検査はp24領域の

(2)

nested RT‑PCRにより行った。

  検 査の 結果 、抗BDV抗 体あ るい はBDV遺伝 子が陽性であった割合は、アラブ(41.2%)、

サラ ブレ ッド (2 3.5% )お よび 両者 の混 血ウマ(33.3%)であり、抗BDV抗体およびBDV 遺伝子が共,に陽性であった割合は、アラブ(17.9%)、サラブレッド(5.9%)および両者 の混 血ウ マ(11.1%) であっ た。 混血 ウマ では、牝のみに抗BDV抗体が検出され、また、

アラ ブの 牡お よぴ サラ ブレッ ドの 牝に 有意 な陽性率の上昇が認められた。一方、BDV陽性 率と 加齢 との 間に 関連 性は見 られ なか った 。さらにPCR産物の塩基配列を決定し、その予 測さ れる アミ ノ酸 配列 を比較 した 結果 、イ ランの3種のウマ間では、ほぼ一致しているの に対 し、 ヨー ロッ パ、 日本由 来の ウマ のBDV配列および日本由来の精神疾患患者由来の配 列と は若 干の 差異 が認 められ た。 しか し、 精神分裂病や慢性疲労症候群患者由来BDVと比 べる と、 これ らウ マ由 来BDV間の 塩基 配列 の相同性は高かった。イランのウマにおいて検 出さ れた2塩基 の欠 失は 、日 本国 内の 慢性 疲労 症候 群患者 由来 のBDV塩 基配列にも認めら れた。

  以 上 の 結 果か ら 、イ ラン のウ マで は性 別お よび 種間 でBDV陽性 率の 違い がみ られ るこ と、 およ び、 イラ ン国 内のウ マのBDV遺伝 子型は、国内では相同性が高く、その他(ヨー ロッ パお よび 日本 )の 国のウ マ由 来あ るい はヒト由来のBDVの遺伝子型とは異なることが 明らかとなった。

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

Varied prevalence of Borna disease virus infection in Arabic,         thoroughbred and their cross‑bred horses in Iran

    ( イ ラ ン に お け る ア ラ ブ , サ ラ ブ レ ッ ド お よ び その 交 雑 種間 で 異なるボ ルナ病ウ イルス感 染率)

  ボルナ 病ウイルス(BDV)は、ドイ ツで発生 したウマ の進行性 脳炎をもたらすボルナ病の 原 因ウ イ ルス と し て分 離 され た ウ イル スである 。BDVは、ウマ 以外にも ウシ、ヒ ツジ、

ネ コお よびダ チョウに 自然感染 すること が報告さ れている。 これらの 動物では 、感染し て も、 必ずし もボルナ 病を発症 するとは 限らず、 むしろ発症 例は稀と 考えられ ている。

一 方、 抗BDV抗 体 陽 性率 か ら、 ヒ 卜 、特に 精神分裂 病やうつ病 などの精 神疾患と の関連 性 が 示 唆 さ れて い る。 こ れ まで 主 に血 清 学 的診 断 に よりBDVの疫 学 調 査が 行 われ て き た 。 昨 年 我 々 と ド イ ツ のBodeら の グ ル ― プは 、 末 梢血 単 核球 (PBMC) より 抽 出し た RNAを 鋳 型 と するRT―PCRに よりBDVの 遺伝 子 を検 出 す るこ と に成 功 し た。 こ のこ と に よ り、 従 来の 血 清 学的 診 断と 併 わ せ遺 伝子診断 によるBDV感染 の、より 総合的か つ詳細 な 調査 が可能 となった 。これら の検出系 を用いて 北海道にお けるサラ ブレッド について 検 査さ れ 、約30%の ウ マがBDV陽 性で あるこ とが報告 されている 。そこで 本研究で は、

外 国と の ウマ の 交 流が 少 なく と も 過去15年以 上 にわ た っ て行 わ れてい ないイラ ンにお い て、 ウ マに お け るBDVの 分布 状 況 および その遺伝 子型を明ら かにする ために、 テヘラ ン の72頭のウマ [アラブ (28頭)、 .サラブ レッド(17頭)および 両者の混 血ウマ(27 頭 )] につい て、BDVの血 清学的お よび分子 疫学的検 査を行った 。血清学 的検査は 、p40 お よびp24のGST融合 夕ンパク 質を抗原 とするイ ムノブロ ツ卜法によ り、分子 疫学的検 査 はp24領域 のnested RT‐PCRにより 行った。

  検 査 の 結 果 、 抗BDV抗 体 あ る い はBDV遺 伝 子 が陽 性 で あっ た 割合 は 、 アラ ブ (25%

) 、サ ラブレ ッド(23.5% )および 両者の混 血ウマ(33.3%)であ り、抗BDV抗 体およ びBDV遺 伝子が共 に陽性で あった割 合は、ア ラブ(17.9% )、サラブ レッド(5.9%)お よ び両 者 の混 血 ウ マ(11.1% )で あ った。 混血ウマ では、牝の みに抗BDV抗 体が検出 さ れ 、ま た、ア ラブの牡 およびサ ラブレッ ドの牝に 有意な陽性 率の上昇 が認めら れた。―

明 司

光  

  和

沼 山

柿 小

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

方、BDV陽性率と加齢との間に関連性は見られなかった。さらにPCR産物の塩基配列を 決定し、その予測されるアミノ酸配列を比較した結果、イランの3種のウマ間では、ほ ぼ一致しているのに対し、ヨーロッノヾ、日本由来のウマのBDV配列および日本の精神疾 患患者由来の配列とは若干の差異が認められた。しかし、精神分裂病や慢性疲労症候群 患者由来BDVと比ぺると、これらウマ由来BDV間の塩基配列の相同性は高かった。イラ ンのウマにおいて検出された2塩基の欠失は、日本国内の慢性疲労症候群患者由来のBDV 塩基配列にも認められた。

  以上の結果から、イランのウマでは性別および種間でBDV陽性率の違いがみられるこ と、 およ び、 イラ ン国内 のウ マのBDV遺伝子型は、国内では相同性が高く、その他

(ヨ―ロッパおよび日本)の国のウマ由来あるいはヒト由来のBDVの遺伝子型とは異な ることが明らかとなった。従って、今後、イランの精神疾患患者におけるBDV陽性率を 検討するとともに、その遺伝子配列を検討することにより、感染動物からヒトへの伝播 の可能性を明らかにする良いモデルになると考えられる。

  公開発表にあたり、副査の小山(司)教授より、イランにおけるウマボルナ病の報 告、末梢血細胞におけるウイルスRNAの検索は脳内ウイルスを反映するのか、抗体とウ イルスRNAの検索結果が異なる例の解釈、イランの精神疾患における本ウイルスの関与 の可能性について、細川教授から本ウイルスの感染伝播方式について、主査の柿沼教授 からイランにおけるBDVの由来について、末梢血中に認められるウイルスの変異につい て、末梢血と脳内のBDV間で性状が異なる可能性、免疫科学研究所細菌感染部門の岸助 教授から母子感染の可能性、副査の生田教授からイランにおけるウマ由来BDV塩基配列 が高い保存性を示す理由、などについて質問がなされたが発表者はおおむね妥当な回答 を行った。

  審査員―同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博士(医学)の学位を受けるの に充分な資格を有するものと判定した。

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